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NEIGHBOR EATER

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EATING28

 
前書き
従者系ヤンデレドMアサシン少女…すごい字面だ…。 

 
「主様。ひとつお願いを聞いていただけますか?」

「なんだよ改まって?」

「買い物に付き合って頂きたいのです」

「おう。いいぞ」

そんなやり取りがあって、二人はデパートに来ていた。

夜架が案内板で店の位置を確認する。

翼はその後ろに立っているが、端から見ると、姉についてきた妹にしか見えない。

周囲からの暖かい視線に翼が気付く事は無かった。

「なぁ夜架。何を買うんだ?」

「ちょっとしたアクセサリーです。
主様に選んで頂きたいのですが…」

「べつにいいよ。あ、でもちょっと玩具コーナー行かせて。新しいプラモが発売なんだ」

「ええ、構いません」

案内板で場所を確認すると、夜架の行きたい店は三階、翼の行きたい店は五階だった。

「じゃ、まずはプラモ買ってから下がるか」

「そうですね」

二人はエレベーターで五階まで上がり、玩具コーナーへ向かった。

「お!あったあった!」

翼が手に取ったのは、今ちょうど放送されているアニメのプラモデルだった。

「なぁ夜架。もう少し見てもいいか?」

翼がすぐ後ろに控える夜架に問いかける。

「はい。私の用は直ぐに済みますから」

「やった!」

翼はプラモデルが置いてあるコーナーの奥へ向かった。

そこはカスタマイズ用のパーツが売っているエリアだ。

武器だけ、フェイスパーツだけ、装甲だけ。

そんな風なパーツがところ狭しと置いてある。

「カスタマイズされるのですか?」

「うん。雷蔵に教えてもらったんだ。
ミキシングくらいしかできないけどね」

翼の趣味は、読書だけだった。

だからボーダーに入ってからは防衛任務に時間を割けた。

それこそ、一日中シフトを入れる程に。

だがそれを見かねた会議室が、迅や雷蔵に命じたのだ。

翼に趣味を作らせろ、と。

「お金は使ってこそ、ですからね」

「それ林道さんにもいわれたんだけど?」

翼は手に抱えたプラモデルの箱の上に、カスタマイズ用キットのパッケージをのせてレジへ向かった。

「合計で6850円になります」

「カードでおねがいします」

翼がカードを差し出すと、店員の女性が苦笑いした。

「お父さんかお母さんは一緒に来てる?」

「いないけど?」

「ごめんねぇ。カードは本人じゃないと使えないのよ」

「本人だし。これ俺のカードだし」

「嘘はいけないよ君」

翼の表情が固まった瞬間だった。

翼はカード以外持ってきていなかったのだ。

ボーダー本部内では食堂も自販機も購買もカードで支払うので現金を持っていない。

翼はこれまでの買い物を思い出した。

すると何時もは陽乃と一緒だったと思い至った。

「では現金で」

翼の後ろに立っていた夜架が財布から七千円を抜き、店員に差し出した。

「すいません。父が現金をあまり持たない人なのです」

と夜架が誤魔化す。

「あぁ…時々居るねそういう人…
よかったねぇ。お姉ちゃんがお金もってて」

翼のこめかみに井形が浮かぶが、取り敢えず欲しい物を手に入れた翼は無言で袋を受け取った。

翼はムスッとしたままレジを後にした。

「すまんな。夜架」

「いえ、いいのです」

「あとで返すよ」

「いえ、別にかまいませんが」

「俺がよくないの」

夜架も翼も金だけは持っている。

使う機会が少ないので貯まる一方だ。

「私の全ては主様のものですから」

「じゃぁ俺がお前に金を押し付けても文句ないな?」

「一本とられましたね」

夜架がクスッとわらった。

「じゃ、お前の買い物行こうか…
あ、お前の欲しい物俺が買ってやるよ」

夜架は数瞬迷ったが、それを受け入れた。

三階に降りた翼は、夜架に手を引かれていた。

翼は夜架の行きたい店の場所を知らないのだ。

夜架が翼を連れていったのは、かなり奥の店だった。

「ここです主様」

「ここ…?」

その店は、他の店のように表に商品を飾ってはいなかった。

ただただ白い壁。

そこにポツンと入り口がある。

そこに店名が書いてあった。

「ビューティー…すれ…スレイヴ…?
美しい………スレーヴってなに…?」

夜架が手を引き、店に入った。

「何ここ?」

翼の目に入ったのは鞭や手錠、そして口枷だった。

「うふふ…ただのアクセサリーショップですよ主様」

無論嘘である。

そこはSMプレイ用アイテムを取り扱うアダルトショップだった。

夜架は翼の目に『あからさまな』アダルトグッズが入らないよう、上手く目的地まで誘導した。

「主様。どれが私に似合いますか?」

夜架が翼に見せた物。それは…

「くびわ?」

「いえ、チョーカーです」

陳列棚には色とりどりの首輪が置いてあった。

デザインもそれぞれ違い、チョーカーとして通るような物からアウトな物まである。

「ネックレスやペンダントのような物です」

「ふーん………え? 夜架首輪つけるの?」

「ええ。欲しくなりまして」

「夜架がつけたいなら止めはしないけど…」

そこで翼がハッとした。

「俺が選ぶの…?」

「はい。主様に選んで頂きたいのです」

「…………」

「だめ………でしょうか…?」

