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人徳?いいえモフ徳です。

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一匹め

 
前書き
オリジナルじゃおらぁー。 

 
「えー。天草四郎というのは江戸時代初期のキリシタンでー。
島原の乱のー。最高指導者でしてー」

土曜補習、しかも歴史の授業。

ただただひたすら眠い。

だが、今は補習六コマ目。

しかももう少しで終わる…

きーんこーんかーんこーん…

うっし!

「おや…時間ですか。ふむ…今日はここまで」

学級委員長が号令をかけ、補習が終わる。

「おーい不知火。カラオケ行こうぜー」

友人の長門に声をかけられた。

「悪いな長門。今日は水泳のレッスンがあるんだ」

子供の時から続けてもう十年になる。

「あー…土曜日か…」

「おう…」

くぁ…とあくびが出てしまう。

「なんだ眠いのか?」

「うん…最近夜に眠れないんだ…
今朝だって4時まで起きてたし…」

本当に何故だろうか。

近頃夜は眠くないし昼は眠いし…

「4時ぃ!?」

「叫ぶな頭にひびく…」

「おまえな…そんなだから高校生にもなって身長が130しかないんだぞ」

「余計なお世話だ」

まったく人が気にしている事を…

「眠れなくなったのはつい最近だよ」

「どれくらいだ?」

どれくらい…?

あぁ、そう言えば、あのあまり眠れなくなった夜は月が綺麗だった…

「今日が満月だから…つい一月前からだ」

「ふーん…病院行った方がいいんじゃないか?」

「考えとく…」

長門は他の奴を誘ってカラオケに行った。

俺も学校を出て近くの市営プールへ向かう。

エントランスの受付のおばさんに会員カードを渡す。

カウンターに背が届かない…

「おばさん、カード」

「あら不知火ちゃん。ちっちゃくて気付かなかったわぁ…」

にゃろう…

「あらあらごめんなさいね」

更衣室に向かって、水着を引っ張り出す。

ロッカーに鞄を突っ込み、水着を着ていると、後から入ってきたおじさんに声をかけられた。

「うん?坊や、お父さんはどうしたんだい?」

「これから水泳のレッスンです」

「おぉ!偉いねぇ」

うぜぇ…

ロッカーの鍵を閉め、プールサイドに出る。

「コーチ。きたよ」

プールサイドで監視員をしていたコーチに声をかける。

「不知火か。アップしといてくれ」

そういってレッスンメニューを渡された。

「ん。わかった」

準備体操をして、プールに入る。

温水プールなので寒くはない。

「んん…? 体が重い…?」

なんとなくだけど、何時もより体が動かしにくかった。

寝不足のせいだ…。

だるいけど、がんばるか…












寝不足のせいか何時も以上にきつかったレッスンを終え、帰路につく。

「あ"あ"あ"…つかれた…」

やっぱりちゃんと寝ないとな…

でも何故か最近夜になるとテンション上がるんだよな…

そのせいで眠れないし…

くそっ…睡眠薬でも処方してもらおうかな…

ふと上を見ると、未だ低いながらも月が昇っていた。

満月だ。

「綺麗な満月だなぁ」

ふと呟いたこと。

「ええ、そうね。堕ちた聖人の末裔さん」

「!?」

後ろから声が聞こえ、振り返った。

「今晩は。天草不知火くん」

女だった。

黒いスーツに身をつつみ、その手には長い棒を持っている。

「うーん。『天草』に『不知火』かぁ。
出来すぎな名前だねぇ」

おっとりとした声。

「その身長から考えて先祖返りかな?
はー。吸血なしでもここまで大きくなるんだねー…」

女は左手に持った棒に右手を添えた。

「だ、誰だよあんた?」

「んー?私?」

刹那。女が右手を振り抜いた。

月明かりに照らされて、何かが煌めいたような気がした。

「私は陰陽師さ。君に恨みはないけど、仕事なんだ。
ごめんね吸血鬼君」

急に体から力が抜けた。

熱い。

体がとてつもなく熱い。

「流石は不知火検校の末裔。聖剣でも滅っせないとは」

熱い…でも、寒い…

「かわいそうに、下手に力があるから苦しむんだね」

心臓が…寒い…冷たい…

「一思いに殺ってあげよう」

足音が、聞こえる。

見上げる満月をバックに、さっきの女が俺を覗き込んでいた。

その手に握られていたのは、刀だった。

「君の来世が人外じゃないことを願っているよ」

女が、その刀を、振り下ろした。
 
 

 
後書き
前にビショップ(ハーメルンで活動中のリアルでの友人)に頼まれてファンタジー用に作った設定の使い回しです。 
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