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ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)

作者:羽田京
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第1章 これから始まる物語
  第7話 見習い悪魔は赤龍帝の夢をみるか?

 翌日の放課後、俺は真っ直ぐにオカルト研の部室へ向かった。
 思いがけず再会を果たした彼女――アーシア・アルジェントを救うために。
 いざ決意を胸に秘めて、部室の扉をあけ――――固まった。
 目の前には、いつものメンバーのほかに、見慣れない面々がいる。


 その内の一人は、昨日、助けてくれた青年だった。
 がっしりとした体つきをしていた、浅黒い肌に短い銀髪が映える。
 いや、問題はそこではない。
 そう問題なのは――


――――存在を激しく自己主張している「犬耳としっぽ」だった。


「って、男の犬耳とか誰特だよッ!」


 混乱しながら叫んだ俺は悪くないだろう。
 男――ザフィーラと呼ばれていた――は、気にした風でもなく
「昨日あれから、大丈夫だったか?」と、身を案じてきた。
 ようやく我に返って慌てて礼を言う。


「って、すみません!昨日は、本当に助かりました。碌にお礼もいえず、申し訳ないです」
「気にしないでよい。当然のことをしたまでのこと。怪我がないのならよかった」


 ――と、笑顔で応じてくれた。
 顔も性格も態度もイケメンな好青年に、珍しく好感をもった。


 ――やっぱり、犬耳しっぽをつけたままだが。
 真面目な話をしているのに、思わず脱力してしまう。
 いつものように嫉妬できないのも、それが理由だろう。


「ザフィーラさんとは、昨日も会ったわね。こちらの二人は知っているかしら?」
「ええ、知っていますよ先輩。まさか、美人と名高いお二人と部室で会えるなんて」


 あらためて、周囲を見渡せば、まだ二人闖入者が残っている。
 この二人は、俺も知っている。
 どちらも、学園で見かけることがあった。


 剣道部で臨時顧問をしている巨乳ポニーテールの女性が、シグナム

 臨時保険医をしているおっとりとした雰囲気の女性が、シャマル

 
 ――だったと思う。
 駒王学園に入学した直後、美人の新任がきたということで、話題になっていた。
 俺自身、何度も会っている間柄だ。
 まあ、学内でみかけると、思わず胸元に目をやってしまう間柄だな。
 一方的に知っているだけ、ともいうが。
  

「『八神シグナム』だ。お前の話は主はやてから聞いている――お前の要件も、な」
「わたしも、あなたのことはよく知っているわよ。
人目もはばからずジロジロみてくるものだから、顔を覚えてしまったわ――要注意人物としてだけど」
「うえ!?す、すみません――」

 
 げ。バレバレだったとは……。
 なんとか釈明しようと、しどろもどろになりながら、言葉を探すが―― 
 

「――シャマル、あまり遊ぶな」
「あらあら、ごめんなさいね。『八神シャマル』です。よろしくね」

 
 シグナムさんのおかげで、どうにかなった。
 しかし、間近でみると、本当に美人だよな。
 とくに、胸のあたり。
 思わぬ幸運にしばし茫然として――


「って、そんな場合じゃないんだよ!早くアーシアを助けにいかないと!」
「ああ、そのことね」
「『そのことね』って部長!のんきに構えている暇なんてないはずです。
たとえ、俺一人だけでも助けに行きます!」


 本当は心細いし、恐ろしい――けれども、アーシアはもっと恐ろしい思いをしているだろう。
 ここで見捨てることはできない。
 

「――へえ。あなた一人だけで、ねえ。たぶん死ぬと思うけれど、いいのかしら?」

 
 シャマルさんが、見たこともないような怜悧な視線をこちらに向けてきた。
 一瞬、怖気づくが、すぐに取り繕う。


「救える力があって、助けを求める人がいる。理由はそれだけで充分だ――」
 


――――なぜなら、俺は「赤龍帝」だから
  
 
 よほど俺の言葉が意外だったのだろうか。
 彼女は目を丸くして――いや、険しい目つきでこちらを睨んでいたシグナムも驚いたような表情をしている。


「そうよ、ね。言葉にするには簡単だけれど、実行できる人はどれだけいるのかしら。
あなたは、『実行できる人』のようね。――試すようなことをいって、ごめんなさい」
「いえ、俺こそ生意気なことを言ってしまいました」 

