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ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)

作者:羽田京
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第1章 これから始まる物語
  第4話 魔法少女はじめました

 
前書き
次回は来週更新します。 

 
 兵藤一誠が転生悪魔となってから、数日が経った。


 その間、サーチャーを使って彼のことを監視していたが、目立った動きはなかった。
 ……いや、まあ、悪魔見習いの活動はある意味すごかったが。
 ダンディなおっさんの魔法少女コスチューム姿なんか、誰が好き好んで見たいと思うのだろうか?
 というか、リアル魔法少女――現在の姿、年齢を考えると「少女」は微妙かもしれない――として、文句の一つもいいたいところだ。
 兵藤一誠には、心底同情してしまう。
 秘密裏に監視しているので直接慰めることはできないが。


 前もって、原作知識で知っていたボクでさえ、大きなトラウマを残したのだ。
 ヴィータは、睡眠中、苦しげにうなされていたし、リインフォースなんか、その場で気絶していた。
 ただ、シャマルだけは、目が輝いていたのは、なぜだろうか。
 ――――気にしてはいけないな、うん。


(毎日のように、男性の行動を監視するとは――まるで、恋する乙女みたいだな)

 
 と、内心つぶやいたことに気付いた瞬間、総身に鳥肌がたった。
 一誠ハーレムの中に入るなんて、とんでもない。むしろ、ボクがハーレムをつくりたいくらいである。
 ――クッ。さすがは、原作主人公。ボクも餌食にならないように気をつけねば……!家族たちにも言い含めておこう。
 彼のことは嫌いではないが、堂々とハーレム宣言するやつなど願い下げだ。
 性別うんぬん以前の問題である。
 ハーレムラブコメは、創作物だからこそ許される―――とボクは思う。
 

(いや、どちらかというと悪質なストーカーだな) 


 自嘲しつつも止めるわけにはいかない。そんなストーカー生活が日常になりつつある今日この頃。
 今日も今日とて、サーチャーごしに、兵藤一誠の映像を垂れ流していたら、外国人の美少女が、彼に道を尋ねていた。一瞬頭を悩ませ、すぐに答えが出た。
 彼女の名は、「アーシア・アルジェント」という。


 ――――近い将来、一誠ハーレムの構成員の一人になる予定の少女である


 傷を癒す神器(トワイライト・ヒーリング)の持ち主であり、心優しい少女である。
 彼女は幼いころから、教会で、傷を癒す奇跡を起こす聖女として、祭り上げられてきた。
 ところが、ある日、悪魔の傷を癒したことで教会から追い出されてしまう。
 行くあてのなくなったアーシアは、堕天使に保護――という名のもとに利用される――ことになった。
 

 ――――レイナーレが、彼女の身柄を拘束し、とある目的のために生贄にしようと目論んでいるはずだ
 

 ……原作通りなら、という注釈がつくが。
 現在、彼女と兵藤一誠は、英語で流暢に会話している光景が、サーチャー越しに映っている。
 言っては悪いが、彼の頭の出来はあまり良くない。もちろん、英会話などできるわけない。
 にもかかわらず、彼が英語で会話できる理由は、一重に悪魔化した恩恵ゆえにだ。音声限定とはいえ、自動翻訳能力を悪魔は備えており、転生悪魔も同様の能力をもっている。


 ――――ボクの場合、前世の知識という反則技のおかげで、英語は得意だから必要ないかもしれないけれども


 後日、悪魔がもつ自動翻訳能力の理不尽さを愚痴ったところ、リインフォースに翻訳魔法の存在を教えられた。魔法も大概反則技であると、改めて認識した出来ごとであった。


 さて、彼女も今後の鍵を握る原作キャラクターの一人ということで、サーチャーをつけることにした。行動を監視するという意味もあるが、堕天使に虐待されないか見守り、もしものときに保護するためでもある。
 いくら原作で彼女が助かるということを知っていても、手の届く限りにおいて、見捨てるという選択は許容できない。
 

 しつこいようだが、ボクは、いまを「現実」として認識しているし、この世界の住人も同様である。
 そもそも、ボクという存在がいる時点で、原作知識は絶対ではない。あくまで、参考程度にとどめるべきだろう。むろん、重要な価値があることに変わりはないが。


