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英雄伝説~西風の絶剣~

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第46話  武術大会  予選開始

 
前書き
 リィンの変装はSAOのGGO時のキリトのアバターと同じものだと思ってください。 

 
side:リィン


 ラウラと再会した俺はとある事から武術大会に出場することになった、早速変装をするためにお店で服やウィッグを買って身に着けてみた。


「どうだ、二人とも?似合っているか?」
「……なんていうか女の子みたいだね」
「うむ、知っていなければ分からないな」


 どうやらウィッグを付けて髪を長髪のように見せてのは良かったらしく今の俺は女のように見えるらしい。


「知り合いにバレないならそれに越したことは無い、準備はこれで万端だ」
「承知した、それでは早速グランアリーナに向かうとしようか」


 変装を終えた俺たちはグランアリーナに向かい受付で事情を話した、ラウラの言った通り急遽できたルールだったのですんなりと受け入れてもらえ俺も武術大会に出場できるようになった。


「ラウラ様方はそちら側の通路から控室へと向かってください」
「分かった、ではリート、行こうか」
「ああ、フィルは観戦席に行ってくれ」
「了解、二人とも気を付けてね」


 フィーと別れた俺とラウラは受付の方に案内された部屋に向かうと複数のチームが作戦を立てていたりしていた。


「ん、あれは……」


 部屋の隅にいた集団を見て俺は驚きを隠せなかった、何故なら前に対峙したあの黒装束たちがここにいたからだ。


(どうして奴らがここに……)


 何故黒装束たちがここにいるのかは分からないが警戒しておくことにしよう、向こうの動きが分からない以上俺から接触するのはマズイからだ。


 暫くするとグランアリーナの受付の人が着ていた制服と同じものを来た女性が控室に入ってきた、恐らく武術大会を運営するスタッフの方なんだろう。


「皆様、間もなく武術大会の予選が始まりますので私からルールについて説明させて頂きます。本大会では武器などはこちらで用意した物を使用して頂きます、まずはこちらを受け取りください」


 スタッフの方がそう言うと控室の隅にあったカバーが外されてそこから沢山の武器が出てきた。どうやらこの武器は刃が潰されている特別製の物で人を切ることが出来ない仕様になっているようだ、銃も弾はゴム弾を使用するようにと指示があった。


(しかし武器の種類が豊富だな……)


 一般的な剣や銃以外にも東方の武器や軍人が使う銃剣など様々な武器が用意されていた。あれ全部用意したのか?


「とりあえず俺は太刀を……お、あったあった」
「ふむ……あまりしっくりとはこないが贅沢は言えないか」


 俺は太刀を手に取りラウラは大剣を手に取った、他のチームもそれぞれ武器を持ち全員に武器が行き渡った事を確認するとスタッフの方が話し始めた。


「予選は16チームによる8試合を行います、そして勝者した8チームが明日の本選に出場することが出来ます。試合のルールとしては4VS4のチームバトルで全員が戦闘不能となった場合決着が付きますが15分以内に決着が付かなかった場合はそれまでの試合で優勢だった方を勝者とします、また戦闘不能以外にもアリーナ周辺に敷かれた白いラインを超えると場外負けとなりますのでお願いいたします」


 なるほど、基本は全員を戦闘不能にすればいいが格上相手でも場外負けや優勢勝ちを狙える辺り唯強ければいいって訳じゃないんだな。


「次に試合中のルールを話します。戦闘不能になった者に対して過剰な攻撃を仕掛けたり、こちらが用意した武器以外の使用、目つぶしや金的、噛みつきなどの反則行為を取られたチームはその場で反則負けとします。またアーツの使用は許可しますが攻撃系のアーツは第3レベルまでのものしか使えないので注意してください」


 第3レベルと言うとブルーインパクトやヒートウェイブ辺りの物だな、確かにそれ以上だと範囲が広すぎて危ない物も多いし最悪死者が出かねないからな。


「説明は以上ですが何か質問のある方はいらっしゃいますか?」
「……」
「どうやら質問は無い様なのでこれで本大会についての説明を終わらせていただきます。間もなく第1試合が始まりますのでアナウンスに呼ばれたチームの方々は入り口前で待機をお願いします」


