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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第32話 灼熱の火山に向かえ!実食、BBコーン!!

 
前書き
 話の都合でグリンパーチの会話にて出るGODの出現を数年以内に変えましたのでお願いします。 

 
side:イッセー


 よう、イッセーだ。朱乃さんの過去を知った俺は彼女が俺を異性として慕っていることを知り彼女を受け入れた。まあ前から結構過激なスキンシップや大胆な発言をよく俺にしてきたから「あれ、この人俺の事好きなんじゃねえの?」とうぬぼれた事を考えてたこともあったけどまさか本当だったとはな。


「うふふ、イッセー君♡」
「朱乃さん、くっつくのはいいんですが胸が当たっていますのでもうちょっと離れてくれませんか?」
「駄目ですか?」
「い、いや駄目じゃないんですがちょっと恥ずかしいと言うかその……」
「イッセー君の傍にいるだけで胸が暖かくなって心地いいんです。だからもう少しだけこうさせてください」


 上機嫌で俺の右腕に自分の腕を絡めながら微笑む朱乃さんを見て俺は仕方ないなと思いながらもこんな美人に好意を持たれている自分の幸せに感謝した。


「ちょっとイッセー、こんな空の上でイチャつかないでよ。独り身としてはツラいのよ?」
「すいません、少し舞い上がっていました」


 後ろの席に座っていたリアスさんにジト目で睨まれてしまった。朱乃さんとも恋人になったことを話した時は「ああ、やっぱりな」という風にリアスさんから視線を送られたがそれでも自分の親友がイチャイチャしてるのを見てるのは悔しい様だ。


「先輩は女の子を垂らしこんでしまう悪い癖があります、これ以上は増やさないでくださいよ?」
「いや3人以外に俺に好意を持ってる女子なんてもういないって」
「分かりませんよ、この先出会う相手がイッセーさんを好きになるかも知れませんし……」
「「確かにそうですね」」


 俺の膝に座る小猫ちゃんがジト目で俺に忠告してきた、俺はないないと手を振ったが隣に座るアーシアの発言に小猫ちゃんと朱乃さんが同時に頷いた。


「なあ祐斗、俺ってやっぱり節操なしなのかな……」
「あはは……それよりイッセー君、今このヘリはどこに向かっているの?」
「誤魔化した……まあいいや、このヘリはウール火山に向かっている」
「ウール火山?」


 ウージャングルでBBコーンを捕獲した俺たちは巨大BBコーンの粒を調理するためにウール火山と呼ばれる場所に向かっていた。普通に行くと1500㎞もあるのでルフェイの加速の魔法を俺が倍加して凄まじい速度で空を飛んでいた。掛かる負担は魔法で軽減させているがそれでも機体に大きな負担がかかるので普段はしない、だが今回は速くBBコーンをテリーに食べさせたかったので急ぐ事にした。


「ウール火山はホットスポットと呼ばれる一帯で極めて高温のマグマが地下を流れている火山地帯だ」
「そんな危険な場所に何をしに行くんですか?」
「決まってるだろう、ポップコーンを作るためさ」
「ポップコーンを作るためだったの!?」


 俺の発言に全員が驚いた表情を浮かべた、まあ普通はポップコーンを作るために火山に行くことは無いから驚くのは当然だ。


「BBコーンは昔、グルメ貴族という上流貴族が好んで食べていたおやつでもありその調理方法がポップコーンだったんです」
「貴族も食べていたポップコーン……それは興味深い一品ね」
「はい、ですがBBコーンは生半可な火力ではポップコーンにはできません。ましてやこのサイズともなると火山ほどの火力じゃなければ無理なんです」
「なるほど、だからウール火山に向かうんだね」


 俺の説明に全員が納得した表情で頷いた、だがそのポップコーン作りがとても過酷なものになるとはその時誰も思っていなかった。









「よーし、調理場に到着したな!」
「凄い熱さね、今回は水着も持ってきていて良かったわ」
「私が作った特製の悪魔用日焼け止めクリームがありますからリアスさんたちもどうぞ」
「ありがとう、ルフェイ」


 ウール火山に到着した俺たちはサウナのような熱さの地表に降り立ちポップコーン作りを始める事にした。


「それでイッセー君、どうやってポップコーンを作るんだい?」
「ウール火山は下を流れるマグマの温度が1400度でそこに近い岩石が1200度、それから積み重なった岩石の順に温度は下がっていくんだ。今俺たちが乗ってる岩石が50度くらいだな」
「1400度……悪魔でも耐えられない温度ね」
「こんなところを自由に歩けるのはGTロボでしょうからね、たまにあいつらが羨ましくなりますよ」


