| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔弾の王と戦姫~獅子と黒竜の輪廻曲~

作者:gomachan
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

ミライトーク『アルサスの平穏』

 
前書き
ちょっとゼノブレイドっぽいキズナトークをしてみたいと思い、執筆しました。
テンポの都合上、台詞に人物名がありますがご了承下さい。
それではどうぞ。 

 
今日もここは静か。そして穏やかだ。
緩やかに吹く風に、自らの銀髪を遊ばせながらそう思う。

―――――そう、草原と風の世界アルサスの朝は早い。
あの旅を終えてエレオノーラ達は一度アルサスへ立ち寄った。ティグルには帰還の意味を含めて、一同はここアルサスにいるのだ。

物質創生能力船『フツヌシ』———
かつて、世界樹そのものと化したそれは、世界を脅かす存在となった。
ウチュウと呼ばれる空の領域にまで幹を伸ばし、鋼の巨人たちをこの大地へ降らせて、このザクスタン、アスヴァール、ムオジネル、それ以外の大陸、いや、世界そのものを滅亡させようとしていた。

戦犯の名は――カロン=アンティクル=グレアスト
そして――マクシミリアン=ベンヌッサ=ガヌロン
この二名である。

アオイ=源吾という人物が、世界樹の頂上で私たちをずっと待ち続けていた。それも
、肉体を失ってなお、魂だけの存在となって待ち続けていたというのだ。
ティグルの持つ黒き弓。私たちが持つ、誇りそのものにして竜具と呼ばれる超常の武具は、元々凱の生まれた時代の名残からうまれたものだという。
全ては、凱を元の時代へ取り戻そうとしたことが、この世界のすべての始まりだった。

――最初聞かされたときは驚いたものだ。

ティル=ナ=ファが『000』……トリプルゼロの(ゲート)を制御するトリニティなんたらの三種の制御人格だったり――
ジルニトラが『人間を危険な方向に進化しないよう、知的生命体が持つ最大の欲求――(メチタ)』に介入していく三対の統合行動端末(デバイス)だったり――
ジルニトラの体内から生まれた『コア』はやがて『竜』となり、そこから人間や動物——数多くの種が生まれたとか――
寿命を迎えた竜はやがて『銀閃』『凍漣』『光華』『煌炎』『雷禍』『虚影』『羅轟』となり、その七つの要素はやがて世界を形作る大陸と化し、海に還り、空へ舞っていくことで、トリプルゼロによって滅ぼされた世界を再生させていったそうだ。

永遠に比す時間をかけて行われる――世界再生計画と人類補完計画。

そのコアの成りそこないが、蛙の青年とか箒の魔女とか呼ばれる『魔物』だったり――
生機融合体――エヴォリュダーと呼ばれる存在が、ジルニトラの元となったり――
ガイのGストーン情報を蓄積した『コア』から、ガヌロンが誕生したり――
ジルニトラの制御核から竜具が生まれ、ティル=ナ=ファの三つの人格のうちの『人』が、そのジルニトラに助けを求めて戦姫が生まれた。
ガイがなぜ、竜具を使えるのかを初めて知った瞬間だった。
通常、竜具は戦姫を選ぶ性質上、女性しかなれない。
ともかく――――
気の遠くなるような年月をかけて、『地球』と呼ばれる世界は再生をして今に至るということだ。
とにかく、知識も無く知恵も沸かず頭の回転も悪い私には理解できないことが重なり合った。

凱の奪還のために、世界を犠牲にしてしまったこと――故に凱は元凶と呼ばれる。
それら他の事が偶然にも重なり、今の時代に至ったというわけだ。

ブリューヌとジスタートが共通する天上の神々は、命の循環設備そのものだった。

ヴォジャノーイをはじめとした魔物からは『銃』と呼ばれたりしたらしい。
なにより、凱にとってつらかったのは――――『元凶なりし者』と吐き捨てられたことだ。
あの場に凱がいなかったのは、何よりの幸いだった。
同時にティグルもつらかった。それと同じくらい、死ぬほどおのれの呑気さを恨んだ。

ガヌロンがティッタに連れ去られた。
そして、ガヌロンはティッタの中にある『人』と『魔』のティル=ナ=ファを喰らい、『ガオファイガー』と呼ばれる鋼の巨人を操り、私たち『魔弾の王と戦姫』を存分に苦しめた。
そんな絶望の中で奇跡は起きた。いや――違う。ティグルの意地とティッタの想いが奇跡を起こしたのだ。

『力』のティル=ナ=ファとの同調進化(イレインバーセット)を果たした、ティッタの復活。
勇者(ティッタ)(ティグル)の絆の意味。
それこそ、この時代の『勇者王誕生』だったのだ。