「ああ、もう。そんな顔するなよ。ちゃんと選んでやるからよ」

翼は真面目にチョーカーを選び始めた。

翼にとっては自分の愛しい者が身につける物だ。

なるべく着けていて違和感がない、または似合う物を選んでいた。

一方夜架にとっては、文字通りの『首輪』であり、翼への忠誠の証にするつもりである。

夜架は翼が首輪の意味を理解しているとは思っていない。

だが、周囲の人間はその首輪の意味に気付くという確信が夜架のなかにはある。

「なぁなぁ夜架」

「なんでしょうか?」

翼に見とれていた夜架だが、翼に呼び掛けられると直ぐに反応した。

「これとかどうだ?」

翼が持っていたのは赤い首輪の入った箱。

正面に鈴のついた首輪だ。

「この前猫の格好してたから選んでみた」

翼は満足気に夜架にパッケージを見せる。

「よるかー? 気に入らなかった?」

「いえ、とても嬉しいです」

夜架が微笑み、翼は僅かに顔を赤らめた。

「よかった。じゃ、買ってくるけど他に欲しい物ってあるか?」

「いえ、ございませんわ」

翼がトコトコとレジへ歩いていく。

夜架はその後ろを離れないようついて行った。

「店員さん。これちょうだい」

「あんらぁ!悪いコね!こんなお店にくるなんて!」

翼の頬がひきつった。

何故なら、店員がオネェだったからだ。

「アクセサリーを買うくらいいいじゃないか」

「アクセサリー?」

オネェ店員は翼が差し出している箱を見て、それから夜架へ目を向けた。

夜架は意味ありげな笑顔を返す。

「ま、いいわ。大事なお客様だもの」

オネェ店員がパッケージを受け取り、会計をする。

首輪はちょうど7000円だった。

パッケージを袋に入れようとしたオネェ店員が二人に聞いた。

「持って帰る?それとも着けていくのかしら?」

「着けていきますわ」

オネェ店員はパッケージから首輪とリードを取り出した。

「リードは直しておくわよ」

リードを箱に戻し、袋に入れる。

そして袋より先に首輪を翼へ渡した。

「主様。着けていただけますか?」

「うん。いいよ」

翼が首輪の留め具を外した。

「いくよ」

「はい」

翼が夜架に抱き付くように手を夜架の後ろへ回す。

片手には首輪が握られていた。

夜架の細い首に、赤い首輪を巻き付ける。

鈴が正面へ来るよう調整して、留め具をつける。

「夜架、これでいいか?」

「はい主様」

翼の身長は夜架より低い。

故に主を見下ろす事になっていた夜架だが、その内心は歓喜に染まっていた。

愛しい主から、忠誠の…隷属の証を与えられたのだ。

夜架にとってその首輪は、指輪の代わりといっても差し支え無い。

チリンッ、と首輪の鈴が鳴った。

「うん!よく似合ってるわぁ!」

オネェ店員が翼に袋を渡す。

「何があってこうなったかは知らないけど、ペットの面倒は最後まで見なきゃダメよ?」

「?」

こてん、と翼が首を傾げた。

それを見たオネェ店員はある程度のいきさつを察した。

「あぁ…そう言うこと…。本当、悪い猫ちゃんね」

「はて、何の事でしょうか?」

「何でもないわ。ほら、買ったなら早く帰りなさいな。
今後とも御贔屓にね」

「はい。きっとまた来ますわ」

夜架が翼の手を握って、店の外へ出ていった。

「凄いわねぇ、あの子達。全くスキがなかったわぁ…」







side in

買い物を終え、昼食を食べてから俺達はボーダー本部へ戻った。

やっぱり、チョーカーは目立つみたいだ。

さっきから夜架に視線が集まっている。

「あれ? 翼と夜架ちゃん…?」

ランク戦ブースで観戦していると、迅に声をかけられた。

「よう迅。久し振り」

迅は林道さん達と一緒に玉狛支部に行ったので最近会ってなかったのだ。

「あ、あぁ久し振り。ところで夜架ちゃん」

「なんでしょうか?」

「そのチョーカーどうしたの?」

「主様に買って頂きました」

「………………ゑ?」

迅が固まった。

「さっき買ってきたんだ。夜架がチョーカーつけたいから選んでくれっていってな。
どうだ?似合ってるだろ?」

夜架は黒系の服をよく着るので、赤いチョーカーはいいアクセントになっている…と思う。

「翼が選んだのか?」

「そうだけど?」

すると迅が天を仰いだ。

「どうしたんだよ迅?」

「いや…なんでもないよ。じゃ、お邪魔虫は退散させてもらおうか」

何だったんだろうか…?

離れていく迅が、途中で足を止めた。

「夜架ちゃん」

「なんでしょうか迅様?」

「程々にね」

「わかっています」

「なら、いいよ」

迅は再び歩きだした。

「夜架。さっきのなんだったんだ?」

「きっとこのチョーカーですわ。小学生にアクセサリーはまだ早いのではと迅様は仰ったのです」

「ふーん…? プライベートならいいんじゃない?」

「ええ、ですので私はこのチョーカーを着けつづけます。いつまでもいつまでも」

「そか!選んだ甲斐があるって物だな!」

side out











余談

「夜架ー。試しにリード着けて見ましょうとか言ってたけどさー。
リード、床についちゃってるよ?」

「そうですね…。では主様が持っていてはいただけないでしょうか?」

「ん。わかった」

その後、偶然通りかかった本部長に二人して叱られるのだった。
 
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