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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第85話 後始末は自分の手でつけるのが世の中の鉄則 その2

 
前書き
前回のつづきになります 

 
「データの抽出が終わりました。お父様」

 やり切ったと言わんばかりに誇らしい笑顔でこちらを向くシュテルに何も言わず、銀時はチラリと時計の時刻を確認した。
 シュテルにイチゴ牛乳を催促したのが午前9時過ぎ辺り。それからシュテルが何故かイチゴに関するデータ収集に乗り出し始めて終わったのが丁度今の午前11時過ぎ。
 軽く2時間近くイチゴの為に費やしたこいつの熱意を称賛すべきなのか、それとも余りにもぶっ飛んだその思考を正すべきなのか。
 その辺の微妙な匙加減が難しく二日酔いも相まってより一層頭が痛く重くなる感じがした。

「そ、そうか・・・それじゃさっさとイチゴ牛乳を作って持ってきてくれ」
「何を仰ってるのですかのお父様は!」
「へ?」

 唐突に笑顔が豹変し真剣な顔立ちになったシュテル。ついでに眼鏡をクイッと持ち上げる辺り結構様になってる。
 なってるんだけど何故たかがイチゴ牛乳を催促しただけで怒られにゃならんのだろうか。

「えと・・・シュテル。俺何か悪い事言ったか?」
「お父様はイチゴと言う知的生命体がどれ程恐ろしいのか全くご理解していません。そんな事ではこの江戸は勿論。この地球その物がイチゴによって攻め滅ぼされてしまうやもしれないのです!」
「生物兵器の次は知的生命体って・・・あのなぁ、イチゴは只の果物なんだよ。その辺をも一回調べ直してだなぁ―――」
「ではまず、私が調査したイチゴと呼ばれる恐ろしい知的生命体についてご説明致します」
「おい、人の話聞けや」

 銀時の声など全く聴く耳持たずなまま、シュテルは何処から持ってきたのかどでかいホワイトボードを目の前に置いて黒ペンを片手に講師さながらな説明をし始めて来た。

「まず私達が一般的に目にしているイチゴは全てオランダイチゴ属と分類されています。バラ科オランダイチゴ族の半落葉性草本に分類され多くは北半球の温帯に広く分布されている他にはチリ中南部やハワイ諸島と言った比較的温暖な気候の場所で多くみられているそうです。更にこれ以外の種類にはキイチゴ属やヘビイチゴ属などと言った亜種が存在しているようでして、大きさや色、更には体内に含まれている成分にも微細な違いが検出されていると結果が出ました。それから―――」
「シュテル・・・ちょっと良いか?」
「何ですか? 質問でしたら説明の後でお願いしたいのですが」
「その説明・・・後どれくらい掛かる?」
「それ程かかりませんよ。時間からしておよそ5~6時間程度で済ますつもりです」

 本人からして見れば簡略しての説明なのだろうがどう考えても長すぎだ。こんな意味のない説明を延々と5時間以上ぶっ続けで聞かされ続けていたらこっちの頭がおかしくなりかねない。
 それだけは何としても阻止しなければ。

「シュテル。お前の説明したいと言う気持ちはよく分かった。だが事は一刻を争うんだろ? だったら何をすれば良いのか要点だけを教えてくれよ」
「そうでした。私とした事が迂闊でした。それではこのイチゴが如何に危険な知的生命体なのかご説明いたしましょう」
「いや、説明は良いから」
「まず、このイチゴ全般に言える事なのですが。彼らは全て外宇宙から飛来してきた寄生型知的生命体である事が判明しました」
「おいぃぃぃぃぃ! 何勝手に俺のイチゴちゃんをグロテスクな代物に仕立て上げてんだぁぁぁぁ!」

 生物兵器ときて、今度は知的生命体。挙句の果てには寄生生物と来た。こいつはイチゴ一つでどれだけ話の風呂敷を広げられるんだろうか。
 正直ただのボケキャラでも此処までボケるような真似はしない。

