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ロボスの娘で行ってみよう!

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第48話 亡命案内


艦長の正体が判明します。

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第48話 亡命案内

宇宙暦793年 帝国暦484年 1月18日

■自由惑星同盟領フェザーン回廊からバラトループ星系間 

ヘーシュリッヒ・エンチェン艦橋内では、副長がひたすら戦うがシェーンコップにより左腕肘付近を切断され倒されると、最早立っているのは艦長しか居なくなった。いよいよシェーンコップと艦長の鍔迫り合いが始まった。

「でやー!」
「たーー!」

シェーンコップと艦長の鍔競り合いが続く、その後方ではローゼンリッターの衛生兵が敵味方に限らず手当をしていく、手当を受ける脱色したような銅線色髪の副長も腕の切り口に蛋白凝固剤を噴射され止血されていく。

「中々やるな」
シェーンコップが不敵に笑う。
戦い最中に偽アイマルラン号へ向かった、リンツ少佐指揮下の200名が偽アイマルラン号を掌握し敵指揮官を捕えたと連絡が有った。

「連隊長、向こうの船を掌握しました!敵指揮官も捕縛しました!」
「おう御苦労!」
その言葉にシェーンコップは軽々と炭素クリスタル製の戦斧を煌めかせながら答える。

逆に艦長は最早此までかというあきらめが見え始めた。
「艦長さん。最早抵抗することは無駄だ。そろそろ降伏を勧告するがね」
シェーンコップの言葉にとうとう艦長は戦斧を捨てて降伏の意志を示す。

ヘルメットのバイザーを上げて、話し始める。
「判った、降伏する、小官はどうなっても構わんが、
部下は小官の命令で動いたので寛大な処置を求める」

シェーンコップはたいしたもんだと考えながら、降伏については既にカールセン提督からフリーハンドを得ていたために降伏を受諾した。
「了解した。小官の名誉にかけて貴官らの降伏を歓迎する」

その言葉にホッとしたのか、艦橋員から安堵の声が聞こえた。
シェーンコップは艦長に命じて、一斉放送で降伏のことを伝えさせて集まる様に放送する。
「艦長である。本艦は同盟軍に降伏する。全乗員は武器を捨てて各所で投降せよ」

その声で、各所で未だ抵抗しようとしていた兵達が次々に武器を捨てて投降してくる。それをローゼンリッターが次々に捕縛していく。元々単独での同盟領侵攻であるから兵達に不安があったために、降伏も早くに終わり、徹底抗戦する者達も居ずに拍子抜けするほどに艦内の掌握は終わった。

ヘクトル艦橋に『敵巡航艦掌握敵降伏』の通信が入ると皆が皆、明るい顔をして喜んでいる。
リーファもよっしと思いながら、此で帝国は頭脳を失ったと喜んでいた。

「アッテンボロー中佐、見事にあたったな」
カールセン提督の言葉にリーファが頷きながら話す。
「はい、提督、此で人の庭先に入り込んだ帝国軍を退治できました」

「これから、どうするかね?」
「はい。敵の艦長と副長と佐官以上と偽アイマルラン号襲撃をした指揮官を此方へ連れてきて尋問し、他の乗員も輸送艦へ移乗させます。その後敵巡航艦を輸送艦へ収納し、ルジアーナ造兵工廠まで運んで証拠としましょう」

「判った。その様にしよう。中佐宜しく頼むぞ」
「はっ。通信士官、シェーンコップ中佐に連絡、艦長と副長と佐官と偽アイマルラン号襲撃をした指揮官を本艦へ移乗するようにと。他の乗員は輸送艦へ移乗するようにと」

「了解しました」
通信士官がテキパキとローゼンリッターへ連絡を入れて了解を得る。
リーファ自体がラインハルトを見たいのであるが、それは我慢して尋問の準備を始めた。


■自由惑星同盟領フェザーン回廊からバラトループ星系間 

旗艦ヘクトルへシェーンコップ達の乗ったシャトルが到着すると、シャトルデッキでカールセン提督とリーファは一緒に迎えに行った。

「此は此は、司令官閣下、参謀閣下態々のお出迎えありがとうございます」
「御苦労」
「御苦労様でした」

シェーンコップのノリに苦笑しながら、カールセン提督とリーファは真面目に応対する。
リーファもおちゃらけても良いのであるが、流石にラインハルトに対しては真面目な姿を見せようと思っただけであるが。

続いて怪我人が先で担架に乗せられた副長が降ろされてきた。その顔に見覚えがあったリーファは思わず叫びそうになったが我慢した。その人物の髪色は脱色したような銅線色であり。間違えなければ彼は、アウグスト・ザムエル・ワーレンだと言う事を。

続いて、腕を骨折したのか三角巾で左手を吊った黒髪の少佐が降りてきた、OVAの知識でベンドリング少佐で有ることが判った。ワーレン、ベンドリングと来れば、次はキルヒアイスだと思ってワクワクしていた、リーファは次の瞬間唖然とし始めるのである。