 岩石の下を流れるマグマを見て俺はGTロボたちが羨ましく思った。そういえばグルメ界にはコンソメ味の美味な味がするマグマが流れている火山があると聞いた事があるが……ふふ、いつの日か飲んでみたい物だな。


「ようし、それじゃさっそくBBコーンを調理していくぞ!」
「「「おおーっ!!」」」


 俺はまず温度のさほど高くない岩石の上にBBコーンを置いて焼いていく、いきなり高温の岩石に載せたら直に焦げてしまうからだ。まずはこうしてじっくりと中から温めていき徐々に下に降りていく方法で試すことにした。


「あ、熱いわね……」
「胸に汗が溜まって気持ち悪いですわ……」


 一番低い温度でも50度はあるので座っているだけでも相当熱い、リアスさんたちは汗が酷くなってきたので水着に着替えていた。こんな熱い場所で素肌を曝したら普通は危ないが魔法で保護しているらしい。


「そろそろひっくり返してみるか……」


 焼き加減を見ようとBBコーンをひっくり返してみたが裏側が黒く焦げていた。


「あ、焦げてしまってるわ」
「しまった、ひっくり返すのが少し遅れてしまったか……」


 もう一度やり直してBBコーンを焼いていくがまた焦がしてしまった。


「タイミングが難しいですわね……」
「うん、目を少しでも離したら失敗してしまう。難しい調理だ……」


 その後何回も焦がしてはやり直しを繰り返し辺りはすっかり暗くなっていた。夜になっても灼熱の世界は変わらず熱くその中で作業を繰り返しているが全員が朦朧としだしてきた。


「はぁ……はぁ……」
「皆、無理はしなくていいんだぞ?BBコーンは俺とテリーで見ておくから皆は休んだ方がいい」
「いや、まだ大丈夫だよ。心配しないで」
「私も大丈夫ですわ」
「……そうか、なら水分補給はしておけ。長丁場になりそうだからな」


 俺は皆に水筒を渡して水分補給するように言った。


(しかしマズいな、これ以上下に行けば服も靴も全部溶けちまう……ん、あれは?)


 近くの岩場にネズミのような生き物の死体が3つあった。あれはマグマラットの死骸か、ちょうどいいぜ、マグマラットの皮は超高温にも耐え熱を遮断してくれる。これを敷けば温度の高い岩石に降りても大丈夫だ。


 俺は小猫ちゃんたちにマグマラットの事を話して協力して皮をはぎ取って下に敷いた。よし、さっきよりも遥かにマシになったぜ。


 それからもBBコーンを焼き続けた俺たちはいつの間にか朝を迎えていた、全員汗だくになりもはや会話すらなくなっていた。アーシアやルフェイも耐熱を得る魔法で耐えてはいるがとても辛そうだ。


「皆、もう少しだ、がんばれよ」
「の、望むところよ」
「美味しい物を食べるには忍耐も必要ですからね」
「はぁ……はぁ……負けませんわ」


 しかしBBコーン、ポップコーンを作ろうとするなら捕獲レベルは30を超えるかもしれんな。中々骨のある食材だ……


 それからもひたすら焼けるのを待ち続け等々1200度の岩石まで降りてきた。


「ぐっ、はぁ……はぁ……」
「息をするのも……大変ですわ……」
「でも……これを耐えれば……」
「美味しい食事が待っています……!」


 1200度ともなれば悪魔でも危ない温度なので俺以外のメンバーには耐熱の保護魔法をルフェイにかけてもらったがそれでも相当の熱さが俺たちを襲ってきた。俺はアーシアだけでも退避した方がいいと言ったがアーシアは最後までやらせてほしいと言ったので残ってもらっている。初めて出会った時はビクビクしていたのにグルメ界を旅してからアーシアもすっかり頼もしくなっちまったな。


(やっと一番下の岩石まで来たぜ。温度は1200度……さあ、弾けろ、BBコーン!)


 するとBBコーンに変化が起きた、身が膨らんでいき今にも破裂しそうな感じだ。


「おっ、とうとう来たか!」
「いよいよね……」
「あと少しだ……」


 小猫ちゃんたちもBBコーンの様子に気が付き期待を膨らませていく。さあ、来い!!


 バァァァァァァァァァン!!!


「き、来た――――――――――――――っ!!」


 BBコーンがはじけてまるで爆弾が爆発したような音と共に上空に打ち上げられたポップコーンが雨のように落ちてきた。


「うわあ、ポップコーンの雨です!」
「凄い、辺り一面ポップコーンで埋まってしまったわ!」


 全員がポップコーンの雨を見て歓喜を上げた、あれだけ苦労したんだ。俺だって嬉しくて仕方ねえぜ!


