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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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第46話

~オルキスタワー・36F~



「―――やあ、よく来てくれたね。忙しいだろうに急に呼びつけてすまなかったね。」

リィン達が部屋に入るとレーグニッツ知事がリィン達に声をかけて立ち上がった。

「いえ、せっかくの機会ですし。改めてお久しぶりです、レーグニッツ閣下、イリーナ会長。シャロンさんももう合流していたみたいですね?」

「ふふ、おかげさまで滞りなく会長をお迎えできました。皆様も無事に本日の活動を終えられたようで何よりですわ。」

「特務活動については聞いているわ。まずはお疲れ様と言っておきましょう。―――そちらが新Ⅶ組に、エリカ博士の娘さんかしら?」

リィンの問いかけにシャロンと共に答えたイリーナ会長はユウナ達に視線を向けた。

「は、はいっ。」

「……お初にお目にかかります。」

「は、初めまして……やっぱり母をご存知なんですか?」

「その昔、父に同行してリベールに行った折にね。今でもたまに連絡は取るけど貴女のノロケ話ばかりしてくるのは少々参るわね。」

「ふふっ、ティータのお母さんってティータの事が大好きでティータを凄く大事にしているのね。」

「あ、あはは……お母さんったら。」

イリーナ会長の話を聞いたゲルドは微笑みながら苦笑しているティータに視線を向けた。



「レーグニッツ閣下もお久しぶりですね。」

「はは………君とはカレル離宮以来だな。それとアルフィン皇女殿下とレン皇女殿下、それにエリゼ君――――いや、エリゼ卿もお久しぶりです。御三方とも年始のパーティーで会った時と比べると随分と見違えましたね。」

「まあ……ふふ、レーグニッツ閣下ったら。お褒めに頂き、光栄ですわ。」

「クスクス、アルフィン夫人やエリゼお姉さんの成長ぶりと比べたらレンの成長なんて大した事ないわよ。」

「……お久しぶりです。それと幾ら爵位を持っているからとはいえ、”今の私”は第Ⅱ分校の宿舎の管理人補佐ですので私に対してそこまでかしこまる必要はございませんので、以前のような気楽な態度での接し方で構いません。」

アルティナに話しかけられたレーグニッツ知事は苦笑しながら答えた後アルフィンとレン、エリゼに挨拶をし、挨拶をされたアルフィンとレンは微笑みながら答え、エリゼは軽く会釈をして答えた。

「ところでどうしてイリーナ会長とシャロンさんがこちらの部屋に?イリーナ会長はクロスベル側のVIPの一人ですから、ユーディット皇妃陛下達の部屋にいると思っていたのですが………」

「ああ、それに関しては私の方からイリーナ会長に話があって、こちらに来てもらったんだ。――――まあ、とりあえず皆座ってくれ。」

「―――シャロン、皆さんにお茶を。」

「ふふ、かしこまりました。」

セレーネの問いかけに答えたレーグニッツ知事がリィン達にソファーに座るように促すとイリーナ会長がシャロンに指示をし、リィン達はソファーに座って話を聞き始めた。



「――――RF(ラインフォルトグループ)に対しての価格交渉、ですか?」

レーグニッツ知事の事情を聞いたリィンは不思議そうな表情をし

「ああ……君も知っての通り、1年半前の”七日戦役”でRF(ラインフォルトグループ)本社があるルーレ市を含めたRF(ラインフォルトグループ)の工場がある領土は全てメンフィル帝国に譲渡、そしてその譲渡された領土がクロスベルに譲渡された事でかつてエレボニア帝国が鉄鋼メーカーとして最も頼っていたRF(ラインフォルトグループ)がクロスベルの所属になった事で、様々な弊害が出てきてね……今回の価格交渉はその弊害の一つであるRF(ラインフォルトグループ)が販売している商品の値上げを少しでも抑えてもらう為の交渉さ。」

