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ロボスの娘で行ってみよう!

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第50話 ハイネセン帰還


2話連続投稿です。
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第50話 ハイネセン帰還

宇宙暦793年1月22日

■惑星ルジアーナ造兵工廠

見事にヘルクスハイマー伯爵と追撃してきた巡航艦ヘーシュリッヒ・エンチェンを撃破したカールセン提督指揮下の訓練艦隊は22日に造兵工敞に帰着した。早速捕獲した巡航艦と囮とした偽装船が輸送艦から引き出されドック入りしていく。此処でヘーシュリッヒ・エンチェンのコンピューターなどを解析し消去したデーターなどの復元を試みるのである。

囮船は此処でお役ご免となり、造兵工廠の雑役船、ハルクとして利用されるのである。

造兵工敞長バウンスゴール造兵少将はドックに引き込まれる囮船の姿を見て御苦労だったなと思っていた。

前日に到着したヘルクスハイマー伯爵は座乗の輸送艦ごと造兵工廠の目立たないところへ停泊し伯爵自身も表へ出ない様にして貰っていた。此は関係者以外にヘルクスハイマー伯爵の存在を知らさないための対応であり、ヘルクスハイマー伯爵も納得して貰っていた。

アイマルラン号内では、ヘルクスハイマー伯爵はやっと来た安泰にワインを飲みながら寛いでいたが、娘のマルガレータは友達も居ずに、居るのは傾いでくるメイド達だけで寂しい思いをしていた。

其処へ登場したのが、連絡士官として乗り込んで来た、スーン・スールズカリッター大尉であった。彼の面白い名前を聞いたマルガレータ嬢は、彼との会話を楽しみだしていた。彼から聞く自由惑星同盟の話やハイネセンで流行っていることなど、自分を大事にし過ぎるお付きの者に比べて、好感を持てたのである。

カールセン提督率いる艦隊と合流したあとでも、マルガレータのお願いでスーンはそのままアイマルラン号に残り、マルガレータ嬢の話し相手をハイネセンへ到着するまで続けたのであった。その為に本来であれば、ジークフリード・キルヒアイスからジークと名付けられた、熊のぬいぐるみがスーンと名付けられる事に成ったのである。

このスーン熊が、後々にスーン・スールズカリッター大尉とマルガレータ・フォン・ヘルクスハイマー伯爵令嬢を繋ぐ1本の糸として影響を与えてくる事になるが、それは今暫く待たねばならないのであった。


旗艦ヘクトル艦上では、訪ねて来たバウンスゴール造兵少将とカールセン少将との会談が行われていた。
「バウンスゴール造兵少将、今回はありがとうございました」
「いえいえ。お役にたてて幸いです」

「今回の事に関しては宜しく」
「判っています。他言無用と言う事で」
2人はがっちり握手する。

僅かの時間で有ったが、両者とも通じるものが有ったようでにこやかに分かれるのであった。


宇宙暦793年1月23日

■惑星ルジアーナ造兵工廠

翌日未明1000隻の艦艇に戻ったカールセン提督率いる練習艦隊はヘルクスハイマー伯爵を守るように中央に輸送艦を置き、ハイネセンへの帰還の途についた。その中には病院船もおりアウグスト・ザムエル・ワーレン少佐以下怪我人が収容されていた。彼等もハイネセンへ向かうのである。

此は、ヘルクスハイマー伯爵事件自体が非常に重要な事件であり、囮作戦等も行われていた為に他の捕虜と同じ収容所には収容できないという考えからである。更に300万人もの捕虜を帰還させたために、各地の捕虜収容施設が閉鎖または縮小されたために敢えて地方へ置くことをしない事にしたのである。

ヘクトル艦橋では、カールセン提督以下スタッフが集まり、惑星ルジアーナ造兵工廠から発せられる『無事の航海を祈る』の発光信号を見ながら、敬礼をしていた。

「全艦隊発進せよ。目標ハイネセン」
カールセン提督が野太い声で命令をすると、各艦で復唱が行われる。
「「「「「全艦発進」」」」」」

発進した艦隊は艦隊列を作りながら、ワープポイントへ向けて進行していく。
此から20日間の航海が始まるのである。

航海の最中リーファはヘルクスハイマーとは会わないようにし続けていた、何故なら何時帝国に繋がるか判らないヘルクスハイマーに正体を見せたくないからであり、ヘルクスハイマーの女癖の悪さも険悪感を覚えたからであったので、対処はラップ少佐とスールズカリッター大尉に任せていたのである。

実際はエリザベート・フォン・ブラウンシュバイク、サビーネ・フォン・リッテンハイムの遺伝的情報を知りたいのであるが、ヘルクスハイマー伯爵自身が秘匿として未だに他者に教えない状態であり、その情報自体がある事も隠しているために、聞けない状態で有った。

マルガレータ嬢にも会いたい事は確かなのだが、此処は我慢のリーファであった。


宇宙暦793年2月12日

■自由惑星同盟 首都星ハイネセン

カールセン提督率いる練習艦隊は一人の死者も出さずに、無事ハイネセンへ到着した。艦隊は第1軍事ステーションに係留を行い始めた。

ステーションには態々国防委員長が迎えに来るほどであり、指向性ゼッフル粒子が同盟軍にもたらす恩恵を計っているかのようであった。更に宇宙艦隊副司令長官グリーンヒル中将も迎えに来てくれており、演説で如何に練習艦隊が偶然にヘルクスハイマー伯爵を保護したかをマスコミに説明して、リーファの存在を消し去る努力をしてくれた。

