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第33話 混乱の帝国


職場の休み時間に作文、職場だとサクサク出来るのは仕様でしょうか?


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第33話 混乱の帝国

帝国暦483年4月30日〜5月

■銀河帝国オーディン 

イゼルローンからの第一報は軍関係者だけでなく、国政に係わる者達に衝撃を持って伝わった。
フェザーンからの情報どおりに敵は現れたが、予定していた日付と半月以上の齟齬があったために、せっかく送った増援が直ぐには使えない状態で駐留艦隊だけで四万隻の艦隊と戦う嵌めになっていると来たからである。

しかし第二報以降でミサイル艦の罠を見破りつつあると来た為、安堵の声が聞こえていた。
しかしその安堵の声も僅かの時間に過ぎなかったのである。
反乱軍の艦艇による体当たり攻撃により要塞に多大な損害が出つつあると、増援艦隊より連絡が来たからである。

固唾を呑んでオーディンでは連絡を待ったが、次の連絡は悲惨なモノに成ったのである。それは味方ごと敵艦隊をトールハンマーで焼き尽くした暴挙が伝えられたからである。その結果、恐れおののいた反乱軍は退却しイゼルローン要塞防衛は成功したが、ゼークト大将からの報告を聞いただけでも味方の損害も馬鹿にならない状態だと予想されたのである。

翌日、国務尚書リヒテンラーデ侯爵は相も変わらず謁見室でワインを浴びるように呑んで酔っぱらっている皇帝陛下に謁見し、此度のイゼルローン要塞攻防について帝国側の勝利ではあるが、損害も大きい事を報告した。

「皇帝陛下におかれましては、誠に恐れ多い事なれど、叛徒共の攻撃は撃退いたしましたが、当方にも多くの損害が発生いたしました」
「うむ、要塞が守られたのじゃ、味方殺しも致し方有るまい。しかし流石に指揮官の更迭はせねばならんな」
「御意」

「後は国務尚書と三長官に任せるぞ」
「御意」
その言葉を言い、フリードリヒ四世は侍従に抱えられるように退室していった。

リヒテンラーデ侯爵は、何故陛下は味方殺しをご存じなのだ?誰が陛下へご報告したのかが不思議であり気味が悪い感覚がしたのである。


一週間後、イゼルローン要塞より正確な艦隊及び要塞の損害が報告されると、軍部及び国政の場では余りの損害に責任追及の声が嵐と成って吹きすさんだ。

軍務省では、軍務尚書、統帥本部長、宇宙艦隊司令長官が苦虫を噛み潰したような顔で会談を行っている。

「イゼルローン要塞に対する叛徒共の攻撃を撃退したとは言え、艦隊と要塞の損害が大きすぎる」
「それもそうだが、味方殺しで50万以上の戦死者が出たのだぞ」
「そのせいで、今帝国軍の士気はどん底に落ちつつある」

「そうだな、特に兵達の士気がどうしようもないほどになっている」
「しかしだ、ゼークトの報告にもあるように、あの状態で行けば要塞そのモノが陥落した可能性もある」
「ミサイル艦隊に対する、防備は完璧であったが、敵がまさか平行追撃をしてくるとまでは考えつかなかったのだからな」

エーレンベルクの言葉にベヒトルスハイムが違うという顔をして話しかける。
「ゼークトからだが、平行追撃については、ある士官がその危険性を会議で述べたそうだ」
「なんだと、では司令部は危険性を承知していたという事ではないのか?」

「いや、クライスト大将、ヴァルテンベルク大将共に両者のいがみ合いで、
意見を採り上げなかったそうだ」
「だから、イゼルローン要塞指揮官統合を前から言っているのだが」
「卿とて、それは出来ないと判っておろう」

「そのような意見具申を無視し味方殺しが起こったなら問題だ、
その士官に因果を含めねばならんだろう」

「でその士官の名前は?」
シュタイホフの質問にベヒトルスハイムが苦虫を噛み潰したような顔で話す。
「ラインハルト・フォン・ミューゼル少佐だ」

その言葉にシュタイホフ、エーレンベルクがハットした顔をする。
「そうだ、グリューネワルト伯爵夫人の弟だ」
「皇帝陛下お気に入り寵姫の弟の意見具申を無視した訳か」

「夫人の弟では報告書に載せぬ訳には行くまいし、因果を含める訳にも行くまい。報告書に載せない場合、伯爵夫人から何れ陛下に伝わるやもしれんからな」
「そうなる前に、ミューゼル少佐の功績を報告書にも付けるほうが未だマシと言う事か」
「そう言う事だな」

「しかし味方殺し最大の問題は、叛徒の侵攻が半月も早かった事ではないかな?」
ベヒトルスハイムの言葉にエーレンベルクもシュタイホフ頷く。
「確かに、フェザーンの情報より半月も早かった為に増援艦隊がまともに戦闘できなかったのだからな」
「あのフェザーンの拝金主義者どもめ!態と日時を誤魔化したに違いない!」

「今回の事を聞いて、艦隊からもフェザーンの不義を正せとの意見が上がってきている」
「ふむ、あの黒狐か、奴には少々灸を添えた方が良いのではないか?」
「その辺りは、国務尚書と相談するとしてだ、イゼルローンの損害復旧にどの程度掛かるのだ?」