「皆、嫌な顔をひとつもしないでよく頑張ったな!」
「はい!辛かったけど頑張ってよかったです!」
「私もがんばりましたよ!」
「おう、二人もよく頑張ったな!」


 嬉しそうにはしゃぐアーシアとルフェイの頭を撫でて俺は辺り一面を埋め尽くすポップコーンを見ながら皆に声をかける。


「それじゃあさっそく出来立てのポップコーンを皆で食べようぜ!」
「「「おお――――――っ!!!」」」


 俺たちはポップコーンを持って岩石の上まで向かった、ここは1200度もあって死ぬほど熱いからな。


「お、おぉ……なんて大きさなんだ。見た目はポップコーンというよりは綿あめみたいな感じだな」


 マジマジと巨大ポップコーンを見るが綿あめみたいにふわふわの触感だ、でも匂いは香ばしくて嗅いでいるだけで食欲をそそる。


「ふわぁ、いい匂いです……」
「まるで揚げたてのコロッケみたいな香ばしさがするね」
「でもこうして見渡してみると凄い量ね、たった一粒からこんなに大量のポップコーンが作れちゃうなんて」
「流石はコーンの王様と呼ばれることはありますわね」


 全員がポップコーンを持ったことを確認して俺はポップコーンを一口かじった。


 ワシャ、ゴクン。


「……ん?」
「あれ?」
「おかしいですわね、直になくなってしまいましたわ」


 俺たちは一瞬で飲み込んでしまった事に疑問を持ったが次は噛んで味わおうともう一口食べる。


 ワシャ、ゴクン。


「んあ!?美味すぎて直に飲み込んじまうぞ!?」
「しかも食べれば食べるほどもっとほしくなってしまいますわ!」
「美味しい、美味しすぎて手が止まらない!」
 

 他の皆もあまりの美味しさに一瞬で飲み込んでしまっていた。俺はもう一回ポップコーンをかじると飲み込みたいのを我慢して何回も噛んで味わっていく。


(噛め……味わうんだ!!)


 噛むとサクサクと気持ちのいい音がして風味が増して更に深い味わいになった、しかも普通のポップコーンにあるひっかかるような感じはなくのど越しはなめらかでスッと胃の中に落ちていった。


「イッセーさん、私なんだかお腹が空いてきちゃいました!」
「こんなに食べているのに私、まだまだポップコーンがほしくてたまらないです!」


 アーシアとルフェイももりもりとポップコーンを食べ続けている。一口食べるとやめられないし止まらなくなるうえに寧ろ腹が減ってきて他の食材も食べたくなってきた。


「こいつの食欲増進効果はハンパじゃねぇ……!」


 これはピッタリなんじゃねえか、あの項目に……!!


「ウォン!ワォン!」


 テリーのほうを見てみるとテリーは美味しそうにポップコーンを食べていた。


「どうだ、テリー!美味いか?」
「オウ!」
「そうか、美味いか……お前の口にあって本当に良かったなぁ……」


 俺は嬉しくなってしまいつい泣いてしまった。


「良かったですね、先輩」
「ああ、ここまで来た甲斐があったぜ」


 そこに小猫ちゃんが現れて俺の涙をハンカチで吹いてくれた。するとその時だった、遠くにあった火山が噴火をして火山灰を巻き上げた。


「イッセー、火山が噴火したわよ!?」
「大丈夫です、ウール火山の火山灰は程よい塩分を含んでいてしかも食べられるんです。ポップコーンのスパイスに丁度いい」


 俺は火山灰が付着したポップコーンを食べると程よい塩気がポップコーンの味を更に深めてよりおいしくなっていた。


「美味しい!火山灰に含まれている程よい塩気が合わさって更に美味しくなったわ!」
「火山灰も食べられるなんてやっぱりこの世界は面白いなぁ」
「この火山灰も何かの魔法アイテムの材料にならないかな?」


 皆も満足した様子で俺も嬉しくなった、そして俺はある事を決めた。


「この火山灰、まるで火山が俺たちを祝福してくれているみたいに思えるな。テリーの主食が見つかったこと、そして俺のフルコースに相応しい食材が決まったこと……」
「先輩、もしかしてBBコーンを?」
「ああ、BBコーンは俺のフルコースの前菜に入れる!」


 俺がBBコーンをフルコースの前妻に入れることを発表するとリアスさんたちは驚いてから歓喜の表情を浮かべた。


「イッセー、フルコースが決まったのね!」
「うふふ、テリーちゃんのご飯とイッセー君のフルコースが同時に見つかるなんて素敵な偶然ですわね」
「おめでとう、イッセー君!」
「おめでとうございます、イッセーさん!」
「やりましたね、師匠!」


 皆も自分の事のように喜んでくれた、俺はテリーの顔を撫でながら抱きしめた。


「ありがとうな、テリー……」
「クォン……」


 俺はテリーと出会えた事に心から感謝した。皆も俺たちを見て涙を流していた。


「よーし、それじゃあ皆!残ったポップコーンを全部平らげちまおうぜ!!」
「はい、イッセー先輩!」


 ヒュゴ!!