降りて来たのは、赤毛のノッポでは無く右手を三角巾で吊った、焦げ茶の髪をした180cm弱の中尉であった。ハッキリ言ってリーファにはこの人物が誰だか判らない状態で有り、思わず言いたくなった。誰だテメー!と。しかし理性で押さえて顔を再度見るが思い出せない。だんだん不安になってくる。

キルヒアイスが居ないと言う事は、何か有ったか、それとも艦長が違うのかであるが、ワーレンとベンドリングが居るので、OVA通りだが、それ以外が何かの要因があるのではと考えていた。

最後にブルームハルト大尉の護送で艦長らしき中佐が降りてきたが、その姿を見た時にリーファのテンションは落ち込みまくりであった。降りてきたのは、長身ではあるが、血色の悪い鋭角的な白い顔で銀髪のアイスブルーの瞳の中佐だったからである。

リーファは思わず、心の中で叫んでいた。はぁ??何であんたが此処に居るんだよ!!食い詰め提督アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト!!!

ぐわーーーーーー、ラインハルトじゃ無く食い詰めが網にかかったのかよ!!此じゃアスターテは良いが、リップシュタットで貴族軍がもっとボロ負けじゃないか!!

此はどうしたらいいのか。取りあえず冷静な顔をしながら、尋問だけはしなければ。
負傷のワーレンとベンドリング少佐、誰だか判らない中尉は病室へ送られたので、ファーレンハイト中佐を連れて尋問室へ向かった。

尋問室ではファーレンハイト中佐とシェーンコップ中佐、リーファ、情報部員による尋問が始まった。
リーファは気を持ち直して、ラインハルトに対して出すはずだった、カツ丼をファーレンハイト中佐に勧める。するとファーレンハイト中佐は、『ありがたく頂く』と言い普通に食べ始めた。

やはり、尋問にはカツ丼を出さないと駄目だという、刑事ドラマの影響による考えであった。
ファーレンハイトは、米粒一つ残さずにカツ丼を食べ終わると、出された緑茶を普通に飲み終わった。

リーファがまず挨拶する。
「小官は、同盟軍中佐、リーファ・L・アッテンボローです、失礼ですが貴官の官姓名をお教え頂きたい」
リーファはファーレンハイトの名前も生い立ちも大体判ってはいるが、怪しまれるので暫くは聞きに徹するつもりで居る。

暫く考えてから、ファーレンハイトが話し始める。
「小官は銀河帝国軍中佐、アドライム・ファーテンだ」
「中佐は、あの巡航艦の艦長で良いのですね?」

「まあ艦長だな、帝国領へ帰れなくなったので、逃げ回っていただけだから、
まだ艦長として登録されているか分からんが」

ほう狸かごまかすつもりだなと、リーファは考える、それならば暫く相手をしてやるかと。
「なるほど、それにしても同盟領奥深くまでよく来ましたね。どのようなルートを?」
すでに巡航艦の航路データーや暗号システムは消去されていたために、カマをかけてみる。

「482年のアルレスハイム星域での会戦に参加していて、味方艦隊の敗北時に迷子になって帰還不能になったので、そのまま辺境で隠れていたのだが、物資もなくなってきたので、辺境を適当に移動してきた」

「何故フェザーン回廊付近で海賊行為をしたのですか?」
「イゼルローン回廊付近では、危険なうえ 獲物がほとんど無いからですよ。
それに比べてフェザーン回廊は獲物が多いからです。」

「何故あの船を襲ったのですか?」
「偶然見かけたからに過ぎない。」

「なるほど、お話を聞く限り、アルレスハイム会戦の敗残兵であるわけですね。ずいぶんと長い潜伏期間でしたね。それに現行犯で海賊行為と・・・・・・・つまりは海賊行為だけが同盟において罪になるわけですね、そうなると同盟の法律に基づき海賊行為は・・・・・・死刑ですから全員が絞首刑なりますが」

実際情状酌量等があるし、即死刑とかあり得ないのであるが、同盟の法律をすべて網羅しているわけがないファーレンハイトを脅かすためにリーファはあえて言う。
するとファーレンハイトの顔色が変わっていくのがわかるので今度は助け船を出す。

「ただ、貴官達の所属が未だに帝国軍にあるなら、海賊行為ではなく立派な通商破壊になりますから、海賊行為の罪に問うことはできませんね。捕虜として遇することになります」

「そう言う事だな」
「では、収容所に入っていただき、しかる後に捕虜交換で帝国へ帰国というパターンになりますね」
「そうしてもらえると、助かる」

「ただ、2年もの間行方不明だった巡航艦の乗員が今頃捕虜になって帰国したとしたら、帝国軍はどう思うでしょうかね?しかも2年間のブランクがあるわけですから。捕虜交換時に詳しい細評書類が添付されますからね。スパイと間違えられるのではありませんかね」