「どうしてイリーナさんの会社の所属の国が変わったら、イリーナさんの会社が出している商品の値段が上がるの……?」

「………基本企業は自分達が根を下ろしている”国”で商品を販売するから、根を下ろす”国”に対しても色々と便宜を図ってもらう為にその国の政府や皇家との取引では様々な便宜を図るんだ……例えば政府の人達がその企業の商品を纏め買いをする代わりに、その企業はその商品の値段を割引すると言ったような事をね。」

「そして現在RF(ラインフォルトグループ)の”所属国”は”クロスベル帝国”ですから、”外国であるエレボニア帝国”に対して便宜を図る必要はありませんから、エレボニア帝国の関係者―――特に政府や皇家の関係者がRFと取引をする際は、”RFの所属国がエレボニア帝国だった時”よりも商品の値段が上がってしまうんです。」

「……まあ、所属国より外国を優先したら、それこそ所属国に”色々と疑われる事”も考えられますから、所属国がクロスベル帝国になったRFのエレボニア帝国に対しての対応は当然の流れかと。」

「……………………」

レーグニッツ知事の話を聞いて疑問を抱いたゲルドに説明をしたクルトとエリゼ、アルティナの話を聞いていたアルフィンは複雑そうな表情をし

「クスクス、正確に言えばRFの所属国がクロスベルになった事でヴァイスお兄さん達の意向によって、RFはエレボニア帝国に対して戦車や機甲兵と言った”兵器”の値段を暴利のような値段にしたから、その値段を少しでも下げて欲しい為にレーグニッツ知事はイリーナ会長と交渉しているのでしょう?」

「ハハ………やはりレン皇女殿下はお気づきになられていましたか。」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの問いかけにレーグニッツ知事は苦笑しながら答えた。



「エ、エレボニア帝国に対して兵器を売る時”暴利”のような値段にしたって、レンちゃん、それってどういう事なの?」

「ま、簡単に説明するとメンフィルやリベール、それにレミフェリアと違って”過去の経緯”からエレボニアと仲良くする事は時間がかかると判断したヴァイスお兄さん達は未だに兵器の量産をRFに頼っているエレボニア帝国の”力”をつけさせにくいように、RFがエレボニア帝国に”兵器”を売る時の値段を通常の値段よりも遥かに値上げした状態で売らせているのよ。」

「あ…………」

「それは……………」

「その……ちなみにですがRFはどのくらいの値上げをした状態で、エレボニア帝国に対して兵器を販売しているのでしょうか?」

ティータの疑問に答えたレンの説明を聞いたセレーネは呆けた後気まずそうな表情をし、クルト同様複雑そうな表情をしたアルフィンはレンに訊ねた。

「そうねぇ………確か”機甲兵”が登場するまでエレボニア帝国正規軍ご自慢の最新戦車の”アハツェン”は定価の2倍で機甲兵は種類にもよるけど、一番安い”ドラッケン”で1,5倍、一番高い”ゴライアス”は10倍近く値上げした状態でエレボニア帝国に販売させているはずよ。」

「じゅ、10倍~~~!?幾ら何でも、ボッタクリすぎでしょ!」

「ちなみにその10倍近く値上げしている”ゴライアス”?という機甲兵の値段はいくらなのかしら?」

レンの答えを聞いたリィン達が驚いている中ユウナは信じられない表情で声を上げた後ジト目になり、ゲルドはレンに質問をした。

「エレボニア帝国に販売している”ゴライアス”の値段は1機10億ミラだったはずよ。―――そうよね、イリーナ会長?」

「………ええ。レン皇女殿下が公表もしていない現在の我が社の兵器の値段をご存知である事は………この場では聞かない方がいいでしょうね。」

「ふふっ、今の話を聞いて我が社の導力ネットワークのセキュリティーや情報の管理を見直す必要が出てきましたわね。」

レンの問いかけに答えたイリーナ会長とシャロンの話を聞いてレンがハッキングでRFの情報を盗んだ事を察したリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「1機10億ミラ………だから、第四機甲師団が集結している”リグバルド要塞”でも”ゴライアス”は1機しか見かけなかったのですわね。」

