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サトシのイッシュ冒険記 ~真実の救世主~

作者:純白の翼
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冒険の夜明け
  EP2 基本と応用は相容れない

その言葉は恐ろしく重く、冷たかった。

「何だと?」

サトシの声のトーンが低くなった。雰囲気が変わったので、シューティーは一瞬怯んだ。だが、それも気のせいだと思って更に口にする。

「田舎の地方のトレーナーでもそれなりのやり手みたいだからね。ツタージャの良い経験値になるからだよ。それに、碌に進化もしてない雑魚電気ネズミなんて一捻りだよ」

「おい!お前いい加減に……」

トウヤはマズいと思い、止めようとした。が、もう遅かった。サトシがシューティーの方を振り向いた。だが、先程までの笑顔に満ち溢れたものでは決して無かった。怒っている。余りの怒り様に、無表情になっていたのだ。

「シューティー。1つ言っておいてやる」

「な、何だい?」

気取った態度を取っているものの、シューティーの足は笑っていた。

「オレの事を田舎者だとか、そんな事では怒んねえよ。だがな……」

『あのバカ。地雷踏みやがったな!』トウヤは内心舌打ちした。

「どんな理由があろうと、オレの仲間やポケモンを侮辱する事だけは絶対に許さねえ!!!」

シューティーに向かって力強く言った。当のシューティーは、本能でタダ者じゃない事を悟ったが、心がそれを認めなかった。

「だったら、バトルで白黒つけるのはどうだい?僕はトウヤと組んで、ピカチュウとフカマルと戦う」

「トウヤの意見は聞かないのか?」

「イヤ。オレは元々、シューティーにバトルを仕掛けるつもりだった。でも予定変更だ。他地方のトレーナーとのバトルなんてそうそうないからな。それで良い」

「……分かった。バトルフィールドに行くか」

少し渋る様な仕草を見せたサトシだが、最終的に承諾した。

*

そして、バトルフィールドに着いた3人。トウヤ・シューティーVSサトシの変則タッグバトルが始まった。

「ピカチュウ、フカマル!キミ達に決めた!」

「いけ!ツタージャ!」

「頼むぜ、ポカブ!!」

3人はポケモンを繰り出す。審判は、研究所の職員が担当する事に。

「ポカブ。火の粉だ!」

「フカマル。竜の波導で向かえ撃て!」

イッシュに来るまでの間に修行をしたフカマルは、竜の波導を完成させていた。火の粉を瞬殺し、ポカブに迫りくる。

「マジか!ポカブ、ニトロチャージで回避!何としても、直撃だけは避けてくれ!」

技の効果を利用し、回避する様に指示を出すトウヤ。ポカブはそれに答えた。直撃こそ免れたが、余波でダメージを受けてしまう。

「クソ!何やってるんだお前は!これだから基本のなってない奴は嫌いなんだよ!ツタージャ、ピカチュウに蔓の鞭!」

「甘いぜ!ピカチュウ、蔓の鞭を伝って電光石火で接近しろ!」

目にも止まらぬスピードでツタージャに急接近するピカチュウ。

「どこから来るんだ!」

「そのままアイアンテール!」

ツタージャの死角から技を叩き込むピカチュウ。

「修行の成果を見せてやれ!目覚めるパワー!」

ピカチュウは冷気の様なエネルギーを放つ。直撃したツタージャは今にも倒れそうだった。

「チッ!グラスミキサー!」

ツタージャは体勢を立て直して、グラスミキサーを放つ。ピカチュウは囚われた。

「所詮田舎者はこの程度か。やはり弱いな。口ほどにもない」

「まだだ!ピカチュウ、聞こえるか!?」

「ピカピー!!」声は届いているようだ。

「グラスミキサーの中で10万ボルトだ!」

電撃が発生した。

「何をやる気か分からないけど、後はそこのフカマルだけだ!田舎者の雑魚は、成長しても、雑魚のままなんだよ!」

「電気を足場にして、電光石火で登るんだ!!」

これは流石にサトシ以外のものはポカンとした。だが、それはすぐさま実行された。グラスミキサーの最上部から、ピカチュウが飛び出して来たのだ。

「何!?こんなの、基本じゃない!」

叫び、取り乱すシューティー。

「回転しながらアイアンテール!」

「チュー、ピッカァ!」

「ポカブ、ニトロチャージでピカチュウを牽制だ」

「そうはさせるか!フカマル!」

ポカブのいた所の下から、フカマルが攻撃して来た。穴を掘るが決まったのである。

