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ソードアート・オンライン  ~生きる少年~

作者:一騎
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第一章   護れなかった少年
  第三十二話 鬼ごっこ

 ソラside

「ハァ......ハァ ......ハァ ......」

 もうどのくらいの時間走ったのか覚えていない。あの道具屋を出たあと、フレンドを確認すると、ハク、ブライ、センの三人が消えていた。

 恐らくメイ達もヤバい状況に陥っているハズ。場所は迷宮区、第一フロア。もうすぐ着くはず。だからもう少し、持ってくれ ――

――ヒュン

 瞬間、脳内でサイレンが鳴り、全力で横っ飛びする。刹那、さっきまで僕の頭があったところを何かが通り過ぎた。

 (あれは......ピック ? でも誰が ......)

「おい、外してんじゃねえよ !!」

「悪ぃ悪ぃ。でも俺等もうバレてんだろうし、そろそろ出ようぜ。窮屈過ぎてイライラすらぁ」

 そう言って近くの茂みから一人が立ち上がった。とても堅気とは思えないその人相には、一個のエンブレムが入っていた。

(あれは.....犯罪(オレンジ)ギルドの ......)

 「チッ、これだから『スナイピングス』の奴らは信用できねえ」

 そう言いながら茂みから立ち上がった男の顔には、さっきの男とは違うエンブレムが。そしてそれを合図にドンドン人が茂みから、木の陰から、色々な所から出てくる。
 
 その数、ざっと 50人を超えるだろう。カーソルは全員が全員オレンジ。そして全員種類はあるがエンブレムがほってあった。

(......『スナイピングス』、『ポワニャール』、『トライゾン』、『ガロウズ・ギロティン』 ......他にも様々なオレンジやレッドギルドが ......)

「pohさんの依頼だ !! 全員気合い入れろよ !!」

『オウ!!』

 そう言いながら数人が襲い掛かってくる。

 poh、アイツか !!

 そう思い舌打ちをしながら ......

「そこを......」

  ――――居合い、範囲スキル『羅刹風刃衝』

「どけェェェェェェエエエエエエ !!」

 数人が斬りかかり、その刃が触れるや否か、と言うところで一瞬の煌めき。

 一瞬で振り抜かれた刃は、衝撃波のようなものを発し、まとめて数人を吹き飛ばす。

 スキルの効果により納刀しながら、走り出す。

 流石にこんな数相手をしていられない。一点突破だ。

 ......が、その道の玄人が獲物を逃がす訳が無い。
  
 即座にピックの嵐。

 「クソッ!!」

 横に飛びながら身を翻し、躱すが数個は掠り、確実に HPバーを蝕んだ。

 グリン、と上半身を捻りながら鯉口を切る。

「セァッ!!」

 居合遠距離スキル『風翔刃』

 緑色の光を纏った刀が振り抜かれると同時に緑色の光だけが刀から飛んでいく。

 「グッ」

 そんな声と共に遠目で 2, 3人の腕が落ちるのを確認する。あれだけでも戦意を削ることは出来るだろう。

 そう思いながら再度前を向いた瞬間。

「――え ?」

 視界いっぱいに広がる一本のナイフはそのまま僕の左目に突き刺さった。

「ガァァァァァアアアアアッ !?」

 ナイフを左手で掴み、引き抜きながらバックステップを踏む。抜き身のナイフを握ったため HPが削れるがそんな事は今気にしていられない。

 問題なのは ......左側が全く見えないこと。要は死角が何倍にも増えてしまっているのだ。トドメとばかりに距離感もうまく取れない。

「ヒャッハァッ !!」

 そんな声と共に襲い掛かってきた男の一撃をバックステップで躱し、居合いスキル『閃』を放つが ――

「ックソッ!!」

「おいおい何処狙ってんだぁ ?」

 掠りもしない。 舌打ちをしながら距離を詰め、上段から刀を振り下ろして相手の腕を肩から切り落とすが ――

「チッ」

 囲まれた。どうやら逃がしてはくれないようだ。依然として数は減っておらず50人近くの集団。


 ......これは少々キツいかも。

 なんて言ってられない!! 速くアイツ等を助けなきゃイケないんだ!!

