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第58話 ヴァンフリート星域会戦 後編


お待たせしました、オフレッサーの最後です。
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第58話 ヴァンフリート星域会戦 後編

帝国暦485年4月1日 午後1時

■ヴァンフリート星系 

撃沈破した帝国艦隊の残骸が漂う中、装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将の乗る強襲揚陸艦が残骸に隠れて同盟軍の総旗艦アイアースを狙い虎視眈々と牙を研ぎ澄ましていた。強襲揚陸艦に乗り込むのは、命知らずのオフレッサーを慕う将兵達50名であった。

「いいか、俺が倒れたら降伏しろ判ったな!尤も敵艦を俺達が占拠する方が確率は高いだろうがな」
「違いないや」
「それじゃ、俺は総監より早くロボスの頸を狩りますぜ」

悲壮感も漂わせない艦内の様子である。

旗艦アイアースが脱出不能で降伏を是としない艦が散発的に反撃する中を数隻の護衛と共に戦場を通過していく、この状態は第二次ティアマト会戦のブルース・アッシュビー大将の最後とよく似ていたのは偶然であろうか、それとも必然だったのであろうか?


宇宙暦794年 帝国暦485年 4月1日 午後1時33分

帝国軍総旗艦ヴィルヘルミナの残骸を避けて航行していたアイアースに突然帝国軍強襲揚陸艦が突っ込んできたのである。護衛の戦艦、巡航艦が対処する事も出来ずに艦体側面中央部に突き刺さる形でぶつかっていた。

その中から、ミンチメーカーと同盟将兵から恐れられた、装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将が躍り出てきたのである、艦内は直ぐさま警報が鳴り響くが、突入者がオフレッサーとは未だ誰も判らない状態で有った。

艦内に敵兵侵入の緊急放送で旗艦控え室にいたヴァーンシャフェ大佐以下ローゼンリッター第一連隊の司令部100名が直ぐさま装甲服に着替えて敵の撃退に向かう。艦橋へ向かう廊下の彼方此方に同盟兵の死体や重傷者が倒れている。

「連隊長、敵は艦橋へ向かっています」
「いかんな、艦橋には旅団長しか戦える人がいない、追撃するぞ!」

艦橋では手空き総員が直ぐさま装甲服に着替えて付け焼き刃ながら防戦に参加しようと身構える、その中でリューネブルグ准将は落ち着いた風に支度を行い、炭素クリスタル製の戦斧を構える。その他の兵はレーザーライフルを構えて防戦準備を行う。又他艦から増援の為にシャトルが発艦してくる。

走るヴァーンシャッフェ大佐以下のローゼンリッターは、艦橋へ向かう廊下でオフレッサー以下50名の装甲擲弾兵に追いつき、其処で凄まじい攻防戦が始まった。

「うをー!!」
「だー!!」
叫び声と共に肉が裂け血が吹き出す。次々に倒れる同盟と帝国の兵士達。しかしオフレッサーと3名は前へ前と進み、多くの同盟兵の血を啜りながら、遂に艦橋に辿り着いたのである。艦橋からロボス達は脱出予定だったが、敵が急進撃過ぎたため艦橋から移動出来ない状態で有った。

艦橋の入り口を爆破するためにオフレッサーの部下が爆薬を仕掛ける間に、辿り着いたヴァーンシャッフェ大佐がオフレッサーと対峙するが、へっぴり腰に見える。何故なら、相手がオフレッサーと判ったからである。

「フン。誰かと思えばローゼンリッターか、冥土の土産についでに頸を刈ってやる!」
オフレッサーが不敵に笑う。
「先行せよ」
ヴァーンシャッフェ大佐は部下を楯にしながら、部下に攻撃を命じる。

「臆病者が、いくぞ!」
「ひー」
一撃の下に10名ものローゼンリッター隊員が斬り殺される。

ヴァーンシャッフェ大佐はレーザーライフルを狂ったように撃ちまくるが、オフレッサーは戦死したローゼンリッター隊員の死体を手に持って楯にしながらヴァーンシャッフェ大佐に走り寄り、その長大な戦斧を振りかざし叩き付けた。

「うわーーー!!」
その言葉と共にヴァーンシャッフェ大佐の体は真っ二つにされたのである。
その直後に艦橋の入り口を爆破し生き残りの3名と共に艦橋へと躍り込んだ。

其処には戦闘準備が終わったばかりのリューネブルグ准将が仁王立ちしていた。
「オフレッサー上級大将殿か、俺はローゼンリッター旅団長ヘルマン・フォン・リューネブルグ准将だ」
「おう、貴様があのリューネブルグか、俺の獲物に相応しい、先ほどの奴は腰抜けだったからな」

