| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドリトル先生と和歌山の海と山

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六幕その三

「日本が好きで憧れるあまりかね」
「切腹してだったんだ」
「自殺したんだ」
「そうして人生を終えたんだ」
「普通ドイツ軍人は拳銃だけれどね」
 これを使って自殺をするというのです。
「毒を飲んでも駄目でね」
「それで最後は」
「切腹したんだ」
「日本刀で」
「そうしたの」
「そうだよ、そして見事ね」
 まさにというのです。
「その人生を終えたんだ」
「日本の武士の死に方なんだ」
「華なのかな、やっぱり」
「最後の最後の意地?」
「それもあるのかな」
「何か文献を読んで理由は読めるけれど」
 それでもと言う先生でした。
「理解出来るかっていうとね」
「それはだよね」
「難しいよね」
「何で切腹するのか」
「そこに美学があるのか」
「わからないね」
「さっき横三段の切腹が出たけれどね」
 先生は皆にこの切り方のお話もしました。
「これは武市半平太さんだね」
「ああ、幕末の」
「坂本龍馬さんのお友達だった」
「あの人がそうしたんだ」
「横三段の切腹をしたんだ」
「これはそれまで誰も出来なかったらしいんだ」
 この横三段の切腹はというのです。
「三段切る前に果ててしまってね」
「死んでしまって」
「それでなんだ」
「誰も出来なかったんだ」
「横三段の切腹は」
「そうだったんだ、けれど武市半平太さんはそれを果たしてね」
 それまで誰も出来なかったのに、というのです。
「死んだんだ」
「それで称賛されたんだ」
「見事三段の切腹を果たしたって」
「そう言われたんだ」
「武士として立派だってね」
 まさにそう言われたというのです。
「そのことでも知られたんだ」
「ううん、凄いことは凄いけれど」
「悲しいね」
「切腹して死んだんだし」
「そこで意地を見せてもね」
「称賛されてもね」
「そうだね、けれど見事果ててね」
 そうしてというのです。
「名を残したからね」
「そのことはなんだ」
「やっぱり凄いんだ」
「そうなんだ」
「そのことは」
「そうだよ、多分この感覚は日本人ならね」
 日本に生まれて日本で育ってきた人達ならというのです。
「僕達よりずっとよくわかる筈だよ」
「日本でのことだから」
「それでなのね」
「よくわかるのね」
「どうして切腹に華があるのか」
「そのこともね」
「日本人ならね」
 またこう言う先生でした。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