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仮面ライダーLARGE

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第四話「迷い」

 
前書き
前編後編に別れます。 

 
熊牙神社にて

 「……」
 あれ以来、雷馬君はずっとあの調子です。何があったかは薄々気づいていました。でも、仕方がなかったと言っても、やっぱり彼の心は救われません。
 私にはどうしていいのかわからない。いくら傷ついた体を回復してあげても、心の傷までは治すこともできませんし……
 そう思い、朱鳥は境内を掃き清めつつ本殿の縁側を懸命に拭き掃除している雷馬を見た。奉仕に集中しているのではなくて何かを忘れるために気を紛らわすためにしているように思えた。
 「桑凪さん。掃除終わったよ?」
 青い袴を穿いた神職の装束すがたで、雷馬が歩み寄ってきた。
 「あ、お疲れです。じゃあ……次は」
 と、朱鳥は次にやってもらう作業を指示するが。
 「あの、桑凪さん?」
 「え、なに?」
 「……よかったの? この装束俺が着ちゃって」
 「ああ、気にしないでください。お父さんの装束が一番大きいサイズですし」
 「そ、そうかい?」
 では、きっと彼女の父親は俺と同じ体系だったのかな? それで、親近感を感じてしまったとか? いやいや、ないない……
 そうやって、しばらく俺はご奉仕に励んで汗を流した。しかし、結構神職の仕事も体力を使う仕事だ……
 「ああ……結構キツイなこれ?」
 「その作業が終わったら一旦休憩しましょう? 私も疲れちゃいましたし」
 「うん、ごめん……へっぴり腰で」
 図体ばかりデカいのに、こんなところでへこたれちゃカッコ悪い。いつもなら、こんぐらいの力仕事は出来たっていうのに、やっぱりあの時の事を引きずっているせいだ……
 「……」
 そう思うと、俺は自然と動かす手が止まってしまい、俯き続けてしまう。
 「九豪君……」
 そんな、後姿を朱鳥は見ていた。自分にできることがあれば力になりたいが、それでもどうすればいいのやら……
 その後、しばしの休憩ということで社務所の縁側で互いに腰を下ろしてお茶を飲んでいた。
 「う~ん! このどら焼き美味しいですよ? 九豪君!!」
 「……」
 頬張りながらほっぺをリンゴ色にして美味さと噛み締めている朱鳥であるも、その隣に座る雷馬は、ずっとどら焼きをもっとまま黙っていた。
 「九豪君、どうしたんですか? 食欲、ないの?」
 「いや……うん、大丈夫だよ」
 「……」朱鳥
 「……」雷馬
 気まずい沈黙が続いた。互いにどんな話題を口にすればいいのやら悩んでいる。朱鳥にしても、取り返しのつかないことをしたと気に病む雷馬にどう言葉をかければいいのか……
 しかし、先に口を開けたのは雷馬の方だった。
 「……桑凪さん?」
 「……?」
 「少し、いいかな? こういうお茶の席でとても悪いけど……」 
 「……どうしたの?」
 深刻に、雷馬は重そうに口を開けて言う。
 「俺、やっぱり警察に……」
 「それはダメッ!」
 「!?」
 驚いた雷馬は、咄嗟に朱鳥の方へ振り向いた。彼女は必死な目で怒っている。
 「九豪君は何も悪くありません! 悪いのは、関係のない人たちを大勢巻き込んで殺したISの方です!!」
 「……」
 「私……見たんです。今ても、思い出すたびに心が折れそうになるの……あの時、さっきまで元気に走り回っていた小さな子供が、形もわからない状態になっていて。唯一わかったのは、着ていた服の一部ぐらい……その隣にお母さんだと思う何かと、その周りにも大勢の死体が……」
 「ごめん、嫌な事を思い出せちゃって……」
 「九豪君は悪くありません。そもそも正当防衛じゃないですか? それに街の人たちを大勢殺した、あのISをやっつけたんですよ?」
 「うん……」
 しかし、雷馬はまだ戸惑っていた。
 「だって、九豪君は……!」
 「もう……やめようよ? その話は。大丈夫、だいぶ立ち直れたからさ? 心配させてごめんな?」
 そう言って、俺は朱鳥の頭をなでた。
 「はぅ……九豪君」
 「よし! 休憩したところだし、俺先に行ってるよ?」
 「……」
 そう、表向きは明るく接していても後姿は悩みを抱えた寂し気な背中をしていた。
 「九豪君……」
 朱鳥は、一人になったところで明日のスケジュールを確認した。といっても、神社に居るのは主に自分だけだったから今日と同じ段取りだ。
 もっとも、神主である父が不在なわけだし、それ以降はあまり仕事がないのだ。しかし、不思議なことに父を名乗る人によって毎月お金が振り込まれているのだ。行方を絶ってもなお、父は生きているんだと信じている。
 さて、スケジュールは特に問題はない。強化人間という理由で高校にも行けなくなってしまったことだし……それなら、平日やら休みとかの区別はもう関係ない。
 「……よし!」
 ――どうにかして、九豪君に元気になってもらわないと!
