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ロボスの娘で行ってみよう!

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第54話 養子はテンプレ


ユリアンがヤンの元へ行くシーンが原作と違ってます。


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第54話 養子はテンプレ

宇宙暦794年1月25日

■自由惑星同盟首都星ハイネセン 統合作戦本部 リーファ・L・アッテンボロー  

ヴァンフリート4=2の準備が終わり、後は来月の出撃まで時間が出来たので、キャゼルヌ准将がヤン大佐を呼んでいるとのこと、此は時期的にユリアンを引き取る話だと判ったので、ついでに私も着いていくことにした。何と言ってもテンプレだしね。

「ヤン先輩、一緒に行きますね」
「けど、この時期にキャゼルヌ先輩も何の用だか?」
「大佐になったから、何か押し付けられるんですよ」

ユリアンと言う最高品質の弟子だと私は知ってるけどね。
「おい、リーファも大佐になったんだろう」
「此方は、旦那を飼っていますんで」

「アッテンボローは犬かい」
「いえいえ、立派な旦那様ですよ」
「ふう。ご馳走様」

そんな話をしながらキャゼルヌ先輩のオフィスへ到着。

「ヤン大佐、アッテンボロー大佐入ります」
「空いてるぞ」

「どうしたい、リーファは呼んでないんだが」
「面白そうなので来ましたし、家の用事も有りますんで」
「そうか、あのことか?」
「そうです」

ニヤニヤのキャゼルヌと困惑のヤンの対比が面白い。

「所で、私に用とは?」
「一人里親に成ってもらいたくてね」
「私がですか?」

「独身だと言う事自体社会的不適合だな、しかも大佐でだ、一人ぐらい養う義務があるぞ」
おや、原作と違う話になってるな。
「独身じゃ、育てられないですよ」

「大丈夫だ、家事に関してはお前さんより遙かに上だ」
「キャゼルヌ先輩、その子の名前はなんて言うんですか?」
「まあそのな」

「ああ、判った、キャゼルヌ先輩の隠し子ですね。オルタンスさんに言いつけようっと」
「違う違う、隠し子などいないぞ」
「アハハ、冗談ですよ」

「全く、お前は碌な事を言わないんだからな」
「お褒めに預かり恐縮です」
「まあ、いい。名前はユリアン・ミンツ、782年3月25日生まれで、もうすぐ12歳だ」

「ミンツってもしかしてミンツ大尉のお子さんですか?」
「ああ、そうかお前達2人とも面識があったな」
「そうですか。あの写真の子ですね」

「で、ヤンどうする?」
「そう言われたら、引き受けますよ」
「男が廃る訳ですね」

「ヤンに廃る男があるかは不明だがな」
「先輩酷いですよ」

そう言えば、去年の暮れにカリンのお母さんが無くなったんだよな、
先輩に頼んでおい頼んだけど出来たのかな?

「そう言えば、リーファに頼まれていた病院であったという少女だが、母親が昨年無くなって今里親捜しの真っ最中なんだが」
キャゼルヌ先輩の顔が困惑である。

「やはり、帝国貴族の私生児じゃ引き取り手はありませんか」
「知っていたか」
「もの凄く寂しそうな姿が、気になったので人事課で少々調べました」

「リーファ、それは不味いんじゃないか、個人情報の漏洩に繋がるぞ」
「まあ、蛇の道は蛇と申しますから、情報部にちょいちょいと」
キャゼルヌ先輩とヤン先輩が頭を抱え始めた。

「まあ、いい。リーファじゃ仕方ないと諦めよう」
「そうですよ、浮気調査から私生児まで何でもござれです」
「よしてくれ、頼むからな」

「前向きに検討したく存じます」
「まあ仕方ない」
「考える気ないな」

キャゼルヌが溜息をつきながら、書類を捲る。
「カーテローゼ・フォン・クロイツェル、784年6月26日生まれの9歳、亡命貴族エリザベート・ローザライン・フォン・クロイツェル中尉の私生児。父親は不明。母親クロイツェル中尉は放射線障害で昨年12月10日に死去、その後里親先を探すも帝国貴族の私生児と言う事で駄目な状態なんだ」