 何かが吸い込まれるような音がしたと思ったら辺り一面を埋め尽くしていたポップコーンが跡形も無く消えていた。


「……え?」
「な、なにが起きたの……?」


 全員何が起きたのか分からなかったが背後から嫌な雰囲気を感じて振り返ってみるとそこには先ほどまで誰もいなかったはずなのに何者かが立っていた。


「うめぇ~~~BBコーン……」


 そこにいたのは顔や肩に入れ墨を入れ両眼は瞳孔が3つある複眼、さらには腕が4本もある大きなストローを持った奇妙な男だった。


「……お前は誰だ?」
「次はその犬、吸っていい?」


 バッ!


 テリーは一瞬にしてその場を離れ遠くへ逃げていった。男はテリーの逃げた方向にストローを構えて口に加えた。


「すぅぅぅ……」


 ベコン!!


 男の腹が音を立ててへこむとまるで台風のような暴風が吹き荒れた、すると逃げていたテリーが空中で止まり凄い勢いでこちらに引き寄せられていた。


(こいつ、テリーを吸っているのか!?)


 既に豆粒にしか見えないほど離れた場所にいたテリーを難なく吸い寄せるその肺活量に俺は驚いたがこいつがテリーに何かしようとしているのは確かなので赤龍帝の籠手を出してストローを切ろうと腕を振るった。


「ナイフ!!」


 ナイフはストローを直撃したが大きくしなるだけで切ることはできなかった。


「おぉ?」
(切れねえだと!?)


 切ることはできなかったが男が吸い込みを中断したのでテリーは近くの岩場に降り立っていたがその表情は怯えを浮かべていた。


「な、何が起きたの……?」
「テリーちゃんが逃げたと思ったらこっちに吸い寄せられていましたわ……」
「部長!朱乃先輩!気を付けてください!」
「この男、ヤバいです……!」


 小猫ちゃんたちもこの男の異様な雰囲気に警戒して臨戦態勢に入った。


「……てめぇ、何者だ?人の食糧を勝手に食い荒らしやがって」
「ヒヒ、悪かったな。ポップコーンは返すよ、イッセー」


 男は言ってもいないはずの俺の名前を言いながら喉を大きく膨らませた、何をするのかと思ったが次の瞬間、男は食ったポップコーンを吐き戻しやがった。


「なっ……!?」


 こ、こいつなんてもん見せやがるんだ……!俺が気分を悪くしていると男は吐き出したものをストローで再び吸って飲み込んだ。


「うぅ~ん、うぃっぷ……ヒヒ、反芻反芻。うまぁ~~~い飯は何度も繰り返して味わなくちゃ損だからな~ヒヒヒ」


 ……なんだ、こいつは?俺は男のマイペースぶりに酷く困惑していた。飄々として呑気そうにも見えるがこの男が放つ異様な雰囲気が俺を更に警戒させる。リアスさんたちも決して油断しないように構えていた。


「BBコーン……ああそうBBコーンなぁ……今俺のペットが採りに行ってるんだがいかんせん方向音痴でな、そいつ……うん、方向音痴。そろそろ戻って来る頃だと思うがそしたら返すよ」
「……」


 ペット?そんな奴は見かけなかったがそういえば巨大なBBコーンが丸ごと一本採られていた痕跡をウージャングルで見つけたな、その時は何だと思ったがそれはこの男のペットがやったのか?


「チューチュー」


 俺たちの傍にマグマラットが一匹現れた、男はそれに気が付くとストローをマグマラットに突き刺した。


「何を……っ!?」


 リアスさんは男の行動に眉を吊り上げるが男はストローを口にくわえて息を吸い込んだ、するとマグマラットはあっという間に干乾びていき最後には身体ごとストローの中に吸い込まれていった。


「んふ~~~ヒヒ。いいストローだろ、これ?デビルモスキートという巨大な蚊の口を加工して作ったストローだ、耐久性としなやかさに優れている」


 デビルモスキート……大型の獣も襲い血液を全て吸い尽くしてしまうと言う悪魔の昆虫か、そいつの口から作ったストローだから俺のナイフでは切れなかったのか。


「だが流石にさっきの一撃は切れちまうかと思ったぞ~……イッセー、あれがお前のナイフか……」
「俺を知っているのか?」
「ヴァーリの奴が珍しく褒めていただけはあるなぁ……本当に腕がもげると思ったらしい。もげればよかったのになぁ、ヒヒ……」
「ヴァーリ……!!貴様、美食會か!」


