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35部分:エリザベートの記憶その十三


エリザベートの記憶その十三

「ワルキューレの戦力は」
「五個艦隊程です」
 ビテロルフがそれに答えた。
「そうか。敵は」
「思ったより多いです。彼等と同程度の五個艦隊です」
「援軍が来ているのでしょうか」
「おそらくな」
 タンホイザーはハインリヒの言葉に応えた。
「そうでなければ説明ができない」
「今ワルキューレと帝国軍は一進一退の戦いを繰り広げています」
 新たに報告が入った。
「どうされますか」
「決まっている、帝国軍を叩く」
 彼は即座に決断を下した。
「帝国軍をですか」
「そうだ。ワルキューレに伝えよ」
 彼は言葉を続ける。
「今から貴殿達を援護するとな。共に帝国にあたろうと」
「了解」
 それを受けてタンホイザーの軍は動きをはじめた。そして帝国軍の後方に姿を現わしたのであった。
「すぐ攻撃に移れ」
 彼は前方に展開する帝国軍の大軍を見据えて言った。
「そして敵を打ち破る。よいな」
「はい」
「あの中におそらくクリングゾル=フォン=ニーベルングがいる」
「ニーベルングが」
「そうだ。ここで彼を討てば我等の第一の目標は達成される。逃さぬ様にな」
「わかりました。では」
「まずは旗艦を識別せよ」
「旗艦を」
「そうだ。話によるとニーベルングの旗艦は鈍い金色の光を放っているという」
 タンホイザーは言った。
「かなり目立つ筈だ、その艦をまず探せ」
「了解」
「それと同時に敵艦隊を攻撃する。敵は今どうなっているか」
「我々の出現に混乱をきたしているようです」
「混乱を」
 ヴァルターの言葉に目を動かした。
「一部をワルキューレに向け、一部を我々に向けております。ニーベルングの統制を離れようとしている様です」
「そうか。好機だな」
 彼はそれを見逃さなかった。
「ではすぐに攻撃を仕掛けよう。全艦前へ」
 指示を下す。
「一気に叩くぞ、よいな」
「ハッ」
「その向かって来た敵艦隊の一点を集中的に叩く」
 彼はモニターに映る敵艦隊を見ながら言う。
「そしてそこに穴が開く。その穴に)
「一気に艦隊を雪崩れ込ませるのですね」
「その通りだ。では行くぞ」
はい」
 部下達は頷いた。そして敵艦隊の動きを見据えた。
「そこだ!」
 タンホイザーが一点を指した。そこは敵艦隊の先端部分であった。今そこが突出していたのだ。
「火力を集中させよ!」
 すぐさま指示を出す。そこにビームとミサイルの一斉射撃が加えられた。
 動きを抑えられた帝国軍の艦隊は為す術もなかった。先端部を潰されそのままなし崩し的に損害を出す。艦隊の先が大きく失われる形となった。
「穴が開いたな」
 タンホイザーはそれを見て言った。
「では次だ」
「はっ」
 艦隊はそのまま大きく前に出る。そして怯んでいる敵艦隊に向けて突撃した。
「もう一度一斉射撃を加えるぞ!」
「はい!」
 それに従いまた攻撃が浴びせられる。怯んでいた帝国軍はこれでさらにダメージを受けた。後ろではワルキューレの軍が鶴翼の陣を組み攻撃を加えていた。前後から圧迫を受けている為か帝国軍はタンホイザーの軍にもワルキューレにもまともに対処が出来ないようであった。
 タンホイザーの軍はそのまま突っ込んだ。そして周りにいる敵に対して次々と攻撃を浴びせる。そしてその中でクリングゾルの旗艦を探していた。
「公爵」
「見つかったか」
 タンホイザーはラインマルに顔を向けて問うた。
「はい、敵艦隊の右翼におります」
「そこか」
「今ワルキューレもそちらに主力を向けております。どうやら彼等もニーベルングの旗艦を確認した様です」
「そうか、遅れるな」
 彼はそれを聞くとすぐにローマを動かせた。
「右だ、捕捉するぞ」
「了解」
「必要とあらば乗り付ける。艦内に斬り込む」
「艦内に」
「何としてもニーベルングを撃つ」
 タンホイザーの声が強いものとなった。
 
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