「まず、こちらの写真をご覧になって下さい」

 頭を抱える銀時を無視するかの様に、シュテルはボードに一枚の写真を張り付けた。
 其処には大きく美味そうに実ったイチゴと、それを貪る小型の昆虫の写真が載っている。

「これが何だよ?」
「見て分からないのですか? 彼らはこうして自らの肉体を他の生命体に捕食させる形で捕食者の体内に寄生する行為を行っているのです!」
「だからイチゴは果物なんだよ! そんな事言ってたら世のイチゴケーキとかイチゴショートとかどうすんだよ?」
「この事態に感づいたのは恐らく私達だけに他ならないでしょう。事は一刻を争います。人類全てがイチゴに汚染されてしまう前にこの悪しき知的生命体を駆除しなければならないのです!」
「いや、無理だろう。イチゴなんてごく普通の一般家庭にも出回る奴だぞ。下手すりゃ江戸市民全員イチゴ食ってるだろう」
「そ、そんな・・・何てことですか・・・私達のやってきたことは・・・全て遅すぎたと言うのですか・・・くっ、私がもっと早くこの生命体の恐ろしさに気づけばこんな事には―――」
「オーーーイ、いい加減にしないとそろそろお父さん怒るぞぉ。シリアス銀さんみたいに目とか吊り上がって怒るぞぉー」
「こうなれば、急ぎ対寄生型知的生命体(イチゴ)抹殺用のワクチンを生成し、奴らが猛威を振るう前に全て除去するまで! しかしその為にはまだまだサンプルが足りない。背に腹は代えられません。こうなれば江戸中にあるイチゴを全て回収し、ワクチンを生成した後に他は全て廃棄処分にして―――」

 ここら辺りが限界だった。
 一人で変な世界に没頭し続けるシュテルの脳天に銀時の拳骨が炸裂し、恐ろしいイチゴ達による江戸洗脳計画(妄想)は幕を閉じたのであったそうな。

「ったく、いい加減にしろっての。何時までそんな馬鹿みたいな妄想してんだお前は」
「いつつ・・・な、何故私は殴られたのですか? まさか、ワクチンを用いる事にお父様は反対の姿勢なのですか?」
「ちげぇよ。大体イチゴってのは食い物なの。知的生命体でもないし生物兵器でもねぇし、ましてや寄生生物なんて気持ち悪ぃもんじゃねぇってんだよ!」
「確かに、ワクチンは即効性がありますが副作用も懸念されます。ですが、他の方法では時間が掛かり過ぎて手遅れになってしまう危険性があります」
「おい、いい加減人の話聞く努力しろよ。お前は何でそう俺の言ってる事より横道にそれまくる答えを返してくるんだよ」

 正直こいつと一対一で話してても拉致が開かない。幾ら違う答えを述べてもそれすら余裕で通り越えた全く別の答えを頭の中で作り出して行動してしまう。
 こう言う輩を世の人は「KY」って言うのだろうなぁ。
 内心そう思いたくもなった。
 だって面倒臭いんだもんシュテルの相手するのって。
 無駄に頭が良い分変な方向にねじ曲がって行くし、其処に真っすぐ行くかと思ったらまた別の方向に曲がってしまう。
 ぐにゃぐにゃに曲がった末に答えに辿り着くって言う話は世にあるがシュテルの場合はぶれ過ぎかつ曲がり過ぎの上に幾つも答えが枝分かれしまくってる為に全く話が噛み合わせられない。
 はっきり言って素面の状態でもこいつとまともに話し合うのは正直疲労が溜まりまくって仕方ない。
 
 ドンドン、ドンドン!

 そんな時だった。この万事屋唯一の出入り口である入り口の横開きの戸を激しく叩く音がした。
 一瞬お登勢のババアかと思ったがその懸念は違うとすぐに切り捨てた。
 お登勢に家賃を渡したのはつい先週の事。となれば家賃の催促は当然ない。
 ならば新八か神楽では? と言う考えも違う。
 そもそもあいつらならわざわざノックなどする必要がない。普通に戸を開けて入ってくるのが常だ。
 となれば考えられるのはただ一つ。
 第三者、それも此処を万事屋銀ちゃんと知っててわざわざ来ると言う事は依頼客と言う可能性が高い。
 本来ならば依頼客となればとても喜ばしい存在なのだろうが生憎今の銀時にとっては面倒この上ない。
 何しろ一番頼りになるなのはが一番面倒な存在になり果ててしまっている。
 こんなのを依頼客に向かわせたらどんな顛末が起こるかなど考えてたくもない。
 きっと意味もなく理解も出来ない説明を延々とされた挙句憔悴しきった状態で追い返される光景が目に見えてしまう。
 だって現にこいつの説明した事なんて5%ほども頭に入ってないもん。
 あ、因みに5%ってのは100%中5%って意味だから誤解しないように。