リーファの言葉に困った顔をするファーレンハイト。
「書類を修正することもできるのでは?」
シェーンコップがにやりとしながら言ってくる。この辺は阿吽の呼吸である。

「駄目ですね。軍はお役所ですから、書類には厳しいんですよ」
「どうでしょう、いっそのこと亡命させたら?」
シェーンコップの言葉にファーレンハイトはしどろもどろになる。

それを見ながら、リーファは内心では面白がって話を進める。
「亡命を希望と言う事でいいのですね?」
ファーレンハイトハは、その言葉に困ったような顔をする。

「大丈夫ですよ。同盟政府は帝国政府と違って亡命を確りと受け入れていますからね。
それでも入国審査官の態度は最悪ですけどね」

その言葉を聞いて、シェーンコップがにやりとする。
「そうですな、小官が幼少のみぎり、同盟へ亡命したときも入国審査官の態度は最悪でした」
リーファもその言葉に苦笑をする。

ファーレンハイトも苦笑している。そろそろかと、リーファは核心に迫る話をし始める。
「ところで艦長」
「なんでしょうか?」

「統帥本部作戦三課アーベントロート少将の特命失敗しましたね。
どうなさるんですか?アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト中佐」
その言葉を聞いたファーレンハイトの目が驚愕に染まる。

「帝国暦456年生まれ、貴族だが幼少の頃から実家が赤貧で食べるために士官学校へ帝国暦476年卒業、日頃からいっている言葉は、食うために軍人になった」
その言葉にますますファーレンハイトが驚きを隠せない状態になる。

「どうでしょうか?中佐。我々は貴官達が特命で動いていることをすでに把握して、罠をはって待っていたのですから、情報はすでに此方にあったのです。話していただけますね」
その言葉に、観念したのかファーレンハイトはしゃべり出した。

「確かに小官はアーダルベルト・フォン・ファーレンハイト中佐だ、任務もそこまで知られているのであれば隠してもしょうがあるまい、中佐の言う通りだよ」
リーファは、ラインハルトに代わりなぜファーレンハイトが来たのかを知りたいので質問をする。

「所で中佐、なぜこんな危険な任務を受ける気になったのですか?」
「貴官の言うように私は赤貧で育ったからな、食うためには階級を上げたいので、この話に乗ったのだよ、無事帰還できたら、非公式ながら2階級昇進が約束されていた」

うーん、なぜラインハルトは受けなかったんだろうか?
「中佐、貴方以外にこの任務を打診された人物はいなかったのですか?」
「いや、小官はその様な話は聞いてないな、第一極秘だから、その様な話は外に出ないからな」

んーあまりあからさまに、ラインハルトの事はを聞いたら、味方にも怪しまれるかもしれないから、情報部に調べてもらうか。それと食い詰めの処置を考えよう。

「ファーレンハイト中佐は、これからいかがするつもりですか?」
リーファとシェーンコップ以外は、何を言うんだこの人はと言う顔をする。
「どうするも何も、捕虜になったのあるから、其方に身を預けるしかあるまい」

「ファーレンハイト中佐、お国にご家族はいらっしゃるんですか?」
「すでに両親も亡くなり、小官一人だが、それが何か?」
「いえね、大貴族の命令で潜入失敗した、一中佐を捕虜交換で帰したら、
そのまま行方不明か、心臓発作で死亡ですかね?」

その言葉を聞いて、ファーレンハイトも考え始める。
「中佐は、小官にどうしろと言うのですかな?」
「いやね、仲間になりませんか?」

その言葉に全員が唖然とした表情になる。
しばし時間がたつと、シェーンコップが大笑いを始めた。
「ハハハハ、尋問中にヘッドハンティングですか、前代未聞ですな」

「どうせ闇から闇に葬り去られるのが予見できるのなら、捕虜交換時に帝国側に引き渡す訳にはいきませんよ」
「そう言う事なら、できれば解放してもらいたいが無理だろうな」

「それは無理ですね。やはり此方に来ませんか、確り身元引き受けはしますよ」
「そうは言っても帝国人としての矜持もある」
「大貴族同士の内ゲバで死んでこいと言われたような任務がまかり通る帝国にそんなに未練がありますか?」

「同盟人の貴官には分からない事だろうな」
「分かりますよ。私の祖母も帝国からの亡命者です。私も四分の一は帝国人ですよ、よく祖母から帝国の話はよく聞いていましたから」

その言葉にファーレンハイトは黙って考えてしまうのであった。
「もう少し時間が必要でしょう、私は貴方の勇気を称えますよ」
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答えはどれでもなく、0番艦長が違うでした。

当初は、巡航艦を無人で囮にしてフェザーン回廊がわからミュラーの特殊船に乗り込んで帰国するプロットでした。リーファがしてやられるシーンだったのですがね。

次はラインハルト達が捕虜になって、アンネローゼの泣きで皇帝が大貴族所有の拉致同盟市民数万との交換を持ち込まれて、あっさり返してしまうという、シナリオもありました。そのためにますますラインハルトが大貴族に嫌われまくると。
 
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