 その晩、朱鳥は部屋でコツコツとノートに明日だけのスケジュールを描いていた。
 「えっとぉ……こうしてっと♪」
 あしたは九豪君を誘って、あの「町」へ行ってみよう。

 翌日、俺は早朝に熊牙神社へ出勤する。ここから神社までは徒歩で行けるが、意外と学校より距離があるのだ。
 朱鳥との同居の件だが、今住んでるマンションの契約時でいろいろと時間がかかるから今しばらくはマンション生活だ。
 それと、不思議なことに退去時に支払う金を両親が送ってきたのだ。もしかして、父さんと母さんは俺が強化人間であることを知っているのか?
 そのことを確認したいのに、二人とは未だに行方が分からないし連絡もできない。話せる時と言ったら、あっちからの一方的な連絡ぐらいだ。
 「ちょっと、遅れちゃったかな……?」
 と、俺は辺りを見渡して境内で掃き掃除ている朱鳥を探した。しかし、彼女の姿は境内にはいなかった。
 「あれ? じゃあ、神前でお供え物とか?」
 なら、急いで装束を着ないと……!
 「あ! 九豪君?」
 と、なにやら私服姿で自宅の玄関から手を振っている朱鳥を見つけた。
 「く、桑凪さん? どうしたんだ、その格好……?」
 「連絡しないでごめんね? 今日は御奉仕をお休みにしたの」
 「え、今日の御奉仕はいいの?」
 「今日ぐらいは大丈夫だよ? お昼少しすぎまで出かけるところがあるから。買い出しもかねてね?」
 「ああ、そうか……まぁ買い出しならね?」
 なんか、違うような気がするが……とにかく、俺は買い出しを手伝えばいいのだろうか? にしては、今日の朱鳥は結構オメカシしてんな? オシャレなヒラヒラの私服とか着てるし……私服はいつもこういうのを着てるのか?
 「今日は、(よもぎ)町へ行きますよ?」 
 「蓬町?」
 聞き覚えのない町の名前だ。そんな町あっただろうか?
 「女尊男卑に支配されていない唯一の平等な町なんです。でも、そのせいで市役所から除外されているんです」
 「酷いな? 幾らなんでもそんなことしなくたって……」
 しかし、このご時世で男女平等を訴えることは反社会主義を掲げるのと同じように思われてしまう。
 なるほど、どおりで地図を見てもその町名が見当たらないわけだ。では、その町へ行けるのはその町を知っている世代だけというわけか?
 「じゃあ、行ってみるか?」
 「うん! おいしい物とかい~っぱいあるよぉ?」
 「そいつは楽しみだ!」
 「えっと……ここから、3キロぐらい遠いんですけど、大丈夫ですか?」
 と、申し訳なさそうに朱鳥が訪ねた。歩くぐらいなら苦でもないが、女の子には疲れそうだな?
