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空に星が輝く様に

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171部分:第十三話 家へその五


第十三話 家へその五

「それなら」
「そうですね。それじゃあ今度は」
「今度って」
「はい、今度です」
 月美の顔はここでも邪気のないものであった。
「今度はそれをお出ししますね」
「そうしてくれるんだ」
「はい、それでですけれど」
「今度って」
「ですから今度に」
 また来るということはだ。月美の中では既に決まっていた。実にあっさりと言っているのがそのことの何よりの証拠であった。
「御馳走させてもらいますね」
「うん、じゃあ」
 そして陽太郎はだ。言われるままに頷くのだった。
「それじゃあその時に」
「今度はまた別のお菓子にしますね」
 月美はそのまま明るく話す。
「何か考えておきますね」
「頼むよ」
「ただしね」
 ここでだった。また別の声がしてきた。
「月美、言っておくけれど」
「あっ、お母さん」
「アメリカのケーキはいきなり出さないこと」
 こう言ってだった。黒い、月美と同じ髪の色で長いそれを後ろで上にあげて束ねている背の高い女性が来た。顔は月美にそっくりで胸がかなり目立つ。黒と白のスーツを着てそのうえでいた。
「それは気をつけてね」
「帰ってきたの」
「今帰ってきたところよ」
 その美女はこう月美に微笑んで答えた。
「丁度今ね」
「そうだったの」
「話は聞いてるわ。楽しくやっていたみたいね」
「え、ええ」
「はじめまして」
 美女はだ。今度は陽太郎に顔を向けて微笑んできた。
「月美の母です」
「お母さんですか」
「西堀真奈美です」
 そしてこう名乗ってきた。
「斉宮陽太郎君ね。話は聞いてるわ」
「話って」
「月美がいつも話してるのよ」
 にこりとした顔での言葉だった。
「いつもね。貴方のことをね」
「西堀・・・・・・いえ、西堀さんがですか」
「そうよ、いつも言ってるのよ」
 こう陽太郎に話すのである。
「とても優しくて親切だってね」
「そうだったんですか」
「そうよ。その通りみたいね」
「いえ、それは」
「隠さなくても謙遜しなくてもいいのよ。わかるから」
 麻奈美はまた彼に話す。
「貴方のことはね」
「俺のことがって」
「いい子ね。それならいいわ」
「いい?」
「月美のこと御願いね」
 いきなりだった。彼にこう告げたのである。
「宜しくね」
「はあ」
 言葉を上手に出せないまま。陽太郎は頷いた。
「わかりました」
「そういうことだからね。頑張ってね」
「わかりました、それじゃあ」
 また言う陽太郎だった。
「これから」
「月美もよ。彼を困らせたら駄目よ」
 今度は娘に顔を向けての言葉だった。
「それはね」
「ええ」
 月美は母のそのことばにこくりと頷いた。
「それは」
「わかっていたらいいわ。それじゃあ私はこれで」
「何処に行くの?」
「着替えるのよ」
 それだというのだ。
「このままでいても仕方ないじゃない」
「あっ、そうね」
「お家の中までスーツにいるのもね」
 それもだというのである。
「だから。いいわね」
「ええ、じゃあ」
「そういうこと。じゃあ続けて」
 部屋を去ろうとするところでまた言う真奈美だった。
 
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