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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第百十五話

一夏が箒への説教を終え、今度は円香についての話になった。

「で?弾かれたのか?」

「ああ、円香に気を流そうとしたら逆流して弾けたんだ」

「ふむ…」

一夏は円香のエイドスに目を向けた。

そうして、その理由を即座に理解した。

「吸血鬼の魔法耐性か…」

箒が気を流した瞬間と同時に、円香の中の奏の血がもたらす吸血鬼性が僅かに上昇した、とイデアには記されている。

「はぁ……仕方ない…円香の気功指導は俺がやるか…」

一夏は大きくため息を吐き、あまり気が進まない、と言った様子で呟く。

「意外だな」

箒が言ったのは、身長に関してだ。

気功は成長を促進する。

つまり、既に一夏より背の高い円香が更に背が高くなるという事だ。

「円香だけ仲間外れはダメだろう」

「そうか」

「それに…もう身長は気にしない事にした」

「…………頭でも打ったのか一夏」

「いや、単に吸血鬼化したからだ。今の俺の肉体は成長しない。成長できない。
きっと俺は滅ぶその日までこのままだ」

一夏は『死ぬ』という表現をせず、『滅ぶ』という表現を使った。

一夏は、次の転生はあり得ず、次こそ自分というクオリアは消えると、滅ぶと考えていた。

「だから、まぁ、エレンとリムにも俺が教えるさ」

一夏が正座した箒の背後に回り込む。

「えい」

「ぴっ!?」

箒の足をつつき始めた。

「えい。えい」

「あ!やめっ!やめろ一夏ぁ!」

「お仕置き」

「さんざん説教しただろうが!」

「それはそれ。これはこれ」

「鬼畜!」

「褒め言葉だ」

つんつんつんつん…

「ぴぎゃぁぁ!?」











一夏は三人を呼び戻し、ベッドの上に座らせた。

「じゃ、まずは円香からやろうか。服を脱いで後ろを向いてくれくれ」

「ん」

円香が服を脱ぎ、真っ白い肌を顕にした。

一夏がその背中に、心臓の真裏に右手を当てた。

「フォールドリング・オープン」

一夏の指にリングが顕れる。

「一夏、なぜフォールドリングを展開するんだ?」

「このリングほど不思議現象に関係が強いアイテムを俺は他に持たんのでな」

フォールドリングはその名の通り『フォールドクォーツ』を嵌め込んだ指輪で、アームにはサイコEカーボンが使われている。

その『不思議現象』への関係性というか、引き起こしやすさは折り紙付きだ。

一夏が目を瞑り、精神を落ち着かせる。

「ふぅー…」

生体波動の同調。

自分の生体波動を相手と合わせる事で、拒否反応を無くしていく。

失敗すれば自信の生体波動が乱れ、行動不能に陥りかねない行為だが、一夏は難なく同調を進める。

「きた」

波長が重なり、一夏の右手から円香へ向けて力が流れる。

「円香、気を巡らせるからこの感覚をよく覚えておくんだ」

「わかった。おぼえる」

円香の心臓から指先へ向けて、指先から心臓へ向けて、力が流れる。

力が循環する。

動脈と静脈に沿うように、力が行き渡る。

「手、離すぞ」

「うん」

そっと、一夏が円香の背から手を離した。

「そうだ、そのまま力の流れを意識し続けるんだ。その内無意識にでも出来るようになるから」

次に一夏はエレンとリムを呼ぶ。

「首筋さわるぞ」

後ろから二人の首筋に触れる。

ゆっくりと包み込むように気を流す。

「暖かい…です」

「うん…きもちい…」

二人の指の末端まで行き渡った一夏の気が、二人を温かく包み込む。

「うみゅ…」

「ふみぃ…」

やがてアルシャーヴィン姉妹の目がトロン…とし始める。

「まぁ…いいか。二人共、眠いなら寝ていいぞ」

「「みゅぅ…」」

二人からかくん…と力が抜けた。

「箒の時もそうだったが…何故寝るんだろうな」

「お前の腕に抱かれているような安心感を感じるからな」

「そんな物なのか?」

「今度お前にもしてやろう」

一夏の袖を円香が引く。

「ん?」

「ん!」

「ん?」

「ん」

「ん」

一夏がアルシャーヴィン姉妹の首筋から手を離し、円香の首筋に手を当てる。

「まて一夏、円香。何故今ので伝わるんだ」

「「兄妹だから!」」

「そうか」

円香の体が一夏の気に包まれ始める。

「はにゃぁ……おにーちゃんに抱っこされてるみたい…」

「それは良かった。俺じゃお前を包み込むようには抱けんからな」

やがて円香の目蓋も重くなる。

「お休み、円香」

「おやしゅみぃ…」

円香からも力が抜ける。

「箒」

「ああ、わかっている」

一夏と箒は座ったまま眠った三人をベッドに寝かせ、部屋を後にした。

部屋には、気持ち良さそうな寝息だけが微かに響いていた。 
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