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転生とらぶる

作者:青竹
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ペルソナ3
  2038話

 影のゲートから姿を現すと、目の前に広がるのは影時間の象徴と呼ぶべきタルタロス。
 そして……
 パチパチパチ、と周囲にどこか乾いた拍手の音が響く。
 その音を発しているのは、タルタロスの出入り口の前に立っている幾月だ。
 幾月の側には、いつものように上半身裸のタカヤと、不機嫌そうな様子のジンの姿もある。

「ようこそ、皆さん。来てくれるとは思っていましたが、これ程即座に来てくれるとは思いませんでしたよ」
「どこぞの裏切り者がいる可能性が高いとなれば、当然だろう」
「おや、裏切りですか? どこかにそのようなけしからん相手がいるのですか?」

 飄々としてそう答えてくる様子は、自分こそが全てのキャスティングボードを握っているのだと、そう確信していると思い込んでいるからこその態度だろう。
 ……実際、尻尾を出すまで10年近く桐条グループを欺いてきたのだから、その演技力は褒めてもいいレベルではある。
 もしかして、あの壊滅的な駄洒落好きも、そういう振りをしているだけだったのかもしれないな。
 俺の場合は洞察力とかそういうのではなく、何となくといった勘で幾月を気にくわない相手だと判断する事が出来たが。

「幾月、貴様……」

 俺の後ろから、武治が前に進み出る。
 ただでさえ、眼帯をしていることもあって、強面と呼ぶに相応しい武治だ。
 その武治は、現在明らかに怒りの表情を浮かべて幾月を睨み付けている。
 それこそ、もしこの場に子供がいれば、武治の形相を見て泣き喚いてもおかしくはないくらいに。
 ……ちなみに、そんな武治の足下、正確には踵の後ろという幾月から見えない場所には、俺が用意した武治の護衛たるリスの炎獣がいるのだが……当然、幾月は気が付いていないだろうな。
 元々、頭脳という点はともかく、実際に力を発揮するとなれば幾月は雑魚でしかない。
 幾月も、それを理解しているからこそ、タカヤ達と組んだんだろうし。

「おや、そこにいるのはあの偉大なる桐条鴻悦様の、出来の悪い2代目じゃないですか。わざわざこんな場所にやってくるとは、一体何を考えているのです?」
「幾月!」

 父親の武治を侮辱されたのが我慢出来なかったのだろう。美鶴が怒声を発する。
 だが、その怒声を浴びせられた幾月は、全く恐れた様子もなく笑みを浮かべる。
 幾月にしてみれば、タカヤ達という後ろ盾があり……そして何より、獅子身中の虫とでも呼ぶべきアイギスがこちらにいる以上、いつでも俺達を倒す事が出来ると信じているのだろう。
 実際、アイギスに幾月の命令に絶対服従されるようなプログラムが仕込まれていると知らなければ、いざという時にこっちが大きな被害を受けた可能性は十分にある。
 勿論、最終的にはどうにか出来ただろうが。その場合はアイギスも大きな被害を受けていたのは間違いない。
 その幾月は、美鶴や武治の……そして他のS.E.E.Sのメンバーの怒りに満ちた顔を見て満足したのか、優越感に満ちた笑みを浮かべながら、口を開く。

「さて、ではそろそろ始めましょうか。今日は僕が闇の皇子となる日です。愚者達に付き合って、時間を無駄にする訳にもいきませんから」

 闇の皇子? と疑問を抱くが、幾月はそんなこちらの様子に気が付いた様子もなく、笑みを浮かべたまま指を鳴らす。

「アイギス、コード、ダークネスプリンス。S.E.E.Sとアルマー達を行動出来ない程度まで痛めつけろ。くれぐれも殺さないように」

 ダークネスプリンスね。……直訳して闇の皇子。
 なにやら、その言葉に強い執着があるらしい。
 ともあれ、幾月の命令を聞いたアイギスは銃となっている指を上げ……
 タァンッ、と軽い音が周囲に響く。
 だが、その銃弾の向かう先は、S.E.E.Sの面々でもなく、ましてや俺やゆかり、コロマルといった者達でもなく……

「ひっ、ひぃっ!」

 みっともない悲鳴を上げた、幾月の足下だった。
 本来であれば、その銃弾は俺達の方に向けられている筈だったのだろう。
 だが、実際にアイギスの銃弾が撃ち込まれたのは、幾月の足下。
 荒事には無縁の幾月にしてみれば、完全に予想外の光景に悲鳴を上げるのも分からないではない。
 いきなりのアイギスの行動に頭を抱えている幾月に、武治が口を開く。