「まあ、”ゴライアス”は他の”機甲兵”と違って”乗り手”が限られている事も関係していると思うが………」

「………少なくても第Ⅱ分校に配備される事はないでしょうね。というかよくRFの兵器部門である”第二製作所”はクロスベル帝国政府の意向に従って、エレボニア帝国に対して兵器の販売の値上げをしていますね。貴族連合軍に所属していた時、確か”第二製作所”の取締役を含めた上層部は”革新派”だったという情報を見た記憶があるのですが。」

リグバルド要塞に待機していた機甲兵達の事を思い返したセレーネの言葉に続くようにリィンはある事を思い出して呟き、ジト目で呟いたアルティナはある事が気になり、その疑問を口にした。

「………第二もそうだけど、第一――――つまり、エレボニア帝国の貴族、革新両派閥の関係者であった我が社の上層部達はクロスベル帝国政府より国家反逆罪や反乱助長罪と言った何らかの”容疑”をかけられて、その容疑に対する”判決”として降格や解雇をされたわ。―――その代わり新しい上層部にクロスベル帝国政府の関係者達が着いたのよ。」

「ちなみに第二製作所の新しい取締役はエイフェリア・プラダ元帥閣下が、第一製作所の新しい取締役はリューン様ですわ。」

「そ、そんな……!?」

「い、幾ら何でも横暴じゃないですか!?エレボニアの派閥の関係者だからと言って、何も犯罪を犯していない人達を”犯罪者”扱いするなんて……!」

「ヴァイスさん………」

イリーナ会長とシャロンの説明を聞いたアルフィンは悲痛そうな表情をし、ユウナは怒りの表情で声を上げ、ティータは辛そうな表情をした。



「―――そうかしら?他国の派閥の関係者なんて、国が乱れる”原因”になる可能性が非常に高いのだから、ヴァイスお兄さん達は危険の芽を摘み取っただけだと思うわよ。」

「それにエイフェリア元帥閣下とリューン様は魔導技術者として優秀な方達で、導力技術もすぐにものにしたと伺っております。技術者として優秀で、クロスベル帝国軍の上層部でもある御二方が取締役になった事はRFにとって結果的にプラスになったのではないでしょうか?」

するとその時レンとエリゼがそれぞれ意見を口にし

「そうね。実際二人は技術者としても優秀で、兵器に限らず様々な鉄鋼製品を開発し続けているし、二人を含めた新たな上層部達はクロスベル帝国政府でも上層クラスだから、政府との取引もスムーズになって時間を節約できるから、RFの会長としては第一、二の上層部達を挿げ替えられた事に関して思う所はないわ。」

「ハハ、エレボニア帝国政府としては耳が痛い話ですな………そう言う訳だから、何とか少しでも値下げをしてもらう糸口を見つける為にイリーナ会長と話をしていたのさ。」

エリゼの言葉に頷いたイリーナ会長の話を聞いたレーグニッツ知事は苦笑しながら答えた。

「そうだったのですか…………その、知事閣下は現在のエレボニア帝国政府の方針をどうお思いなのでしょうか?――――女神様から与えられたハーメルに対する”償い”を無視し続け、”北方戦役”を機に西ゼムリア大陸の戦乱が終結したにも関わらず軍拡をし続けるエレボニア帝国政府の方針を………」

「アルフィン…………」

辛そうな表情でレーグニッツ知事へ問いかけるアルフィンの様子をリィンは心配そうな表情で見つめ

「……正直な所、私も最近のエレボニア帝国政府の――――宰相閣下の方針には疑問を抱いております。エレボニアにも多くの信者が存在し、有事の際は心強い協力者になりうるであろう”七耀教会”との関係を悪化させる事もそうですが、”西ゼムリア同盟”を調印した矢先に軍拡をし続ければ、各国のエレボニアに対する信頼がいつまで経っても回復せず、結果エレボニアが孤立してしまい、万が一またエレボニアに有事が起こればどの勢力も手を差し伸べてくれず、最悪エレボニアが滅亡してしまうリスクが発生し続けている事は宰相閣下も気づいているでしょうに……………」

