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第30話 ローゼンリッター


風邪引きました、この後病院後に仕事です。

此方は何とか更新できました。

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第30話 ローゼンリッター

宇宙暦792年4月25日

■自由惑星同盟軍 第八艦隊旗艦ヘクトル大会議室

ヘクトル大会議室では第5次イゼルローン要塞攻略戦参加の各艦隊司令官、参謀長、参謀達、陸戦部隊長などが参集されダミーの最終作戦命令書が配布されていた。配布後に読み始めた者達から次々と唸り声や相談声が聞こえてきた。その中で陸戦隊であるローゼンリッター隊長リューネブルク達だけは宇宙艦隊司令部に対し、睨み付けるような目を向けているのである。

宇宙艦隊司令長官シトレ大将が発言する。
「今回の第5次イゼルローン要塞攻略戦だが、作戦書に有るように行われる。各人の忌憚ない意見を求めるモノである」

「司令長官閣下、小官提出作戦を採用して頂き光栄です」
突然一参謀の発言に参加者が顔を見る。
その男の名は、第十一艦隊第四分艦隊副参謀長ウィレム・ホーランド大佐であった。

ホーランドは自説のD線上のワルツを自慢げに説明するが、司令長官以下高級参謀達はロボス少佐のレポートが元々の作戦であるのにあたかも自分の説のように説明するホーランドを哀れむように見ているが、事前の話し合いで、ホーランドに作戦崩壊の責任を被せる予定なためにあえて無視していた。

つまりホーランド大佐は完全なスケープゴートであったが、普段の言動から他の参謀連中にも好かれてない為に敢えてリンチ司令官へ因果を含めて、第十一艦隊分艦隊副参謀長職へ叩き込んだのが真相であった。

「過去四度イゼルローン要塞の攻撃で要塞主砲の射程は判っています、そのギリギリのライン、私は此をD線デッドラインと名付けました、それを起点に敵艦隊をおびき寄せその隙にミサイル艦隊により、要塞主砲ギリギリに侵攻し死角からミサイル攻撃をするのです」

その話を聞く、リーファ達は雑談しながら、アホやアホが居ると話していた。
そう話しながら、確りと参加者の動向や言動を記憶していた。特にローゼンリッターに対しては完全に動きを見ながら、此からどう話をするかを考えていた。





会議終了後、リューネブルク大佐とヴァーンシャッフェ中佐が苦虫を噛み潰したような顔をして、旗艦ヘクトル内にあるローゼンリッター連隊代表者控え室へ帰ってくると、留守番をしていたシェーンコップ少佐が軽口を言いながら迎えに出てきた。

「連隊長殿、苦虫を噛み潰したような顔では女性にもてませんぞ」
「シェーンコップ、この作戦書を読めば判るはずだ」
そう言いながら、リューネブルクが作戦書を投げ渡してくる。

「ほう。どれ程のことが書いてあるのですかな」
シェーンコップが軽い感じで読み始めるが、次第に真剣な表情になり段々不機嫌な表情になっていく、それを見ていたリンツ大尉が話しかけてきた。

「大隊長、いったいどうしたと言うのですか?」
シェーンコップが作戦書を渡したので、リンツも読み始めるが驚き顔をしはじめる。
「こいつは!」

リューネブルクとシェーンコップが吐き捨てるように言う。
「そうだ、俺たちローゼンリッターは捨て駒として戦死してこいと言うことだな」
「上層部にしてみれば、俺たちは所詮帝国からの亡命者、死んでも痛くも痒くもない訳だ!」

「そんな、我々がどれだけの苦労をして血を流しているのを知らない訳では無いのに」
「上層部がそう言う考えなら、此方にも考えがある」
「連隊長、まさか」

「ヴァーンシャッフェ、勘違いするな」
「我々だけで、イゼルローンを奪取して、同盟と帝国にオークションで売り出しますかな」
「ハハハ、シェーンコップ、良い考えだな」

「連隊長も少佐も冗談が過ぎますぞ」
「ヴァーンシャッフェ、こんな作戦、冗談でも言わねばやってられんよ!」
「エリートは人を駒としか見ていないですから」

「そのエリートさん達に我らローゼンリッターの凄まじさを見せてやりますかな」
そのような話が為されている中で、宇宙艦隊参謀が訪ねてきたと報告があった。

「連隊長、宇宙艦隊参謀が訪ねてきております」
「ふん、艦隊参謀だと、逢いたくはないが逢わない訳にはいかんだろう」
従卒に案内されて女性士官が入室してきた。

「初めまして、小官は統合作戦本部兼宇宙艦隊総司令部参謀リーファ・ロボス少佐であります」
にこやかに挨拶してくる、少佐としては年齢に合わないような気がする容姿に若干の毒気を抜かれた4人が取りあえずは返礼する。