その合図にリューネブルグとオフレッサーの死闘が始まる。
「ダー!」
「ウヲー!」

その横では、ワイドボーンやリーファやイブリン達も装甲服で残りの3名に対峙している。
多くの兵により囲まれているが流石にオフレッサーの部下である、次々に仕掛ける敵をあしらっている、3人は三位一体の攻撃で突っ込んでくる。

「オルテガ、マッシュ、いくぞ!」

2人が倒される間に最後の1人が突入に成功し、ロボスやグリンーヒルの前に辿り着き、体に巻き付けた軍用爆弾のスイッチを入れた。凄まじい爆音と共にその体は四散し、ロボスやグリンーヒルは彼等を守っていた兵と共に吹き飛ばされ、全身打撲で血を吐いている状態で倒れている。

爆炎の中、吹き飛ばされたロボス元帥とグリーンヒル総参謀長が倒れて居る中、リューネブルグとオフレッサーの死闘が繰り広げられている。

「中々やるな」
「ふ、貴様こそやるな」

数十分の死闘の末、オフレッサーの一撃がリューネブルグ肩口を切りつけ鮮血がほとばしるが、リューネブルグはその戦斧を抱え、オフレッサーのバランスをくじかせた瞬間、軍用ナイフの一撃がオフレッサーの肺に刺さり、オフレッサーは咳き込んだ、その瞬間リューネブルグの戦斧がオフレッサーを貫いたのである。

リューネブルグが負傷した瞬間、イブリンは叫びたかったしかし我慢したのだ、男と男の戦いに女がしゃしゃり出てはいけないと。

勝負のついた後で、イブリンがリューネブルグへ駆け寄り傷口へ止血剤をスプレーしている。
リューネブルグの前には、虫の息のオフレッサーが倒れて居る。
オフレッサーが独り言を言うように話している。

「俺は体一つで、此処まで来た、最後に敵艦の中で死ぬのも面白い」
そう呟きながら、口から大量の血を吐きながら咳き込んで息をひきとった。
「装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将に敬礼」
リューネブルグ准将の言葉に、その場に居合わせた全員が敬礼を行う。

艦橋では重傷のロボス司令長官とグリーンヒル総参謀長が軍医によりストレッチャーに乗せられ移動して行くのである。

その後病院船に怪我人を移した迎撃艦隊は敵残兵の収容を行い戦場清掃を工兵艦隊に任せてエルゴンやシャンプール泊地で停泊を行い別働隊の戦果を待つのであった。



宇宙暦794年 帝国暦485年4月7日 

■イゼルローン回廊同盟側出口

ヴァンフリート星系から敗退した帝国艦隊は、ミュッケンベルガー元帥の犠牲の下、イゼルローン回廊付近まで逃げてきたが、イゼルローン回廊へ逃走する帝国艦隊を遮るようにラルフ・カールセン中将の第2艦隊、アル・サレム中将の第9艦隊が側方攻撃を仕掛けてきた。

第2艦隊は昨年10月に昇進したラルフ・カールセン中将に指揮権が移り猛訓訓練を終え794年度第2期目の辺境パトロールのためにシャンプール泊地へ向かったと言う口実でこの戦闘に参加している。第9艦隊は794年度第1期の辺境パトロール中に戦闘に遭遇したとの口述であった。

帝国軍は補給もなく満身創痍の状態で有ったために強行突破しか作戦がなかった。同盟軍はそんな死にものぐるいの窮鼠猫を噛む状態の帝国艦隊を態々正面決戦をする気もないのである。そんな敵の前に立つのは愚の骨頂と言う事で回廊出口付近で待ち伏せを行い攻撃しているのである。しかもご丁寧に工兵部隊の手により回廊出口付近に500万個に及ぶ宇宙機雷を配置したのである。

そして、大半の残存艦隊は指揮系統も殆ど無い状態であり、乱れた状態での残存帝国艦隊が機雷原に高速で突入を開始した。ラインハルトも統一指揮出来る権限が無く結果的に自分の分艦隊の損害を押さえる事しか出来ない状態で有った。

その結果、宇宙機雷により爆撒する帝国艦隊という光景がイゼルローン回廊同盟側出口に沸き起こった。同盟艦隊はロボス司令長官最後の命令に従ってイゼルローン回廊出口での狩猟を終えると、残存機雷の徐去を行い、終了後に第2艦隊はパトロールに、第9艦隊はエルゴン経由でハイネセンへと帰還した。

