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第二章

「それでもね」
「相手がいないかい?」
「君には」
「そうなのかい?」
「いや、告白はしているよ」
 それはというのだ。
「しかしね」
「おやおや、振られているのかい」
「そうなのかい」
「失恋しているんだね」
「そうなんだ、何度もアタックしているんだけれどね」
 やはり苦笑いのまま言うリチャードだった。
「それがね」
「どうしてもだね」
「受けてもらえない」
「そうなんだね」
「そうなんだ、しかし僕は諦めないよ」
 ここでは確かな顔で言うリチャードだった。
「絶対にね」
「その人に受け入れてもらう」
「そうしてもらうんだね」
「絶対に」
「何度振られても」
「そう決めているから」
 だからだというのだ。
「その人と結婚するか」
「そうか、じゃあね」
「そのことも頑張るんだ」
「家の事業のことに結婚のことも」
「そちらも頑張るんだよ」
「うん、そうしていくよ」 
 確かな顔で頷いてだ、そしてだった。
 リチャードはこの時は友人達とティータイムを楽しんだ、そうしてその後でだった。彼は執事のオリバー、初老で白い髪をオールバックにした碧眼の長身痩躯の男を呼んだが。
 その彼にだ、どうにもという顔で尋ねたのだった。
「今日はあの娘はどうしているかな」
「キャサリン嬢ですか」
「うん、彼女はね」
「いつも通りですが」
 オリバーは主に畏まった態度で答えた。
「真面目に働いておられます」
「何処でかな」
「今は屋敷の中でお掃除をしています」
「そうか、いつも通りだね」
「はい」
 そうだと答えるのだった。
「そうされています」
「うん、あの娘は真面目でいいね」
 その話を聞いてだ、リチャードはにこりとして頷いた。
「いつも通りね、じゃあね」
「これからですか」
「うん、私の部屋も掃除してくれるね」
「その予定です」
「ではね」
 それならと言うのだった。
「ティーセットもね」
「そちらはエリザベス嬢がしますので」
「ああ、あの娘がなんだ」
 そう聞いてがっかりとした顔になっていた。
「そうなんだ、いい娘だけれどね」
「それでもですか」
「いや、やっぱりね」
「キャサリン嬢でないとですか」
「どうにもね」
 こう言うのだった。
「僕としてはね」
「では今日もですか」
「彼女に言うよ」
 思い詰めた顔での言葉だった。 
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