納戸婆

「あんたが言っておったではないか」
「納戸に妖怪がいることもある、ね」
「そうじゃ、それでじゃよ」
「あんたがその妖怪なの」
「そうじゃ」
　その通りだというのだ。
「納戸婆というのじゃ」
「そうだったの」
「まさか本当にいるなんて」
　理沙も驚いて言った。
「思わなかったわ」
「ひょっひょっひょっ、いないと思っておったらいるのがじゃ」
「妖怪なのね」
「そうじゃ」
　その通りだとだ、納戸婆は理沙に答えた。
「実はこの店の初代さんの頃からおってな」
「ひいお祖父ちゃんと会ってたの」
「うむ、初代さんが納戸を置いた時から住んでおってのう」　
　その納戸の中にというのだ。
「楽しく暮らしておった」
「そうだったのね」
「そうじゃ、それでな」
　納戸婆はさらに話した。
「ずっとおってお店を見ておったがな」
「それで開こうとしたから」
「こうして出て来たのじゃよ」
「そうだったのね」
「面白いであろう、しかしな」
「しかし？」
「いや、そこの異人さんは平気な顔をしておるのう」
　納戸婆はここでダイアナを見た、見ればにこにことして妖怪を見ている。
「楽しそうに」
「本当にいましたね」
　実際に笑顔で言うダイアナだった。
「見られてよかったです」
「よかったのか」
「はい、日本の妖怪さんですね」
「そのうちの一人じゃよ」
「そうなのですね」
「わしを見られて嬉しいのか」
「妖精とか幽霊とか好きですから」
　だからだとだ、ダイアナは納戸婆にこにことして話した。
「お会い出来てよかったです」
「そうか」
「はい、それでこれからどうされますか？」
　ダイアナは妖怪に今後のことを聞いた。
「それで」
「いや、御前さん達を驚かそうと思って出ただけでな」
「他にはですか」
「特に考えていなかった」
　そうだったというのだ。