恐怖の秋田美人

「一年一年でね」
「転勤続きでな」
「落ち着かないわね」
「セクハラされそうにもなってるし」
　それも一年に何十回もだ。
「どうしようかしら」
「その色気だとな、俺は親だからそうはならないけれどな」
　それでもと言う父だった。
「普通の男は違うからな」
「そうよね、女の人からもね」
「それは大変だな」
「どうしたものかしら」
「美人過ぎる、色気があり過ぎるのも困りものね」
　母も娘についてこう言った。
「どうしたものかしら」
「本当に困ってるわ」
　蜜は実際に困り果てていた、それでどうしようかと思っていたが解決案は出なかった。それでまた転勤となったが。
　ここでだ、蜜はその時に勤務していた校長にこう言われた。
「君はまた転勤になったがその理由はね」
「私自身がですね」
「奇麗過ぎてね」
「色気もですね」
「あり過ぎるからね」
　蜜の予想通りの理由を述べるのだった。
「だからだよ」
「そうですよね」
「だからね、ここはね」
「ここは？」
「ちょっと変えてみたらどうかな」
「と、いいますと」
「ガニ股はどうかな」
　校長は校長室の中で自分の席の前に立っている蜜に言った。
「時々でもね、ガニ股になってね」
「そうしてですか」
「歩いていてみたらどうかな」
「ガニ股で歩くんですか」
「わざとでもね、あと背中を三角定規で掻いたりね」
「色気のない仕草をですか」
「ところどころしてみたらどうかな」
　こう言うのだった。
「ここはね」
「そうですか、色気のない仕草をですね」
「入れるんだよ、いや実はね」
　校長は蜜にこうも話した。
「妻の妹も凄い美人なんだが」
「奥さんの」
「うん、しかし変な男にずっと声をかけられないのはね」
「仕草がですか」
「ご主人とは仲がいいけれどね」
　それでもというのだ。
「色気がないからだからね」
「それで、ですか」
「君もそうしてみたらどうかな」
「ガニ股になったり三角定規で背中を掻いたりして」
「そうした色気のない仕草をしてね」
　そのうえでというのだ。
「やっていくとどうかな」
「それでは」
「次の学校ではね」
「そうしてみます」
　蜜も校長に答えた、そしてだった。
　次の転勤先の学校では時折そうしてみた、生徒や同僚の教師達の前で時々ガニ股になったり三角定規で背中を掻いたり他の色気のない仕草をしてみた、するとだった。
　色々見られたりセクハラされそうにならなくなった、生徒達はその蜜についてこんなことを話していた。
「あの先生奇麗なのにな」
「全然色気ないよな」
「ある様に見えてもな」
「ガニ股になったりな」
「三角定規で背中掻いたり」
「職員室で爪楊枝使ってるの見たぜ」
　こうしたこともしてみているのだ、今は。