「全く、自由と平等とか言いながら、人種差別するとは酷い連中だ」
「全くだね」

此処でカリンを家で育てるのは、テンプレなんだよね。けど可哀想な境遇のままであの性格になったのであれば、そのままの君で居てだけど、やっぱり可哀想だから、我が家で面倒見る事にしよう。シェーンコップには当分逢わせないようにしよう。

「キャゼルヌ先輩、その子家で育てます」
「リーファ、お前結婚したばかりだろう、俺としては嬉しいが、新婚家庭に子供は難しいんじゃないか?」

「いえ、家と言っても実家で育てます。父も母も、兄や私が家を出たので寂しがってますし、それに父の策略で、私の官舎が何故か、将官地区で実家の直ぐ近くなんですよね。それならば、一緒に面倒みられますし、それにご存じと思いますが、家は父の母が帝国からの亡命者ですから。その子も疎外感が無いと思うんですよ」

「うーん、しかし元帥やお母上は納得するのかい?」
「一寸連絡してみますね。父は今の時間なら宇宙艦隊司令本部に居るはずですから」


『司令官閣下はお昼寝の時間です。敵襲以外起こすなとの指示ですが』
「良いから起こして頂戴、娘の一大事だと聞けば納得するから」
『はぁ』

「リーファ無茶やるな」
「全くだ」

暫くすると、TV電話にロボス元帥が現れた。慌てたようで寝癖が未だ直っていない。

『リーファなにかあったか?』
「おはようございます。ロボス元帥閣下」
『うむ』

「お父さん、子供欲しく無い?」
『は_?』
ロボス元帥からはキャゼルヌもヤンも見えない状態である。

「子供が1人家に増えるかも」
『なんだと、リーファ、おめでたか。此は仕事どころじゃない、早速母さんとベビー用品を買いに行かんと!』
「お父さん、勘違いだよ。未だ未だです。養女を迎えないかって話しですよ」

『養女とは?』
「お父さんも、病院であったでしょう。帝国貴族の私生児ちゃんを」
『あああの可愛い子か、その子がどうしたのかな?』

「母親が昨年無くなったんだけど、引き取り手がないんだよね」
『それは又何故?』
「帝国貴族の私生児だからと言うだけでだって」

それを聞いた、ロボスの顔色が赤くなる。
『けしからん輩だ!、儂の母上も帝国からの亡命者だった』
「でしょ」

『うむ、これは何かの縁かもしれんな』
「どうかな。父さん」
『判った、儂としては、賛成だな』

「了解、じゃあ、私が母さんには連絡しておく?」
『いや、家長たる儂の役目だからな、連絡しておこう』
「判ったです、それじゃ宜しくね」
『ああ』

映像が切れると、キャゼルヌとヤンが関心した様に話し始める。
「リーファ、凄すぎるぞ」
「驚いたよ」

「まあ、こんなもんです」
「まあ、何とも言わんが、公私混同は慎む方が良いぞ」
「はい、今回はやり過ぎでした」

「まあ良いでしょう」
「それでは、ロボス元帥がカーテローゼ・フォン・クロイツェル嬢をトラバース法に基づき養育すると言う事でいいのかな?」
「はい、お願いします」

「じゃあ、ヤンはユリアン・ミンツと言う事で良いな」
「判りました」


宇宙暦794年2月1日

■自由惑星同盟首都星ハイネセン ロボス元帥邸 カーテローゼ・フォン・クロイツェル

たった1人で私を育ててくれたお母さんが死んじゃって私は一人ぼっちになった、お父さんの名前を教えて貰えなかった。けど誰より優しいお母さんを捨てた男なんてお父さんでも何でもないんだ!それでもお母さんが病気になった時、何処からかお父さんがやって来てくれると期待していたけど、結局は誰も来なかった。

お母さんが死んじゃったので悲しくて悲しくて泣いていたのに、お父さんは迎えに来てくれなかった、それから施設に引き取られたけど、帝国貴族の私生児だって言うだけで、他の子から虐められた。何で、何でなの、私は何も悪い事して無いのに、帝国人てだけで足を引っかけられたり、物を隠されたりするの、そんなに私の血が汚いの。