 男が口にしたヴァーリという名、忘れもしねえリーガルマンモスの体内で戦ったGTロボの操縦者だ。その男の名を口にしたということはこの不気味な男も美食會のメンバーであるのは間違いない。


「今回のリーガルなんとかの捕獲失敗の件で第6支部(食料調達チーム)の連中は責任をとらされ全員半殺しにされたらしい……ヒヒ、新入りが一人死んだとも聞いたな、でもそんな事じゃあ料理長の怒りは収まらねえ。ボスの食欲は最近更に増しているらしいからなぁ、調理が追い付かないんだとよ……ヒヒ」


 ボス……美食會のトップか。実態は知られていないが恐ろしい男だと噂で聞いた事がある。こいつがここにいるのもそのボスって奴が関係してるのか?


「お前らが壊したGTロボ、一部が自爆しないで残ったままだろう?俺がそれを回収しに向かったんだよ。いやぁ~楽しかったなぁ、IGOの庭には初めて行ったけど見たこともない食材がわんさかでよぉ……ヒヒ。ただあのニ人が待ち構えていたとは思わなかったぜ」
「あの二人?」
「IGO副会長と所長さ、あのニ人本気になっちゃっててよ~面倒くさくなっちまったしGTロボもどうでもよくなっちまったからくれてやったよ、ポンコツロボ」


 そうか、俺たちがリーガル島を離れた後にそんなことがあったのか。というか茂さん来ていたなら俺にも声かけてくれよ、知らなかったじゃねえか。


「まあその代わりに島中の食材を片っ端から食い荒らしてやったがな、うまかったぜぇ~あのアスレチックみたいな所にいたデカイ奴……でも手ぶらじゃ流石に帰れねえ、だからリーガル島の食材と更にBBコーンをボスへのみあげにしようと思ってな」
「……お前らの、美食會の目的はなんだ?何故グルメ食材を集めている?」


 俺はこいつらの目的が何か男に質問した。普通なら答えるはずもないが男は気にした様子もなく座り込みストローに葉巻樹の枝を刺して温度の高い岩石に押し当てて火をつける、そしてストローごしに煙を吸い込んで一服した。


「すぅぅぅぅ……はぁぁぁ~~~……俺たちが狙ってんのは『GOD』という食材だ」
「―――――――――!!」


 男の言葉に俺は身体中に電流が走ったような衝撃に襲われた。何故なら男が言ったGODという食材は俺がずっと探し求めていた食材だからだ。


「GOD……?」
「聞いた感じだと食材の事みたいだけど……」
「唯の食材には思えませんわね」


 オカルト研究部の皆はGODが何か分からないため首を傾げていた。


「……500年前、この世の全てを食破したという伝説の美食屋『アカシア』が唯一晩年まで追い求め最後に発見できた食材、それがGODだ。かつて行われていた世界規模での大戦争を止めたきっかけにもなったという幻の食材でGODの発見からグルメ時代が始まったとも言われている」
「GOD……美食神とも呼ばれたアカシアが食材を使って戦争を止めたという話はココさんから聞いてましたがそれがそうなんですね」


 俺は皆にGODについて簡単に説明した、すると男は不気味な笑みを浮かべて楽しそうに笑いだした。


「ヒヒ……なんだよ、詳しいじゃねーかイッセー」
「当然だ、GODは俺のフルコースのメインディッシュに決めてる食材だからな」


 俺は虹の実を食うまではフルコースは空っぽだった。でもメインディッシュだけは既に決めていたんだ、それがGODだ。


「……ハッ、そうか。お前もGODを狙っていたのか、ならこんなウワサを聞いた事ないか?」
「ウワサ……?」
「数百年に一度起こると言われている『グルメ日食』、その日食が見える日がGODの活動が始まる時だと言われているが、なんとそのグルメ日食がここ数年の間で起こるらしい……」
「な、なんだと……!?」


 俺は男の言葉に再び身体に電流が走ったような衝撃に襲われた、幻の食材GODが数年の間に現れるだと……?