「誰でしょうか?」
「新八や神楽ではないだろうし、ババアやキャサリンも来るこたぁねぇとなると。依頼客だろうな」
「まさか、私が対イチゴ星人用のワクチンを作っている事が露見した為に、それを阻止しに来たと言う事でしょうか?」
「いい加減しつこいからそのネタはもう止めろ」

 ため息一つ吐き、銀時は重い腰を持ち上げて玄関へと向かう。
 本来ならばなのはに一任したい所なのだが、今のこいつに頼むと面倒毎になる上に万事屋のイメージダウンに繋がりかねない。
 なので仕方なくオーナーである自分自身で客を出迎える事にした。

「へいへい、今出ますよっと―――」

 銀時が玄関口まで向かっている間にもひっきりなしに戸口を叩く音が鳴り響いてきててうるさくてかなわない。
 普通ならば2、3回ノックすれば良いのだろうが、これは相当切羽詰まっている状況なのかはたまたとっとと終わらせたい自分勝手な性分の奴なのか。
 いずれにせよそう言った輩からはそれ相応の依頼料をふんだくってやれば良いだけの事だ。
 いずれにせよ昨日の分の埋め合わせにはもってこいと言える。

「ういぃっす。万事屋銀ちゃんでぇっす。依頼の方ですか?」

 やる気も覇気もないけだるい感じのまま戸口を開く。そんな銀時を出迎えたのは依頼客の顔ではなく依頼客の物と思わしき激しい腹部へのダメージであった。

「ごふぅっ!!」

 思わず苦悶の声を挙げてしまう。どうやら何か大きな物体を投げつけられたのかそれとも姿勢を低くした上での体当たりを食らったかのどちらかと思われる。
 痛みを堪えつつその痛みを生み出した不届きものを見た時、それの意味を銀時は理解した。

「なのはぁぁぁ! 私のお願いを聞いてぇぇぇ!」

 其処に居たのは滝のように涙を流しながら銀時の腹辺りにしがみついてワンワン泣きじゃくるフェイトの姿だった。
 恐らく出迎えるのをなのはと早合点した為にこんな場違いな展開になってしまったのだろう。

「何しに来たんだよお前。ってか、いい加減離れろ! 俺の一張羅がてめぇの涙と鼻水と涎で汚れるだろうが!」
「!!! え? 何であんたが此処に居るのよ! ってかなのはは? なのははどうしたの?」
「良いからさっさと離れろこのクソガキ! 重いし痛ぇし汚ぇんだよ!」
「何よ! 私そんなに重くないわよ! それに汚いって何よ! これでも毎日お風呂とか入ってるし身だしなみにはちゃんと気を付けてるんだからねぇ!」
「そう言い張ってる奴が開幕一番で涙と鼻水と涎垂らしまくって人のどてっ腹に体当たりかますのがそもそもおかしいだろうが!」

 既にご承知の事とは思うが、銀時とフェイトは仲がとても悪い。まぁ、過去に何があったかは今更語ると面倒なので前の話を見ていただけると幸いですとだけ此処に書き記しておく。
 それでだ、玄関の入り口辺りで二人して激しい言い争いをしているのだから、当然居間に居るシュテルにまで聞こえて来るのは明白の事でもある訳で。

「お父様、どうしましたか? やはりイチゴ星人の襲撃でしたか? それとも他の有害知的生命体の襲撃でしたか?」

 面倒に更に輪を掛けて面倒な事になったと銀時は内心毒づいた。
 今は只でさえフェイト一人に手古摺ってると言うのに此処に来て更に面倒なシュテルまでやって来て、しかもその面倒を回避する手段も人員も居ない。
 つまり、面倒毎を自分自身で解決せねばならない事になる。
 ようやくすると超面倒臭い。

「なのは! 私重くないよね? 汚くないよね?」
「ひっ!!―――フェ、フェイトさん・・・い、いいい居たんですか?」

 あれ? 今シュテルの奴フェイトの事見て凄い小声で「ひっ!!」って言わなかったか?
 しかもフェイトに対して何処か怯え切ったみたいな顔をして震えた子犬みたいに肩を震わせながらその場から動こうとしない。
 こいつ、一体この間こいつに何されたんだ?

