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空に星が輝く様に

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102部分:第八話 ファーストデートその十


第八話 ファーストデートその十

「やっぱりあれですね」
「あれって?」
「ザッハトルテですね」
 それだというのである。
「それが一番美味しいですね」
「それがなんだ」
「はい、ザッハトルテがです」
「ザッハトルテっていったら」
「御存知ですか?」
「オーストリアのあれじゃないの?」
 こう切り出した陽太郎だった。
「あの贅沢なチョコレートケーキだよね」
「はい、それです」
 まさにそれだと返す月美だった。
「オーストリアのウィーンの」
「そんなのもあるんだ」
 それを聞いてあらためて驚くのだった。
「普通のパン屋に」
「凄いですよね、それって」
「そうだよなあ。けれど美味しいんだ」
「はい、とても」
 美味しいと。実際に言いもするのだった。
「美味しいですよ」
「そうか。だったらそれにしようかな」
「是非です。そうして下さい」
「そうして下さいなんだ」
「もう本当に美味しいですから」
 心から勧めるのだった。それが言葉にも出ていた。
「それじゃあ」
「うん、それにするよ」
「そのザッハトルテですけれど」
 お菓子のことになるとかなり饒舌になる月美だった。それを話してである。笑顔になってそのうえで陽太郎に対して話すのである。
「本場の味を再現してですね」
「オーストリアの?」
「そして日本人の口に合うようにしてあるんですよ」
「ちょっと待って」
 陽太郎は今の月美の言葉にふと気付いたことがあった。
「今本場って言ったけれど」
「はい?」
「ひょっとして食べたことあるの?」
 それを問うたのである。
「本場のザッハトルテ」
「そうですけれど」
「どうやって食べたの、そんなの」
 それを問うのだった。問わずにはいられなかった。
「本場のザッハトルテなんてさ」
「どうしてって。ウィーンに行きまして」
「行ったんだ」
「夏休みに家族旅行で」
「俺の家の家族旅行っていったら」
 辛い食べ物がふんだんに出て来る国がまず思い浮かんだ。
「韓国に」
「韓国ですか」
「あと中国にアメリカ西海岸。それだけだけれど」
「台湾はどうですか?」
「あるよ」
 そこもあった。
「今度タイに行こうかって話してるけれどさ」
「太平洋系なんですね」
「ウィーンみたいな優雅さはなかったなあ」
 むしろ対極にあると言っていい。
「いいなあ、優雅なお菓子かあ」
「そうですか?私台湾大好きですよ」
 月美は笑顔でまた言ってきた。
「あそこの料理も凄く美味しいですし」
「台湾もって」
「パリのレストランは何か気取っていて」
 またしても何気に物凄いことを言う月美だった。
 
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