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蒼穹のカンヘル

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二十五枚目

「おぉ…広い…」

中へ入ると、そこは大きな踊り場で、左右に伸びる廊下、正面の扉、正面の扉を挟んで二回に上がる階段が二つ。

更に二回にはステンドグラスがあり、キラキラと輝いている。

ただステンドグラスが交わる三匹の龍なのはどう行った意味なのだろうか…?

とりあえず、入ってすぐ横の案内板を見る。

全四階+地下三階建てで三、四階は全て客室。

二回には執務室や資料庫。

一階はホールや調理場、食堂など。

地下は地下一階に領地の管理室しか表記されていない。

どうやら正面の扉の先にはホールがあるらしい。

その横に調理場があるのでパーティー等に使う用と推定できる。

「えーっと…とりあえず管理室だな」

「そうだね…でも地下って何があるのかな?」

「たぶんだが何も無い。この豪邸だが、恐らく悪魔の技術でモジュール化された部屋の組み合わせだ」

何故わかるかって?

案内板の見取り図に方眼が引いてあるし、全部の部屋の大きさが基本っぽい部屋の倍の大きさだったりするからだ。

原作で兵藤家が一晩でリフォームされていたのはそういった理由だろう…

「だからまぁ、セラフォルーに言えば追々追加してくれるだろ」

階段を下って、地下に降りる。

案の定何も無く、階段から少し離れた場所に部屋があった。

ご丁寧に"領地管理室"と書いてある。

「行くか」

ペタペタという俺の足音と、カツカツというヴァーリの足音以外何の音もしない。

だが、管理室のドアを開けた瞬間…

Beep! Beep!

「「!?」」

なんだよいきなり! またセラフォルーの悪戯か?

しかし、部屋の中に入ると、そんな場合ではないと理解できた。

なぜなら部屋の中のモニターに、"侵入者アリ"というフォントが躍っていたからだ。

「侵入者ぁ?」

「篝、どうするの?」

「どうもこうも…やり方しらないぞ?」

取り敢えず、モニターの近くまで行くと、ホロキーボードがあった。

「えーと…」

キーボードには"映像"や"通信"等のアイコンが表示されている。

「映像…でいいのか?」

キーボードを叩くと、モニターが切り替わり、侵入者の映像が出た。

「…………Really?」

モニターの中で、多数の悪魔が一人を追っている。

問題は追われている悪魔だ。

黒い長髪、ピンと立った耳、着崩した着物、ダイナマイトボディ…

「よりにもよって黒歌か…」

面倒な…

「篝?」

うぉう!? なぜか寒気が!

「ど、どうしたヴァーリ?」

「どうしてその女の名前を知ってるの?」

やべぇ…! しくった!?

迂闊だった…! 俺が"黒歌"という名前を知っている筈はないというのに!

「え、えーと、あ、アザゼルから聞いた事があってな。
彼女は仙術を使う猫又の一人なんだ。
そ、そこそこ有名だぞ!」

ヤバイ、ヴァーリが無表情だ…。

「へー…」

な、納得してくれたかな…?

「よし、じゃぁ黒歌を助けに行こう」

「は?」

ひぃ!?

「なんで助けに行くの?ねぇなんで?」

「え?あ、いや、その、だって明らかにヤバそうじゃん?」

「なんでその黒歌さんの方を助けるの?
後ろの悪魔を手伝うんじゃなくて?」

「いや、そのぉ…こういう時って大抵女の方を助けない?」

「そう…じゃぁ好きにしたらいいじゃん!」

えぇぇ…?なんかヴァーリが怒ってるんだけど…?

「え、えーと、ヴァーリ?」

「なに?そんなにおっきい胸が好きなら早く助けに行けばいいと思うよ」

………そこぉ!?

「あー、いや、待て、ヴァーリ。お前は勘違いしている。
別に黒歌の胸が大きいから助けに行く訳じゃないぞ」

「ふーん」

はぁ…ダメだこりゃ…

そう思っていると、モニターから爆音が聞こえた。

「悪いヴァーリ!戻って来たら理由を話すから!」

「え!?篝!?」

悪いけど!今は時間がない!

「カンヘル!」

手の中に、純銀の錫杖が現れる。

【ロスト】

黒歌達が戦闘している真上に転移。

「静まれ!」

両者の間にエネルギー弾を撃ち込む。

黒歌も、追手も足を止めた。

そして、エネルギー弾で出来たクレーターの底に降り立つ。

「貴様等は我が領地に無断で侵入している。
即座に立ち去れ。さもなくば死ね」

と形だけの警告をする。

奴等は悪者の筈だが、一応儀礼的に警告する義務がある。

「なぜ天使がここにいる!」

と追手の先頭にいた悪魔が叫ぶ。

悪魔と堕天使の翼を展開し、五対十枚の翼を顕現させる。

「俺は篝!魔王セラフォルー・レヴィアタンのクイーンだ!」

すると先頭の悪魔は口元を歪め…

「セラフォルー・レヴィアタンにクイーンは居ない!奴は敵だ!クロカより先に奴を落とせ!」

はぁ…

「返答は受け取った。では死ね」

敵がそれぞれ攻撃を仕掛けてくる。

【ウォール】

しかしそれらは全て時空の歪みに飲まれ、俺には一つとして届かない。

「俺のターンだ」

手を上に掲げ、ワームスフィアを円盤状にする。

「行け」

虚無の円盤は、俺の思い通りの軌道を通り、奴等を真っ二つにした。

クレーターの底から飛び上がり、奴等の元まで歩く。

「へぇ?まだ生きているか。悪魔は頑丈だなぁ…」

「き、貴様!我々にこのような事をして許されると…!」

上半身だけになったリーダー格がわめく。

「許されるさ。ここは俺が賜った領地で貴様等は侵入者なんだからな」

龍翼から敵の数だけの羽を抜く。

「じゃ、サヨナラだ。いや、いらっしゃいかな?
俺の糧となれ」

羽を放り投げると、一人に一枚ずつ飛んで行き…

ピシピシと音を発て、結晶に覆われていく。

「あ!がぁぁぁ!やめろ!やめろ!消えた…く…な……」

硝子が割れるような音と共に、砕けた。

「うん、結構良かったな」

奴等の持つイーヴィルピースの力も奪えた。

それもキングとビショップを除いた計13個。

なるほど、黒歌のポテンシャルではビショップ二つを消費するのか…

あ、忘れてた。

振り返り、クレーターの先に居る黒歌を見る。

「よう?無事?」

しかし、あちらは臨戦態勢だった。

「お前…誰にゃ…?お前も奴等と同じかにゃ?」

「いやいや。安心してくれていい。
俺はアンタの味方だ」

「確証はあるのかにゃ?」

「追手を倒したという所で納得しちゃくれないか?」

「無理にゃ。お前が侵入者を排除しただけの可能性を捨てきれにゃい」

ふーむ…どうすべきか…

「仮にだ。仮に俺がアンタの首を狙っていたならば、既に殺している。
それをしていないのだから信用して欲しい物だ」

「……………今は、それで納得するにゃ」

「OK、ならアンタの妹共々こちらでなんとかしよう。
なに、セラフォルーを脅してでも首を縦に振らせてやるさ」
 
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