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蒼穹のカンヘル

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三十枚目

「学校だと?」

「どうして?」

別に学校なんて行く必要ないだろ。

「貴方達二人が既にハイスクールの内容まで終わらせているのは知っているわ。
でも、学校を出ておかないと悪魔の身分を隠して人間界で活動するときに不便らしいのよ」

あ、なるほど。

「それって悪魔の権限とかで偽造できないの?」

とヴァーリが言った。

「できなくはないけれど、どうせなら学校生活を楽しんだ方が特でしょう?」

そりゃぁそうだが…

ヴァーリに後ろから抱きつかれた。

「篝と一緒にいる時間が減るからいや」

「私の権限で同じクラスにしてあげるから。
ね?それならヴァーリも問題ないでしょ?」

それをやるなら…っていうのは野暮だな。

「ん!わかったよリーアお姉ちゃん!」

うーむ……ヴァーリがべったりなのはどうにかしないとな…

ちゃんと兄離れさせてやらないと…

学校はいい機会かもしれん。

『なぁ、セルピヌス。コイツはどうにかならんのか?』

『諦めろアルビオン。コイツはこういう奴だ』

なんか神器同士で話しているらしいが、代名詞だけなので何について話しているかさっぱりだ。

まぁ、たぶん二人…? 二匹…? 二体…? 二柱…? もヴァーリのことを心配しているのだろう。

『『………』』

それと…

「ヴァーリ。当たってる当たってる。
そろそろ離れてくれ」

その、背中に当たる感触が…ね?

「篝はもう大人だから、私のおっぱいを押し付けられて、イヤらしい気持ちになったりはしないんだよね?」

アザゼルから貰った小遣いで買った本を読ませたのは失敗だったようだ。

「俺だって男なの。ほらほら離れた離れた。
男にこんな事したらダメだぞ。
お前は体が小さいときと同じ感覚なんだろうがこっちはそうもいかないんだよ」

「……昨日一緒にお風呂入ってくれなかったのも?」

「そういうこと。ほら、早く離れて」

「えー…」

いっそう抱きしめられる。

鱗が危ないのだが…

そこで咳払いが聞こえた。

「二人共、イチャイチャするならよそでやってほしいのだけれど?」

「あー…ごめんリーアちゃん」

ヴァーリが抱擁を解いたかと思えば、今度は180度体を回され、正面から抱き上げられた。

「ヴァーリ?」

「せっかく篝を抱けるくらい大きくなったんだからいいじゃん」

いろいろ文句を言いたいけど…まぁいいか…

『カガリよ。お前が一番ヴァーリを甘やかしてると思うのだが』

そうか?

「そういう事なら仕方ないわね…
でも少しは自重しなさいよ」

「はーい」

許しちゃうのかぁー…

「ただカガリの羽を私にももふもふさせて欲しいのだけど」

「リーアお姉ちゃんならいいよ」

待てや。俺の意見は聞かないのか?

「じゃぁどこかにすわろうかな…」

ヴァーリがキョロキョロして、バルコニーの方へ目を向けた。

「いい?」

「そうね、そうしましょうか」

リーアちゃんがバルコニーへ向かい、ヴァーリが俺を抱えたまま後に続く。

俺は尻尾と翼の分けっこう重いはずなのだが、ヴァーリは気にした様子もなく歩いている。

リーアちゃんが扉をあけ、バルコニーへ出ると、ヴァーリはすぐに椅子に座った。

リーアちゃんはその隣の椅子だ。

さて、正面から抱き上げられた状態で座られるとどうなるかと言えば…

「篝、私これ知ってる。対面座「ちょっと黙ろうかヴァーリ」

アザゼル…マジでどうしてくれようか…

「グザファンが教えてくれたんだよね」

まさかの伏兵…!?

「カガリ、とりあえず翼を広げてちょうだい」

あ…リーアちゃん置き去りにしてた…

「ん、わかったよ」

翼を左右に大きく伸ばす。

とたんに片方の翼にリーアちゃんが抱きついた。

「ん~!」

「リーアちゃん。一応言っとくけど俺の翼って『聖』の塊だからね?
触りすぎたら危ないよ」

「もふもふ!」

「リーアお姉ちゃん全く聞いてないね…」

だな…

「危なくなったら止めるか…」

「翼から『聖』を抜けないの?」

「無理。そも翼自体が『聖』の源だし。
仮にできてもやろうとおもえない」

仮に翼から『聖』を抜けたとして、その抜いた分の『聖』をどうするか、という事だ。

今の俺の体には、力の源が複数ある。

言わずもがな龍天使の心臓と翼、堕天使の翼、イーヴィル・ピースだ。

他の場所へ『聖』を移す前に他の力とぶつかってしまう。

「体内の力の制御なんて無理だ。今は魔法も使えない」

前は、『聖』『光』『龍』の三つの力しかなかったのである程度は制御できていた。

しかし今できるのはカンヘルの能力の行使とエネルギー弾を打つ事だけだ。

クーリアンセに関しては、外部の自然エネルギーで発動する物なので問題なし。

それに母さんには父さんがついている。

今のところ魔法を使えなくとも問題はない。

大人しくもふもふされていると、グレイフィアさんが来た。

「リアスお嬢様、篝様、ヴァーリ様。
黒歌様がお呼びです」

「わかりました」

リーアちゃんは残念そうにもふもふするのをやめた。

ヴァーリの膝の上からおりる。

「行こ、リーアちゃん」

「そうね…」

グレイフィアさんの後をついて行くけど、リーアちゃんがずっと翼をもふってる。

「リーアちゃん。ついたよ………
リーアちゃん?」

もふもふもふもふ……

仕方ないなぁ…

「ヴァーリ」

「はいはい」

ヴァーリがリーアちゃんの顔に手を近づけ…

ピシィッ!

「ふやっ!?」

リーアちゃんが仰け反った。

「な、なに!?」

「デコピンだよ。西洋圏にはない文化だね。
まぁ、ちょっとした悪戯だよ」

プーっと頬を膨らませてリーアちゃんがこっちを睨んでいる。

「痛かったんだけど」

「まぁ、そういう物だし。
俺の手はこんな感じだからヴァーリに頼んだんだよ」

鱗に覆われた手を見せる。

「むぅー…」

「グレイフィアさん。開けてください」

「かしこまりました」

ガチャ…とドアが開く。

そして目にはいった光景は……


幼女の土下座だった。
 
 

 
後書き
ようやく24巻読んだけど……
どうしよう… 
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