「グリーンヒル中将。練習艦隊があの場所に居たのは意図的と言う話しもありますが?」
「誰がその様な事を言うのかな?彼等はローゼンリッター第2連隊の訓練の為にあの付近にいて、偶然にも同盟領へ進行してきた帝国軍巡航艦に襲われる、伯爵の船を人道的見地に基づいて救助したのです」

グリーンヒル中将が低い惚れ惚れする声で応対する。
「この時期に帝国軍が巡航艦で長躯襲撃して来た事ですが、侵入をみすみす見逃したイゼルローン回廊の防衛はどうなって居るんですか?」

「その点については、現在撃破した帝国軍巡航艦の残骸を調べておりますのでその調べが付いたら改めてご報告します」

「今回の帝国の暴挙に対して市民の怒りが再度イゼルローン要塞攻略をせよと、アンケートで高支持率を得ていますが、軍としてはどうなのでしょうか?」

「総参謀長たる小官にはそれに答える、権限はありませんので、
改めて統合作戦本部から発表を行います」

その後も、質問が繰り返されたが、グリーンヒル中将は過分無くマスコミ対応をしていた。
その後ヘルクスハイマー伯爵への記者会見は伯爵が命を狙われてる事を鑑み、伯爵の執事が声明文を発表するだけに終わった。

「今回、自由惑星同盟の皆様方のお陰で我ら親娘を含む皆が無事に同盟へと来られた事を感謝します」


リーファ達の苦手なクブルスリー統合作戦本部次長は、前日現役復帰したシトレ本部長に宥められてリーファ達のスタンドプレイを苦々しく感じては居たが結果を出した以上は仕方ないと諦めていた。クブルスリー中将は統合作戦本部次長のまま4月を持って第一艦隊司令官を拝命する事に成った為に、今更波風を立てる訳にもいかないと言う事であった。

リーファ達が統合作戦本部に帰還後シトレ本部長に挨拶に行く。
「アッテンボロー中佐以下3名練習航海から帰還しました」
「入りたまえ」

シトレの野太い声で入室を許可される。
部屋に入ると、シトレ元帥とワイドボーン中佐が待っていた。

「アッテンボロー中佐、ドールトン大尉、スールズカリッター大尉御苦労だったな」
「「「はっ」」」
「見事に中佐の推測が当たったな、伯爵も無事、指向性ゼッフル粒子発生装置も無事、そして巡航艦も捕獲した。此ほどの戦果はない」

「指向性ゼッフル粒子については此により我が軍の戦略戦術に大きな冗長性が出来ます」
「そうだな、敵に有り味方に無ければ、此ほど恐ろしい事はない」
「アッテンボローの作戦勝ちと言う訳だよな」

「作戦勝ちと言っても、フェザーンから来た特殊工作艦は逃がしてしましましたから」
「それは仕方のない事だ」
「まあ。敵の捕虜も得た訳だから、良いんじゃないか」

その話をしながらリーファは未だに遺伝情報がわからないのが非常に気になっていたが、聞くのも無理だと考え、暫くそっとしておく事にした。

「3人とも、報告書を出したら、一週間ほど休暇を与えるので、ゆっくりするように」
「「「はっ」」」

翌日までに書類も纏め上げたリーファ達は、一週間後に再度捕虜の尋問を行うためにワイドボーンに話を付けて実家へと向かうのであった。何故なら旦那が宇宙艦隊の用事で出張中だったからであり、父ロボス総司令官とヤン先輩のお見舞いに行くためでもあった。

スールズカリッター大尉は実家へと向かい、一週間ゴロゴロしたのであり。イブリンは早速、食事材を買い込んでリューネブルグ准将の官舎へと転がり込んだのである。その夜にリューネブルグ准将は酔っぱらった挙げ句にイブリンに襲われたようである。

翌朝同じベッドに寝ているイブリンに泣かれた挙げ句に婚約させられた。まさに無敵のローゼンリッター旅団長がイブリンにしてやられた訳である。その話を後に聞いた、シェーンコップやリーファが大笑いしたのである。




■銀河帝国

帝国ではヘルクスハイマー伯爵をみすみす逃した事が大問題と成っていた。大問題の元因としてフェザーン高等弁務官事務所がやり玉に上がり、それに困った弁務官事務所の大貴族出身の高等武官少将が特殊工作艦の艦長であるナイトハルト・ミュラー中尉に全ての罪をなすりつけたために、ミュラー中尉は弩辺境の一惑星の警備隊に左遷されたのである。

未だその大貴族に罪を被せた罪悪感が有ったために左遷で済んだのであり、普通であれば処刑等になる事もあり得る事であった。その後ナイトハルト・ミュラーと言う人物が歴史の表舞台に立つ事は数年は無くその後歴史に名を残したかは神のみぞ知る状態であった。

その後、リッテンハイム侯爵の命令でヘルクスハイマー暗殺部隊が同盟へと放たれたのである。
 
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