 いよいよ武術大会の予選が始まるのか……2人でどこまで行けるかは分からないがフィーが見ている前で無様な恰好は出来ないから全力を尽くすだけだ。それから暫く待っていたが試合は第7試合まで進んで行き俺たちはその間呼ばれなかったため、どうやら最後の第8試合に出ることになりそうだ。


(しかし遊撃士協会の人たちも出ていたのは意外だったな……)


 第7試合のチームは片方が遊撃士によるチームだった、しかもカルナさんやグラッツさんもいるようだから正体がバレないか心配になってきたぞ……


(まあそれはいいや、問題はあの黒装束たちだ……)


 奴らは第4試合に出たが圧勝でカタを付けていた、赤い仮面の男は動かなかったがあいつがフィーを傷つけた男に間違いないと俺は確信した。アナウンスで聞いた名はロランスという軍人で少尉だそうだ、何が目的なのかは知らないが今の段階では普通に試合をこなしていただけなので奴らの狙いが読めない状況だ。


『次は第8試合となりますので『アルゼイド』チームと『武術家ジン』チームの方々は準備をお願いいたします』
「ジンさんだって!?」


 アナウンスに呼ばれた相手側のチームの名を聞いて俺は驚いてしまった、つい先日にお世話になったジンさんとこんなところで出会うとは思ってもいなかったからだ。そういえば王都に用事があると言っていたがもしかして武術大会に出場することが用事だったのかも知れないな。


「知っている人物なのか?」
「ああ、つい先日に世話になったカルバート共和国出身の武術家だ。相当に強かったぞ」
「なるほど、そなたにそこまで言わせる程の達人か……これは胸が高鳴ってきたな」


 強敵と知ったラウラは怯えるどころか目を輝かせてやる気になっていた。こういう所は本当に変わっていないんだな、まあ気持ちは分かるけど。


『……続きましてこれより第8試合を始めます。なお、この試合を持ちまして予選試合は終了とさせていただきます』


 試合が始まるので俺とラウラは入り口前に立ち待機する。


『南、蒼の組。チーム『アルゼイド』所属。ラウラ選手以下2名のチーム!』
「では行くぞ、リートよ」
「ああ」


 門が開いたので俺たちは中央闘技場に向かう、そこには沢山の観客たちが俺たちを見下ろしており中々のプレッシャーを感じた。


『北、紅の組。隣国、カルバート共和国出身。武術家ジン以下1名のチーム!』


 向こうの門からジンさんが現れてこちらに歩いてきた。バ、バレないよな……?


『両チームは今回の大会でメンバーが揃わなかった為、人数が不足していますが本人たちの強い希望が合った為今回の試合が成立しました。皆様、どうかご了承ください』


 人数が不足していた俺たちを見て観客たちも少し困惑した様子を見せていたが、アナウンスの話を聞いて納得したのか落ち着いていた。


「ほう、俺の相手は君たちか。まだ若い様だがいい面構えをしているな、これはいい試合が出来そうだ」
「うむ、こちらも正々堂々と全力を持って戦わせて頂こう」
「……」


 ジンさんと軽く言葉を交わしてみたがどうやら俺だとはバレていないようだ、良かった。


『これより予選第8試合を行います。両チーム、開始位置についてください』


 俺たちは指定された場所に向かいそれぞれ武器を構えた。


「双方、構え……初め!!」


 審判の掛け声と共に俺とラウラは左右からジンさんに迫っていく、ジンさんは慌てることなく眼光を鋭くして構えを取っていた。


「はあぁぁ!!」


 ラウラの上段からの振り下ろしを紙一重で交わしたジンさんは続けて振るった俺の一撃を右腕の籠手で弾き回し蹴りを放ってきた。俺はそれをバク宙で回避して距離を取ったがジンさんは素早く接近していた。


