転生とらぶる

　望月。
　そう、間違いなく現在俺の前にいるのは、クラスメイトで友人の望月綾時その人に間違いがなかった。
　数秒前までは、刈り取る者を連想させるような、明らかにシャドウと思しき姿だったが、今の望月はいつものようにマフラーがトレードマークの人物に間違いはない。
　もしかしたら、一瞬俺は何かの幻覚でも見せられているのかと思ったが、アイギスが機能停止している状態を見れば、幻覚でも何でもないのは明らかだ。
　……まぁ、アイギスが倒れているのも幻覚だと言われれば、どうしようもないのは間違いないが。

「お前、本当に望月か？」
「そうだよ。君のクラスメイトにして友人の望月綾時さ」
「……で、その望月が何がどうしてこんな風になってるんだ？」

　そう尋ねつつも、俺は望月を警戒する態勢を解くような真似はしない。
　望月からは、敵意も悪意も感じない。それは間違いないのだが……同時に、アイギスが望月の手によって破壊されたというのも、間違いのない事実なのだ。
　そうである以上、ここで望月を相手に警戒を解除する訳にはいかなかった。
　ましてや、望月は先程刈り取る者とどこか似通った姿をしていたのだから。
　そんなも望月を見て、警戒を解けという方が無理だろう。
　ふと、望月の様子を眺めつつ、軽く地面を蹴る。
　それが合図と理解した刈り取る者が、俺の影から姿を現す。

「これは……驚いたな」

　俺がこの場に姿を現してから、全く驚いた様子を見せなかった望月だったが、刈り取る者の姿には驚いたのだろう。珍しく、目を大きく見開いている。

「アルマー君、君は……一体……」
「こいつはタルタロスで俺の召喚獣になった、刈り取る者だ。……驚いて貰ったようで何よりだな。俺ばかりが驚かされるというのは、ちょっと面白くなかったし、丁度いい」
「いや、それは……本当に君は一体何者なんだい？　この子は、間違いなくシャドウだ。それは僕にもしっかりと分かる。けど、同時にシャドウでありながら、シャドウではない存在になっている」
「……それは否定しない」

　俺がタルタロスで会った刈り取る者は、少なくても背中から蝙蝠や悪魔の如き羽根なんか生えてなかったしな。
　俺の血によって、刈り取る者がシャドウであってシャドウではない存在……俺の召喚獣になったのは、間違いない。

「さて、お互いに驚き合ったところで、そろそろ話を進めるとするか。……そうだな、何から聞けばいいのか分からないが、一応これから聞いておくか。アイギスをやったのはお前か？」
「彼女かい？　……ああ。正直、僕は戦うつもりはなかったけど、彼女は僕と戦わなければならない理由があった。悲しい事だね」

　そう告げる望月は、冗談でも何でもなく……本当に悲しそうな表情を浮かべている。
　目の前にいる人物は、間違いなく俺の知っている望月だ。
　そして、俺に対する敵意や悪意も持っていない。
　それは分かっているのだが……それでも、俺の中にある念動力は、望月を危険な対象だと判断しているのだ。
　これは……一体何がどうなってこうなったんだ？

「悲しい、か。この影時間に自由に動き回っていて、その上でアイギスと戦い、かすり傷も負わないで倒す。……影時間について、色々と詳しい事を知ってそうだな」
「そうだね。僕は影時間について色々と知っているさ。……より正確には、思い出したという方が正しいんだろうけど」
「思い出した？」
「ああ。昨日まで……いや、今日の影時間が始まるまでは、本当に僕は影時間やデスについて何も知らなかったんだ。それが、影時間になって思い出したのさ」

　デス？　直訳すれば死だが、この状況でそんな単語が出て来たのは、厄介極まりない。

「その辺りの詳しい説明を、聞かせて貰おうか」
「ああ、僕もそのつもりだよ。けど……同じ説明を何度もするのも面倒だし、どうせなら皆が一緒の場所で話したいんだ。それに、彼も来たみたいだしね」

　そう言い、嬉しそうに笑みを浮かべる望月。
　その視線の先には、グリに乗ってこっちに近づいてくる有里達の姿があった。
　望月の言う彼というのは、間違いなく有里の事だろう。
　望月は、有里にかなり懐いていたしな。
　それこそ、アイギスがそれを邪魔したり、恋人の山岸が複雑な表情を浮かべるくらいには。

「……まぁ、そっちの方がいいか」

　実際、今この場で望月の話を聞いていても、途中でグリがここに到着するのは、ほぼ間違いない。
　そうなれば、当然のように有里達も最初から話を聞きたくなる筈だ。
　そうなれば、当然のようにもう1度最初から話す事になり……その辺りの事情を考えると、やはりここで待っていた方がいい。
　別に10分も20分もここで待っていろという訳ではない。
　グリの姿が見えている以上、ここで待つのは数分と掛からないのは間違いないのだから。
　もっとも、その数分であっても今の状況で無駄にするという訳にはいかない。
　有里達がやって来るまでに、多少であっても情報収集をするべきと考え、口を開く。