 物思いに耽っている間に、アーシアが教会――悪魔の領地内にも関わらず、堕天使が不法占拠している――――の前まで、兵藤一誠に案内され、お礼をいっているようだ。
 彼と別れ、教会の入り口に向かう彼女の顔は、先ほどとは打って変って、痛々しい表情をしている。
 いまのところ、堕天使に著しく不当な扱いはうけていないようだ。
 もっとも、丁重にもてなされているわけでもなさそうだが。




 アーシアを発見した日の夕方、リアス・グレモリーから、はぐれ悪魔――名前は、原作通りバイサーだった――が出現した、との報告を受けた。
 普段とは違い、協力要請はなかったものの――こちらから協力を申し出ると、一瞬怪訝な顔をした後、了承された。
 おそらく、彼女としては、兵藤一誠の赤龍帝としての力をみたいのであろう。
 まだ、彼が神器を所有していることを、ボクたちは、知らないことになっている。
 したがって、「偶然」彼女たちと遭遇し、彼の力を観察することにした。


「二人だけで、戦場に赴くと言うのですか!?」
「そうだよ。理由はこれから説明するけれど――」


 偶然を演出するのならば、八神一家が勢ぞろいしていてはまずいだろう。
 どうみても、スタンバイしていたことがばれてしまう。
 ばれてしまえば、どうやって場所とタイミングを合わせたのか追求されることになる。
 下手すれば、サーチャーの存在に勘付かれるおそれすらある。


「――と、いうわけで、ボクとリインフォースの二人で現場に向かうことにするよ。
買い物帰りを装えば、本当に偶然遭遇したのかを疑いはしても、断定することはできないだろうからね」
「理由については納得しました。しかし、危険ではありませんか?」

「ううん。所詮は、はぐれ悪魔だ。『原作』で最初の敵だけあって、素人の兵藤君にすら倒されるほどだよ」
「たしかに、いままで討伐してきたはぐれ悪魔の戦闘力と原作知識とやらを考えれば、問題ないかもしれません」

「そうだろう?だったら――」
「しかしながら、あえて主はやての身を危険にさらす行為には、賛同しかねます」
「シグナムの言う通りですよ。わたしも、少し心配かな。もしものときのために、回復役がいた方がいいのではないかしら」
「私としては、主の盾として傍に控えさせていただきたい」

 
 旗色が悪くなってきた。いまのところ、シグナム、シャマル、ザフィーラは反対の立場をとっている。
 リインフォースは、一緒についてくるから除外するとして、残るはヴィータのみ、か。


「うーん。賛同者はなし、か。ヴィータはどう思う?」
「あたしは賛成するぜ。どうせ、これから戦いは厳しくなっていくんだ。いまから怖気づいていたら、後で苦労する羽目になる。それに、リインフォースがついているんだ。滅多なことにはならないだろうさ」
「マスターの身を、必ず守ることを約束します。鉄槌の騎士の言う通り、これからマスターは戦いに身を投じていくことになりますから。早いうちに、慣れておいて損はないはずです」

「うんうん。ヴィータ姉の言う通りだよ。ボクがしてきた修行の成果は知っているでしょ?」
「わかりました。たしかに、ヴィータとリインフォースの言う通りだ。主はやてに従うことにする。皆も異存はないな?」


 ――――ふぅ。シグナムたちを、なんとか説得することが出来た。
 皆、ボクの身の案じていることが伝わってきて、ちょっとばかり、こそばゆい。
 特に、ヴィータの援護射撃には感激してしまった。
「ヴィータ姉」と呼んでいるのは、決してからかいの気持ちからだけではない(少しはあるが)。
 ボクは、彼女を本当の姉のように思っている――口に出すのは恥ずかしいけれど。
 だから、姉に認められたようで嬉しく、そして誇らしかった。
 所詮バイサーは、序盤のヤラレ役に過ぎない。この程度の相手に苦戦するようならば、今後の計画を大幅に軌道修正する必要があるだろう。


 ――――それに、原作で描写されていた光景を、この目で確かめたいのだ


 原作という色眼鏡を通すことで、空想と現実が混同しないだろうか。
 架空の登場人物と目の前の人物を切り離して考えられるだろうか。
 原作知識に振り回されて現実を軽視しないだろうか。
 いろいろと心配の種があるとはいえ、あまり緊張はしていない。
 ボクには頼もしい家族がいる。これから赴く戦場にも、リインフィースという心強い味方がいるのだから。

