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最強無敵

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第一章

                最強無敵
 大日本帝国陸海軍についてだ、大阪府内の某市立高校に通う高校生梶幾太郎は友人達にいぶかしむ顔で言った。
「なあ、日本軍ってあの独立運動鎮圧したんやったな」
「ああ、あの運動な」
「二千万の民衆が一斉に蜂起したんやったな」
「そうしたんやったな」
「決行するって決めた日に一斉に蜂起して」
「そうしたらしいな」
 友人達も彼に答えて口々に言う。
「二千万が一斉蜂起な」
「それも用意周到に計画的に」
 その日に合わせてだ。
「凄い優秀な計画者がおってんな」
「誰やそれ」
「そこも気になるな」
「それでその日に一斉蜂起してな」
「あの地域全体に一気に及んだんやな」
 その独立運動がだ。
「もうあっという間に」
「連絡が事前にいって」
「それでよお日本軍に漏れんかったな」
「相当上手に連絡取り合ってたんか?」
「二千万おったら誰か失敗するやろ」
「子供も加わってたんやしな」
 まだ事情をよく知らない様なだ。
「それでその日までばれんとかな」
「かなり凄いで」
「しかもこれ百年位前の話や」
「電話もあまりないやろ」
 携帯電話はおろかだ。
「それでよお連絡出来たな」
「手紙とかの連絡の筈やのにな」
「当時あそこ識字率まだ悪かったっていうのに」
「日本が併合した時四パーセントやったらしいで」
 識字率がだ。
「どうもな」
「それで手紙で連絡してか?」
「殆ど字読めへんのにどうして連絡してたんや」
「二千万が一斉に蜂起するみたいな大がかりなことをする為に」
「不思議な話やな」
「それ自体有り得へんで」
 全員で話す、そして梶は自分のさらりとした七三にした黒髪を撫でつつ言った。背は百七十四位ですらりとしたスタイルで細面に切れ長の目がよく似合っている。
「それでその蜂起が起こると日本軍が出て来る」
「急にな」
「それまで全然蜂起に気付いてへんかったな」
「何で気付かん?日本軍」
「当時の日本軍って相当無能やったんか?」
「いつも蜂起とかにピリピリしてたんちゃうんか」
 友人達も口々に言う。
「それで何で一斉蜂起まで気付かんねん」
「見えてなかったんか?」
「警察とかもおったのにな」
「軍隊もちゃんとおったのに」
「そやろ、二個師団おったんやろ」
 梶はその日本軍の規模の話もした。
「あそこを守る為に」
「二個師団って大体な」
 ミニタリーマニアの友人がここで言った。
「平時は三万や」
「それ位か」
「そや、当時の日本軍はな」
 こう梶達に話した。
「平時編成と戦時編成があってな」
「大体一万五千か」
「ほな合わせて三万か」
「結構多いな」
「その三万の誰も蜂起しようとしてるって気付かんかった」
「何でや?」
「それだけ巧妙に隠してたんか?」
 蜂起の計画、それをだ。
「相手がどれだけ優秀やねん」
「というか日本軍ってそんなアホか?」
 二千万の民衆が地域全体で一斉蜂起する大がかりな計画に誰一人として気付かないまでにというのである。 
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