「――――その件も含めて色々あるのでしょう。オズボーン宰相の描こうとしている絵によればね。」

複雑そうな表情で語ったレーグニッツ知事に続くように答えたイリーナ会長の推測を聞いたリィン達は血相を変え

「……………………」

レーグニッツ知事は複雑そうな表情で黙ってイリーナ会長に視線を向けた。



「私にしても、レーグニッツ閣下にしてもそれぞれ理由があってクロスベルを訪問した。でも、本来交流会とは関係なく、別々のタイミングで来る予定だったの。恐らく、エレボニアの両殿下や他のVIP達も同じでしょうね。」

「それって………」

「……カレイジャスとパンダグリュエルでの来訪も含めて、全てそれぞれの帝国政府の意向ですか。」

「そして、自分達第Ⅱ分校の演習地がクロスベルになったことも………」

「―――あの列車砲がこのタイミングでクロスベルに姿を現した事もですか?」

イリーナ会長の話を聞いた生徒達がそれぞれ考え込んでいる中リィンはある事をイリーナ会長に訊ねた。

「あ……!」

「ああ、貴方達も見たようね?――――新型の”ドラグノフ級列車砲”を。あれの旧カルバード方面の配備を見届けることが、私のクロスベル入りの主要目的の一つになるわね。」

「ド、ドラグノフ級……」

「っ………どうしてそんな……」

「ユウナ……」

イリーナ会長の話を聞いたティータが不安そうな表情をしている中表情を厳しくしているユウナをゲルドは心配そうな表情で見つめた。

「………イリーナ会長。差し支えなければ教えてください。あれは一体どういうものなのかを。」

「リィン様……」

「いいでしょう―――現時点で公表できる範囲でよければだけど。ドラグノフ級、新型列車砲――――かつてガレリア要塞に配備されていた列車砲の正式な後継機になるわ。詳しい性能は伏せるけど、従来型に匹敵する火力を保持したまま移動性が圧倒的に向上――――迂回路線も使えば、主要鉄道路線で運用することも可能になっているわ。……もちろん”大陸横断鉄道”でもね。」

「………!!」

「ガレリア要塞に配備されていたものに匹敵する”大量破壊兵器”ですか……」

「実物を見た事はありませんが、数十万一規模の大都市を2時間で壊滅させることが可能とか。」

「……っ……!?」

「ど、どうしてそんなものがクロスベルに……!?」

「それにイリーナさんはどうしてそんなただ人を殺戮する為だけの兵器が自分の会社によって世に出る事を許しているの……?」

イリーナ会長とアルティナの説明を聞いたティータとユウナが驚いている中ゲルドは悲しそうな表情でイリーナ会長を見つめた。



「”理由”は私の知るところではないわ。あくまでクロスベル、エレボニア両帝国政府と正規軍の発注に応える最適なものを造った―――それだけのこと。そして私達RFは”死の商人”という忌名を背負う覚悟を持って、RFの持ち味である”兵器”の新開発・量産を向上させ続けているだけの事。ちなみに設計には貴方たちの分校顧問、シュミット博士も協力してくれているわ。」

「そ、そんな…………」

「それとこれは余談だけど、クロスベル帝国政府はRFに新型の”ドラグノフ級列車砲”をエレボニア帝国政府、正規軍に対して定価の20倍である200億ミラで販売させているわ。―――ま、値段が値段だからクロスベル帝国政府が6機購入した事に対して、さすがのエレボニア帝国政府も1機しか買えなかったようだけどねぇ?」

イリーナ会長の話を聞いたティータが信じられない表情をしている中レンは意味ありげな笑みを浮かべて答え

「あの列車砲が6機もクロスベルの領土のどこかに配備されるのですか……」

「……………」

「というかレン教官……イリーナ会長達の前でそんなRFの関係者でも非常に限られた人達しか知らないはずの情報まで口にするのはさすがにどうかと思うのですが……」

レンの話を聞いたクルトは真剣な表情をし、ユウナは複雑そうな表情で黙り込み、セレーネは疲れた表情でレンに指摘した。



「VIPの件で気になっていた事があるのですが………レーグニッツ閣下はユーディット皇妃陛下達――――カイエン公爵令嬢姉妹とは今後のエレボニアとクロスベルについて話し合うこと等はないのでしょうか?」