こうしてヴァンフリート星域会戦は帝国軍の大敗北という形で幕を下ろした。



ヴァンフリート星域会戦 参加兵力

同盟軍  5個艦隊 総数 6万6000隻  兵員 851万4000人

ロボス宇宙艦隊司令長官直属 2個分艦隊  6000隻
ビュコック 第5艦隊         1万5000隻
アップルトン第8艦隊         1万5000隻
ウランフ  第10艦隊        1万5000隻
ボロディン 第12艦隊        1万5000隻


同盟軍損害

損失4729隻   戦死49万2358人 大半が第8艦隊の損害
       

原作では基地と艦隊の戦死者数が100万人を超えていた。

別働工兵隊

セレブレッゼ 工兵艦隊          9000隻


別働隊
カールセン 第2艦隊         1万5000隻
アル・サレム第9艦隊         1万5000隻

損失87隻     戦死788人

ロボス元帥    全身打撲重傷
グリーンヒル大将 全身打撲重傷
リューネブルグ准将  重傷

ヴァーンシャフェ大佐 戦死
ワイドボーン大佐   軽傷
アッテンボロー大佐  打撲
ヤン大佐  装甲服に着替えるとき転んで足を捻挫戦闘に参加出来ず  


ローゼンリッター連隊 戦死87名 重傷者14名

帝国軍  7個艦隊 総数 7万8000隻  兵員 1014万1000人

艦隊名                    出撃数      帰還数

ミュッケンベルガー 銀河帝国軍艦隊総司令官 1万4000隻→105隻 
ロイター艦隊                1万2000隻→290隻
シュトラウス艦隊              1万3000隻→1592隻
グリンメルスハウゼン艦隊          1万2000隻→286隻
ヴァイトリング艦隊             1万1000隻→389隻
ネーリング艦隊                 8000隻→12隻
クルツバッハ艦隊                8000隻→210隻 

帝国軍損害

損失6万9357隻  戦死、行方不明 873万9582人
捕獲  5759隻  捕虜      101万7696人

本国へ帰国2884隻 生存者      38万3722人

グリンメルスハウゼン艦隊ほぼ全滅 150万以上が戦死 
他の6個艦隊も壊滅。

艦艇生還確率3.7パーセント 将兵生還確率3.8パーセント

原作における帝国軍の損害を遙かに凌駕し、総司令官ミュッケンベルガー元帥は旗艦ヴィルヘルミナと共に最後まで留まり、脱出の殿を勤めた後自決した。帝国軍はダゴン星域会戦、第2次ティアマト会戦を超える大敗北となり、その機動戦力と優秀な人材の殆どを失う事になった。

この結果直ぐに動ける残存兵力はメルカッツ提督が指揮する留守部隊4個艦隊だけと成った。残りの艦隊は未だ混乱の最中に有り再編成も全く済んでいない状態で有った。そして宇宙艦隊司令長官の椅子をめぐり丁々発止が行われるのである。

戦死将官

宇宙艦隊司令長官 グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥
宇宙艦隊総参謀長 オットー・フォン・グライフス大将

ロイター中将               
ネーリング中将             
グリンメルスハウゼン中将         

ヴァイトリング中将                            
クルツバッハ中将

装甲擲弾兵総監 アルノルト・フォン・オフレッサー上級大将
装甲擲弾兵第29師団長 ホルスト・フォン・ヴァルデック少将

捕虜

宇宙艦隊参謀   アウグスト・フォン・シュターデン少将

生還
シュトラウス中将 
ミューゼル准将


帝国暦485年5月15日

■オーディン 某所

今日も又戦死者の家に戦死公報が届く、郵便局員はここ数日間の帝国全土の悲しみを運び続けて居た。この家にも戦死公報が届く。郵便を受け取る夫人は泣き顔で受け取る、それを見るのが辛い彼は直ぐに玄関から立ち去った。

夫の戦死公報を読んだ奥方は崩れるように泣き始めた、部屋の奥では生まれて1年ほどの赤子が父親の死も知らずに健やかに眠っていた。

崩れ落ちた、母を見た4歳ぐらいの長男がやって来て母親に聞く。
「お父さんは、いつ帰ってくるの?」
母親は嘘をつけずに、本当の事を言う。

「お父さんは、戦場で死んでしまったの」
泣き崩れる母親に長男が食い下がる。
「嘘だ!撃墜王の父さんは絶対死なないって言っていたじゃ無いか!」

泣き崩れる母親を見ながら、長男も泣き始めた。
「お母さん、僕も軍人になって、叛徒を皆殺しにして、お父さんの敵を討つんだ!」

 
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