「巷にゃあまだ流れていないニュースだが一部のグルメ研究科や腕の立つ美食屋はすでに動き出していると聞くぞ、中には引退した実力派もいるらしい……近頃美食會のボスの食欲が異様に増してんのも日食が近い事を感じ取ってるからなのかもしれねえな」
「……」
「分かるか、イッセー?数百年前に産声を上げたグルメ時代が今再び躍動し動き始めているってことだぜぇ……ヒヒ」


 男の言葉を聞いて俺は震えが止まらなくなっていた、俺が追い求めていた食材が遠くない未来に現れると知ったからだ。


「……ところでよ、イッセー。お前もGOD狙ってるってことは俺たちはいずれ殺りあう事になるよな?」
「お前らも狙っているならそうなるな」


 俺がそう言うと男はゆっくりと立ち上がりながら濃厚な殺気を放ちだした。


「……めんどくせぇから今の内に決着付けておくか、うん?」
「……上等だ!!」


 俺は赤龍帝の籠手を禁手にして鎧を身にまとった。


「おお~?いきなり鎧を纏うとか面白いなぁ」
「はっ、もっと面白くしてやるよ!……リアスさんたちは出来るだけ離れていてください」
「で、でも……」
「こいつは強い!リアスさんたちがいたら足手まといです!」
「先輩……分かりました、どうか死なないでください」



 背後にいるリアスさんたちに離れるよう厳しい言い方をする。本当はこんな言い方はしたくないがこの男は強い、皆を庇いながら戦えるような余裕はない。心配そうに俺を見ながら離れていく小猫ちゃんに手を振ってから俺は男と対峙する。


「ヒッヒッヒ……イッセー、お前の心臓吸ってい~い?」
「でっけぇ蚊だな……!目が覚めるモン喰わせてやるよ!」


 男がストローを口に加え大きく息を吸い込んだ、俺は右腕に力を溜めて構えた。


「ブレスバズーカ!!」
「10連!釘パンチ!!」


 俺の釘パンチと男が吐き出した息がぶつかり凄まじい衝撃が走り辺りを震わせた。


「おわぁ!」
「のぉっ!」


 弾けた衝撃に吹き飛ばされた俺は離れた岩石に叩きつけられた、あいつも吹き飛ばされたようで遠くの岩石の上に倒れていた。


(こいつ、息を吸わずに吐いて俺の釘パンチを相殺しやがった……!)


 今俺が放てる最高の威力を持った10連釘パンチが相殺されたことにショックを受けながらも俺は立ち上がり男を見据えた。


(しかしいきなり10連を使う事になるとはな、しばらくは使えないか……)


 目の前の男がヴァーリと同じ程かそれに近い実力者なのは対峙して分かった。普通なら勝てるはずがない、でも何故か負けるとも思わなかった。ジュエルミートを食べて細胞がパワーアップしたことが起因しているのかも知れないな。


「ヒッヒッヒ……俺のブレスバズーカと変わらねえ威力か。危ねえ危ねえ、そんなもんに俺の吸い込みまで加わっていたらストローがイカれちまうところだったぜ」


 遠くの岩石の上で倒れていた男はゆっくりと起き上がり愉快そうに笑みを浮かべた。チッ、不気味な奴だ。


「だがなイッセー、お前は俺には勝てねえよ。お前の弱点はずばり射程距離だろぉ、離れた相手には何もできねえ」
「……」


 男の言葉に俺は何も言えなかった、それが事実だからだ。俺の戦闘スタイルは近接戦闘がメインで遠距離戦用の技は一つも持っていない。


「てことでこの場所から攻撃させてもらうぜ、そのあとゆっくり飲み込んでやるよぉ」


 男はストローを加えて大きく息を吸い込んだ。


「ブレスガン!!」


 ストローから放たれた息が俺の鎧を貫いて血を噴出させた。


(野郎、この距離まで息を弾丸のように圧縮して飛ばして来やがったのか、なんて肺活量だ……!!)


 男は連続して息を吐き出して攻撃してくる、俺の腕や腹に当たり血が噴き出していき身体を血で赤く染めていく。


「イッセー先輩!!」
「(一発の威力は致命傷にはならないが適格に当ててきやがる……)上等だコラァ!!」


 俺は奴に向かってフォークを放った、普通なら届くはずがない攻撃だが男は突然自分の肩に衝撃を喰らい大きくのけぞっていた。


「おお……?」
「……射程距離が弱点だぁ?そんなことはハナから理解しているんだよ。俺がいつまでもそんな弱点を残しておくと思うか?今からお前に見せてやるよ、進化したナイフとフォークを……!」


 俺は確信していた。リーガルマンモスの内部でGTロボと戦った時になった「自食作用」、そこに「ジュエルミート」という食材がプラスされてグルメ細胞は大きく進化したことに……


「今では赤龍帝の鎧無しでもナイフやフォーク、釘パンチを両手で使えるようになった。だが鎧を纏った状態で全力でナイフやフォークを使えばどうなると思う?」
「……」
「答えは今から見せてやるよ!」