 「あの町へ行くには徒歩しか方法がなくって……」
 「じゃあ……バイクでいく?」
 「え、バイク?」
 
 俺の愛車、ヤマハのYZF-R25のファクトリーカラー。俺の体とは違和感のあるレーサータイプだが、それでも仮面ライダーが乗るバイクみたいでカッコいいという理由から今でも愛着のある車種として長く乗っている。
 そして、そんな公道でR25を走らせている俺の後ろには朱鳥がいた。朱鳥は、俺の背中にくっついて風を感じている。ちょうど、捨てようと思っていた古いヘルメットが残っていたので良かった。ヘルメットは大きくて朱鳥にはブカブカだったが、それでも彼女は楽しんでいた。
 朱鳥が俺の背中にしがみついているから、あの爆乳が背中に押し付けられて……
 いかん! いかん! 運転に集中せねば!!
 「気持ちぃ! オートバイって、気持ちいですねぇ~!!」
 それでも、朱鳥はとてもご機嫌だった。最初は少し怖そうにおもっていたが、それでも好奇心から乗ってからは結構楽しんでいるようだった。
 俺は、朱鳥が後ろで支持する通りにバイクを走らせていくと、徐々に下町っぽい道へとたどり着いた。
 蓬町。そこは、とある横町であった。鄙びた商店街がシンボルのようで、女尊男卑が到来する前まではとても活気あり、栄えていた町であるとか。また、ところどころ古風な町並みゆえにかつての古き良き時代の象徴ともいべきスタイルでもあった。
 「ここが、その蓬町?」
 しかし、その町の町長や団体が今もなお男女平等を掲げ続けていることに対して都知事はこの町だけ電気や水道を断ち切ってしまったのだ。なんとも非常な行為であろうか。しかし、この町で暮らしている発明家とその助手らによって発明されたエネルギー供給装置によって、町の人たちは難なく不便な暮らしだけは免れているとのこと。
 ……以上が、朱鳥が説明してくれたこの町の経緯だ。
 「結構、良い町だね?」
 雰囲気からして、良い人たちがいっぱい住んでいそうな町に見えた。
 「みんないい人ばかりですよ? 私も小さいころ、この町のおじさんやおばさんたちに可愛がってもらいましたから」
 「桑凪さんは、いつも来ているの?」
 「ええ、買い出しとしても来ますし、ボランティアでも来たりします」
 「ボランティア?」
 「はい、小さい子たちの子守や、一緒に遊んだりとか……あと、お年寄りの方とかの介護とかしたりします」
 「そうなんだ……」
 朱鳥にとって、この町は思い出の場所でもあるのか。
 「あー! 朱鳥お姉ちゃんだ~!!」
 商店街へ足を踏み入れて早々に、子供たちが朱鳥の元へ駆け寄ってきた。
 「お姉ちゃん遊ぼう!?」
 「あれ? あっちの太ったお兄ちゃんは誰?」
 「本当だ! でぶっちょ~!!」
 子供の一人が心から思う事を一直線に俺へ投げつけた。
 「太った……でぶっちょ……」
 ま、否定はしない。しかし少しショック……
 「こ~ら? 失礼だよ? こちらの大きなお兄ちゃんはお姉ちゃんの友達なんだからね?」
 と、朱鳥。大きいとまでなら許せるけど……うん。
 「そーなんだ……」
 すると、子供たちは俺の元へ駆け寄ってきた。そして、一斉にこう言いだす。
 「お兄ちゃん! 怪獣ごっこ!!」
 「ちがうよ! 戦隊ごっこ!!」
 「プロレスだっー!!」
 「おままごと~!!」
 「……」

 そうか、大きいお兄ちゃんキャラが増えれば、そりゃあそういう子供の遊びに勧誘されるわな?