 
 真剣な表情で謝られて、こそばゆくなった俺は急いで取り繕う。
 もういちど、アーシア奪還に向かうと宣言しようとして―― 


「さすがは、赤龍帝ということかしらね。いえ、一誠君だからこそ、なのかな。
ともかく、よく言えたわ!あなたの主として、誇らしいわよ」
「見直しました、先輩」
「僕は、兵藤君のことを誤解していたのかもしれない」
「あら?私は初めから、彼の意思の強さには気づいていたわよ?」
「ええー。本当ですか姫島先輩」


――――なんだか、盛り上がっていた。


「――兵藤一誠」  
「はい?シグナムさん、どうしましたか?」


 呆気にとられた隙に、小さいが力強い言葉をかけられる。


「アーシア・アルジェントを何があっても助けたいか?」
「ええ。当然です」

「たとえ、死ぬ危険性があってもか?」
「死ぬつもりはないですよ。俺が死んだら彼女は気に病むでしょうし。
必ずアーシアを助けて生きて戻ってくる。俺がやるべきは、それだけです」

「――そうか」


 なぜいまさらになって、そのような質問をするのか。
 疑問が顔に出ていたのだろう。
 少し苦笑したシグナムは――


「アーシア・アルジェントの奪還には、我々も協力する。
安心するとよい――むろん、お前の決意の程もみさせてもらうぞ?」


 と、力強く言った。
 

――その姿は、歴戦の戦士のようでとても心強かった





「ここが、堕天使が占拠している教会――と、一誠君の情報通りね」
「――では、まずは結界を張らないとね。シャマル、頼んだよ」


 リアス・グレモリーの言葉に応じて、シャマルに封鎖領域の展開を頼む。
 いまボクたちは、問題の教会前にいる。
 兵藤一誠の決意を聞いたグレモリー眷属は、転移魔法陣でこちらにきた。
 続いて、シグナムたち3人も、転移魔法陣を利用したふりをして転移してきた。
 まあ、あの魔法陣は、悪魔専用なので小細工がどこまで通じるかは不明だが。


「ええ、任せてはやてちゃん――クラールヴィント!」
『Gefangnis der Magie』


本当は、放課後部室で、アーシアの救出を主張する兵藤一誠対して、グレモリー家の立場から戦争になりかねない、と、一度断る。一人だけでも突入しようと焦る兵藤一誠の頬を一発叩くと言葉を続けるのだ。「リアス・グレモリー」個人として、全員でアーシア奪還に向かう、と。これが本来の原作の流れだった。


「よし、これでいくら暴れても、現実世界には何の影響もなくなる。存分に暴れてこい、兵藤くん」


しかしながら、原作とは異なり、ボクたち八神一家がいる。ボクがアーシアと親しくしていることは、予めリアス・グレモリーに伝えておいた。彼女の様子も詳細に伝えておいたから、少なくともアーシア個人に非がないことはわかる。さらに、アーシアの性格や堕天使が彼女を利用して何か企んでいるとわかれば、情の深いグレモリー眷属なら助けに行くだろうと踏んでいた。


「うし。任せてといてくれ。いくぜッ!」
『Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!』


 突入していく兵藤一誠。並走する木場祐斗に続いて、シグナムとザフィーラが続く。
 教会の周りを、残ったリアス・グレモリー、姫島朱乃と護衛の塔城子猫が囲んでいる。
 ボクとシャマルも彼女たち傍で控えている。


「――堕天使たちの増援は心配しなくていいのね?」
「封鎖領域で遮断しましたから、外部との連絡はとれないはずです。結界自体の強度も挙げてあります。侵入者も感知できますよ」