「地裂斬!!」


 だがそこにラウラの放った一撃が衝撃となって直線状に突き進みジンさんに向かっていった。ジンさんは俺への追撃を中断して地裂斬を飛んで回避する。


「大丈夫か、リート?」
「助かったよ、ラウラ。それにしても……」
「ああ、強いな……」


 ジンさんの実力は知っていたがやはり強かった、俺とラウラは何回か共に戦った事があるのでコンビネーションを合わせることが出来るがジンさんはそれを普通に対処した。つまり俺とラウラが二人組んだ状態でもジンさんを相手するのは厳しい状況だという事だ。


「来ないのならこちらから行くぞ!」
「っ!?」


 ジンさんの姿が消えたかと思った瞬間、俺とラウラはその場を左右に飛んで離れる。するとそこにジンさんの姿が現れて正拳突きをしていた。


「何て速さだ……!」


 後一瞬反応が遅れていたら間違いなく喰らっていた、何とかかわせた俺たちだが体制を大きく崩れてしまいその隙を見逃すジンさんではなかった。


「行くぞ!」
「ぐっ!」


 俺に真っ直ぐに向かってきたジンさんに目掛けて弧影斬を放つがジンさんはそれをかわして左ミドルの蹴りを打ち込んできた。


(お、重っ……!?)


 咄嗟に腕を組んで防御したが一撃の重さに腕が痺れてしまった。ジンさんは立て続けに正拳突きを放ち俺を大きく後退させる。


「リート!」


 体制を立て直したラウラがジンさんに攻撃を仕掛けた、ジンさんはラウラの一撃をバックステップで後退してかわしてラウラに右ミドルでに一撃を放った、ラウラは右膝を使って防御したが苦痛の表情を浮かべていた。


「そらそら!」
「ぐうう……!」


 ジンさんは鋭いジャブでラウラを攻め続けた、武器の性質上小回りが利かない大剣では素早いジャブに対応することが難しくラウラは防御することで手一杯だった。


「はあっ!」


 ジンさんの背後から四の型、紅葉切りを放つがジンさんは籠手で全ての斬撃を冷静に見極めて防いでしまった。だが俺に気を取られたためかラウラへの攻撃が止み、ラウラはその隙をついて跳躍した。


「鉄砕刃!!」


 上空から放たれた重い一撃はジンさんを大きく吹き飛ばした、だがジンさんはラウラの一撃を喰らってもそこまで大きなダメージを受けていなかった。


「いい一撃だ、腕が痺れたぞ」
「むう、鉄砕刃を受けてもあの程度のダメージか……」


 ジンさんは攻撃だけでなく防御も堅かった。恐らく気を身体に巡らせて防御力を上げているんだろう、八葉一刀流にも似たような技術があるから何となく分かった。


「この動きを見切れるかな?」


 ジンさんは大きな体格を感じさせないような滑らかな動きで俺たちの周りを円を描くように回り始めた。すると次第にジンさんの姿がいくつにも見えてきた。


「これは、独特の足の動きを使う事で姿が重複して見えるのか……!」
「動きが読めんな……」


 ジンさんの動きに翻弄されていた俺の背後からジンさんが攻撃を仕掛けてきた、それをかわした俺はジンさんに攻撃を放つが攻撃はジンさんに当たるとジンさんの姿が消えてしまった。


「残像か!……っ!?」
「リート!……ぐあっ!?」


 ペースを乱された俺たちを四方から打撃が襲い掛かりダメージを蓄積していく、このままじゃマズいぞ……!


「ラウラ、広範囲を攻撃できるクラフトはないか?」
「あるにはあるが……恐らくあの御仁には当たらないだろう」
「俺に考えがある、ここは協力してくれないか?」
「……分かった、そなたを信じよう」


 小声でラウラに作戦を伝えた後、ラウラは闘気を剣に込めて勢いよく横に薙ぎ払った。


「洸閃牙!!」


 ラウラは自身の周りに必殺の一撃を複数に見えるジンさんに目掛けて放つ、その一撃をジンさんたちは残像とは思えないバックステップでかわした。


「中々いい技だが少し安直な考えだったんじゃないか?」
「……それはどうかな?」
「むっ?黒髪の嬢ちゃんの姿がない?」


 ラウラの言葉にジンさんは俺の姿がないことに気が付いた。


「俺はここです!」


 上空に飛び上がっていた俺は複数のジンさんの一人に目掛けて太刀を足で蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた太刀はジンさんに一直線に向かっていきジンさんはそれを弾いた。そう、弾いたのだ。