「クソ!フカマルがいないと思ったら……そう言う事か!地面に紛れ込んで……隙を見ていたのかよ」

「正解だぜ!フカマル、最大パワーで流星群だ!」

ドラゴンタイプ最強技を放つフカマル。流星を空に上げ、ある程度の高さにまで来たら分裂して2匹に襲い掛かる。

「ドラゴン最強技!?基本、もう常識じゃない!!!ツタージャ、立て!立つんだ!」

だが、グロッキー寸前のツタージャは立つので精一杯だった。

「ニトロチャージで逃げろ!逃げても無理なら、流星を駆け上れ!」

一方のトウヤは取り乱しているシューティーを尻目に、ポカブに指示を出した。結果、碌に指示の無かったツタージャは、流星群の直撃を受ける事となった。

しかしポカブは、時に逃げ、時に流星を駆け上るという形で攻撃をやり過ごした。

流星群の攻撃により、ツタージャは戦闘不能となった。

「ああ!ツタージャ!」

ツタージャの戦闘不能に、そしてまさかの自分が最初の脱落者になった事に対して、動揺を隠せないシューティーであった。

「今だピカチュウ!ボルテッカー!」

流星群をやり過ごして安堵していたポカブの背後を取ったピカチュウ。

【無駄ァ!】最初の一撃を叩き込むピカチュウ。

【早過ぎる!】ポカブが呟いた。

【無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!】

【無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!】

【無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!】

【無駄ァ!!!!!】

まるで時を止めたかのような超スピードで、ボルテッカーのラッシュを叩き込んだ。しかも、全て急所に当たった。結果、ポカブは目を回して倒れた。

「あれが……ピカチュウの本来の力……なのか?並の最終形態ポケモンを瞬殺出来るじゃねえの?」

敗れて悔しいというよりも、ピカチュウの本気の一端を見せつけられて唖然としたトウヤだった。

よって、このバトルの勝者はサトシとなった。

「やったぜ!ピカチュウ、フカマル!」

サトシが2匹に駆け寄り、抱き合った。

「アハハ。完敗だよ。してやられた。でも、すっきりした」

トウヤはポカブの元に駆け寄った。

「お疲れ様、ポカブ。ゴメンな。勝たせてやれなくて」

ポカブの方も、申し訳なさそうにしていた。

「次は勝とうぜ。沢山経験を積もう!」

新たな決意を胸に、トウヤペアは前向きに捉えて行った。

「くっ、くそ!」

シューティーは壁を殴りつけた。殴った方の右腕は、僅かながらに血が滲んでいた。

「僕はこんな負けは認めないぞ!こんな基本のなってないバトルなんて、絶対に認めない!良いか!この田舎者の穢れた血め!次はこうはいかない!もっと強くなって!!お前を完封なまでに叩き潰してやる!絶対にお前を跪かせてやるからな!覚えてろ!!」

三下の小悪党の様な捨て台詞を吐いて、逃げる様に去って行った。

「何だよあの態度!それに穢れた血って!」

「本当にゴメン、サトシ。ああいう奴でさ、オレもハーフだからあいつに差別的な言葉を投げかけられるんだ。まあ、それ以外の人が良い人ばかりだから大して気にしてないんだけど」

「なあ。トウヤ。さっきの言葉ってさ、どういう意味なんだ?酷い言葉だってのはオレでも分かるんだけど」

「あいつが思い付く限りの最悪な言葉さ。他地方の人間に対する呼び方の、最低の汚らわしい言葉なんだ」

「そうか。でも、今はポケモンの回復の方が先だ。行こうぜ!」

「ああ!」

そう言って2人は、アララギ研究所に戻って行った。先程のバトルを、ミジュマルは見ていた。

【オレは……】何かしらの決意を固めた表情をしていた。

*

そしてもう1人、フクロウの様なポケモンを連れた赤い服の青年もバトルを見ていた。

「こりゃ、面白いものを見れた。イッシュのトレーナーのレベルはクソ以下だと思っていたが、帽子を被っていた2人は見所がある。特にあのピカチュウとフカマルのトレーナー。あいつ、カントーかシンオウの人間だよな?顔立ちからして」

青年は何かを考える可ような仕草を取った後、顔を上げた。

「行こうぜ、ジュナイパー。イッシュの宝を手に入れる為によ」

青年は相棒にそう呼び掛ける。ジュナイパーと呼ばれたポケモンは頷いた。そして、1人と1体はカノコタウンを後にした。
 
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