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蒼穹のカンヘル

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三十三枚目

「お久しぶりですサーゼクス様」

グレモリー家に泊まることになり、夕飯となったのだが、サーゼクスが同席していた。

グレモリー家はサーゼクスの実家だからおかしくはないが、間の悪い事だ。

「久しぶりだねカガリ君。君には期待しているよ」

「感謝の極みでございます」

ヴァーリ達が目を丸くしている…

ったく、俺だって敬語くらい使えるっつの。

黒歌と白音も同席しているが、こっちは特に不思議に思ってないようだ。

「あー。カガリ君。堅苦しいのは嫌いなんだ。
今は単に友人の兄として接してくれないか?」

「そのような畏れ多い事はできません。
ただでさえ私は頭上に光輪を浮かべる者にございます」

サーゼクスの事は、複雑だ。

彼には立場と責務がある。

それを理解している。

あのように言わなければいけない理由もわかっている。

でも…

「ふむ。そうか…ならば仕方ないな」

その後は社交辞令ばかりの会話だった。

メシの味がわからないなんて漫画みたいな事はなかったし、グレモリー家の夕食はとても美味しかった。






部屋に戻ると早速ヴァーリに聞かれた。

「篝ってサーゼクスさんの事嫌いなの?」

「嫌い…いや。どうだろう。魔王サーゼクスが尊敬できる人物だってことは知ってるんだ」

単に、俺の感情論だ。

俺がサーゼクスの立場なら、同じ事をしたかもしれない。

納得はできる。

だが感情が否定する。

理屈や正論は結局綺麗事の暴論なのだ。

「なら…」

「まぁ、今はいいじゃないか」

「そう…」

部屋の外から、バタバタと足音が聞こえた。

バタン! とドアが開かれる。

「ヴァーリ!カガリ!お風呂入りましょ!」

「女の子がはしたないよリーアちゃん」

「なにが?」

「自分の家とはいえ走らないの」

「いいじゃない。私の家よ」

お転婆だなぁ…

「それよりお風呂よお風呂!カガリの翼も洗ってあげるから!」

何故かリーアちゃんと一緒に入る事になってるし…

「俺男OK?」

これ言っとかないとたぶんヴァーリに連れていかれる。

「そんなの気にしないわよ?お兄様のは見たことあるもの」

そういう話じゃねーですよ。

「結婚前に家族以外の男に裸を見せちゃダメだよ」

「いいのよ。子供だもの」

「男女七歳にして…」

「何時も私と寝てるじゃん」

「ヴァーリは妹だから例外」

「篝のバカ」

罵倒された。解せぬ。

「黒歌と白音も一緒よ」

さらに入る訳にはいかなくなった。

「リーアちゃん。リーアちゃんは貴族の女の子。
お嬢様なんだ。いろいろあるでしょ?」

なんつーか…リーアちゃんの裸を見るのは一誠に悪い気がするのだ。

まだ会った事すらないけど、なんか、こう…ね?

「えー…篝の翼…」

やっぱりそれが本音か。

「お風呂あがったらちゃんと触らせてあげるから」

「ぶー…」

可愛いなおい…。










リーアちゃんに連れられてグレモリー家の風呂…というか温泉に向かった。

リーアちゃんの話ではジオティクスさんが日本の露天風呂に憧れて悪魔の建築家に注文したらどこでどう間違ったが西洋宮殿風の風呂になったらしい。

二層にわかれており、上が女性用で下が男用だそうだ。

要するに覗きができないようになっているのだ。

「じゃ、俺は下だな」

昨日はヴァーリが超スタイル良くなっていろいろアレだったので風呂に入っていない。

翼とか諸々、手先が鎧みたくなっているので一人では洗いにくいのだ。

龍人化してからはヴァーリに洗って貰ってたが、昨日はそうもいかなかった。

代わりに超高温で滅却した。

魔方陣の上に踏み入れると高温の炎柱ができるトラップマジックの応用だ。

半龍なので炎へ高い耐性があるのでできることである。

「篝、一人で洗えるの?」

「ん?なんとかするさ」

「んー…ならいいんだけど…」












風呂場に入るとめちゃくちゃ広かった。

おぉー…さすが公爵家…

さて…とりあえず熱で汚れを滅却してから湯船につかるか…

「背中ながそうか?カガリ君」

…………………………。

「なぜ居るんだサーゼクス」

背後から聞こえてきた声に振り返ると、そこには魔王がいた。

「君とは、話したい事があるからね」

「そうかよ…」

まぁ、こっちも、その、なんだ…話したい事があるしな…





ごしごしと背中を擦られる。

「サーゼクス」

「なんだい」

「この前は、わるかったな…
俺も狡い言い方をした」

あのとき。

サーゼクスがヴァーリを囮にすると言った時だ。

「あのとき俺は、『魔王』としてリゼヴィムを追いかけてきたお前を『グレモリー』と呼んだ」

それは卑怯だ。

「あの時お前はヴァーリを囮にするって言った。
たしかに許しがたい。でも魔王としては正しい。
感情を廃し、冷酷に徹するべき場面で、俺はお前の良心を攻撃してしまった」