「お前が月光館学園に転入してきたのは、やっぱり有里をどうにかする為だったのか？」
「まさか。そんな事は考えていないよ。ただ、彼と一緒に楽しい学校生活を楽しみたいだけさ」

　楽しい学校生活を楽しみたい。
　それでだけであれば、正直なところ俺が月光館学園に転入したのと、そう変わらない理由となる。

「そうか」
「あれ、それだけなのかい？　てっきり、嘘だ！　とか言って信じて貰えないんだとばかり思っていたのに」
「俺も、お前の気持ちは理解出来るからな。高校生活という意味で、月光館学園に転入したんだし」
「ああ、アルマー君もなのかい？　月光館学園は、素晴らしい場所だよな。特に可愛い女の子が一杯いるところがいい」
「……そうか」

　どうやら、月光館学園に通っていた時の軽い性格は、別にそう見せかけていたとかそういう事ではなく、素の性格だったらしい。
　その点は、別に騙されていたとかそういう事じゃないらしく、良かったと安堵する。

「それより僕は、アルマー君の事も知りたいな。まさか、シャドウをこんな風に別の存在に変えるなんて……それは、凄く興味深いよ」

　刈り取る者を見ながら望月が呟くが、視線を向けられた刈り取る者の方は、それに対して何か反応する様子はない。
　緊張……しているのは、間違いないだろうけど。
　刈り取る者であっても緊張をするという時点で、俺が望月が感じている危険は決して間違いじゃなかったという事なのだろう。

「ありゃ」

　そんな刈り取る者の様子に、望月は残念そうな表情を浮かべる。
　いや、残念『そうな』ではなく、本当に残念に思っているのが、その様子からは見て取れる。
　念動力が感じる、危険。
　それとは裏腹に、望月本人の性格は今まで俺が接してきた時と全く変わらない。
　……そう、まさにアンバランスという言葉がこれ程に似合うような相手もいないだろう。
　何がどうなってこんな風になったのか、非常に興味深いと思うのは決して俺だけではない筈だ。

「あ、時間切れだね」

　そう呟く望月に、頷きを返す。
　こうして望月と話している間にも、グリがこっちに近づいてきていたのは、当然のように俺も理解していた。
　召喚獣なのだから、それも当然だろう。
　グリが地上に着地したのを見ながら驚いたのは、その背に美鶴の姿があった事だろう。
　美鶴は、本来なら巌戸台分寮でこっちのペルソナを使った情報収集と指揮を執っている筈だった。
　それがわざわざここにやって来るという事は……それだけ、ムーンライトブリッジの様子を見られない事に衝撃を受けたのだろう。

「アクセル、無事か！　……良かった」

　グリの背から下りた美鶴は、俺の姿を見て心の底から安堵した表情を浮かべる。
　ただ、俺の側に望月がいるのを見て、険しい表情になったが。
　美鶴も望月については、多少なりとも知っている。
　望月が俺達と親しいのだから、美鶴達と話している時にそれが話題に上がるのも当然だろう。
　だが、望月を知っているからといって、それがこのような場所に……しかも影時間に、フリーズしたアイギスと一緒にいるというのは、怪しむなという方が無理だった。
　しかも、実際にアイギスを倒したのは望月だという事で間違いないのだから、美鶴のその疑惑は決して間違っている訳ではない。

「お前……何でここに……」

　俺や有里、ゆかりと同じように望月と親しい順平は、ここに望月がいるという事にただ唖然とするしか出来ない。
　有里も何と言葉を掛ければいいのか迷っているようだし、ゆかりは美鶴と同じく疑惑の視線を望月に向けている。
　荒垣、真田、コロマル……といった望月と面識のない、それこそ名前くらいしか聞いた事のない面々は、現状でどう反応したらいいのか、迷っていた。

「それにしても、この……グリフォンって言うんだっけ？　いや、こうして見ると本当に凄いね」

　こちら側が緊張しているのに対して、望月の方は特に緊張した様子も見せず、感心したようにグリを眺めている。
　……ただ、グリも望月から得体の知れない何かを感じているのか、萎縮……とまではいかないが、いつもの元気さは存在しない。

