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リング

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214部分:ラグナロクの光輝その六十八


ラグナロクの光輝その六十八

「流石はニーベルングと言うべきか」
「やはり一線級の将であるということだな」
 トリスタンも口を開いた。
「今までの敵でここまで見事に撤退を進める者はいなかった」
「撤退戦が最も難しい」
 ローエングリンが述べる。
「それをここまで完璧にやってみせるとは」
「クリングゾル=フォン=ニーベルング」
 ジークフリートが彼の名を呼ぶ。
「帝国の長だけはある」
「唯の野心家だけではないということだな」
 ヴァルターもそれはわかっていた。
「敵ながら見事だ」
「その彼との歳後の戦いはラインです」
 パルジファルは六人の仲間達にそう述べた。
「宜しいですね」
「ああ」
「勿論だ」
 六人はその言葉に答える。
「まずはノルンへ入りますか」
「ノルンへですか」
 そこでモニターにワルキューレ達も加わった。ブリュンヒルテが九人を代表する形でパルジファルに対して問う。
「それで構いませんか?」
「私達としては異存はありません」
「是非」
 ワルトラウテ達も言った。彼女達にも異存はないようであった。
「わかりました。それでは」
「はい」
 帝国軍は遂に戦場を離脱した。後には破損し放棄された艦艇が漂っているだけである。
「ノルンへ入りましょう」
「そしてそこで」
「最後の戦いへの備えです」
 最後にパルジファルの言葉が戦場に響いた。そして勝利を収めた連合軍はそのままノルンへと向かうのであった。
「ところでノルンですが」
 パルジファルはノルンへと進みながらそこでブリュンヒルテに声をかけた。
「一体どの様な星なのですか」
「そうですね」
 ブリュンヒルテは少し時間を置いてから述べた。
「一言で申し上げますと静かな星です」
「静かな」
「はい。銀河の流れを一人で見てきた。そんな惑星です」
「左様ですか」
「もう住んでいる者も殆どいません」
 そしてこうも言った。
「殆どの者が外へと出てしまいましたから」
「左様ですか」
「ですが軍関連の施設は揃っておりますので御安心下さい」
「そこでしたらどれだけの艦隊がいても平気です」
「わかりました。それでは御言葉に甘えまして」
 七人はノルンへ向かうことになった。そこは青の惑星であった。そこと周辺に艦隊を駐留及び展開させ七人はそれぞれの乗艦と共にノルンへ降り立ったのであった。
 そこは見渡す限りの森と海の惑星であった。青と緑の美しい星であった。
「ここがノルンですか」
「はい」
 パルジファルにブリュンヒルテが答えた。七人と他のワルキューレ達も一緒である。
「そして向かい合う形でラインがある」
「ニーベルングは今そこに篭もっています」
「そこでの戦いの前にですが」
「宜しければ我々の館へ参りますか?」
 そう問うた。
「貴女達の館へ」
「はい、その館の名はフォールクヴァング」
「戦士達の館ですね」
「そうです。そこにおいで下さい」
「そして最後の戦いの前の安らぎを」
「わかりました」
 こうして七人は彼女達の招きに応じてそのフォールクヴァングに来た。そこは白い巨大な宮殿であった。
「かってはこの館も我々アース族の宮殿の一つでした」
 中は白亜で鏡により彩られていた。所々に光が跳ね返る。
「他にも多くの館があったのですが」
「ビルスキルニルにエギルヘイム」
「他にはギムレーも」
 ワルキューレ達は語る。
「ですが今は」
「このフォールクヴァングのみとなってしまいました」
「左様ですか」
「アース族の者達も去り」
「今残っているのは僅かな者達のみです」
「それは貴女達も含めてですね」
「ええ」
 ブリュンヒルテはパルジファルに答えた。
「最早この戦いでこのノルンの役目は全て終わりとなるでしょう」
「ニーベルングとの戦いで」
「そのニーベルングはラインで私達を待っていると」
「おそらくはニブルヘイム」
 ワルキューレ達は七人を館の奥に導きながら言う。奥も鏡と白亜で白く輝いていた。全体的にかっての第一帝国のものを思わせる壮麗でありながら落ち着いた造りであった。彼等はその中を進んでいた。
 
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