| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ロボスの娘で行ってみよう!

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第53話 皇帝とグリンメルスハウゼン


医者へ行く前に予約投稿です。風邪引きました。
********************************************
第53話 皇帝とグリンメルスハウゼン

帝国暦484年10月5日

■銀河帝国 オーディン ノイエ・サンスーシ

銀河帝国全土を駆け抜けた同盟の女流作家E・W事件の影響が益々吹き荒れている中、ノイエ・サンスーシにグリンメルスハウゼン子爵と子爵の部下ケスラー中佐が密かにフリードリヒ4世により秘密の小部屋に呼び出された。

「陛下におかれましては、ご心労と存じます」
「うむ、あの一連の事で、心休まる事がないでな」
「リヒテンラーデ侯の事誠に残念でございます」

「あの者が心臓発作で倒れるとはな」
「国政が滞りますが、如何致しますか?」
「カストロプも辞任して帰国したのでな。此処は思い切る事にしたわ」

「国務尚書は、暫くマリーンドルフに任せる事にした。財務尚書はゲルラッハ子爵じゃな」
「マリーンドルフ伯爵はカストロプの縁戚なれど、清廉潔白で有名ですございますな」
「そう言う事じゃ、今の帝国には後ろ暗い貴族が多すぎるのでな」

「しかし、ブラウンシュバイク公爵やリッテンハイム侯爵は何も言わ無かったのですか?」
「あの者達とて、後ろ暗い事も有る、皇位継承の争いで足をすくわれたくはないのじゃろう」
「グリンメルスハウゼンよ、あの者の小説は余りにも帝国の内情を知りすぎておる、そちの調べし文書すら、一部に使われておる。何処で流出したのではないか?」

「調べましたが、上面を使った文章は多いのですが、残りの記載等は推測や出鱈目が多いのも事実でございます」
「なるほどの。そうなると、ある程度事情を知る者の仕業という訳やもしれんな」

「あの本がどの程度正かケスラーに調べさせましたので、ケスラーにご報告させます」
「うむ、ケスラー、発言を許す」
「御意」

皇帝の言葉にケスラーは恭しく返答をすると、端末を操作しスクリーンに資料を映し出す。
「恐れ多くも、皇帝陛下や皇室のお話をさせて頂きますが、ご容赦頂きたく存じます」
「良い、そちのせいでは無い、存分に報告せよ」
「御意」

「まず、実際に調べた結果事実と判明した物【フォルゲン伯爵のマチアス君】【汚職の人】【カストロプ式汚職法】です、これらはに要点が纏められていますが、曖昧な描写が多いモノです」

「続いて【競馬場の決闘】【駆逐艦ハーメルンの叛乱】【2人は勇敢《ムーティヒ》】これらは有る一定の人物を示しています」
「ミューゼルのことじゃな」
「御意」

「次に象徴的ながら、機密のはずの事にございます【ノイエ・サンスーシでかくれんぼ】【劣悪遺伝子ルドルフ】【皇帝暗殺】【流血帝と止血帝】【暗赤色の六年】【皇帝陛下と男の娘】
【好色一万人男】皇室の内情を知らねば書けない文章でございます。」

「地下迷宮の入り口が中庭の皇帝像の下に有るなど普通は判らん事じゃ」
「誠に、知っているのはごく少数のみ」
「ランズベルク伯爵も調べさせたが、誰にも漏らしては居ないと驚いておったわ」

「此ほどの極秘情報なれど、漏らした人物が特定出ぬとは」
「良い良い、ケスラー続きをせい」
「御意」

「この二つはごく普通に流布している情報が元になっては居ますが【地獄の使者がやってくる】【私利私欲の裁き】裏話等が良く書けているようでございます」

「これら2点【男爵夫人と7人の恋人】【B夫人とG夫人】は実在の人物を元に創作した物でありますが、人物の描写がその人物ズバリであり、男爵夫人はそのせいで社交界への参加を取りやめているほどです」

「BとGはシュザンナとアンネローゼであろう、シュザンナの葛藤は予も良く知っておるが、確かに思い当たる事がおおかったわい」

「この【やばい文書を受け取ろう】はまさにグリンメルスハウゼン子爵の書きためてある文章の一部と一致しておりました」
「此が表に出るとは思えませんが」

「そうじゃの、そちが漏らす訳がない、しかし他の貴族からは命を狙われるかも知れんから、身辺には気をつけるのじゃぞ」
「勿体ないお言葉にございます」

「続いて、余りに不敬でございますが、【皇子3人殺物語】【土下座皇帝】【ロリコン皇帝・少女を抱く】【戦死者は宮内省に獲る】恐れ多くも、陛下を比喩した物だと判りました」
こめつきバッタのように頭を下げまくるケスラーをフリードリヒ4世は手で制する。

「ケスラー良い、予の乱行はよう知られておる、そちが気に病む事はない」
「そうよ、ケスラー、陛下の仰る通りだ」
「御意」

「最後に【義眼の人】【スカートの中の大将閣下】【赤毛のデューク】【レオンハルト・フォン・ローゼンクランツ】シリーズは、帝国の社会を風刺した小説と思われます」
「うむ、ケスラーご苦労で有った、此からも調べるようにせよ」
「御意」

その言葉の後にケスラーは退室していった。
部屋に残ったフリードリヒ4世とグリンメルスハウゼンは二人で話し始める。

「グリンメルスハウゼンよ【スカートの中の大将閣下】【赤毛のデューク】【レオンハルト・フォン・ローゼンクランツ】は、間違えなく、ミューゼルの事であろう。しかし何故此処まで詳しく書けるのか、不思議じゃ、あの者が予を怨み帝国を奪い取るつもりなのは、目を見れば判るわ。ミューゼルは気がついてはおらんがな」