「工兵隊、建設部、兵站統括部からの試算が来たが、今回の艦艇自らの突撃で第三層までが損害に遭っている為に取りあえず穴だけ塞ぐ応急修理だけでも半年、造修施設、駐留ドックなどを修理するのに、2年は掛かるとの事だ」

「「2年・・・・」」
「修理に懸かる費用で、艦隊の遠征費用など吹っ飛んでしまうな」
「それほどまで酷い状態なのか」

「うむ、第三層まで達した亀裂により流体金属が内部に侵入した為に多くのブロックが使用不能に成っている。まずブロックから流体金属を排除せねばどうにもならんそうだ」
「修理の間に叛徒共が再度攻撃して来た場合、今度は危ないと言う訳か」

「滅多なことを」
「いや、事実になりかねん」
「となると、駐留艦隊が壊滅状態である以上増援艦隊にそのまま駐留して貰わんといかんな」

「それだけでは、足らないだろう。あと二万は増援せねばならんだろう」
「トールハンマーが有れば何とか成るのではないか?」
シュタイホフの言葉にエーレンベルクが返答する。

「此は極秘だが流体金属が第三層へ流れた結果、要塞表面の流体金属層が薄くなり要塞の防御に著しい弱体化が見られる。更にトールハンマーの射撃に著しいペナルティーが生じているのだ」
「それでは」

「そうだ、今の状態で行けば、要塞の陥落もあり得る」
「そうなると、資材搬入や資材調達にフェザーンを係わらせる事は出来んな」
「それを知ったら、奴らは嬉々として叛徒共へ情報を売りつけるであろうよ!」

3人が3人共に頷く、此所は何としてもイゼルローン要塞の修理が終わるまでは、叛徒の再攻撃を防ぐ手段を考えなければと。


数日後ノイエ・サンスーシでは国務尚書リヒテンラーデ侯爵と帝国軍三長官が陛下に今回のイゼルローン要塞攻防戦に対する説明を行っていた。

「皇帝陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「ご尊顔を賜り恐悦至極に存じます」
「うむ。卿等ご苦労」

軍務尚書エーレンベルク元帥が代表し報告を行う。
「誠に恐れ多き事なれど、この度陛下よりお預かりした艦艇1万6485隻を失いましてございます。また将兵168万8561が戦死いたしました。この度の事、臣の不徳の致すところでございます」

陛下は相変わらず酔った状態で聞きながら、さほど気にしないように見えるが、珍しく鋭い質問をしてくる。
「味方殺しを指摘した士官が致そうじゃな?」

そう言われて、エーレンベルク、シュタイホフ、ベヒトルスハイムが味方殺しではなく並行追撃を指摘したのだが、陛下は酔っておられるから、お間違えなのかそれとも結果を皮肉っていらっしゃるのかと考え驚いた様子になる。

「御意」
「その者の名は何と申す?」
「ラインハルト・フォン・ミューゼル少佐であります」

その名前を聞いてフリードリヒ四世は相好を表した。
「アンネローゼの弟じゃな、立派な事よ、そう思わんか?」
「「「「御意」」」」

「そうか、皆もそう思うか。それではあの者に褒美をやらねばならんな」
その言葉にリヒテンラーデ侯爵は渋い顔をしている。
「そうよの、流石に双頭鷲勲章はだめじゃろうから、2階級昇進させよ」

エーレンベルク元帥は仕方なしと思い返答をした。
「御意」
「よいことじゃ。フェザーンなどの後の事は卿等に任せる」
「「「「御意」」」」
ラインハルトの働きを聞いて上機嫌に成ったフリードリヒ四世は侍従に抱えられるように退室していった。その姿を見て4人はイゼルローン要塞修理と懲罰人事とフェザーン対する対応を考えて、ため息を吐きながら退室していくのであった。



帝国暦483年5月1日

■フェザーン自治領 自治領主オフィス

「なんだと、イゼルローン要塞に同盟が攻め込んだだと」
ウィスキーを飲みながら、寛いでいたアドリアン・ルビンスキーはボルテックからのいきなりの報告にグラスを落としてしまった。

「はい、同盟は30日イゼルローン回廊へ進入し要塞へ攻撃を開始したようです」
「報告では5月15日前後が攻撃予定日だったはずだ、早い早すぎるぞ」
「途中で作戦変更が為されたのでしょうか?」

「うむ。手に入れたの物が未完成であったにかも知れんが、此は不味いかもしれんな」
「不味いと言いますと?」
判らないのかボルテックよ、だからお前は補佐官止まりなのだ。

「我らが、帝国へ伝えた情報では5月中旬が作戦決行日だ。それが半月もずれたなら、我らが意図的に遅らせたと邪推されるおそれがある」
「まさか・・・・」

青くなるな、ボルテック、顔に出るようではまだまだだな。
「ボルテック、直ぐにレムシャイド伯爵に面会し意図的でない事を伝えてくるのだ」
「判りました」

行ったか。しかし同盟めどういうつもりだ。何か変更があったのか、単なる偶然か、それとも罠か?なんにせよこのアドリアン・ルビンスキーは負けんよ。それにどうせ作戦は同盟の失敗に終わるのでから、半月程度の誤差は何とでも無いからな。
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陛下の酔っぱらい振りを書いたのですが、言葉足らずだったようなので、後に付け足しました。並行追撃を味方殺しと書いてあり。それが間違えではとご指摘があった為。
 
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