同じ時期に施設に入った子達は直ぐに新しい家族の元へ迎えられているのに、私は何時も帝国人帝国人と嫌がられる、もう嫌だ、お母さんの所へ行きたいと思うけど、夢の中でお母さんが泣くので頑張ってきたんだ。けど今回私も新しい家族が出来るそうだけど、帝国人と虐められないか怖いです。

施設の人に付き添われて、少しの荷物を持って家に行きました。其処にいたのはお母さんより若いお姉さんでした。お姉さんはにこやかに『カーテローゼちゃんだよね、カリンちゃんて呼んで良いかな?』と優しく話しかけてくれました。よく見ると病院で会った事のあるお姉さんでした。

私がふさぎ込んでいたときに話しかけてくれたお姉さんの姿に私は泣きたくなりました。そのお姉さんが迎えてくれると言う事は、お姉さんが新しい家族なのでしょう。私は不安と希望で胸が一杯になりました。施設の人は、お姉さんに書類を渡して帰っていきました。

■自由惑星同盟首都星ハイネセン ロボス元帥邸

「カーテローゼちゃんだよね、カリンちゃんて呼んで良いかな?」
「はい」
「狸の館へようこそ」

「え?」
「カリンちゃん。病院で狸みたいなお腹のお髭のおじちゃんに会ったでしょう」
カリンは一生懸命思い出し、お腹の出た優しい顔のおじちゃんを思い出した。

「病院でジュースをくれたおじちゃん」
「そうよ、その狸おじちゃんが、私のお父さんなのよ」
「お父さんを狸」

笑い出す2人。

「リーファ、そろそろ良いんじゃないか?」
「そうよ、お外で立ち話じゃ寒いわよ」
玄関から初老の男女がにこやかに現れた。

「カリンちゃん、病院以来だね、今日からここがお家になるんだよ」
「カリンちゃん、私がママに頑張って成るわ」
「ママじゃなくてババの間違いじゃないか」
「貴方、お小遣いを減らすわよ」

呆気に取られるカリンだが、凄く優しそうな人達だと直感的に感じていた。
「さあさあ、早く入りましょう」
「あいあい」

食堂へ通されると、一生懸命作った事が判る、手作り料理の山が待っていた。
「さあ、カリンちゃん、一杯食べてね」
「はい。頂きます」
「良い子だ」

どれを食べても美味しい食事に、カリンは安心感を得ていた。
4人での楽しい食事が済むと、カリンは不安が沸いてきた、帝国人と知られたらここからも追い出されるのでは無いかと。

「カリンちゃんの生い立ちは判っているわ、けどねそれを気にするなとは言わないけど、悲観だけはしないで、私も4分の1は帝国人だから」
その言葉に驚きを隠せない。

「儂の母さんが帝国からの亡命者で、子供の頃は良く虐められたものだよ。けど、そんな連中は碌でもない奴ばかりだった、カリンちゃんもお母さんから貰ったその心と体に自信を持って生きて行きなさい」

「私達じゃ、カリンちゃんのお母さんやお父さんの代わりには、成れないかも知れないけど、私達はカリンちゃんを娘として一緒に居たいの」

「私も、姉としてカリンちゃんを見守っていたいわ」

3人の真摯な言葉にカリンは心の底から嬉しさで泣き始めた。

「お母さんて呼んでいいの?お父さんって呼んで良いの?お姉ちゃんって呼んで良いの?」
「勿論よ、カリン」
「無論だ」
「カリンちゃん」

抱き合う4人であった。
この日以来、ロボス家に新しい家族が増えた、カーテローゼ・フォン・クロイツェル通称カリン。

翌年トラバース法を嫌い、正式な家族と成るために、ロボス一家の申請で、カーテローゼ・ロボスと名乗りロボス家の2女として正式に養子縁組をする事になった。

同じ頃ヤン・ウェンリー大佐の元へユリアン・ミンツ少年が被保護者として住む事になった。
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カリンを養女にするテンプレをしました。
原作と違いカリンは父親の名前を知りません。
 
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