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空に星が輝く様に

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115部分:第九話 遠のく二人その九


第九話 遠のく二人その九

「人それぞれなんだし」
「だったらいいけれど」
「とにかく言ったら?まず大丈夫よ」
「だからそれは」
 目を伏せてだ。口を微妙に歪ませての言葉だ。
「そんなことできたら」
「全く。お姉は本当に意気地なしなんだから」
「あのね、それはね」
「はいはい。愚痴は聞いてあげるから」
 笑いながらその姉の前にお菓子を差し出す。見ればクッキーである。
「食べて。漫画でも読みながらね」
「クッキーなのね」
「お姉好きよね」
「それはあんたが一番よく知ってるじゃない」
 姉妹である。それで知らない筈もないことだった。
「それは」
「だから持って来たのよ」
「気を遣ってくれたの?」
「そうよ」
 その通りだと素っ気無く述べたのである。
「甘いものは頭の栄養になるしね」
「栄養にね」
「だからね。読んでね」
 また言う星子だった。
「それとだけれど」
「それと?」
「はい、これもね」
 今度はお茶を出してきたのである。ミルクティーだ。
「これも飲んでね」
「有り難う」
 お茶を前にして素直に礼を述べた。
「それじゃあ。飲ませてもらうわね」
「っていうかどんどん飲んで。それで先輩は?」
「斉宮のこと?」
「結局動かないのね」
 それを言うのだった。少し呆れながらだ。
「そのままなのね
「それはね。まあね」
 右手にカップを持ちながらだ。そうして言うのだった。
「ちょっとね」
「やれやれ。うかうかしていると本当にやばいわよ」
「やばいって」
「先輩誰かに取られるかもよ」
 悪戯っぽい笑みにもなるのだった。
「そのうちね」
「そのうちにって」
「まあ冗談だけれどね」
「何よ、冗談って何よ」
 怒った声になる星華だった。
「それ、冗談になってないじゃない」
「なってない?」
「なってないわよ」
 まだ言うのだった。
「全然ね」
「まあ先輩もね」
「先輩も?」
「あれで奥手というかそういうのだけれどね」
「そうよね。あいつ鈍いのよ」
「とはいってもお姉の意気地なしも困ったものだけれど」
 また姉の話をしてみせる。
「どうなのよ、それ」
「だからね。私はね」
「わかったら頑張るのよ。これでも応援してるのよ」
「本当に?」
「こんなことで嘘言ってどうするのよ」
 こうまで言う星子だった。
 
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