「パーフェクトだ、シャマル」
「でたらめね。あなたたち」


 リアス・グレモリーは、驚きともあきれともつかない嘆息とともに吐いた呟きが聞こえる。
 そんなに褒められると照れるじゃないか。
 やはり、家族が褒められると、八神家の家長としては嬉しいね。


 ――――今回、八神家一同も全面協力している。


 リアス・グレモリーが突入する決意を固められたのは、ボクたちの存在も大きいはずだ。
 充分な戦力があり、堕天使の連絡を断ち増援を防ぐ手立てもある。
 あとは、兵藤一誠の決意を聞きたいとボクがいい、リアス・グレモリーも賛同したことで、放課後の部室でのやりとりが行われたということだ。
 普段の変態ぶりが嘘のような兵藤一誠の姿に、『確かに、彼ならば物語の主人公といわれても、納得できるな』と、妙に感心してしまった。


 教会前では、ボクとシャマルが、出待ちしており、彼らと合流――あとは、囲んで結界を張って突入、という筋書きだ。
 はぐれ悪魔討伐を手伝うとき、いつもこちらは1~3人程度だから、6人全員での実戦は初めてかもしれない。


(まあ、ヴィータとリインフォースは「極秘任務」についているので、この場にいるのは残りの4人なのだがね)


 別働隊については、グレモリー眷属に伏せてある。後の布石と言う奴だ。


「さて。わたしたちは堕天使たちを外に逃さないように網を張るわよ――朱乃、大丈夫ね?」

「お任せください。リアス・グレモリーの女王(クイーン)として、上空を監視します。子猫もリアスの警護を頼むわよ」
「はいっ!部長には指一本触れさせません」


 だが、基本的には、リアス・グレモリーたちが対処することになっている。
 グレモリー家の領地で起こった問題を、客人とはいえ部外者が解決しては体裁が悪かろう。
 そこで、ボクたち八神家の面々は、補助に徹することにした。


(聞こえるかヴィータ姉。いま兵藤くんたちが乗り込んだ――アーシアは無事かい?)

(ああ、無事だぜ。連中、突然結界が貼られてオタオタしてやがるな。
アーシアはもう救出してある。今は、転移魔法で、教会の裏手に隠れているぜ)
(彼女と鉄槌の騎士には、探知防壁をかけてあります。見つかる可能性は低いでしょう)


 実は、ヴィータに変身魔法を使わせ、予め教会に潜入してもらっていた――夜天の書つきで。
 アーシアのお目付け役の堕天使とこっそり入れ替わっておいたのだが、バレずにすんだようだ。 
 リインフォースが待機している夜天の書をヴィータが持っているため、滅多なことはおこらないだろう。
 ボクだって何も考えずに、彼女と遊びまわっていたわけではないのだ。


――――まさに、計画通り


 本当だよ?
 まあ、少しばかり羽目をはずして遊びまわったこともなきにしもあらずだが。


(魔法ですり替えた『身代わり』はどう?うまくいっているかな)
(ええ。もうしばらくは大丈夫です。夜天の書に登録されていた強力な幻術魔法をかけていますから)


 いまごろ、『アーシアだと思い込んでいる別人』を生贄にしようとしている最中だろう。 
 レイナーレたち堕天使の目的は、アーシアが持つ癒しの神器『聖女の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を奪うことだ。
 しかしながら、本物のアーシアはヴィータが助け出している。
 いまごろ、連中は儀式がうまくいかずに、さぞ混乱していることだろう。
  

(そうそう。アーシアの『身代わり』は、あのフリードとかいうイカレ神父にしといたぜ。
あの野郎。アーシアを十字架に貼りつけようとかいいやがった)
(――ほう)

(で、ムカついたから『身代わり』にしてやった。身をもって貼りつけを体験できたんだから感謝して欲しいくらいだ)
(――パーフェクトだ、ヴィータ姉。どのみちフリード・ゼルセンは生かしておけないと思っていたんだ。逃さずにすんでよかったよ)