「もう一度言う。 そこを、退けッ!!」

 そう叫び、僕は一点突破を目指し、人の群れに我武者羅に突っ込んだ。

―☆―☆―☆―

「よし......ここならいいだろ......」

 迷宮内は常に薄暗い。そのため、物陰などの死角はどこにでもある。その中でもいつでも逃げられるよう、細い通路、その中にある、蜘蛛の巣状に広がっているさらに細い路地に隠れる。幸い、俺とアンスは軽業スキルを取っていて、ウォールランが使える。メイは使えないが、俺の筋力値ならメイぐらいは余裕で担げる。

 あれから大体5分ぐらい経ったろうか。既にPoh達は探し始めて二分経つ。
 イケる。この調子で息を潜め続ければ――

「見~つっけた♪」

 後ろの通路を振り返るとそこには頭陀袋のような物をかぶった人物......ジョニーブラック。
 ついに見つかっちまったか......。だがこれぐらいは予想済み!!

「行くぞアンス、メイ!!」
「ああ!!」
「了解!!」

 ジョニーブラックの現れた方とは真逆の方向に走り、通路を抜けようとする。が――

「逃が、さない」

 目の前にザザが現れる。が、これも予想している!!
 そのままメイを担ぎウォールランを発動。ザザより数メートル上の壁を走り、そのまま上を飛び越え、走り去る。後ろを向くとしっかりアンスも着いてきていて、ザザ達は追いかけてきていない。よし撒いたッ!!

「このまま次の場所に行くぞ」
「「了解!!」」

 このまま行けばあと3――いや、残り2分。逃げ切れる!!

 次のポイントもさっきと同じ、上の広い裏路地のような細い路地。
 が、さっきと同じように直ぐに見つかる。すぐさま移動を開始し、どうにか振り切って別の場所へ。

 次の場所でも隠れて数秒もしないうちに見つかる。が、それだけだ。ここでも追いかけてくるような様子は無く簡単に逃げ切れた。もう残り時間は一分切った。

(おかしい......何故追いかけてこない......?)

 それが分からず、形勢は有利。もう半分切ったと言うのに嫌な汗が止まらない。走りながら、ただひたすら走りながら思う。そういえば、さっきからザザとジョニーブラックしか見ていない。Pohの姿が無い。

 ......もし、もし仮に。


『もし仮に、誘導されているとしたら?』


 そんな考えが頭をよぎる。不自然な事が多すぎる。

(くそッ!! 仕方無い。マップで調べよう。まだ行き止まりのような外環には達していないはず――!?)

 マップ上の自分を表す矢印は、既に外環の直ぐそこに来ていた。後ろ、そして左右しかない行き止まり。

「だ、ダメだ!! 進路を変え――」
「Wow.気づくのが遅すぎたな」

 ガシャン、という無機質な破壊音と共にそんな声が後ろから響く。そこにいたのはPoh......だけだった。確かに後ろを着いてきていたハズのアンスはもう、すでに物言わぬエフェクトとなっていた。

「アンス!?」

 メイが悲鳴を上げる。そんなメイを地面に下ろし、Pohと向き合う。

「てめぇら......何か仕込みやがったな!?」
「Marvelous!! 気づいたか」
「流石にこんだけ、綺麗に誘導されりゃあな」

 ギリィ、と奥歯が音を立てて軋む。さて、この窮地、どう突破する......? 前にはPoh。後ろはがら空きだが、今背を向けたら殺られる。かと言ってこのまま膠着してザザやジョニー・ブラックに追いつかれてもアウト。
 ......逃げるタイミングは今しか無い。が、俺はSTR、DEFに重点的に振っており、AGIはそんなに高いわけじゃ無い。
 