「正確には、グリフォンとドラゴンの合いの子的な存在のグリフィンドラゴンだな。それを、刈り取る者と同じように召喚の契約を結んだ結果、若干姿が変わった」

　刈り取る者の場合は、外見的な変化としては羽根が生えただけだ。
　能力的な意味では、混沌精霊としての俺の影響か、影に潜ってそこを自分の居場所とするようになったが。
　それに比べると、グリはドラゴンの羽根の他に刈り取る者と同じような羽根が生えて、2対、合計4枚の羽根を有している。その上、角とかもかなり増えているのだから……うん、まぁ、刈り取る者と具体的にどこがどう変わってそうなったのか、疑問だ。
　もっとも、ネギま世界の魔法界に生息するグリフィンドラゴンと、ペルソナ世界でタルタロスの中に存在するシャドウの刈り取る者。
　出自からして世界そのものが違うのだから、俺の血でそれぞれどのような影響を受けるかというのは、それこそ他にも多くに召喚の契約を試してみないと分からないが。
　……ただし、グリや刈り取る者のように、俺の血の魔力に耐えらなければ死ぬのだから、そう簡単に試す訳にもいかない。
　血を薄めれば、魔力も薄まるんだが……それでも、吸血鬼のエヴァにとってすら、色々とキツい代物みたいだし、何よりそんな真似をすれば召喚の契約を結べるかどうかすら分からない。

「ふーん。……やっぱりアルマー君は、この中で唯一のイレギュラーだね。他の皆はペルソナという力を持っているのに、アルマー君だけはそういう力がない」
「まぁ、実際に俺はペルソナ使いじゃないしな。……この世界における、いわゆるファンタジー的な力ってのは、別にペルソナとかだけじゃないって事だ」
「そうかい」

　俺の言葉に納得したのか、それとも取りあえずそういう事にしておけばいいと思ったのか。
　その辺りの望月の考えは分からないが、表向きは納得してくれたのは、正直助かる。

「さて、それはそれとしてだ。こうして全員が集まったんだから、しっかりと話を聞かせてくれるんだよな？」
「そうだね。ただ……ここだと、色々と不味いだろ？　彼女もそのままにしておく訳にはいかないし」

　望月の視線が向けられたのは、アイギス。
　色々と修理しなければいけない以上、暫く戦線復帰は無理だろうな。
　そう思いながら、どこで話を聞くのがベストなのかを考える。
　……いや、考えるまでもなく、相応しい場所としては巌戸台分寮しかないか。
　場所的には俺の家でも問題はないんだが、俺の家は狭いしな。
　グリと刈り取る者がいなくても、この人数が集まるのは不可能に近い。
　それはゆかりの部屋も同様だし、そうなれば残るのは自然と巌戸台分寮となる。
　アイギスの件も込みで考えれば、尚更だろう。
　山岸やチドリも、当然望月の話は聞きたいだろうし。

「じゃあ……取りあえず、グリ。ご苦労だったな

　そう褒めながら頭を撫でると、グリは嬉しそうに目を細め……召喚が解除され、ネギま世界の魔法界に戻っていった。
　刈り取る者の方も、俺が視線を向けるとそれだけで言いたい事を理解したのか、俺の影の中に沈んでいく。

「おや、あのグリというのに乗っていくんじゃなかったのかい？」
「残念ながら違う。俺がいる以上、わざわざグリに乗って移動するような真似をしなくても、問題なく転移出来るからな。望月も見たんじゃないか？　俺がここに姿を現した時の事を」
「ああ、あの……その、ちょっと気色悪い……」

　若干言いにくそうにしている望月の言葉に、それを聞いていた何人かが、思わずといった様子で吹き出す。
　……まぁ、影から出てくる光景ってのは、慣れない者にしてみればちょっと気色悪いと思われても不思議じゃないのか？
　ホワイトスターに戻ったら、エヴァ辺りにその辺をどうにか出来ないか、聞いてみるとしよう。
　そう思いながら、俺は問答無用で全員を呑み込む程度の影のゲートを展開するのだった。 

アクセル・アルマー
LV：43
PP：1435
格闘：305
射撃：325
技量：315
防御：315
回避：345
命中：365
SP：1415
エースボーナス：SPブースト（SPを消費してスライムの性能をアップする）
成長タイプ：万能・特殊
空：S
陸：S
海：S
宇：S
精神：加速 消費SP4
　　　努力 消費SP8
　　　集中 消費SP16
　　　直撃 消費SP30
　　　覚醒 消費SP32
　　　愛　 消費SP48

スキル：EXPアップ
　　　　SPブースト（SPアップLv.9&SP回復&集中力）
　　　　念動力 LV.10
　　　　アタッカー
　　　　ガンファイト LV.9
　　　　インファイト LV.9
　　　　気力限界突破
　　　　魔法（炎）
　　　　魔法（影）
　　　　魔法（召喚）
　　　　闇の魔法
　　　　混沌精霊
　　　　鬼眼
　　　　気配遮断A+

撃墜数：1389