ドガアアアアアアアアッッッッッッ


 教会の地上部から物凄い音が聞こえてくる。
 兵藤一誠が、一発ぶちかましたようだ。


――――あれが、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の力


 世の中には、数多の神器があれど、『赤龍帝の籠手』は別格中の別格だ。
 かつて、二天龍という暴れ龍がいた。
 災厄を撒き散らすかれらを憂慮した全盛期の三大勢力が、同盟してまで、やっと神器に封印した。 
 その二天龍のひとつを封印した神器が、『赤龍帝の籠手』だという。
 その効果は、ずばり「倍加」である。
 つまり、力を倍に増やし続けることが出来るという、単純にして強力な力だ。
 完全に使いこなせば、たった1の力でも、無限に増やすことすら可能だろう。


――――教会内の陥没した地面がその証拠だ。


 一方で、木場祐斗は、彼と即席とは思えないほど見事な連携をみせている。
 確実に、ひとりひとり手早く仕留めていく彼の姿からは、たゆまぬ修練の跡が垣間見える。
 ――偉そうな講評を垂れることができるのは、ボクもシグナムたちに絞られたからだ。
 が、いまはそんなことはどうでもいいな。
 もうすぐ、地上は一掃できそうだ。


(――もうじき彼らが、地下へ向かうようだ)
(わかっているさ。混乱にまぎれて地下へ戻って、偽物と本物を再びすり替えておくんだな?)

(そこが問題なんだよね。本物のアーシアを兵藤くんたちに「救出」してもらわないと。
気づかれずにすり替えるタイミングがあるかどうか)

(マスター、ご心配なく。ステルス魔法を使用しているので、混乱している中ならば、まず気づかれないはずです)
(リインフォースがいうなら安心だね)

(魔法は私が行使するので、すり替えのタイミングは鉄槌の騎士次第です)
(わかっているさ。あたしに任せとけ)


――――さて。あとは、悲劇の聖女を救う勇者さんを待つだけ


――――はやくしたまえよ、兵藤くん





 木場祐斗は、嫌な予感がしていた。
 堕天使が占拠する教会に切り込み、兵藤一誠と即席ながら見事な連携で敵を圧倒した。
 シグナムとザフィーラのサポートもあり、事は万事順調だった。
 いや、「順調すぎた」。


(さっきから嫌な予感する。どこかでしっぺ返しが来るような気がしてならない)


 地下礼拝堂にはいた敵は、およそ30人ほどだろうか。
 地上にいた連中とあわせれば、50人近いだろう。

 
「――団体さんで、グレモリーの領地に堂々と侵入するなんてね」


 木場が呆れたようにつぶやくと、ようやく向こうは、こちらに気づいたようだ。
 何故か判らないが、彼らはひどく混乱しているようだ。
 こちらを警戒しながらも、「はやくしろ」「なぜうまくいかないんだ」など怒号が飛び交っている。
 最奥に目を向けると、そこには――――


 驚き硬直する彼を置いてきぼりにして、瞬時に前へと兵藤一誠が躍り出た。
 彼は、普段からは想像もつかないような激しい怒りの声をあげる。


「おまえらああああああああ!!」
『Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!』

「まて、迂闊に飛び出すな兵藤くん!」


 思わず声をかけるも、聞き入れられるとは思っていなかった。
 彼自身、堕天使たちの所業に憤っているのだから。
 だが、その憤りを吹き飛ばすような光景が眼前で繰り広げられた。


――――何が起きようとしている!?


 抉るように大きく地面を陥没させた兵藤一誠は、堕天使の女と何事か話していた。
 激情に歪んだ表情は、次第に冷静になっていき、無表情になった。
 一方で、身にまとう雰囲気は、窒息しそうなほど重苦しいものになっていく。


『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』


 突如、咆哮のような、慟哭のような叫び声があがり、兵藤一誠を中心に爆風が渦巻いた。
 思わず瞑ってしまった目を開いき、粉じんの中から現れた姿をみたとき、


――――彼は禍々しい力を放つ赤い鎧に身を包んでいた。 
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