 ――ま、ここは一つ……
 「この指とーまれー……」
 棒読みで、俺は適当に人差し指を伸ばすと……
 子どもは一斉に俺の腹回りへ飛びついてきた。 男の子以外にも女の子も負けじと俺にしがみつく。こうなったら、ライダーごっこも何もないな……
 「お兄ちゃん! 僕ライダーね?」
 「じゃあ俺怪獣!」
 「ちがう~! お兄ちゃんはカナとおままごとするの~!!」
 「こ、効果覿面過ぎて逆に恐ろしいな……」
 「そうだ! 今日はこのお兄ちゃんも一緒に遊ぶよ。いいかな?」
 と、朱鳥はひらめいたがごとく、子供たちに提案した。これまた案の定、俺は子供たちと一緒に遊ぶ……遊ばれることになった。
 「いっ……ててて! 本当に小さい子たちってのは容赦ねぇな~……」
 遊び終わったあと、俺は一息いれるために近くのベンチに座った。商店街の屋根に空いた穴から除く空を見上げたあと、ふと呟いた。
 「平和だな……」
 暮らしは決して楽そうではないと思うけど、こうして目の前を住人達が行きかう光景を見れば、何とも平凡でありふれた街並みともいえた。
 「ふぅ~……おつかれさま九豪君」
 と、一息つく最中に朱鳥が隣に腰を下ろした。
 「静かでいい場所だな?」
 「ええ、今のところ政府からの弾圧や生活面での制限等はかけられていないそうですから」
 「日本ぐらいかな? こんな町があるのは……」
 海外では、女尊男卑の風習が殆ど根付いているために男女平等を主体とした集落はもうここを除いては残されていないのかもしれない。
 前にも言ったが、女尊男卑とISによってこの世界が成り立っていても過言ではないために、今時男女平等ならぬ男女同権を訴えれば「反社会」主義者と思われるだろう。
 「り……陸!?」
 見知らぬ中年の男からそう声をかけられた。業務用のエプロンに帽子をかぶった商店の人だった。エプロンに魚と書いてあったから魚屋さんだろう。
 「え?」
 しかし、魚屋の男は目の前の大柄な若者を見て人違いだということに気づいた。
 「あぁ……すまねぇ、人違いだった」
 「……」
 「いやはや、ついてっきりと知人と見間違えてね?」
 「はぁ……」
 「あ! 魚路さん?」
 隣に座っている朱鳥は、そう男の名を言った。知り合いだろうか?
 「おお! やっぱり、朱鳥ちゃんかい? 先週はウチのガキが世話になったね?」
 「いえいえ? また、いつでも遊びにいらっしゃいとお伝えください」
 「いやいや、面目ねぇな? こっちは忙しくて坊主たちの相手をしてやれる暇がなくってなぁ?」
 と、頭を掻きながら面目ないと苦笑いする魚路という魚屋は、次に俺の方へ目を向けた。
 「……ところで、そっちの兄ちゃんは誰だい?」
 「クラスメイトの九豪君です!」
 「ほぉ~? こいつは朱鳥ちゃんも隅におけねぇな~?」
 「そ、そうじゃないですよ~!? え、えっと……」
 しかし、朱鳥は赤くなってそっぽを向いてしまった。
 「しっかし……本当に陸とそっくりだな? 俺ぁ、てっきりアイツが帰ってきたかと……」
 「……」
 朱鳥は、少し俯てしまった。
 「い、いやぁ! すまねぇ!! つい……あの野郎が返ってきたかと思ってな?」
 「大丈夫です。気にしてませんから」
 「にしても……本当に、陸にそっくりだぜ?」
 と、魚路さんは顎に手を添えてジロリと俺を宥めた。
 「その……陸っていう人は?」
 「ああ、朱鳥ちゃんの父ちゃんよ? 俺とは小学生のころからの付き合いでな。熊みたいにでっけぇ奴だった……しかし、あいつも朱鳥ちゃん残して行方不明になっちまってな?」
 「ああ……」
 ――確か、朱鳥の親父さんは行方不明だったな?
 そうか、やっぱり俺と朱鳥の親父さんは結構似てるのか……
 「しっかし……兄ちゃんよ、あんた見慣れねぇ顔だな。どっから来たい?」
 「池袋からです」
 「ほう? それにしても、今時兄ちゃんぐらいの若い男もんが来るのは久しぶりやね?  若いもんでも朱鳥ちゃんぐらいだからな~?」
 「そんなに……珍しいんですか?」
 「おうよ! 兄ちゃんぐらいの若いモンが少しでも居れば……ここも活気づくんだがな?」
 すると、魚路さんは「さぁて! 仕事仕事~!」と、背伸びをして行ってしまった。
 その後、俺と朱鳥は商店街の店らを転々と回って食べ歩きを始めた。この商店街のコロッケやたこ焼きは結構美味い。
 商店街の人たちも人柄やよさそうだし、嫌な気持ちにはならない。こんないいところを、どうして市は除外という酷なことをするとは……
 それから、食べ歩きを終えた後は横町のいたるところを回って、さらに食べ歩き。俺的には案外楽しかった。
 しかし……それが終わったもつかの間、子供たちが「遊ぼうー!」を連呼して再び襲い掛かってきた!