「お前、なのはに何したんだよ? あいつ、お前の事見て相当ビビりまくってるじゃねぇか?」
「何言ってるのよ! あんたになら一生震えて眠れない夜を送れない怖い思いをさせても何も感じないし寧ろ嬉しい気持ちで一杯になるけど、なのはに対してそんな事をする筈ないじゃない!」
「何で俺限定なんだよ! ってか何だよ一生震えて眠れない夜を送るって!? あれですか、夜のベッドの上で一生震えて眠れないムラムラな夜を送るって事ですかぁ? ガキの癖に背伸びしてますねぇ。でも残念でした。俺はガキンチョには興味ないんだよ! 俺を口説きたかったら後10年年取ってからにしな」
「誰があんた何かとベッドを共にしなきゃなんないのよ! そんなの死んでもお断りよ!」

 こちらでも話が脱線しまくってしまった。全く、この世界では話が脱線するのがデフォなのだろうか。
 内心そんな事を呟く銀時だった。

「そ、それで・・・一体何の御用なのでしょうか・・・」

 遠目から顔を半分だけ覗かせる形でフェイトに用を訪ねるなのは(シュテル)。さっきまでのとはまるで別人のような代わり映えだ。
 以前のなのはにはこんな兆候は見られなかったのだが、どうやらシュテルの場合は何もかもが初めてな分フェイトのこの押せ押せな雰囲気に圧倒されてるような気がする。
 まぁ、あいつもあいつで面倒臭い部分があるので人の事は言えないっちゃぁ言えないんだけども。





     ***




「んで、一体何の用だよ?」

 一悶着あったものの、とりあえずフェイトを居間へと移し、話を聞く事にした。
 例えどんなに憎たらしいガキだったとしても客は客。
 しかも以前お世話になったあのアースラ隊に所属しているクロノの義理とは言え妹の位置にいる。
 となれば相当な額をせしめても文句は言われまい。かくなる上はベラボウな額を報奨金として頂戴してしまうとしよう。

「言っとくが、家は江戸でも指折りの超一流な万事屋だ。依頼するとあっちゃぁ相当な額を用意して貰う事になるぜ」
「なのは、聞いて頂戴! 今とても大変な事になってるの!」
「人の話聞けやてめぇ!」

 どいつもこいつも、何で人の話を聞かない連中が多いんだか。対面の位置で座しているだけに自分の事を無視された事に尚更腹が立つ。
 だが、其処で手を挙げてしまえばきっと児童保護なんちゃらってのに引っ掛かってなんやかんやあって色々どうこうと面倒な事になりかねない。
 此処はぐっと我慢すべきだと怒る心を腹の奥底へと沈めていく。

「・・・・・・・(ガクガクガクガクガク」
(こいつ・・・本当にこないだフェイトに何されたんだよ?)

 銀時のすぐ隣ではなのは(シュテル)が青ざめた顔でフェイトを涙目で見ながら銀時の腕を掴んでブルブルと震えまくっている。
 よほど恐ろしい目にあったのは間違いない。

(なぁ、シュテル。一体こないだフェイトに何されたんだよ?)
(実は、この間新八さんの家でお泊りになった際に、私はフェイトさんやはやてさんと床を共にしたのですが・・・その・・・)
(あ~~、何となく予想ついたわ―――)

 要するに、ひたすらべたべた引っ付かれた挙句そのまま寝付いてしまい、それが引き剥がせずに結局世が明けるまでずっと締め技を食らい続けた訳なんだな。
 だが、そうなるとこいつが怯えているのは恐らくフェイトだけではあるまい。
 多分だけどこんだけ面倒なイベントが立て続けに起こってるって事は恐らくだが―――