 俺はフォークを全力の力で出す、するとフォークが衝撃波として指から放たれて奴の腹に当たり4つの傷を付けた。


「こいつは……!」
「フライングフォークと名付けるかな、流石にこの距離じゃ貫通はしなかったが……お前に届いたぜ!」
「……驚いたなぁ、フォークを飛ばしてくるとは」
「おっと、驚くならこいつを見てからにしな」


 俺は次に右手をナイフの形にして上段から一気に振り下ろした、すると今度はナイフが飛んでいき奴の身体に切れ込みをいれた。


「おぉ!」
「フライングナイフ……今はまだ薄皮を切る程度だが、そのうちこの距離からお前の命を真っ二つにするぜ!!」


 俺は男に殺気を送りながらそう言ったが男は驚異の肺活量で自分の傷から出ている血を吸い込んで傷を塞いだ。


「ヒッヒッヒ……流石だなぁ、イッセー。まさか遠距離への攻撃を可能にするとはな、だがそんな岩も切れない威力じゃアキレス腱であった射程距離を克服したとはいえねえな……そのか弱いエアガンとミサイルの違いを見せてやろう」


 男はそう言うと今までより一番深く息を吸い込み始めた。


(分かってるさ、あんなチャチな攻撃であいつを倒せるなんてハナから思ってはいない。俺の目的は別にある……さあ、来い!)
「くらえイッセーぇ!!ブレスバズーカの遠距離版『ブレスミサイル』!!」


 男はストローからさっき10連を相殺した技を遠距離用にして吐き出してきた。その威力は男の目前にある岩石や地面を削り取ってしまうほど強力なものだ。だが男は技に集中するために視界が狭くなっていた。


「今だ!」


 俺は男が技を放っているうちに地面を走り一気に近寄っていった。1200度もあるマグマに近い岩石の上も赤龍帝の鎧を纏った俺なら耐えることが出来る、まあさっきは自分を鍛えるために使わなかったがこれで男に接近することが出来た。


「ッ!?」
「ナイフ!!」


 男は俺に気が付き振り返って攻撃しようとしたが既に遅い、俺はナイフを奴のストローに全力で放った。


 ズガァァァァン!!


 岩石ごとストローを真っ二つにした俺は不思議そうな顔をした男に声をかけた。


「よう、ぶった切ってやったぜ」
「……お前、どうやってここに?地表の温度は1200度だぞ?」
「この鎧は赤き龍の力を具現化したものだから耐熱に優れている、1200度なら耐えられるのさ。そして最初にナイフやフォークで攻撃したのはお前を挑発するために敢えて使った……案の定お前は俺に格の違いを見せつけようとして大技を放ってきた、その隙に接近したって訳さ」
「……ヒッヒッヒ!なるほどなぁ、あっぱれだ」


 しかしここからが問題だ。この男はまだ全然本気じゃない、ストローを切ったとはいえ本体には大したダメージも無いし何をしてくるか分からない以上迂闊には動けねえ。さてどうするか……

 
 キリキリキリ!


 男から不快な音が鳴り出して男は不機嫌そうに懐から何かを取り出した。


「何だよオイ、今いい所なのに料理長から呼び出しがかかりやがった」
「……なに?」
「今日はここまでだ、イッセー。スグに本部に戻らなきゃいけねぇ、それに丁度俺のペットも帰ってきたようだ」


 俺の背後から巨大な影がこちらに接近していた。


「な、なんだあれは!?」
「象……?いや昆虫ですか?」


 オカルト研究部の皆もその生物を見て驚いていた。俺も分からない生物だがそいつは巨大BBコーンを持っていた、あいつがこの男のペットなのか?


「よっと」


 男は大きく跳躍すると飛んできた生物の背中に乗って俺を見下ろしていた。


「今日は楽しかったぜぇ、イッセー。ジャックが来るまでのいい暇つぶしになった、次会うときは存分に殺り合おうな」
「待てよ、BBコーンを返してもらってないぞ!」
「お前は俺のストローを壊したんだ、それでおあいこだ」
「あいこだぁ!?てか名前くらい名乗れコラ!」
「俺の名はグリンパーチ。美食會、副料理長だ」


 男……いやグリンパーチはそう言うと昆虫のような生物に乗って飛び去っていった。


「……はぁ、引いてくれたか」


 俺はグリンパーチが引いてくれたことに安堵して皆の元に向かった。


「イッセー先輩!」
「イッセーさん!」
「イッセー君!」


 皆の元に行くと小猫ちゃん、アーシア、朱乃さんが抱き着いてきたので俺はそれを受け止めた。


「イッセー、ごめんなさい……」
「僕たち、見てる事しかできなかった……」
「師匠、お役に立てなくて申し訳ありません……」
「ウォウ……」


 リアスさん、祐斗、ルフェイも落ち込んだ表情で頭を下げてきた。テリーも未だにグリンパーチに恐怖を感じているのか震えていた。


「いいんだ、皆が無事ならそれでいい。寧ろよく逃げてくれたな」
「イッセー先輩……」
「俺だってヤバい相手だったんだ、気にしないでくれ。次は俺が勝つからよ!」


 俺はそう言うが内心は焦っていた、何故ならグリンパーチはまったく本気を出していなかったからだ。


(あれが副料理長クラス……俺もまだまだだな)


 仲間を守る為にさらに強くならなくちゃいけない、俺はそう思い決意を新たにした。





―――――――――

―――――

―――


side:??