「小官がローゼンリッター連隊長、ヘルマン・フォン・リューネブルク大佐だ」
「小官は副連隊長、オットー・フランツ・フォン・ヴァーンシャッフェ中佐だ」
「俺は大隊長、ワルター・フォン・シェーンコップ少佐」
「小官は副大隊長、カスパー・リンツ大尉であります」

「ローゼンリッター連隊にはこの度はお気の毒様な事で」
リーファの言葉に、4人とも眼光が鋭くなる。
「少佐、皮肉を言いに来たのかね」
流石のリューネブルクもムッと来たのか多少ドスのきいた声で話すが、それを全く気にしないで、リーファが独り言のように話し出す。

「ローゼンリッター、帝国からの亡命者の子弟で構成されている連隊、同盟最強の白兵戦部隊であり、その戦闘能力は1個連隊で1個師団に匹敵する。しかし、歴代連隊長10名のうち、3名は帝国軍との戦闘で死亡、2名は将官に昇進した後退役、あとの5名は同盟を裏切り帝国へ逆亡命」

その言葉に更に4人の表情が厳しくなり、珍しく普段冷静なリンツが我慢できずに大声で怒鳴る。
「あんたらエリートに誹謗中傷される筋合いはない!俺達は命を散らして戦っているんだ!」
リーファに掴みかかろうとするリンツをヴァーンシャッフェが押さえ付ける、その間にリューネブルクが落ち着いて、質問をしてくる。

「少佐、我々の名誉を傷つけに来るのが仕事かね?」
「名誉ですか、今回はある程度傷ついて貰いますよ」
リーファが不貞不貞しく呟き、それを聴いたリューネブルクも睨みながら再度質問をする。

「ある程度か、それは我々が無様に全滅するとでも言いたいのか」
「全滅はしませんよ、ローゼンリッターは飲み過ぎの二日酔いで当日攻撃に参加出来ないんですから」
リーファがにやつきながら喋るのを聴いて4人が不思議がる。

「少佐、其れはどう言うことかね」
「言ったとおりですよ。ミサイル艦の攻撃に続いて強襲揚陸艦でローゼンリッター連隊が突撃する予定が、捨て駒にされるローゼンリッターが前日から飲みまくって全隊員が二日酔いの為作戦参加不可能、その結果他の陸戦部隊が代わりに作戦参加した事になるが、その部隊は書類上だけの部隊、そして無人の強襲揚陸艦が突撃したが途中で撃沈される訳ですよ」

リーファの言葉にリューネブルクとシェーンコップが素早く気がつく。
「ほうー、つまりこの作戦計画はダミーと言う訳か」
「壮大な、ドッキリですな」

「リューネブルク大佐、シェーンコップ少佐、正解ですよ」
「しかし、何故こんな手の込んだ事をするのですかな?」
「一言で言えばネズミ退治ですよ」

「なるほどネズミ退治か、しかし、我々にその様な大事を言って宜しいのですかな?」
「先ほどのローゼンリッターの悪評ですか?」
「まあ悪評でしょうな」

シェーンコップの言葉にリーファは笑い出した。
「フフフ。少佐、言いたい奴には言わせておけば良いんですよ。
少なくとも私は貴方たちを信じてますから」
「ほう、それは光栄ですな。しかし、我々が貴方を信じるかは別ですぞ」

「そうですね、ケ號作戦と言えばいいですかね」
その言葉に4人の表情が変わる。
「もしや、統合作戦本部の大尉と言うのが貴官なのか?」

リューネブルクの言葉にリーファは呟く。
「フフフ、私だけじゃ無いですけどね」
「少佐殿、暴言を吐いて申し訳ありませんでした」
リンツがいきなり謝りだした。

「リンツ大尉、良いんですよ。私も気の触ることをあえて言ったのですから」
「ロボス少佐、ローゼンリッター連隊を代表して、あの時の礼をしたい。
少佐のお陰で我々は捨て置かれずにすんだのだから」
「大佐、お互い様ですよ」

どことなく笑い出す5人であった。
その後リーファの作戦に関する説明が行われ、リューネブルク以下ローゼンリッター連隊は、その作戦に全面協力を約束してくれたのである。

自分たちの揚陸艦母艦へ帰投後、リューネブルク達はリーファのことで話していた。
「中々面白い少佐だったな」
「ご婦人としても是非一戦交えたいですな」
「シェーンコップ、不謹慎だぞ」

「まあ、俺達の命の恩人は偏屈者だけど、俺達のことを判ってくれているんですな」
「そうだな、他の連中と違い我々に秘事を打ち明けてくれたのだからな」
「ローゼンリッターの誇りにかけて、あの少佐に協力するまでですな」

「違いないな」
「アッハハ」
 
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