 再びライダーごっこで、女の子を人質に取った怪人役をやらされて、ショタの容赦ないライダーキックを食らいまくった……
 「うぅ~……やっと解放された」
 またベンチに座って、俺はため息をついた。しかし、こんなに忙しいと思ったのは久しぶりで、逆に面白かった。
 「蓬町は如何でしたか?」
 と、隣に座る朱鳥が訊ねた。見る限り、不安そうだが……
 「いい町じゃないか? みんな良い人みたいだし……」
 「小さいころ、お父さんと一緒によく遊びに来た所なんですよ?」
 「そうなんだ……」
 「いつ来ても変わってないから大好きなんです。お父さんと一緒に来た思い出の町ですから……よく、肩車してもらいながら商店街を見て回ったなぁ……」
 「……」
 朱鳥にとって、この場所は父親と一緒に過ごした掛け替えのない大切な場所だったのか。そんな場所へ俺を連れ出したのは何故だ?
 「でも……どうして、俺をこの場所へ誘ったんだ?」
 「……」
 しかし、朱鳥は黙って頭上を空を見た。それまでに間が続いたが時期に口を開いてこう答える。 
 「……元気になってもらいたかった。じゃ、理由になりませんか?」
 「……?」
 「この前、九豪君が戦ったあの現場は蓬町のすぐ近くにあった場所なんです」
 「ッ……!」
 そういえば、行く途中に倒壊したあの事件現場へ通じる曲がり角が見えた。それ以外にも幾つか見慣れた路地も所かしこに……
 「あのまま、ISを倒さなかったら被害がここまで及んでいたのかもしれません。いえ、確実になっていました。今日、町内の人たちに聞いてみたら後少しで自分たちも危なかったって……もしかしたら、今日であった子供たちやお魚屋さんの魚路さんも傷ついていたかもしれないんです」
 「……」
 「あのISが何者で、何の目的で私たちを襲ったのかはわかりません。けど、あのISを倒したことで、これ以上犠牲を出ることもなくこの蓬町を救ったんですよ? 九豪君は人を殺したのではなく、多くの人たちを守ったんです」
 「桑凪さん……」
 「それに……」
 すると、朱鳥はその細くて柔らかい真っ白な手を俺のゴツイ手の甲へと優しく添えた。
 「それでも、罪を感じるのであれば同じ強化人間になった者同士、私も一緒にその重みを背負いますから……」
 そして、甲に添えたその手はギュッと優しくも強く握りしめた。
 「ありがとう……なんか、ごめん」
 照れ臭そうに俺は苦笑いした。俺よりもつらい思いをしている女の子に慰められ、元気づけられるなんて本当にカッコ悪いな。なら、早いとこ立ち直らないと。
 俺は、あのインターポールの滝っていう人がっていたことを思い出した。これまで仮面ライダーになった強化人間達も、こうして取り返しのつかない引き金を引いてしまうも、それでもその罪を乗り越えて立ち上がり、正義のために悪と立ち向かったんだろう。
 「朱鳥お姉ちゃん!」
 そのとき、急に俺たちの間に一人のショタが割って入ってきた。なんだか、ぽっちゃりとした太ったちびっ子である。
 「あら、壮太君?」
 「知り合いか?」
 と、俺は当たり前だと思うが、一様問う。
 「親戚の子です」
 「そうなんだ……お父さん側の?」
 「はい、叔父の子です」
 「今日お姉ちゃんがそっちのお兄ちゃんと一緒にバイク乗ってきたからちょっとビックリした」
 「こちらは、私のお友達の九豪お兄さんだよ?」
 「やぁ、こんにちは?」
 俺は一応愛想よく微笑んだ。そうしたら、その壮太という子は俺の元へ元気に駆け寄ってきた。
 「ねぇ! お兄ちゃんさ、バイクに乗ってるよね? 仮面ライダーが乗っているのみたいにカッコいいバイクに乗ってたよね!?」
 「え? まぁ……市販向けだけど」
 「お兄ちゃんのバイク見てもいい?」
 なにやら、結構懐いてくるようだ……まぁ、別に見せるぐらいならいいだろう。
 「ああ、いいよ? ついておいで」
 と、俺と朱鳥は壮太を連れて商店街の入り口の脇に留めてあるR25の元へ戻った。
 「うわぁ~! かっこいい!!」
 興味深そうに、バイクを宥めている壮太を見ている。バイクが好きなんだろうか?
