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共和制

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第二章

「ほんまにな」
「共和制な」
「日本共和国か」
「そうあるべきか」
「日本人民共和国やな」
 村本は自分が考える共和制の日本の国名を話した。
「それが日本の名前や」
「日本人民共和国か」
「それが自分が考える日本の名前か」
「日本人民共和国がええっていうねんな」
「そうや、革命起こしてな」
 そのうえでそうした国にすべきだというのだ、こう話してだった。
 彼はこのことを自分の誇りとしていた、彼にとって共和制と階級のない社会は絶対のもので職員室でも教室でも言っていた。それは家でもだった。
 とかく自分を共和主義者で平等主義者と考えそれを誇りとしていた、だがその彼について彼に教わっている生徒達それに友人や知人達は殆どが首を傾げさせていた。
「言ってることおかしいな」
「そうだよな」
「あいつの言うことはな」
「どうもな」
「皇室なくせってな」
 まずはこのことが疑問だと思われた。
「そんなことしたらな」
「日本を統合する象徴がなくなるぞ」
「陛下は常に日本の安泰を願われている方なのに」
「日本の為に働いておられて」
「皇室の方は全てだ」
「そうした方々をいなくなれとかな」
「いなくなれって粛清か?」
 不吉なことも思うのだった。
「そうしろっていうのか?」
「無茶苦茶言うよな」
「しょっちゅう革命とか言うしな」
「暴力革命か?」
「それでどれだけ死ぬんだ」
「犠牲は仕方ないとか言うのか、多少の」
「皇室もなくして資本家もなくして」
 そうしてというのだ。
「日本をソ連みたいな国にしたいのか」
「そういえば日本人民共和国とか言ってたな」
「社会主義の国にしたいんだな」
「日本を」
「共和制といっても」
 まさにというのだ。
「あの国みたいにしたいのか」
「日本を社会主義国にして」
「長い歴史を持つ皇室まで消して」
「共和制にしてか」
「どうなんだ、それ」
「そんなこと出来るか?」
「そんなことをしていいのか」
 首を傾げさせてだ、彼の言葉を聞いた多くの者は首を傾げさせていた。とかく彼の考えは実におかしいと思っていた。
 そしてある日だ、彼は北朝鮮について教室での授業中にこんなことを言った。
「あの国はいい国だな」
「北朝鮮が?」
「いい国ですか」
「あの国は」
「そうなんですか」
「ああ、いい共和国だ」
 こう生徒達に言うのだった、確かな声で。
「平等なまま発展しているな」
「そうした国ですか」
「北朝鮮って国は」
「よくテレビや新聞で出てますけれど」
「いい国なんですね」
「あんないい国はないぞ」
 憧れさえ込めてだ、彼は言った。
「見事に発展しているからな」
「差別とかもなくて」
「そうして」
「そうだ、地上の楽園だ」
 あの国が言っている通りにというのだ。 
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