その時暗くなりかけた空気を変える為にエリゼがレーグニッツ知事にある質問をし

「勿論お二人と話す時間も取るつもりさ。革新派(われわれ)と争っていた貴族派のトップであるカイエン公爵のご息女でありながら、あのカイエン公爵の血を引いているとは思えない聡明な考えを持つ令嬢姉妹……彼女達―――特にユーディット皇妃陛下が当時のカイエン公爵で”七日戦役”で戦死したルーファス卿が当時のアルバレア公爵だったら、内戦は起きず、互いに手を取り合ってエレボニア帝国を支える未来があったのではないかとも思っているよ。」

「まあ、少なくてもアルバレア公爵家の当主がルーファス・アルバレアだったら幾らアルフィン夫人が他国領にいるからとはいえ、他国領―――それもメンフィル帝国の領土を猟兵達に襲わせるようなおバカな事はしなかったでしょうから”七日戦役”も起こらなかったでしょうねぇ。」

「………………」

「アルフィン………」

残念そうな表情を浮かべたレーグニッツ知事の話に続くように答えたレンの推測を聞いて辛そうな表情で顔を俯かせているアルフィンに気づいたリィンは心配そうな表情でアルフィンを見つめた。

「ルーファス・アルバレア………エレボニアの貴族達を導く未来のリーダーとして社交界で有名だった”四大名門”の”アルバレア公爵家”の長男で、貴族連合軍の”総参謀”として貴族連合軍の采配をしていた人物ですね………(そう言えばルーファス卿を”七日戦役”で討った人物は確か……)」

「ちなみにルーファス・アルバレアは”七日戦役”の際、リィン教官に討ち取られて”七日戦役”を終わらせる為に必要となったリィン教官の”手柄”の一つになったとの事です。」

「ア、アルティナさん。」

「ええっ!?きょ、教官がそのルーファスって人を”七日戦役”で……!?」

クルトは静かな表情で呟いた後リィンに視線を向け、アルティナの答えを聞いたセレーネは冷や汗をかき、ユウナは驚きの声を上げてリィンを見つめた。

「………………」

「リィン教官………」

「えっと……ちょっと気になっていたんだけど……エレボニア帝国は”自治州”だったクロスベル帝国が独立した事や”資産凍結”……?だったかしら。それらの件で、クロスベル帝国との仲があまりよくない話はお義父さんやユウナ達から聞いていたけど……エレボニアの政府の人達でもかなり偉い立場のレーグニッツ知事はクロスベル帝国と仲良くしたいと思っているのかしら?」

「へえ?」

「ゲ、ゲルドさん!?」

「さすがにその質問を知事閣下にするのは不味いのでは?」

目を伏せて黙り込んでいるリィンをティータが辛そうな表情で見つめている中再び暗くなりかけた空気を変える為にレーグニッツ知事に質問をしたゲルドの質問を聞いたレンは興味ありげな表情をし、セレーネは慌て、アルティナはジト目で指摘した。



「ハハ、まあエレボニアとクロスベルの関係と私の立場を考えれば、そのような疑問を抱く人達がいてもおかしくないだろうね。――――私自身は”敵対”ではなく”友好”な関係を結ぶべきだと思っている。確かに2年前の資産凍結の件も含めてクロスベルに対して思う所が無いと言えば嘘になるが、今のエレボニアはかつてゼムリア大陸の大国の一つとしてその名を轟かせていた頃とは違う。”ハーメルの惨劇”の件でエレボニアの権威は地の底に堕ち、各国からは領土欲しさに自国の民まで虐殺する国として白い目で見られたり今後もそう言う事をする国なのではないかと疑いの目を向けられ、自国の民達からの信頼も大きく落とした事で、選択を一つでも間違えれば市民達による暴動が起こってもおかしくない薄氷の上で”国”を保っている……―――それが”今のエレボニア帝国”だ。そしてその状況から脱する為には他国のエレボニアに対する信頼を取り戻し、友好な関係を結ぶ事もその一つだと私は思っている。――――勿論友好を結ぶべき他国の中にはクロスベルも含まれるべきだと私は思っているよ。」