 「バイク、好きなの?」
 「だってカッコいいじゃん! バイクって、ヒーローの乗り物でしょ?」
 「まぁ……仮面ライダーとかはね?」
 「いいなぁ……僕も、大きくなったらお兄ちゃんみたいにカッコいいバイクにのりたいな……」
 「乗れるさ? 俺みたいなデブも乗ってるんだし」
 「お兄ちゃんはカッコいいからいいんだよ。僕なんて、学校じゃいつもデブ、デブッていっつもさ……」
 「ああ……兄ちゃんも、昔はそうだったよ?」
 なんだか、まるで昔の俺みたいに感じた。俺も小学生時代は虐められっ子で、よくデブって連呼されながら腐ったモヤシ共にさんざん言われ続けたな?
 「気にすんなよ? 俺たちがデブなら、連中は『腐ったモヤシ』さ。ヒョロヒョロした戦闘員みたいな奴だっつーの」
 「あはは! 面白いね? ショッカーの戦闘員みたい」
 なんやかんやで話が弾んでいる。
 「そうだ! 九豪君? 壮太君がオートバイ大好きなんだし、後ろに乗せて少し走ってくればどうかな?」
 と、朱鳥が提案した。
 「え、いいの!? お兄ちゃん」
 「ああ、まぁいいよ? 後ろに乗りなよ」
 朱鳥が被っていたヘルメットを壮太にかぶせた。ブカブカだが別に大丈夫だろう。
 「しっかりつかまってろよ?」
 ぽっちゃりショタを後ろに乗せて、俺はバイクを走らせてこのあたりをグルッと数週してみた。壮太としては大満足である。
 商店街へ戻ってきた後も興奮がおさまらなかったようだ。
 「すっごーい! お兄ちゃん、スゲェカッコよかったよ!?」
 「そんな……普通だよ?」
 ついつい照れ臭くなってしまう。
 「また、バイクに乗せてね!」
 「ああ……またな?」
 そのまま転ばないよう見守りながら、走って家に帰る壮太をの後姿を見た。
 「気に入られてしまいましたね? 九豪君」
 「そうなの?」
 「壮太君って、普段は大人しい子なんですけど……あんなにハシャいだ姿を見たのは初めてです」
 「へぇ……」
 「さぁって! それじゃあ行きますよ!?」
 朱鳥は目を輝かせてスケジュールを描いた紙を取りだした。
 「行くって……?」
 「このあと、商店街の名物をいっぱい食べまわるんですから♪ 今日は思う存分蓬町のグルメを満喫しましょうぅ~!!」
 ――ああ、そういうことね? 
 反面、彼女も楽しみたいんだ。それなら、お付き合いしよう。
 「よし! いっとくけど、俺は胃袋じゃ負けないよ?」
 「言いましたね? 私も負けませんから♪」
 再び蓬町商店街のグルメツアーへ出発……と、そのときだった。
 「た、大変だぁー!!」
 商店街の人が血相を書いて走っている。何かあったのだろうか? いや、何かあったに違いない!
