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ベル・クラネルが魔剣使いなのは間違っているだろうか

作者:黄泉姫
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5話

『おい、あれ見てみろよ』
『おっ、中々の上物じゃねえか』
『バッカ!…エンブレムを見てみろ』
『ゲッ、ロキ・ファミリア…』
『あれがオラリオ最大派閥の一つ…』
『巨人殺しのファミリア、か』

ロキ・ファミリアの入店で周りがざわめき始めた。

「あの、シルさん。ロキ・ファミリアの方々はよく来られるんですか?」
「えっ?はい、そうですね。主神で在られるロキ様がここを気に入ってくださっているので」
「そう……ですか」

ロキ・ファミリアが座っている席の方へと目を向けるベル。

「皆、遠征お疲れや。今日は飲んで食って騒ごうや!乾杯!」

主神であるロキの合図と共にロキ・ファミリアの面々は騒ぎだした。

「シルさん、ここにお金置いておきますね」
「え、もう帰っちゃうんですか」
「はい…そろそろ神様も帰ってくると思いますしあまり遅いと心配していると思うので」
「…わかりました。では、また来てくださいね」

シルの笑顔を見てベルは罪悪感を感じていた。

(たぶん、そう簡単には来れなくなっちゃったな……)

ロキ・ファミリアが良くここを利用すると言うことはそれだけ自分が魔剣使いだとバレる可能性を高くする。だから、ここの利用を控えることにしたのだ。

「おい、アイズ。そろそろあの話をしてもいいんじゃねえか」
「なになに、何か面白いことでもあったの!?」
「興味があるわね」
「アイズ、話してくれないかな?僕も気になるよ」
「魔剣使いに、会いました」

その言葉に場が凍りついた。勿論、ベルもその声を聞いたのだ。

「ベルさん?」
「……」

ベルは腰をあげた状態で止まってしまった。まさか、ここで話されるとは思っても見なかったのだ。

「なんやて、魔剣使いに会ったんか。アイズたん」
「はい……」
「それは本当なのか、アイズ」

アイズに質問したのは神すらもその美貌に嫉妬すると言われるほどの綺麗な顔立ちをしたエルフ。彼女こそがロキ・ファミリア副団長にして王族(ハイエルフ)の末裔リヴェリア・リヨス・アールヴだった。

「……うん。ちゃんと、魔剣って言ってた」
「それが本当じゃとすると大変な事じゃぞ」
「アイズ、さんの勘違いじゃないんですか?」

質問したのは山吹色の髪をポニーテール状に縛っているエルフの少女だった。彼女はレベル3でありながらロキ・ファミリアの準幹部に選ばれたレフィーヤ・ウルディユスだ。

「それは、ないよ。だって何もない場所から急に、ナイフが、出てきたから。しかも、凄い魔力を…感じた」
「けっ、でそいつがオレたちが逃がしたミノタウロスを倒したみてぇだ」

そしてロキ・ファミリアの団長であるフィンがアイズに問いかける。

「その魔剣使いの特徴は分かるかい?アイズ」

その言葉を聞いた瞬間、ベルは急いでこの場から離れることを選んだ。

「そ、それじゃあ、シルさん。僕はこの辺で!女将さんに料理美味しかったですって伝えてください」
「あっ、ベルさん!?」

ベルはなるべく速いスピードで出口へと向かっていたが……。

「見つけた、よ?」
「え?」

あと一歩のところで腕を誰かに捕まれてしまった。後を見るとそこにはアイズがいた。

「また……会ったね」
「あ、アハハハ……はい……」

流石に四つものレベルの差は明確だった。

「あ…自己紹介、まだだった…ね。私はアイズ・ヴァレンシュタイン。アイズって…呼んで。君は?」
「僕は、ベル。ベル・クラネルです」
「それじゃあ…ベル。私たちが食べているテーブルに…来て…」
「…えーっと、行かないとダメですか?」
「フィンに無理矢理にでも連れてきてくれって」

これはどうやらベルには拒否権がないようだ。勿論、アイズが言ったフィンからの命令は嘘である。

「フィン、連れてきたよ…」
「ありがとう、アイズ」

結局、ベルはアイズの補導のもとロキ・ファミリアが宴をやっている席にやって来てしまった。

(神様、エイナさん。すいません、本格的にバレちゃいました)

ベルは自分が魔剣使いであることを知っている二人に心の中で謝罪した。

「やぁ、初めまして。僕はこのファミリアの団長をしているフィン・ディムナだ。君が魔剣使いかい?」
「……はい。僕が、魔剣使い兼冒険者のベル・クラネルです」

ベルの言葉に辺りは騒然とした。そしてエルフからは鋭い視線を向けれていた。

「意外だね。否定すると思ったんだけど」
「既にアイズさんには見られてしまっていますから。ここで誤魔化しても何れはバレます」
「そうか。では改めて君には礼と謝罪をしないとね。ミノタウロスの件はすまなかった。そして討伐には感謝するよ」
「いえ、僕が好きでやった事ですから」

ベルの返答にフィンは安心したような表情を浮かべた。

「それにしても自分、可愛い顔してるな。ほんまに魔剣使いで冒険者なんか?」
「こら、ロキ。彼に失礼だよ」
「いえいえ、お気になさらず。慣れましたから…」

ベルはここオラリオに来てからやたら顔や体格の事で弄られる事が多くなった。

「それじゃあ、本題に入ろうか」

場の空気がフィンのその言葉で変わった。

「君が魔剣使いだってことは理解した。その上で君に問いかけたいことがある人物がいるみたいだ」
「……」

フィンはリヴェリアへと視線を向ける。ベルもリヴェリアへと目を向けた。

「では、ベル・クラネルいや魔剣使い。君は魔剣使いが私たちエルフに何をしたのか知っているな」
「はい、師匠からそして魔剣からある程度の事は聞いています」
「魔剣からやて?」
魔剣(かのじょ)たちにも意思はあります。と言っても感じたり記憶が流れ込んでくるだけですが」

ロキは驚いたような顔をしたがそれも一瞬でまた真剣な顔つきになった。

「魔剣たちによればあれは復讐だったそうです。初代魔剣使いの」
「復讐、だと…」
「内容は知りません。これは師匠も魔剣たちも知らないようでしたから」
「それではお前は誰から魔剣(それ)を受け継いだ。話からしてお前は継承したのであろう」

ベルはその問に答えようとしなかった。

「それは話せません」
「どうしてだ」
「アールヴさん、この世には知らなくていいこともあるんです」

ベルがその言葉を口にした時の表情は何処か悲しそうであった。

「それでは僕はこれで失礼します」
「おい、待て!テメェ、まだ話は終わってねぇぞ!」
「やめんか、ベート!」

ベートと呼ばれている狼人がベルの肩を掴んだ。否、掴めなかった。

「があっ!」
「やめて…!」

ベルをまるで守るかのように風が発生し、ベートを吹っ飛ばしたのだ。

「な、なんだ…これ、は」

誰かがそんなことを言った。それもそのはずだ。何故ならベルを守るように発生していたのは風だけではない。水、火、闇、光と言ったものまでもが発生していた。 
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