「残念だったな。アイギスに仕込まれていたプログラムは、既に解除済みだ」
「なっ!? ……何故、何故アイギスに……」

 信じられない。
 幾月の表情は、恐怖と疑問に彩られていた。
 今まで武治や美鶴を欺いてきた自分が、まさかここで逆に騙される事になるとは、思ってもいなかったのだろう。
 そして……再び、銃声が周囲に響き渡る。
 だがその銃声は、アイギスから放たれたものではなく……

「がっ!」

 幾月が、腹を押さえながらくぐもった声を上げる。
 押さえている場所からは、じわじわと血が滲んでいるのが分かる。
 そうして、腹を押さえながらも、幾月は衝撃を感じた方向……つまり、背後を振り向く。
 そこにあったのは、銃を構えたタカヤの姿。
 いつものように薄笑いを浮かべているタカヤに、幾月は何かを言おうとするも……口を開けば、そこから血が吹き出て言葉にならない。

「な……にを……」
「いえ、そろそろこの茶番も見飽きたと思いましてね。それに、貴方の望み通りにはなったでしょう? 勿論、全てが叶ってはいないのでしょうが。それに……エルゴ研の生き残りを、私達がそのままにしておくと思っていましたが?」

 そう告げるタカヤだったが、台詞程に幾月を恨んでいるようには思えない。
 自分達の命を縮める原因を作ったエルゴ研だったが、タカヤにしてみれば、そこまで恨む相手ではないのだろう。
 破滅願望を抱いているタカヤにしてみれば、自分の命を縮めた程度はどうでもいいという認識なのだろうが。

「死ねや」

 そうしてタカヤに続くように、ジンも幾月に向けて何かを……いや、手榴弾を投げる。
 幾月の足下にぶつかった瞬間に爆発が起き、幾月の足は見るも無惨な姿になってしまう。
 元々気弱な山岸はおろか、気丈な性格をしているゆかりまでもがその光景を見て吐きそうになっているのを見れば、それが普通の女――ペルソナを召喚している時点で普通とは言えないが――にとっては耐えられない光景なのは間違いない。

「な……ぜ……わた……闇の……」
「残念ですが、貴方はそのようなものにはなれません。何も出来ない愚者として、破滅を受け入れなさい」

 タン、と。
 まだ何かを言い掛けていた幾月の頭部に、タカヤが銃弾を叩き込む。
 それが、幾月の……10年近くに渡って桐条グループを騙し続け、闇の皇子だったか? そんな自分の目的の為に動いてきた幾月の最後だった。
 正直なところ、幾月を殺さないで捕らえるというのであれば、それこそ手段は幾らでもあった。
 ジンの手榴弾にしろ、頭部を撃たれた件にしろ。
 だが、幾月の場合は生かしておけば色々と面倒な事になるのは間違いなく、である以上、俺としては代わりに幾月を仕留めてくれるのであれば、邪魔をする必要はなかった。

「さて、それでは……」

 幾月を殺したタカヤは、その事に関しては何も感情を浮かべずに、俺達の方に視線を向けてくる。
 そんなタカヤの視線に、殆どの者がいつ戦闘になってもいいように構える。
 銃という武器を持っている以上、今のタカヤは非常に危険だと判断したのだろう。
 俺もまた、幾月が殺されたのはともかく、それ以外の面々が死ぬというのは許容出来ない以上、戦闘が始まったらすぐに対応出来るようにタカヤに視線を向ける。
 だが、次の瞬間ジンが自分の足下に手榴弾と思しき物を放り投げる。
 これが、もし先程幾月にやったように、こっちの足下に手榴弾を投げてきたのであれば、反応するのも難しくはなかっただろう。
 しかし、自分の足下に手榴弾を投げるといった真似をするというのは、こちらにとっても完全に予想外だった。
 次の瞬間、周囲に煙幕が現れる。
 なるほど、手榴弾ではなく煙幕弾だった訳か。
 この状況でそのような真似をした以上、現在向こうがこちらと戦闘をするというつもりはないのだろう。
 事実、2人の気配は遠ざかっていくのだから。