 「なんだ……!?」
 何の騒ぎかと、俺と朱鳥は急いで騒ぎの方向へと向かって走った。
 そこには、大勢の人の塊が集まっており、その向こうからは焦げ臭さと共に燃え盛る建物が映ったのである。 
 「ありゃあ……この前亡くなった爺さんの空き家か?」
 「早く! 水をかけるぞ!?」
 早く水をかけなければ隣の家々に火が燃え移ってしまう。
 「みんな! うちの坊主を見なかったか!?」
 そのとき、住人の塊の元へ一人の男が駆けつけてきた。魚路さんであった。
 「ウチの坊主達が外へ出たっきり姿が見えねぇんだ!」
 「ま、まさか……!?」
 それを聞いた住人は、恐る恐る燃え盛る家を見上げた。そういえば、先ほどこのあたりで子供が二人ほど遊んでいたような……
 「そ、そういや……あの家にさっきアンタの坊主らが……」
 すると、魚路さんは息子らを助けようと燃えあがる家の中へ入ろうとするが、それを周囲の人たちに止められる。
 「はなせ! 息子たちが……」
 「ッ!!」
 それを偶然にも聞きつけた俺は、このままジッとしていることが出来なかった。そのまま突っ走り、燃え盛る家へと突っ込んでいく。
 「く、九豪君!?」
 朱鳥の呼び止めも聞かず、そのまま俺は炎の中へ飛び込んだ。
 「くそっ! コイツは早くしねぇと……」
 四方八方にも火が燃えだし、火柱が次第に大きくなっていく。
 「何か、ないか……!?」
 すると、偶然にも燃え移っていないカーテンが一枚残っており、それを窓枠から引きちぎると、強化人間の怪力を出し、カーテンで火に向かって激しく叩き仰いだ。
 さすがは強化人間の力であり、叩き仰いだ所の火は次々に消し飛ばされていく。行く手をふさぐ邪魔な火を消し飛ばしながら、奥の居間へと向かって進んでいった。
 「誰かいないか!? 出てきてくれ!?」
 その時、今の卓袱台の下から二人ほどの小さな人影が見えた。二人の男の子であった。二人は同時に必死で「たすけてー!」と、こちらに向かって叫び続けていた。
 「待ってろ!?」
 カーテンで周囲の火を消し飛ばしながら、急いで卓袱台の元へ駆け寄ると、男の子二人を両腕に抱きかかえようとすると、次第に真っ黒な煙がこちらへ近づいてくる。
 火事で火よりも恐ろしいのが毒素がたっぷりと含まれたこの黒煙の群れである。この黒煙の中を突き進むとしたら、俺は大丈夫にせよこの子たちは……
 カーテンの一部を引きちぎって、ハンカチ代わりに鼻と口をふさぐよう与えても、こんな薄い布では……
 「こうなったら……!」
 俺は、両手にカーテンを握りしめて、思いっきり周囲の煙にむけて振り仰いだ。本気の力で煙で仰ぐと、黒煙は消滅していき、その奥で燃え続けている火も消し飛ばされ、それを周囲へ仰ぎまわしていく。
 それを繰り返していくうちに、火事は徐々に消化されていった。
 焼き焦げた家から二人の子供を抱えて俺が出てくるのを見て、周囲が騒然とした。
 「子供は、無事ですよ?」
 と、俺は震えながら駆け寄ってくる魚路さんへ子供を渡した。子供らはこの通り元気だった。
 「あ、ありがとう! 本当に……!!」
 何度も、俺の手を握りしめて魚路さんはそう言い続けた。俺は、周囲から拍手喝采を浴びた。こんな俺が、こうして……

 その後、薄暗くなった神社前まで朱鳥をバイクで送ってきた。
 「ごめんね? 今日は楽しんでもらおうと思ってたのに……」
 「いいって、今日は結構楽しめたさ」
 火事になったのは予想外だったが、それが切っ掛けで何かわかったきがした。
 「あ、あのさ?」
 俺は、思い切って彼女にこう告げた。
 「桑凪さん……俺、いきなりこういうこと言うのもなんだけど」
 「どうしたの?」
 「俺……ライダーをやめるよ」
 「えっ? えぇ!?」
 「いやいや! そういう意味じゃないんだ。これは自惚れかもしれないけど、今日何となく自分がすべきことってことがわかったような気がするんだ」
 「それって……」
 「仮面ライダーに変身しなくても、今の力で誰かを守れるんじゃないかってさ……」