「君は、優しいな」

「お前もな。サーゼクス」

「私も宴会で、君の言葉を考えたのだよ」

「へぇ」

宴会って事は、父さんやアザゼルといた時か。

「私も君の立場なら激昂しただろう、とね。
私はその強さ故に魔王になった。
だが果たして私は魔王であり続けていいのか…」

そんなにも、追い詰めてしまっていたのか…

「いいんじゃないか?お前の甘さは弱みだが、同時に強みだ。
俺はさ、サーゼクス。お前が優しい奴だってのはまぁ、知ってんだよ。
なんで知ってるかは言えないけど、知ってる。
だから、あの時お前に勝手に失望した」

サーゼクス・ルシファーというキャラクターは俺のお気に入りだった。

「してくれて構わないさ。
失望されるだけの事を言ったのだから」

「失望したけど、ソレを認めたくない俺もいたんだよ」

「はは…私も所詮は個人なのだよ。
魔王だなんだ言われていてもね」

魔王も、悩むんだな。

サーゼクスが背中を擦るのをやめ、お湯をかけた。

「おれもお前の背中流そうか?」

「是非とも頼んだ」

警戒心無さすぎだろ…

場所をかわり、スポンジでサーゼクスの背中を擦る。

腕が直接当たらないよう注意しながらだ。

「サーゼクス。もし俺がここでお前に光の槍を突き刺したらどうするつもりだ?
俺はお前に悪感情をいだいているんだぞ」

「『もし俺が』と言っているじてんでしないだろう。
それに、君がリーアが悲しむような事をするとは思えない」

そうきたか。

「君は親しい者のためなら命を投げ出せる漢だ。
親しい者を悲しませる事をするような者でないと私は確信している」

なるほど。リーアちゃんが信頼する俺を信頼している…という事か。

「そうか…」

ごしごしと背中を擦る。

大きな背中だ。

ルシファーとして、四大魔王の中でも議長として動く男。

「カガリ君。君はバラキエルをどう思っている?」

「どうって?」

「君は父親を誇りに思っているか?」

いうまでもない。

「誇れる。だから、父さんに誇れる息子になりたい。
手の中の全てを守れるほどに、強く」

「そうか…。カガリ君。あのときバラキエルは間に合わなかった。それでもか?」

「サーゼクス。それ以上言うなら本当に光の力で貫くぞ」

「すまない。ただ、もし私がバラキエルの立場で、間に合わなかったらと考えてしまう。
妻を、息子を、妹を、両親を、守れなかったら、自分はどうなってしまうのだろうかと」

「ふーん…」

確かに、あと一歩遅かったら、そう考える事もあった。

「サーゼクス。グレイフィアさんを信じてやれよ。
お前が認めたパートナーは、お前に守られるだけの女じゃぁないんだろう?」

「くく…そうだね…」

指をパチンッ!とならして、サーゼクスの頭に冷水をぶっかける。

「冷たっ!?氷水!?」

「あの時の言葉の仕返しだ」

「ささっさ寒い!?」

「そんなにお湯がほしいか?」

もう一度指をならし、熱湯をぶっかけるとサーゼクスがのたうち回る。

「じゃ、俺は気が済んだから湯船に浸からせてもらうぞ」













俺が湯船に浸かり、遅れてサーゼクスが入ってきた。

「今度セラフォルーに頼んでお前のリアクションを撮影してもらおうか」

「やめてくれ…魔王の威厳がなくなる」

ふと、思った事がある。

「サーゼクス。お前、息子はどうした?」

「君と話したかったからね。
今はグレイフィアと遊んでいるだろう」

「そ」

「ところでカガリ君」

「んだよ」

「その龍の体、不便じゃないかい?」

「まぁ、な」

確かに時々つっかえる。

「提案がある。京都に行ってみないか?」

「What?」
 
 

 
後書き
いぃぃぃぃぃぃやっほぉぉぉぉう!三週間ぶりの休み(1日だけ)だぜぇ!ひぃぃぃぃぃやっはあぁぁあぁ! 
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