「サーゼクス様、こちらが例の調査結果をまとめた資料でございます」
「ありがとう、グレイフィア」


 冥界にあるグレモリー家の屋敷、その一室にリアスの兄にして現魔王の一人である『サーゼクス・ルシファー』が自身の女王である銀髪のメイド『グレイフィア』から何かの資料を受け取っていた。


「……なるほど、リアスたちはこの兵藤一誠という少年によく出会っているのか」
「はい、他にもアーシア・アルジェントという教会を追放された元シスターもこの少年と一緒に住んでいるようでお嬢様たちとも繋がりがあります」
「リアスは彼らを眷属候補にしているのかい?」
「いえ、お嬢様に彼の事をさりげなく確認しても眷属がお世話になってる恩人で彼を眷属にする気はない、と仰られました」


 サーゼクスは最初、イッセーとアーシアはリアスの眷属候補なのかと思った。悪魔が違う種族を眷属にするにはその眷属にしたい人物より自分の実力や潜在能力が上回っていないといけない。
 

 大抵は駒を多く使う事である程度カバーはできるが兵士の駒を8つ使っても眷属にできないこともある。そういう場合は諦めるか「変異の駒」を使うか主がその人物より実力が上回るまで眷属候補として傍に置いておくという手段があるが眷属候補にする場合は魔王に許可を貰う必要がある。
 

 何故ならばもしその人物が危険な思想を持っていたら厄介なことになるかも知れないからだ。だがサーゼクスの元にはそう言った話は上がっておらずグレイフィアも知らないようなので眷属候補である可能性は低いだろう。


「彼らとは何時頃から出会っているんだ?」
「お嬢様の眷属の一人である塔城小猫様が最初に接触したらしくお嬢様や他の眷属の皆様はレーティングゲームが終わってから頻繁に兵藤一誠の元に向かうようになりました」
「レーティングゲーム後か……話を聞く限り彼らがリアスたちが強くなった事に関係がありそうだね」


 リアスたちが強くなったのはレーティングゲーム前の合宿中で間違いない、もしその時兵藤一誠がリアスたちと接触してその後もイッセーたちと一緒にいるようになったと考えれば彼らが関係している可能性は極めて高いだろう。


「ふむ、資料を見る限りは普通の少年だが……グレイフィア、実際に見てどんな人物だと思ったんだ?」
「そうですね、遠くから見ただけですが食欲が旺盛なのと見た目の厳つさを除けば大抵の人物は普通の少年だと思うでしょう。ですが私にはただの少年には見えませんでした、何か大きな力を隠しているようにも感じました。それとお嬢様方が兵藤一誠の自宅に入っていって数分後に気配を感知できなくなっていました」
「それは魔法陣でどこかに移動したという事か?」
「いえ、魔力は感知できませんでしたので魔法陣での移動ではないかと……」
「そうか、魔法陣ではない移動手段を持っているか。やはり彼には何か秘密があるのかも知れないな」
「いかがなさいますか?私としては接触を試みるかべきかと思いますが」
「いや、今は止めておこう。リアスが僕たちの動きに感づいているようだ」
「お嬢様が……?」


 グレイフィアはまさかという表情でサーゼクスに言うがサーゼクスは首を横に振りながら話し始めた。


「昔のリアスと同じだと思わない方がいい、実力だけでなく気配や危機を察知する力が異常に上がっている。君が彼の周りを嗅ぎまわっていることを知っているはずだ。僕としては妹の恩人かも知れない人物に敵意を持たれたくはない」
「……かしこまりました。次はより慎重に行動いたします」
「頼んだよ」


 グレイフィアが部屋から姿を消すとサーゼクスは資料と一緒に渡されたイッセーの顔写真を見ながら笑みを浮かべた。


「兵藤一誠君か……一体どんな子なんだろうね」

 
 

 
後書き
 こんにちは、アーシアです。グルメ界から戻ってきた私たちは授業を受けたり球技大会に向けて練習をしたり日常を楽しんでいます。次回第33話『球技大会に向けて練習します!登場、生徒会長です!』でお会いしましょうね。 
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