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111部分:第九話 遠のく二人その五


第九話 遠のく二人その五

「怪我、多いよな」
「投げて投げられてだからな」
「うん、だから余計にね」
「そうか。柔道をやってか」
 陽太郎は赤瀬の横で頷く。赤瀬の方が頭一個分以上大きい。
 赤瀬のその横でだ。また話す陽太郎であった。
「そういうことか」
「うん、それで問題があるのは」
「問題は?」
「畳の上で柔道するのはいいんだよ」
 それはいいというのだ。
「それはね」
「いや、普通柔道は畳でするものだろ」
 赤瀬を見上げての言葉だった。
「それだろ。違うか?」
「いや、それがね」
「違うのかよ」
「酷い奴もいてね。とんでもない奴がいてね」
「とんでもない奴がかよ」
「うん、畳で投げずにね」
 赤瀬は話すのだった。その大きな顔がかなり曇っていた。
「床で投げたりするのがいるんだよ」
「えっ、床でかよ」
「うん、床でね」
「それ絶対にやったら駄目なんじゃないのか?」
 陽太郎がしているのは剣道である。だから柔道のことはそれ程詳しくはない。しかしその彼もこのことはわかっているのであった。同じ武道をしている者としてだ。
「そんなことしたら怪我じゃ済まないんじゃないのか?」
「しかも受身を知らない相手にね」
「えっ!?」
 それを聞いて余計にであった。
「そうなのか!?素人に床で背負い投げ!?」
「それする奴がいるんだよ」
「世の中そんな奴がいるのかよ」
「しかもだよ」
 さらに話す赤瀬だった。
「それを教師がするんだよ」
「教師がねえ。とんでもない話だな」
「ああ、その教師懲戒免職になったから」
「当たり前だ」
 目を怒らせての返しだった。
「普通の世界だったら刑務所行きだろ」
「たまにだけれどそういう奴もいるからね。中にはとんでもない怪我もあるから」
「柔道って大変なんだな」
「そうなのか」
「それにね」
 そしてであった。
「普通にやっていても怪我の多いのが柔道だしね」
「剣道とは全然違うんだな」
「剣道だってそうじゃない」
 しかしここで赤瀬は剣道についても話すのだった。
「そっちもね」
「剣道も?」
「実際にアキレス腱とか使うよね」
「ああ」
「それで油断したら切れたりするじゃない」
 話すのはこのことだった。
「それが問題だと思うよ」
「そうか、それな」
「わかるよね、それは」
「ああ、確かにな」
 赤瀬の言葉にまた腕を組んで頷く。言われてみればその通りだった。
 そしてだ。陽太郎は腕を組んだままさらに言うのだった。
「切れたらもう致命傷だからな」
「そう、だから油断したら駄目だよ」
「わかったよ。そうだな」
「武道は怪我と背中合わせだよ。それを考えたら外科だけじゃなくてね」
「その他もだよな」
「そう、それもね」
 また話す赤瀬だった。
「スポーツの怪我のことも勉強しないといけないかな」
「そうだな。そっちもいいよな」
 腕を組んでの言葉を続ける陽太郎だった。
 
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