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納戸婆

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第二章

「その時からあるらしいの」
「そうなの」
「ひいお祖父ちゃんが置いたらしいけれど、お店を開いた時に」
「それからずっとなの」
「お店を守ってくれてるそうだから」
「納戸の中に神様を祀っていて」
「ええ、だからどけるなってね」
 そう言われていてというのだ。
「私もなのよ」
「どけないのね」
「ええ。確かにイギリス風のお店には合わないけれど」
「お祖母さんにそう言われたら」
「私も別に困ってないしお客さんからも特に言われないし」
 それでというのだ。
「特にね」
「動かしたりするつもりないの」
「そうなの。それに納戸には神様がおられるけれど」
 それでもというのだ。
「ほら、妖怪も棲みつくっていうし」
「神様と一緒に」
「これもお祖母ちゃんに言われたことだけれどね」
「じゃああの納戸にも?」
「そうかも知れないでしょ」
 こうも思うからだというのだ。
「だからね」
「あの納戸はそのままにしてるの」
「そう。まあお店の中をよっぽどじっくり見て回らないと気付かないし」
 見れば上の方のそうした場所にある、店の中で働いている二人だからよく認識出来る程のもので何ヶ月か働いているアルバイトの子も気付かないことがあった。
「まあいいでしょ」
「そうね。あの納戸はね」 
 特にとだ、こう話してだった。
 二人はその納戸を放置していた。そんな中で二人は新しいアルバイトの店員を雇ったがこの店員は日本人ではなかった。
 イギリス人のダイアナ=カーライルだった、ややくすんだブロンドを長く伸ばし青い瞳と高い背に巨乳の二人にも負けない胸と明るい顔立ちが独特だ。
 その彼女が入ってくるとだ、すぐに店の紅茶とコーヒーを飲んで言った。
「どっちも美味しいですね」
「あれっ、貴女コーヒーも飲めるの」
 恵子はすぐにダイアナのこのことについて少し驚いて言った。
「そうなの」
「はい、イギリスにいた時からです」
「コーヒー飲んでるの」
「そうなんです」
 恵子に応えながら彼女が淹れたコーヒーを飲んでいる。
「自分で淹れることも出来ます」
「そうなの」
「それで紅茶もです」
 こちらもというのだ、イギリス人ならこれという飲みものも。
「好きです」
「どちらも飲めるのね」
「留学している大学でもどっちもよく飲んでいます」
「確か大学は私達と同じよね」
 今度は理沙がダイアナに言った。
「八条大学よね」
「あの大学の文学部にいます」
 流暢なイングランド訛りをあまり感じさせない日本語だった。
「そこで日本文学を学んでいます」
「そうだったわね」
「日本文学に子供の頃から興味がありまして」
「そうだったの」
「英語訳の日本の小説とかを読んで」
 そうしてというのだ。
「日本文学が好きで」
「留学もしてなの」
「勉強をしています」
 今現在そうしているというのだ。
「それも楽しく」
「それはいいことね」
「はい、そしてアルバイトもして」
 そしてというのだ。
「日本のお仕事も勉強させてもらってお金もです」
「稼ぎたいのね」
「そのつもりです。宜しくお願いします」
 こうしてだった、ダイアナもこの店で働きはじめた。ダイアナは大阪市内に長期のホームステイをしつつ神戸の大学に通ってだった。
 恵子と理沙の店で働いた、日本語は流暢で接客も礼儀正しくいい店員だった。だがある日のことだった。 
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