 
「ありがとう、シグナム、みんな。さあ、未来に向けての第一歩をいっしょに踏み出そう――――と、いうわけで、今日の晩御飯は何がいい?偽装に気づかれないためにも、いつも通り晩御飯の買い物にいかないとね」





「――ヴィータはどう思う?」


 はやてが、あたしに尋ねてくる。眼をみれば、行く気まんまんだということが丸分かりだ。
 あいつは、意外と頑固なところがある。この問いかけも、家族の理解が欲しいからであって、確認に過ぎないのだろう。だから、あたしは迷わず賛同した。なぜなら――――


「――――これから戦いは厳しくなっていくんだ。いまから怖気づいていたら、後で苦労する羽目になる」


 あたしを含むヴォルケンリッターが、はやてと出会ったのは、あいつの誕生日の日付に変わったとき――――もっと早く駆けつけられなかったのかと、いまだに悔んでいる。
 第一印象は、両親を殺され泣きじゃくる年相応のか弱い女の子。
 主の身を守り、命令に従うのが守護騎士の役目だから、助けた。
 いつものことであり、特別な感情を抱いてはいなかった。


 しかし、その後すぐに考えを改めることになる。
 嗚咽をこらえながらも、突然現れたあたしたちに、毅然とした態度であいつは接した。
 ほどなく駆けつけた魔王とやらには、状況がよくわかっていないあたしたちに代わって、彼女が主導して話を合わせた。


 ――――前世の記憶やら、原作知識やらのおかげだよ


 と、はやては、どこか自重しながら謙遜していた。
 しかし、年相応に振る舞う姿は、決して演技にはみえなかった。
 ここが異世界だとしても、関係ない。
 どのような事情があろうと、あたしは「八神はやて」という少女が大好きなのだから。


『ヴィータってお姉ちゃんみたい。ヴィータお姉ちゃんって呼んでもいい?』


 当時、9歳になったばかりのはやてと、外見年齢が8歳~9歳相当のあたしは、背格好が同じくらいだった。一見すると、姉妹にみえないこともない―――もちろん、姉はあたしだ。
 外見年齢が近いからだろうか。大人びているように見えて、実は、寂しがりで甘えたがりなあいつは、とりわけあたしに懐いていた。


 『お姉ちゃん、お姉ちゃん』と連呼しながら、後をついてくるはやて。あたしは、実の妹のように可愛がっていたし――――はやても、あたしを実の姉のように慕っていた、と思う。
 あいつが、10歳の誕生日に、「家族になってから1周年記念日」だといいながら、渡してくれたプレゼント――「のろいうさぎ」という名前のぬいぐるみ――は、いまでもあたしの宝物だ。
 ――――原作の「ヴィータ」が好きだったぬいぐるみを参考にした手作りらしいが、あたしの嗜好にぴったりだった。
 うぬぼれでなければ、一番近くであいつの成長を見守ってきたのは、姉貴分のあたしだろう。
 

 ――――だから、あたしだけは、はやてがしてきた努力とその成果を認めてやらなくてはならない


 あいつが一人で立ち上がれるように背中を押し、危なくなったら助ける。
 過剰に甘えさせれば、成長して独り立ちしたとき苦労するのは、はやて自身だ。
 したがって、適度な距離を保ちながら、接しなければならない。
 嬉しそうにこちらを見つめる姿には、苦笑してしまう。


「晩飯は任せる。その代わり、デザートにアイスをつけてくれ」
「はいはい、わかったよ。えっと、ヴィータ姉は、どのアイスが好きだったっけ――」


 ――――やれやれ、手のかかる妹だぜ





『シュベルトクロイツ、セットアップ』
 ――『Jawohl』


 リインフォースとともに夕飯の買い物に行った帰り道。バイサー討伐の場面で、うまくグレモリー眷属と居合わせることができた。
 すぐさま、騎士甲冑――防護服(バリアジャケット)のベルカ版――を展開し、援護に回る。そこで見た光景は、衝撃的だった。
 戦いには全く素人であるはずの兵藤一誠が、パンチ一発で、決して弱くないバイサーをのしてしまったのだから。


 援護といっても、シールドくらいしか使わなかった。
 ボクとリインフォースも支援要員として、最低限の活躍はできたと思いたい。
 ちなみに、ボクのデバイスは、原作アニメにでてきた騎士杖と同じだ。ボクの身長をやや超えるくらいの短槍に、十字の穂先がついている。
 名前がつけられていなかったので、原作通りに「シュベルトクロイツ」と名付けた。