「見つけた!」


 動きの止まったジンさんの腹部に必殺の破甲拳を打ち込み大きなダメージを与えた。


「ぐはっ!」


 大きく後ずさりしたジンさんは呼吸を整えた後、俺を見てニヤリと笑みを浮かべた。


「なるほど、大剣使いのお嬢ちゃんにクラフトを出させる前に既に上空に飛んでいたのか」
「ええ、複数に分かれるように見せる足の動き……気を上手く張り巡らせていたから気配に鋭い俺でも本体が読めなかったです、でも攻撃を回避しようとすればあなたでも動きにムラが出来るはずだと思い上空から様子を見させてもらいました」


 ジンさんの動きは気配を読む力に長けている俺でも本体を探し出せないくらい見事なものだった。でも流石のジンさんでも広範囲に攻撃するクラフトが来れば回避に専念して動きにムラが出ると思いラウラに洸閃牙を使ってもらった。
 流石にあの動きを保ちながら回避までするとは思っていなかったが一瞬気の流れが乱れて気配が読めたのでそこに攻撃を仕掛けたという訳だ。太刀を蹴り飛ばしたのも意表を突くいい作戦になった。


「その若さで大した観察眼だ。しかしお前とは初めて会った気がしないな、どこかで会ったか?」
「い、いや俺は覚えがないです……」
「そうか、最近会ったような気がしたが気のせいだったか」


 前にもこんなやり取りをしたな……まあ今は決着をつける方が先か。もう既に13分が経過している、このままでは試合時間の15分になり優勢勝ちでジンさんが勝つだろう。


「一か八かか……ラウラ、アレをやるぞ」
「アレとは半年前に二人で生み出したアレか?しかしアレはまだ未完成のはずでは?」
「このままじゃ俺たちに勝ち目はない、なら最後に大きな一撃を出して賭けようじゃないか」
「賭けか……普段ならしないがこの場ならそれもまた一興か、承知した!」


 ラウラが俺の隣に並び立ち二人で武器を構える、ジンさんも俺たちの動きを見て今まで見たこともない構えを取った。


「どうやら大技でくるようだな、それなら俺も最高の技で答えよう」
「……態々付き合ってくれるんですか?」
「ああ、武人として最高のシチュエーションじゃないか」


 ……どうやらジンさんもラウラに似たような人らしい、好感は持てるけどね。


「……行くぞ!」
「……来い!」


 俺とラウラは武器を頭上に掲げて力を込めていく、炎と光が集まっていきそれが俺たちの頭上で大きな剣に形を変えていく。ジンさんも右腕に闘気をため込み必殺の構えを取った。


『奥義、炎魔洸殺剣!!』
「奥義、雷神掌!!」


 振り下ろされた必殺の一撃とジンさんが放った闘気の塊がぶつかりグランアリーナに巨大な衝撃が走った、そして煙が晴れて立っていたのは……



「ぐ、うう……」
「……負けたか」
「はぁ……はぁ……」


 地面に倒れる俺とラウラ、そして息を荒くしながらも堂々と立っていたジンさん、勝者は明白だった。


「しょ、勝負あり!紅の組、ジン選手の勝利!」


 遅れて放たれた審判の言葉にシーンとしていた観客たちは盛大な歓声を上げた。残念ながら力及ばず負けてしまったがとてもいい気分だった。



 こうして俺とラウラの挑戦は幕を閉じたのであった。








「オリジナルクラフト紹介」



 『炎魔洸殺剣』 


 リィンとラウラのコンビクラフト。お互いの武器を頭上に掲げて炎と光を纏わせた巨大な剣を生み出して振り下ろす。元ネタはライザーソード。

  
 

 
後書き
 ゲームでは高位アーツはぶっぱするわ、相手をザクザク切るわ、導力砲を放つわと普通なら死んでるような攻撃も戦闘不能で大丈夫ですが流石にそれだと現実的じゃないので細かいルールをお粗末ながら作りました。 
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