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目からビーム

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第四章

「お手柄だね」
「今回はね」
 エラリーはサングラスをかけなおしてからシグマルドに応えた。
「そうなったけれどね」
「けれどなんだ」
「そうさ、けれどね」
「今回はで」
「そうさ、普段はね」
「その目のことはなんだ」
「厄介者だよ」
 そうした風に扱われているというのだ。
「完全にね」
「そうなんだね」
「そうさ、だからね」 
 今回のことはいいがというのだ。
「喜んではいられないんだよ」
「そうしたものなんだね」
「市場の連中だってそうさ、今回は感謝してくれてもね」
 口々に感謝の言葉を告げて来る、今は。
「普段はサングラスしてるか閉じてないとね」
「言われるんだ」
「危ないからそうしろってね」
「難儀な話だね」
「それがあたし達だよ」
 赤目という種族だというのだ。
「そうしたものなんだよ」
「ううん、じゃあ」
「あたし達の目は正直こうしたところで暮らすにはね」
「難儀なのはわかったよ」
「そうしたものだよ、じゃあね」
「うん、それじゃあ」
「まだ何か買うかい?」
 ここでは商人として言ってきたエラリーだった。
「そうするかい?」
「じゃあ東から仕入れた柿をね」
 その橙に似た色の少しへしゃげた円形の果物を見ての話だった。
「食べようかな」
「ああ、それだね」
「それ美味しそうだからね」
「実際に美味いよ」
 エラリーはシグマルドの言葉に笑顔で応えた。
「じゃあ一個買っていきな」
「そうさせてもらうね」
「美味いからね」
 味は保障するエラリーだった、そうして。
 シグマルドは彼女からその柿を買った、そのうえで。
 買った柿を食べた、それからエラリーに言った。
「美味しかったよ、じゃあまた来た時はね」
「売ってね、この柿も」
「そうするね、うちは品揃えには自信があるからね」
「商売は繁盛してるんだね」
「そっちはね、じゃあまたね」
 シグマルドはエラリーに笑顔で応えた、そうして村に戻って長老にエラリーとのことを話すと長老は納得している顔で頷いて彼に話した。
「それが赤目じゃよ」
「色々その目で苦労してるんだね」
「敵と戦ったりするには便利でもな」
「普通に他の種族、おいら達と一緒に暮らすには」
「苦労もしておるのじゃ」
「そうだね、目から光線つまりビームを出せるのは面白いし恰好よくても」
 他種族である自分にしてみればだ。
「それでもだね」
「本人さん達には苦労が絶えぬものじゃ」
 赤目、彼等にとってはというのだ。長老はシグマルドに話してシグマルドは長老のその言葉に強い顔で頷いた。そのことがわかったからこそ。


目からビーム   完


                2018・1・20 
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