 考えろ。考えろ。思考を止めるな。かといって熟考するな。そんな時間はない。閃け。残り時間あと一分。

「さて、存分に楽しんでもらえたかな?」
「ああ、こんなにスリリングな瞬間は初めてだぜ......!」

「good!! それは良かった。だが残念。もうすぐ閉幕だ。さぁ、最後の一瞬まで綺麗に足掻いて見せてくれ。 It's show time!!」

 そう笑いながらPohは自身の獲物を構える。このままじゃ......確実に死ぬ。殺される。どうにかしてでも――

 死ぬ? そうだこのままだと二人とも死ぬ。でも、一人でも逃げ切ればいい。俺はAGIは低いがDEFは高い。
 それに対して背負っているこいつは? DEFは低い。が、AGIはかなり高い。

 要は......適材適所ってやつだ。

「そうだな......。最後まで足掻かせてもらうぜ!!」
「何を言ってるの!? 逃げなきゃ!! 」

 作戦を伝えることはできない、が。こいつなら、伊達に十数年一緒にいるわけじゃない。頼む。わかってくれ。

 そう思い、メイを背負ったままPohに突っ込む。普通に逃がしたところで、PohのAGIなら瞬間で俺を殺し、メイに追いつくくらいはできる。意表を突かなければ時間を稼ぐことすらできない。

そして、Pohまであと数歩、というところで、メイを壁に向かってぶん投げた。

「キャァァアアアアアア!?」

 突然のことにメイは悲鳴を上げた。瞬間、Pohも一瞬、かすかにそっちに意識をとられる。目の前の不可解な行動。何が起きたのか。たった一瞬だが、意識をそらせた。

「オラァアア!!」

 その隙を見逃さず、俺は斧をたたきつける。メイはそれで察したのか、壁をけり、そのまま着地。走り出す。

「なるほど。時間を稼ぐため、そして彼女を逃がすためだったのか。Marvelous!!素晴らしい!!」

 Pohは斧をその首切り包丁で受け止めながら笑う。そのまま一合、二合と打ち合う。

「だが、惜しい」
「あ?」

 武器をぶつけ合いながら、Pohはそうつぶやく。その単語に不安を感じ、バックステップ。Pohと距離をとる。が、Pohは距離を詰めてこなかった。それどころか、武器を構えていた手をだらりと下ろす。

 まるで、もう勝敗はついた、とも言わんばかりに。

「君は時間をかけすぎた。俺と対峙してすぐにその作戦を実行していれば、もしかしたら、俺からは逃げられていたかもしれない。だが遅かった。後ろを見るといい」

 Pohの言葉につい後ろを向いてしまう。

「――なッ!?」

「やっと、気づい、たか。 すべては、手遅れ、だがな」
「なぁボス!! もうこの女殺っちまっていいかなぁ!!」

 そこには、ザザがメイを羽交い締めにしていて、ジョニーブラックがメイの首元にナイフを突き付けていた。メイは意識を失っているらしく、頭を垂れ、無反応。

「メイを離せ--ガッ!?」

 ジョニーブラックに斬りかかろうとした瞬間、勁部に衝撃が走る。

「無駄な足掻きはやめて、慈悲深き神の審判を待つといい」

 地面に倒れ込みながら声のする方向を見る。
 そこには、ここにはいないはずの……見張りをしているはずのヤコブがいた。

「そ……んな……」

 こいつ、隠密のスキルでずっと、隠れてやがったのか……!?

「まぁ、残念賞ってところだな。さっき、何故俺からは、と言ったか教えといてやろう。ずっとヤコブに張らせていた。もし、万が一にも、ここから逃げられた場合を考えてな。そんな必要も無かったが」

 Pohが楽しそうに口を歪めながらそう言う。
 俺はそんなPohの言葉を聞きながら意識を落とした。

 メイ……ソラ……すまねえ……
 
 

 
後書き
大体次の話の中盤までは書き溜めていた部分なので、そっからガクッと文章力が下がったり作風が変わったりするかも知れないです。
暫く何も書かないブランクの期間が年単位であったので、それの影響結構大きいです。リハビリがてら気楽に書けて行けたらいいなと思っていますので、どうかよろしくお願いします。 
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