「なのはちゃぁぁぁああああああん!!!」
「ひうぅっ!!!」

 案の定と言うか何と言う、勢いよく居間に入って来たのは今度ははやてだった。
 フェイトと同じように滝のように涙を流しながらたまたま近くに居たなのは(シュテル)に抱き着き、きつく締めあげ始める。

「は・・・はやてさささん!! ・・・くく、苦し・・・ぅぅぅ・・・」
「なのはちゃん、お願い聞いてぇなぁ―――!」

 運が悪いとはこの事を言うんだろうなぁ。
 横目で銀時は物凄い腕力で締め上げられるなのは(シュテル)を見ていた。
 一体どこにそれだけの力があるのか心底不明ではあるが、とにかく凄まじい力でなのはの腰辺りをガッチリ掴んで両手で締め上げながら必死に哀願しまくっているはやて。
 んで、それに対してなのは(シュテル)の方はと言えば突然の出来事+過去に起こった苦手意識が為にまともに動く事すら出来ずなすがまま状態となっている。
 徐々に顔色が青く変色し始め口元から泡が吹き出してきている。
 こりゃいよいよやばそうだ。

「ちょっとはやて! いい加減なのはから離れなさいよ! 苦しそうじゃない!」

 そんな時、意外にも助け船を出したのはフェイトの方だった。
 どうやら二人が仲睦まじくしているように見えたらしく、それが気に入らなかったのだろう。
 はやての顔を掴んで無理やりなのはから引き剥がしてしまった。
 こいつもこいつで相当力を持ってそうだ。
 
「何するんやフェイトちゃん! 邪魔せんといてな」
「抜け駆けは許さないわよはやて! 先に私が此処に来たんだから」
「そないな事言うたってフェイトちゃん全然ひっついとらんかったやん。せやから私が先にいかせてもろうたんや!」
「何ですって?」
「不満みたいやなぁ?」

 互いに激しくにらみ合う。こいつら何でなのは絡みになるとこんなに仲悪くなるんだよ。
 銀時となのは(シュテル)の目の前で二人して腕を組み合ってまるで今にもレスリングでも始めようかと言う姿勢を構えている。
 ガキンチョのレスリングなんて誰得なんだよ。
 色っぽい姉ちゃん同士のレスリングならまだ興味はあるだろうが生憎どっちも出るとこ出てなくて引っ込むとこ引っ込んでないガキンチョに過ぎない。
 アダルトで大人な銀時には到底興味すら沸かない年頃の子供の喧嘩を欠伸交じりで眺めていた。

「お前ら、家の家具壊したら弁償だからな」

 一応こう言って釘を刺しておく。万が一家具の一つでも壊そう物ならあのゴリラ局長に賠償金しこたまふんだくってやろう。
 そんな意地汚い事を考えながら、ふと視線を下に向ける。
 銀時の腕に未だにしがみついたまま生まれたての小鹿の如く震えるなのは(シュテル)の姿が其処にあった。

(おい、演技忘れるなよ)
(は、はい! ででで、ですが・・・どうにもあの二人は苦手でして・・・)
(気持ちは分かるがもうちっと堂々としろ。そんなんじゃお前がなのはじゃねぇって奴らにばれちまうだろうが)
(す、すみません)

 シュンとしてしまいそっと銀時の腕から離れる。
 彼女の内情を秘密にしているのは何も面倒なだけではない。
 シュテル自身がなのはの別人格と言うのがどうにも嘘くさく感じたからだ。
 もしかしたら、彼女には何か皆に言えない秘密のようなものがあるのやも知れない。
 だが、どんな秘密を腹に抱えていようとも、今は銀時の娘だ。その内自分から明かしてくれる日を待つ事にしよう。
 きっと、そう遠くない日に彼女は打ち明けてくれるだろうし―――

「おい、お前ら。依頼しないんだったらとっとと帰れよ」

 今はとにかくシュテルの事については深く考えないようにしよう。
 そう自身の考えを切り替える為に、銀時は目の前で何時までも喧嘩をし続けているフェイトとはやてを呼びつけた。 
 

 
後書き
なのは(シュテル)の二人に対するトラウマは相当みたいなようでww 
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