ブレイブトーク『平穏のアルサス』

凱・エレン・リム・フィーネ・ミラのトーク。









凱「やっぱりアルサスにくると落ち着くなぁ」
フィーネ「本当だ。いい意味で何もないからな」
リム「農業は結構さかんですが、テリトアールほどでもありませんし、第一次産業もザクスタンほど発達していませんしね」
凱「ま、療養や余生を過ごしたいんだったら、ここが一番かな」
エレン「のどかな村だからな。寒冷のジスタートとは違い、アルサスの『キオン』は殆ど安定している」

ヴィッサリオンから教えてもらった気象予報技術「気温」。
年間を通してのジスタートでは気温が低く、作物の芽が咲くのも他の地域と違って一足遅い。
もっとも寒い表現ができるならば、そう――風が吹けば、冷たいナイフで肌を切り刻まれる感覚。
風がジスタートに死を運んできた。
その点、アルサスに運ばれる風は心地よい。
風に吹かれて銀の髪が揺れる。
エレンはミラに問いを放った。

エレン「なあ、リュドミラはどう思う?」
ミラ「そうね、ここで暮らしてみたい―――とは思ったわ」
エレン「ほぉ――――」
ミラ「……何よ?」
エレン「いや、意外な返事だったから」
ミラ「ティグルの家に泊まらせてもらったとき、庶民とはこういう暮らしをしていたのかと、心を躍らせたのよ」
フィーネ「今の二人は暮らしがいいからな」

貧村の生まれであるフィーネからすれば、現役の戦姫の印象がそのように映るのは仕方のない事だった。無論、フィーネも傭兵時代の過酷な生活を送ってきたエレンとリムも知らないわけではないが。

凱(ティグルが庶民か――確かに、伯爵の身分がなければ、そういわれても違和感ないんだよな)

ティグルはあれでも爵位もちなのだが、身なりに加え、民とほとんど同じ水準の生活用品しか使っていないのだから、リュドミラが「庶民の暮らし」と思うのも無理はないだろう。

リム「私も同感です――リュドミラ様」
エレン「ちょっとまて、リュドミラの味方をするのか、お前は」
リム「敵か味方じゃなくて、頻繁にライトメリッツの城下町へ、ティグルヴルムド卿と『遠征(かいぐい)』に出かけたエレオノーラ様がそれを言いますか」
エレン「民の生活を知る為だ!これだけは譲れん!」

えっへんと胸を張るエレン。豊かな胸がより一層強調されたように見えた。

ミラ「ホント、呆れて何も言えないわ。ジスタートの戦姫が街中で物を食べ歩くなんて……」
エレン「おい貴様!ロドニークの露店前で腹の()を鳴らしながら麦粥(カーシャ)を喜んで食ってたお前に言われたくない!」

思い出して顔を赤くするミラ。皆の前で腹の虫をかき鳴らして恥をかいた。
あくまで自分は無関係―――と凱に思わせたかったのだが、立合者であるエレンとリムがいればそうはいかなかった。
そこでミラは開き直った。

ミラ「せっかくの気遣いを無下にしたくなかったからよ!あなたこそ見せつけるように食べるなんて大人げないわよ!」

――俺から見ればそうやって張り合うところを見るとまだまだ子供なんだけどな。

思い出話で咲きかえる戦姫を見ていると、凱の心に微笑ましいものと呆れさが同時に芽を吹くのを感じた。それはフィーネも同様であった。
二人の応酬が落ち着くまで、凱とリムとフィーネは一歩下がって見守っていた。

リム「そういえば、そんなこともありましたね」
凱「その時はリムも一緒だったのか?」
リム「ええ、ティグルヴルムド卿も一緒でした。エレオノーラ様とリュドミラ様――あの時の二人はどちらも『大人げなかった』のですが――」
フィーネ「リム。エレンとミラ、二人の出会いはどんな感じだったんだ?」

エレンの義姉という立場を意識してか、フィーネはそれとなくリムに聞いた。

リム「それは――初対面から最悪でした……」

随分と力のない言葉だなと思った凱は、ひたすらリムの言葉に耳を傾けていた。
かくかくしかじか――――

凱「……さぞ恐ろしかったのだろうな。10人がかりでやっと止められたのか」
リム「それはもう」
隣のリムの表情を見る限り、相当なものなのだろうなと凱は察する。
エレンとミラはまだうがうが言い合っている。
そろそろ二人の仲裁に入るとするか。