「そ、そうなんですか………」

「……先程の知事閣下の意見を聞き、少しだけ安心しましたわ。エレボニア帝国政府にもお兄様のようなお考えを持つ方もいらっしゃっている事に……」

レーグニッツ知事の意見を聞いたユウナとアルフィンはそれぞれ安堵の表情をした。

「……私もイリーナ会長も元理事として旧Ⅶ組の設立に関わった人間でもある。その意味で、このような場を持つことでせめて君達に示したかったのだ。エレボニアとクロスベルが置かれた状況―――将来の可能性と、厳しい現実の双方をね。」

「あ………」

「レーグニッツ閣下………」

「「……………………」」

レーグニッツ知事の話を聞いた生徒達はそれぞれ考え込み

「……そろそろいい時間ね。他のVIP達にも呼ばれているのでしょう?あまり待たせては悪いのではないかしら。」

「……そうですね。レーグニッツ閣下、イリーナ会長。自分達はこれで失礼します。」

イリーナ会長の指摘を聞いたリィンは退室する事を決めた。

「ああ、演習の成功を祈っている。」

「まあ、せいぜい気をつけなさい。―――ああ、それとリィン君。私事にはなるけど、アリサとは”どこまで進んでいる”のかしら?」

レーグニッツ知事と共にリィン達に声をかけたイリーナ会長は興味ありげな表情を浮かべてリィンに問いかけ

「え”。」

「うふふ、それについてはわたくし達も気になっていましたわ♪」

「……そうね。特にアリサさんは私達と違って普段兄様と会えない分、会えた時の兄様に対する愛情表現が凄いものね。」

「ア、アハハ………」

問いかけられたリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、アルフィンはからかいの表情で、エリゼはジト目で、セレーネは苦笑しながらそれぞれリィンに視線を向けた。



「ふふっ、それはもう最後にお会いした1年前よりも、更に仲が深まっていると思いますわ♪」

「……そうですね。実際今日再会した途端わたし達の目の前でリィン教官を抱きしめてディープキスまでするくらいですからね。」

「うん。もしあの場に私達がいなかったら、二人は愛の営みもしていたかも。」

「ちょっ、アル、ゲルド!?」

「この場には知事閣下や殿下達もいるのに、他人の情事を口にするのはさすがにどうかと思うぞ……」

「ふ、ふええええっ!?ア、アリサさんって恋をしたら凄い情熱的な人になるんですね………」

「うふふ、まあアリサお姉さんみたいなタイプは惚れた相手に対して一途な性格になるでしょうから、ひょっとしたらエリゼお姉さん達よりもラブラブかもしれないわね♪」

からかいの表情を浮かべたシャロンの言葉にそれぞれ同意して答えたアルティナとゲルドの言葉を聞いたユウナは顔を赤らめて慌て、クルトは疲れた表情で指摘し、ティータは驚いた後頬を赤らめて興味ありげな表情をし、レンは小悪魔な笑みを浮かべた。

「お互い既に成人してお互いの家も認めた婚約者同士なんだし、結婚よりも先に子供を作っても構わないわよ?私があの娘を産んだ年齢も結構若かったし。」

「うふふ、勿論お二人の子供のお世話はわたくしが責任を持ってする所存ですわ。ですので安心して”ハメ”を外していただいて結構ですわよ♪」

「いや、外しませんから!?」

イリーナ会長に続くように答えたシャロンのからかいも混ぜた提案にユウナ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中リィンは疲れた表情で声を上げて反論した。



その後レーグニッツ知事達の部屋を退出したリィン達はオリヴァルト皇子達が待機している部屋を訊ねた――――




 
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