 「九豪君……」
 「俺、決めたよ! 蓬町の人たちのためにこの力を使おうって。今後も、ああいった事が起こるかもしれないし、俺の力で世間から見放されてしまった蓬町を救いたいんだ。だから、今持てるこの力で町と、町の人たちを守りたいんだ。仮面ライダーに変身しなくてもね……」
 先輩方の中にも、きっと戦いを嫌って誰かを守るためにライダーに変身しない人もいたかもしれない……
 ――この力は自分だけの物じゃないんだ。力のない、誰かのために……
 
 
 オーストラリアにて
 
 舞台は、オーストラリアの自然区域にて「魔女狩り」と呼ばれる虐殺が行われていた。
 ISの到来と、それによってもたらされた女尊男卑という性差別の影響によって起こった残虐な復讐の戦い。
 歴代「悪の仮面ライダー」たちが集ってISとそのコア、そして操縦者である女性たちを発見し、破壊・抹殺・虐殺を繰り返して、その賞金首やISのコア破壊の数を競い合う闇世界で行われる残酷な殺戮ショーである。
 この戦いの優勝者にはどんな願いも叶えるという望みが手に入る。
 また、この企画の運営者は世界の破壊者ディケイドという噂もあり、魔女狩りのルールに背くライダーはディケイドによって罰を与えられるとのこと。
 「た、助けてぇ……」
 ボロボロになったアーマーを纏うISの女が、泣きながら目の前の紫のライダーに命乞いをしていた。見下ろす、紫のライダーは蛇を象った杖を肩に担いで残忍に見つめた。
 「お前を殺せば、このイライラは止まるんだよ……俺のイライラを鎮めるためにお前は死ねよ……」
 「い、嫌! 死にたくない! 死にたくない!!」
 「うるせぇ!!」
 杖を投げて、紫のライダーは女へ馬乗りになると、立て続けに女の顔面を殴り続けた。
 「や、やめ……」
 「なぁ……``土``、食ったことあるか?」
 「え……?」
 次に、ライダーは地面から土を拳分に掴んで、血だるまにされた女の口へ無理やり押し込んだ。
 「うぅ……!」
 土を吐き出して、何度もせき込む女を前に、ライダーはトドメをさしにかかる。
 「つまらねぇな……もっと強い奴を殺らなきゃ、俺のイライラは解消されねぇのによ?」
 一枚のカードをバックルに収納させたると、ライダーの後ろからは巨大な紫の大蛇が現れた。
 「お前には、こいつの餌になってろ……」
 「ひぃ……!!」
 そして、ライダーは「喰え」と背後の大蛇へ命じると、大蛇は瞬く間に女を絡めとると、そのもがく頭から一気に齧りついた。
 なんともいえぬ、女の叫びと悲鳴が広大な自然地帯に響いたのである。
 「つまんねぇな?」
 血だらけになったコアを片手で粉々に握りつぶした紫のライダーはIS操縦者の亡骸を背に立ち去ろうとしたが。
 「相変わらず、容赦のない狩り方だな? 王蛇君……」
 紫のライダーこと、王蛇へ歩み寄るはカメレオンを象った仮面をした緑のライダーだった。
 「そっちはどうだ?」
 王蛇が問う。
 「ああ、二人殺った。これで、オーストラリアの代表生と候補生は居なくなったな? 世間では行方知れずという形で片付けられるが……」
 「お前も、モンスターに食わせたのか?」
 「うむ、彼女たちの肉はオージービーフのように美味いと、私の可愛いペット(モンスター)は喜んで、その味を噛み締めていたよ?」
 「テメェも人のこと言えねぇな?」
 「さて……そろそろ私は別のステージへ行くよ?」
 「何処へだ?」
 「久しぶりの日本へ」
 「ほう? 俺は中国だ。あそこには気の強そうな女が居そうだしな? 俺のイライラも治まるかもしれん」
 「では、頑張りたまえ? 私は、休日がてらに日本へ行こう……」
 と、緑のライダーことベルデは去っていった。
 

 


 

  
 

 
後書き
パソコンが壊れかけて作業は難航中っす。直り次第再開します。(;´д`) 
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