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107部分:第九話 遠のく二人その一


第九話 遠のく二人その一

                第九話  遠のく二人
 陽太郎は教室に入ると椎名のところに向かった。だが彼女は今は自分の席にはいなかった。
 それでもう一人のクラス委員の赤瀬に聞くとだ。こう答えてきた。
「四組にいるよ」
「四組に?」
「うん、最近休み時間とかはずっとそこにいるよ」
 こう言うのだった。
「四組にね」
「そこにか」
「行く?」
 赤瀬は今度はこう言ってきた。
「今から。どうするの?」
「ああ、そこまではいいさ」
 そこまではというのだ。
「それはさ。それじゃあ待つさ」
「うん、そうするんだね」
「しかしな」
 陽太郎はここでまた赤瀬に言った。今度は赤瀬自身にだ。
「クラス委員は今実質御前一人なんだな」
「まあそうなるね」
「大丈夫なのかよ、それで」
 首を傾げさせながらの言葉であった。
「一人でよ。しかも御前等って」
「僕達って?」
「二人一組じゃねえかよ」
 このクラスでのクラス委員の分担も話したのである。
「御前が力仕事担当で椎名が頭脳担当だろ?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ片方いないとまずいだろ。御前だけでも椎名だけでもよ」
「ああ、それは大丈夫だから」
 しかし赤瀬の返答は実にあっさりとしたものであった。
「それはね。上手くやっていってるから」
「上手くって?」
「うん、椎名さんがいつも事前にやるべきことをメモにして渡してくれているからね」
 だから大丈夫だというのである。
「平気だよ、やっていってるよ」
「メモか」
「うん、そうしたことはちゃんとしてから行ってくれるから」
「そうか、だから大丈夫なんだな」
「それに大抵のことは僕だってできるしね」
 赤瀬はこうも言った。
「力仕事だけじゃないから。っていうかさ」
「何だよ」
「僕鉄人二十八号じゃないから」
 こう言うのである。
「電波を出す操縦機で動く存在じゃないからね」
「いや、そこまでは言ってないけれどな」
「じゃあ僕はあれかな。鉄人かジャイアントロボで」
 そうした存在ではないかというのだ。言われてみればその巨体は確かにロボットめいている。どうやら赤瀬の方でも自覚があるらしい。
「それで椎名さんが正太郎君か大作君かな」
「まあ小さいしな」
 陽太郎は椎名の小ささについて言及した。
「それだったら。そうかもな」
「椎名さんもね。人をコントロールのするの上手だしね」
「あれは将来恐ろしいけれどな」
 陽太郎は腕を組んで述べた。
「しかしな。俺に直接言わないで西堀に言うのはな」
「何が?」
「この前西堀に言われたんだよ」
 デートの時とは言わなかった。それは気恥ずかしくて言えなかったのである。彼も繊細なところがあるのだ。それで隠したというわけなのである。
「あいつ俺のいいところは西堀には言って俺には言わなかったんだよ」
「椎名さんらしいね」
「らしいのかよ」
「昔からそうなんだ。中学生の時からね」
 その時からだというのである。
「人の悪いことは面と向かって言うけれどね」
「それでもいいことは言わないのかよ」
「あれで結構恥ずかしがり屋さんなんだよ」
「えっ、嘘だろそれって」
 赤瀬の恥ずかしがり屋という言葉に反応したのである。
 
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