凱「エレンとミラ――ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

アルサスから吹く風に乗せて、凱は二人の戦姫に語り掛ける。

エレン「どうした?ガイ」
ミラ「どうしたのかしら?ガイ」

凱「ブリューヌとジスタートでアルサスは奪い合いになったりしないのか?」

国境代わりとなっているヴォージュ山脈の近くにあるアルサスだからこそ、不安なことも多く、そして大きくある。
外交上の戦争であった『ディナントの戦い』とは違い、アルサスは背中に山脈――前面に下り坂の大草原(カタパルト)がある為、着陣するには格好の場所だ。わざわざディナント平原まで迂回してガヌロン公爵の領地からブリューヌに入る――という非効率的な方法をとることもあるまい。

逆にブリューヌ側もアルサスを見過ごせない点は、軍略という意味ではそろえられている。
ブリューヌ内乱時、ジスタートの介入を防ぐためにテナルディエ一派がアルサスを焼き払おうとした――という実例が存在する。
仮にテナルディエが手を出さなくとも、ガヌロンが手を出していたかもしれない。そう思うと、アルサスがいかに重要な位置をしめしていたか、はっきりとわかる。
ブリューヌの革命戦争時だってそうだった。
一斉蜂起の時まで身を隠し、機械兵器の燃料を採取できる場所は、ヴォージュ山脈付近に位置するアルサスを除いて、他に臨める場所は存在しない。

もう――あんな戦争は引き起こしてはならない。
そう強く思う故に出た、凱の言葉だった。

エレン「今のところ問題はないはずだ」
ミラ「そうね。今のアルサスはブリューヌとジスタートの共同管理ですもの。どちらかがこの地域に手を出そうものならば、それはすなわち開戦を意味するのよ」
リム「安心してくださいガイさん、少なくとも、我が国ジスタートには戦争の意志はありません」
凱「そうか——それが聞けてちょっと安心したよ」
フィーネ「どうしてガイがそんなことを心配する?」
凱「ティグルの生まれ育った村だからかな」

エレンとミラは目を見開いた。

凱「俺たちがティグルの故郷を心配するのは当然のことだろ?」
ミラ「それもそうね」
凱「ティグルがなんの気掛かりもなく前を向いて走っていける環境を作らないと――アルサスのことで不安になって、頭の中がいっぱいになったらいけないじゃないか」

エレン「——優しいんだな。ガイは」

それは、この場にいないティグルに向けられている言葉とも思えた。
かつて、テナルディエがアルサスを焼き払おうとするのをティグルが知った時、弓一つ、身体一つで立ち向かおうとしたのだ。ライトメリッツの脱走を試みて。
心意気は立派だが、現実は何もできない。私が何を気に入らないのか、そして、どうしてほしいのかを言わせたら、素っ頓狂な返事がティグルの口から出たものだ。
まさか―――――兵を貸してくれだなんて、本当に言うとはな。
確かに、あの時の賭けは私の負けかもしれん。

凱「ありがとう、エレン。それにアルサスは王都から離れていることもあって、唯一で『影響』を受けにくい場所だもんな」
リム「——どういうことでしょうか?」

凱の言葉の真偽が読めず、思わずリムは「らしくない」言葉を発した。ティグルに講義を鞭撻する、教師たる彼女らしくもない言葉を。
凱でなくフィーネが代弁した。

フィーネ「あのような少年が育つには、こういう環境でないといけない――」

ブリューヌでは侮蔑されている弓を最大限生かせる環境――数多くの狩猟環境が隣接するヴォージュ山脈。
何より、アルサスの住民の声が、そこに住む主の耳が隣り合っていること。現状に合わなくなってきた今が、即座に伝わるアルサスのキズナ。
弓ひとつであらゆる敵をい倒し、そしてガヌロンさえも止めて見せたティグルの腕の冴えは、アルサスという環境から培われたものだ。

リム「なるほど――例えば王都で育った少年の多くは、ロランの武勇と始祖シャルルの伝説に憧れて『騎士団』に入りたがりますしね」

凱「それはそれで嬉しいんだけど、それでは多分、ティグルのような『英雄』は生まれてこない。ブリューヌ……いや、世界全体を変えるような大きな存在を育てることもできない。そもそも国や体制がその可能性の萌芽をつぶしているかもしれないんだ」

ミラ「……ガイ」

凱「その点、アルサスはうまい具合に王都から離れている。確かに流通は少ないし、不便のほうが先立ってしまうけど、上から『支配』されてないぶん、根底には『自由』があって大きな『可能性』を感じるんだ」

エレン「——そうだな。ガイの言う通り、私たちはティグルのその『可能性』に導かれて、『原作(セカイ)』はこうも変わっていったのだからな」

ミラ「ええ、ガイの言葉には賛成ね。ブリューヌから……こういった場所を無くしてはいけないんだから」
リム「そうですね。必ずや私たちがアルサスを守り抜かなくては」










~ミライトーク~

『アルサスの平穏』

―完了—



 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