「真、ミューゼルは未だ未だ未熟でございますな」
「そうよ、この度の幼年学校の事で准将に昇進させたのでな、そちの艦隊に配属し次の出兵で資質を試すのじゃ、それにより、あの者に帝国を滅ぼさせる事を決めようぞ」

「ご心中お察し致します」
「息子は、兄弟を暗殺し、挙げ句に後ろ盾もない精神障害のある孫を残して頓死じゃ。娘婿達は啀みあい権勢を求めるだけ、このまま行っても帝国は無様に分裂し崩れ去るだけじゃ、それならば華麗に滅びた方がマシじゃ」

「御意」


帝国暦484年10月末

帝国暦484年後半に入ると更に帝国に打撃を与える文章が同盟で発刊された。最近は社会秩序維持局などの官警がそれの内容を元に検挙を行う事が多く成ってきていた。カール・マチウス・フォルゲンやバーゼル少将やシャフト大将の件が実際の事件であり、小説と馬鹿に出来なかったからである。

そしてまたも犠牲者と逆に賞賛される者が出たのである。

内務省に勤める役人が、若い頃から匿名で福祉施設に多大な寄付を続けて居た【汗かきおじさん】が発表され、その人物がハイドリッヒ・ラングであると判り、同僚達から驚きを持って称えられ。その事が元でラングはその後内務省で出世の階段を上っていくのである。

逆に帝国内で、議会を開催し平民の生活向上を考える組織を考え、国民の意識改革を進めようと考えている開明的な政治を求めていた者達の話【進歩的な社会経済再建計画】が社会秩序維持局により帝国に対する謀反として認定され、その推進者として名前が挙がった。カール・ブラッケ、オイゲン・リヒター、ブルーノ・フォン・シルヴァーベルヒ、クラウス・フォン・オスマイヤーなど20数名が逮捕された。

取り調べは過酷を極めた、カール・ブラッケ、オイゲン・リヒターは貴族で有りながら、自らフォンを除いている事も帝国に対する叛意有りと認定され、2人の持ち物から、共和主義的な書籍等が発見されたために完全に黒であるとさた。

その後。カール・ブラッケ、オイゲン・リヒターは反帝国主義の主犯として処刑された。シルヴァーベルヒとオスマイヤーは無罪と判ったが既に重傷でそのまま処分され病死として届けられた。その他の参加者は流刑星へと流刑され、数年以内に全員が死亡したのである。

此により、原作ではローエングラム王朝内閣の主要メンバー4名がこの世から消えたのである。逆にラングの増長が始まり、多くの無実の者が断頭台へ送られる事に成るのかも知れない。帝国の国力は益々低下し、政治は乱れて行くのであった。


帝国暦485年1月10日  軍務省

帝国で粛正の嵐が吹き荒れる中。同盟軍の新兵器の情報と第6次イゼルローン攻略戦の情報が遂に入ったのである。尤も同盟軍情報部が態と流した、真っ赤な嘘の情報であったが、シャフト大将以下の科学技術総監部が全滅状態で有ったために、その新兵器のスペックをそのまま帝国軍上層部が信じてしまった事も、帝国がヴァンフリート星系へ進撃する元因と成った。

この報告を受けた、帝国軍三長官は直ぐさま会議を行った。

「叛徒共の新兵器とは?」
「情報部の報告では、新型砲艦だそうだが」
「その程度で驚くほどでは無いのでは?」

「搭載兵器が問題なのだ」
シュタイホフ元帥の言葉にミュッケンベルガー元帥が質問をする。
「いったいどんな兵器なのだ?」

「何でも、一発でイゼルローン要塞クラスを撃破できる兵器だそうだが」
「なんと、そのような兵器が出来るとは思えんが」
「プラズマシューターとか言う兵器で、高圧高密度のプラズマを発射する兵器だそうだ」

「科学技術総監部はどう言っている?」
「新たに総監部に配属された者達は未だに活動できていないからな」
「うむ、最悪の方を考えねばならんのか」

「本当だったら目もあてられん」
「それで、敵の動向は?」
「そのプラズマシューター、ヘカトンケイルとか言うらしいが、超大型なのでヴァンフリート星系で組み立てた後で進撃するらしい」

「由々しき事だ、それでイゼルローン要塞に偵察を命じたのだが、敵一個艦隊がヴァンフリート星系に駐屯していて駐留艦隊だけでは偵察も出来ん」
「そこまで行くと、本当のようだな」

「此処で、イゼルローン要塞を失う訳にはいかない、艦隊はどの程度出せるのかな?」
エーレンベルグ元帥の言葉に苦虫を噛みつぶした様な顔のミッケンベルガー元帥が話し出す。
「今の状態だと10個艦隊+地方隊ぐらいしかだせんな」

「しかし、カストロプ公を筆頭にサイオキシン麻薬やその他の汚職で自領へ引きこもった貴族も多いからな、オーディンを空にする事も出来ないだろう」

「そうなると、敵の量次第だな、最大でも6個艦隊が最大だな」
「うむ、それしか有るまい」
「しかし、E・Wか帝国を愚弄しおって、八つ裂きにしてもあきたらん!」

「情報部には叛徒共の情報を益々収集するようにお願いしたい」
「判った」

こうして、益々、帝国軍はヴァンフリート星系という蟻地獄へ引きずり込まれるのであった。



************************************************
益々帝国の人材が消えていきます。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