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とある3年4組の卑怯者

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139 文通相手

 
前書き
 今回からは「永沢君」を読んだ時、堀さんと野口さんってなぜ仲が良いのか疑問に思った事、あと、野口さんの出番が予想以上に少なくなってしまった事から、今回は野口さんと堀さんに関するエピソードにしたいと思います。 

 
 みどりは学校で堀が平井と話している所を見かけた。気になったので盗み聞きしていた。
(堀さん、あの平井さんと何をお話しているのかしら・・・)
「あの、平井君、あの時、助けてくれてありがとう・・・」
「エ?アァ、俺もアァいうのはマジで許せなくてなァ・・・」
 平井の顔は少し赤面していた。少しして堀は自分の席に着いた。
「堀さん、平井さんと何をお話ししていたんですか?」
「ああ、この前の事のお礼をしていたのよ」
「そうだったんですか・・・」
 みどりには「この前の事」とは何なのかは察しがついた。前に堀を快く思わず、彼女を排除しようとする者達が堀にリンチを行った事である。その時、平井も救出に動いていたのだった。
「堀さん・・・、もし何かいじめられたら私が絶対守ります!」
「吉川さん・・・、ありがとう」
 みどりは嘗て堀に自分をクラスに馴染ませてくれた恩があった。今度は自分が堀を守ろうと決意したのだった。堀からはみどりは初めて会った時の面影がなく、いい意味で凄く変わっていたように見えた。

 数日後、みどりは堀から一枚の手紙を差し出された。
「吉川さん、これ、私の文通相手からの手紙よ。今度その人の家に遊びに行くつもりなんだけど、吉川さんもどうかしら?」
「え、いいんですか?ありがとうございます!」
 みどりは堀に送られた手紙を拝見した。

 堀さん

 今度の日曜日、私の家に来ませんか。私の友達を誘うつもりなので堀さんもどうぞお友達を連れてきても構いません。楽しく遊びましょう。

 野口

(この野口さんって人が堀さんの文通相手なのね・・・)
 みどりは野口と言う人がどんな人物なのか気になった。
「私、今から楽しみです!」
「良かった」

 みどりは堀と下校していた。
「それでその野口さんって人はどんな人なんでしょうか?」
「そうね、前に話したけど、お笑い好きって所かな。私はその野口さんを『のぐちん』ってよんでいるのよ」
「へえ、でも近くにいるなら文通しなくてもいいのではないでしょうか?」
「え?まあ、そうかもしれないけど、だからって急にやめてしまうのも悪いと思ってね」
「そうなんですか・・・」
 みどりは早く日曜にならないかと思った。


 一方で堀は未だにいじめを受けた時の心の傷が癒えていなかった。文通相手の家へ行く日の直前の日の事であった。理科室へ移動する途中の事だった。堀はみどりに西原と歩いていた。その時、堀の体が震え出した。顔を下に向けている。
「堀さん?」
 みどりは心配した。2組の阪手もゆが友人と共にすれ違ったのだった。阪手は堀のいじめに参加していた者の一人だったため、あの時の恐怖を思い出してしまったのだとみどりは感づいた。
「堀さん、大丈夫ですよ。私達がいますから」
「ありがとう、でもどうしても忘れられなくて・・・」
「堀さん、また何かされたら私達で何とかするわ」
「そうです。今度の日曜に堀さんが文通しているお相手とお会いできるんですからそれを楽しみにしましょうよ!」
「え、堀さんの文通相手?」
「はい、野口さんって言うんです。堀さんは転校する前からその人と文通なさっていたんです。その人も清水市に住んでいるとのことで、今度会いに行く予定なのです!」
 みどりが西原に説明した。
「そうなんだ」
「よろしかったら西原さんも行きますか?お友達を是非連れて来ていいとその方も仰っていたので」
「ありがとう、でもこっちも用事があるんだ・・・」
「そうでしたか」
 みどりはその後、クラスメイトと楽しく過ごした。ただ、いじめに加担した者を見る度に体が震える堀が配だった。


 そして文通相手の家へ訪れる日が来た。みどりは堀の家へと向かった。
「お待たせ、吉川さん」
「それじゃあ、行きましょうか」
「ええ」
「住所はお分かりですか?」
「ええ、地図も貰っているわ」
 堀は文通相手が書いたとされる手書きの地図を出した。二人はその地図に従って道を進んだ。

 暫くしてとある一軒の家に到着した。表札には「野口」とあった。
「ここですか」
「ええ、間違ってはいないわ」
 堀は呼び鈴を鳴らした。その時、一人の女子が出迎えた。
「こんにちは。堀です」
「あ~ら、貴方が堀さん、お友達、連れてきたんだ・・・」
「ええ、同じ学校に通う吉川みどりさんよ」
「初めまして。吉川みどりと申します」
「初めまして・・・。私は野口笑子です・・・」
 みどりと堀は野口の家に上がった。その時、陽気な老人が出迎えた。
「お~や、え~み子の友達か~い?」
「うん・・・。文通相手だよ・・・。あ、この人、私のおじいちゃんだよ・・・」
「こんにちは」
「ど~ぞ、ゆっくりしていってね~ん」
 野口の祖父は孫とその友達を居間へと案内した。孫と違い、ハイテンションである事にみどりも堀も少し驚いた。
「二人とも、今日はよく来てくれたね・・・」
「ええ、同じ清水市内に住んでいるから、これからは何度でも顔を合わせる事ができるわね」
「ところで、野口さんはお笑い好きだって堀さんからお聞きしたんですが、本当ですか?」
「いい質問してくれたね・・・。お笑いに関するテレビやラジオを視たり聴いたりするのは欠かせないね・・・。クックック・・・」
「すごいですね」
「あと、浅草に行ったお笑いを見に行ったこともあるよ・・・。あれは最高だったね・・・。クックック・・・」
「浅草ですか」
「うん、他にもお笑いの街である大阪にも行った事あるよ・・・。ただ、あの時は別の用事で行ったから公演は見れなかったけどね・・・。あ~あ、上方の落語や漫才、聞きたかったな・・・」
 みどりと堀は野口の不気味さもありながら落ち着いた口調に少し緊張していた。
「あの、そうそう、のぐちんの友達はいつ来るの?」
 堀が尋ねた。
「友達・・・?ああ、そうだね、もうすぐ来るよ・・・」
 その時、呼び鈴が鳴った。
「ほ~ら、来たよ・・・」
 野口は今を出た。
「どんな人なんでしょう?」
「そうね、のぐちんの学校のクラスメイトかしらね、きっと」
 そして野口が戻ってきた。
「私の友達が来たよ・・・」
 野口は彼女の友達を連れて来た。しかし、その友達が驚きの声を挙げた。
「あれ!?みどりちゃん、堀さん!?」
「え、ま、まる子さん、たまえさん!?」
 野口が呼んだ友達はまる子とたまえだった。
「あ~ら、知り合いだったんだ・・・。世界は狭いね・・・。クックックックックッ・・・」 
 

 
後書き
次回:「偶然」
 野口が連れて来た友達はまる子とたまえという事に驚いたみどりと堀。一方、堀は野口と文通していた事にまる子とたまえもまた驚く。そんな時、五人の一時を邪魔する者が・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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