『すげえ、銀髪ボインのお姉さんがいるだと!?』
『ボクの家族を厭らしい目でみないでくれないかね?』

『え……どうしてここに八神さんが――もしかして、八神さんも悪魔だったのか』
『それは違うな、兵藤君』
『一誠君。彼女はワケありでね。詳細は明日の放課後でもいいかしら?』
『……先輩がそういうのなら』
『構わないさ。ボクも早く帰って、夕飯の支度をしたいからね』


 騎士甲冑も、これまたほぼ原作通りだ。
 白い大きめのキャスケットとオーバーコートを着込み、背中に4対の小さな翼が生えている。
 相違点としては、太もも丸出しの丈の短いタイトスカートが、スラックスに変更されている点がまずひとつ。
 もうひとつは、天使や堕天使連中と区別するために、背中の翼を、黒から赤に変えてある点だ。赤色にした理由は、ヴィータ姉の騎士甲冑の色に合わせたからだが、秘密にしている。
 
 
 シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラの騎士甲冑は原作と変化なし。
 先入観というやつは、そう簡単になくなるものではない。ボク自身も、原作通りの格好が、彼女たちに一番似合うと思っている。
 ――――リインフォースだけは、露出の激しすぎるパンクなファッションを、おとなし目に変更したが。
 あの格好は目に毒である。
 他の男――兵藤一誠も含めて――なんぞに見せてたまるか。


 さて、明日詳しい説明をすることになった。いよいよ、本格的に原作と関わり合うことになるだろう。
 目的の戦場見学と顔合わせも済んだことだし、愛しの我が家に帰るとしますか。
 腹ペコたちが首を長くして待っているはず。
 心配させたお詫びに、今日のパエリアは、腕によりをかけてつくろう。


 ――――リインフィースも手伝ってくれる?


 ――――もちろんです、マスター。とびっきりの料理をつくりましょう



 

 ――ここ数日は、驚愕につぐ驚愕の連続だった


 ――兵藤一誠という人間が過ごしてきた17年間で、もっとも濃い時間だったと思う


 かわいい女の子に、人生で初めて告白されたと思ったら、殺されかける。
 リアス先輩にお呼ばれされたと思ったら、悪魔になっていた。しかも、俺は最強の神器を宿す赤龍帝――らしい。
 先輩の下僕――眷属悪魔というらしい――になって、ハーレム王(上級悪魔)を目指し見習い悪魔稼業に静を出す。
 極めつけに、今日は、はぐれ悪魔との戦いに赴いた。


「先輩たちは、八神さんの事情を知っているんですか?」
「ええ。はぐれ悪魔討伐では、よく手を貸してもらっていてね。けれども、家の事情に関しては、私しか知らないわ」


 バイサーとかいうはぐれ悪魔との戦いは、荒事とは無縁の人生を送っていた俺に強い衝撃を与えるに十分だった。しかし、先輩たちの援護と赤龍帝の籠手によって、初めてにもかかわらず有利に戦えていた。
 そのせいだろうか。うかつにも、調子に乗ってしまった俺は、窮地に陥る。近くにいた木場がフォローに回ろうと急ぐが、間に合わない―――そのときだった。


『危ないよ。パンツァーシルト』
 ――『Panzerschild』


 どこかで聞いたことのある透き通ったソプラノボイスと、渋めの機械音声が響き、バイザーの攻撃をはじいた。
 

 ――大きくよろめくバイサー


 その隙を突き、いまできる最大のブーストをかけてがらあきの腹部を殴り飛ばした。
 結局、この一撃が止めとなり、初の実戦は終了した。
 気になる声の正体は、クラスメイトにして、駒王学園三大お姉さまの一人である「八神はやて」だった。機械音声は、手に持っている杖?槍?とにかく、十字をつけた長柄の武器から発生しているようだ。シュベルトクロイツというらしい。


「八神さんの事情については、教えてもらえないんですか?」
「ごめんなさいね。本人のいないところで言うべきではないわ」
「いえ。それなら仕方ありませんよ。明日、直接尋ねてみます」
「そうしてもらえると、助かるわ」


 いろいろと尋ねたいこと――とくに銀髪巨乳のお姉さんのこととか――があったが、明日纏めて話すと約束して、この日は解散した。 
 

 
後書き
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