「追撃するか?」
「げほっ、げほっ、いや、構わない。そのまま逃がしてくれ」

 煙幕に咳き込みながら、武治が指示を出す。
 出来れば、今の状況で一気に蹴りを付けた方がいいような気がするんだが。
 ここでタカヤ達を逃がせば、恐らく後々面倒な事にはなるし。
 そう思いながらも、武治や美鶴、真田といった具合に、幾月と親しかった連中の事を思えば、ここで無理も出来ない。
 幾月が美鶴達を裏切ったのは間違いのない事実だが、それで幾月との思い出がなくなる訳でもないのだから。
 その辺り、感情は割り切ろうとしても、心の方ではそう簡単にいかないのだろう。
 まぁ、幾月が生きていればそんな事は考えなかったのだろうが、やはり目の前で死んだというのは、大きいのだろう。
 そうして煙幕が消え去った後……周囲に残っているのは、物言わぬ死体と化した幾月だけだった。

「本当に構わなかったんだな? 今からでも、追おうと思えば終えるが」
「……ああ。それで、構わない。それに、幾月の件は桐条グループとして色々と動かなければならない理由があってな」
「動かなければならない理由?」

 武治のその言葉に一瞬疑問を抱いたが、それ以上何も言わないというのは、武治にとって……桐条グループ総帥の武治にとって、色々と思うところがあるのだろう。
 俺の言葉に何も言ってこない武治に、これ以上は聞かない方がいいだろうと判断して、幾月の死体に視線を向ける。
 下半身はジンの手榴弾によってボロボロになっており、両足は既に存在しない。
 それ以外の場所も、爆発によって大きな被害を受けているのは、見れば明らかだった。
 そんな下半身に比べれば、上半身はまだ原型を残している。

「幾月の死体、どうする? このままここに置いておくって訳にはいかないだろ」

 ここがタルタロスの中であればまだしも、俺達はまだタルタロスに入っていない。
 幾月が待ち受けていたのは、タルタロスの外だったのだから、それは当然だろう。
 つまり、影時間が終わっても幾月の死体はここに残る事になる。

「今から人を呼んでここで片付けるから、皆はもう帰ってもいい。美鶴は一応、護衛としてここに残ってくれ」
「分かりました」

 少し沈んだ様子の美鶴だが、それはやはり幾月が死んだ事に対して思うところがあったからだろう。
 勿論自分を裏切った幾月を、美鶴は完全に許せるという訳ではない。
 だが、何年も一緒に行動してきただけに、死体を見てしまえば、単純にざまあ見ろとは言えないのだろう。

「アクセル、悪いが今日は……」
「いや、別に桐条グループの連中が来るのを待つ必要はないだろ」
「え?」

 美鶴に最後まで言わせるよりも前に、俺は幾月の死体に近づいていく。
 そうして幾月の死体に触れ……次の瞬間、幾月の死体があった場所には、他には何もなくなっていた。
 言うまでもなく、幾月の死体は俺の空間倉庫の中に収納されたのだ。

「な? こうすれば、わざわざここで待つ必要もない。ここにいれば、まずないと思うがタカヤ達が戻ってくる可能性もあるし……タルタロスからシャドウが姿を現す可能性もあるしな」
「……そうだな。すまない、恩に着る」

 武治がそう言い、俺に感謝の視線を向ける。
 正直なところ、この件は別に武治の為にやった訳じゃないんだけどな。
 裏切られたとはいえ、長い付き合いの幾月が死体になっている光景を目にした美鶴を思っての事で。
 ともあれ、幾月の死体を空間倉庫に収納した以上、もう今日はここにいる必要はない。
 まさか、この状況からタルタロスを攻略する訳にもいかないしな。
 そんな訳で、俺は一度他の面々を巌戸台分寮に送り届けた後、桐条グループの研究所……アイギスの中に幾月が仕込んだプログラムを解除した施設に向かう。
 影時間の研究をやっているというだけあって、影時間になっても動いている者が多い。
 そんな連中は、突然武治が姿を現した事に――もしくは、俺の影のゲートをその目で見た件に関してかもしれないが――驚いていたが、武治はそんな視線は特に気にした様子もなく、とある部屋に案内する。

「一応ここが霊安室という扱いになっているので、ここに幾月の死体を置いてくれ」
「分かった。武治も見たように、あの死体は色々と酷い。それでも、そのまま置いていいんだな?」
「ああ。後始末に関しては、こちらで請け負う。アルマーは心配しなくてもいい」

 その言葉に頷き、部屋の中に入る。
 正直な話、死体の処理という点では、それこそ俺の炎を使って燃やしつくすなり、タルタロスの中に放り込んでおくなり、スライムに吸収させるなり、色々と手段はあるんだけどな。
 ただ、武治には色々と幾月の死体を前にして、やるべき事があるのだろうと判断し、俺は素直に武治の要望通りにするのだった。 
 

 
後書き
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389 
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