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ハルケギニアの電気工事

作者:東風
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第23話:お宝探し!(夢の果樹園計画と不思議発見!!)

 
前書き
今日も朝から元気いっぱい、マイペースのアルバート君です。
色々と、新しい物を見つけることもできて、上機嫌。
あまり暴走しないといいのですが。 

 
 おはようございます。アルバートです。

 ゴムの樹液採集の為、2度目のリゾート地遠征に来て今日で3日目です。
 今日も穏やかで暑い一日になりそうです。

 少し早く起きて、洗顔を済ませた後、両親に現況報告の手紙を書きました。前回の調査の時は連絡手段を忘れて5日間も音信不通だったので、かなり心配をかけてしまいました。今回は忘れずに伝書用の鷹を連れてきています。鷹にご飯を上げてから、足に通信筒を括り付け、北の空に向かって放します。鷹は僕の上を3回廻り、一声無くと北に向かって飛んでいきました。

[親に手紙かえ?良い心掛けじゃのう。]

「はい。この前は考えが足りず、いらない心配をさせてしまいましたから。」

[どちらにしろ、親という者は子の心配をするものなのじゃ。それでも、確かに余計な心配はかけるものではないじゃろうな。]

「そうですね。気をつけますよ。」

 その後、いつも通り朝食を作って、準備が出来たのでアルメリアさんを起こします。
 出てきたアルメリアさんは昨日以上の寝相の悪さで、下着が捲れ上がって胸は丸見えになっていましたが、ちっとも見ていませんよ。ええ、見てませんとも………。

 朝食の後、今日の調査について方針を纏めます。
 現在16本のゴムの木を見つけて、樹液を採集中ですが、これ以上本数を増やしても時間的に作業が難しくなるだけなので、ゴムの木を見つける調査は止める事にしました。
 そうなるとゴムの樹液の採集だけでは時間が余ってしまうので、昨日アルメリアさんが見つけた「リュウゼツラン」と「ケイアップル」の場所を教えて貰い、自生している状況を確認してこようと思います。
 特にこの辺は誰の土地で見ない事を、アルメリアさんに聞いてありますので、多少いじくっても問題無いでしょう。そこで、出来れば「リュウゼツラン」と「ケイアップル」の木を集めて、「リュウゼツラン」は茶畑状態、「ケイアップル」は果樹園のようなものにしてしまおうと考えました。
 どれくらい木があるのか解らないのですが、自生している分布を確認して、一カ所に植え替えてしまうのです。こうして日当たりを良くする事により成長も良くなりますし、収穫する時も楽になりますからね。

 昨日の内に作っておいた簡単な地図に、教えて貰った木の場所を記入してから、まず最初にゴムの樹液の採集状況を確認に行きました。
 ちなみにアルメリアさんは今日も南側を重点的に調査するそうで、スケッチブック等の道具を持って既に出発しています。
 僕も朝ご飯の後片付けをして、『ヴァルファーレ』に後を頼んでから、荷物を持って出発しました。

 森の中に入ってゴムの木を1本ずつ廻り、容器に溜まったゴムの樹液を持ってきたガラス瓶に移し、幹に新しい傷を付けて容器を取付け直します。大分仕事に慣れたので2時間も掛からずに全ての木を廻り終わりました。この段階で、前回集めた樹液の量を超えています。
 ベースキャンプに一度戻って、集めた樹液を木陰の保管庫に入れておき、一休みして『ヴァルファーレ』に危険の有無を確認してから「リュウゼツラン」の自生場所に行ってみる事にしました。何でこちらを先にしたかと言えば、単純にこっちの方が近かったのが理由です。

 地図を見ながらベースキャンプの南西に向かって森の中に入っていきます。「リュウゼツラン」の生えている場所は、ベースキャンプから大体250メール位の所だという事です。
 歩き難い森の中を、下生えを踏みしめながら目立つ木の幹に印を付けて進んでいくと、それらしい植物を見つける事が出来ました。丈は60サント位、直径は80サントから1メール位の円形状に葉を伸ばして生えています。どうやら間違えなく「アガベ・アスール・テキラーナ」のようですね。ほんとに何でこんな所に生えているのでしょうか?
 葉の根元にあるピニャと呼ばれている部分がまだ小さいので2から3年生と思われます。あと3年位成長しないと使えませんね。

 ゴムの木の時と同じように羊皮紙の中心に現在地を記録して、周囲の探索に入ります。
 今回はこのポイントを中心に、東西南北に線を書いて一辺が50サントの区画に分け、それぞれの区画を虱潰しに探す事にしました。
 近いところから西の方に3区画分を調査して、3本の「アガベ・アスール・テキラーナ」を見つけました。どれも最初の「アガベ・アスール・テキラーナ」と同じ位の大きさです。やっぱり森の中なので少し日光の量が足らないようですね。
 そろそろお昼の時間になりましたからベースキャンプに帰りましょう。

 昨日より少し帰るのが遅くなりましたから、昼食は簡単にしましょう。
 『ヴァルファーレ』と雑談しながらベーコンのスープとポテトサラダを作っていきます。 昨日使った鶏肉の骨を砕いて水から鍋に入れて沸騰させ、鶏ガラスープを作ります。エキスを出し切った骨を取り出し、次に玉ねぎをスライスしてスープに入れ透き通るまで煮込み、ベーコンを細く切って加えて、しっかりと灰汁を取ってから塩とこしょうで味を調えます。
 並行作業で、じゃがいもも水から鍋に入れて柔らかくなるまでゆで、皮をむいてからしっかりとつぶします。ハーブを細かく刻んで、適当に切ったハムと一緒にじゃがいもに混ぜて、こちらも塩とこしょうで味を付けました。
 後は白パンを切ってお湯を沸かせば準備完了です。時間を掛けずに量を作れるのでこんな時には重宝するメニューです。

 集中して料理をしていたので気がつきませんでしたが、いつの間にかアルメリアさんも帰ってきていて、スケッチブックの整理をしていました。

「アルメリアさん、お帰りなさい。何か変わった植物でもありましたか?」

「ああ。いくつか新種を見つける事が出来たよ。やはりこちらの方は面白い。食後に画いたものを見て貰おう。」

 スープを深皿に入れます。灰汁を取りきっているので綺麗に澄んだスープは、良い出汁が出て塩加減も良く、満足な出来です。
 白パンにポテトサラダをのせて、そのままでも良いし、2、3種類あるソースをかけても良いし、食べ方のバリエーションは結構作れますから、飽きずにお腹一杯食べられます。
 スープもすっかり飲み干して、満ち足りた気分の食後は、ティータイムでアルメリアさんの成果を見せて貰いました。

 素晴らしい彩色の絵がスケッチブックに何枚も書かれています。ここまで来ると芸術ですね。絵描きとしてもやっていけるのではないでしょうか。
 たしかに、ゲルマニアなどでは見る事のない植物ばかりで、とても珍しいのですが、エルフの世界でどれくらい珍しいのか判断材料が無くで解りません。昨日のようなお宝になりそうなものも見つけられなかったので、素直に聞きました。

「どれも素晴らしい絵ですが、この中でどれが新種の植物なのでしょうか?」

 すると、アルメリアさんはにっこり笑い、ぐっと身を乗り出してきて言いました。

「アルバートはこちらの植物相に詳しくないし、私たちの間でも新種かどうか解る者はそれほど居ないから無理もないか。それでは詳しく説明しよう。」

 どうやら、アルメリアさんの変なスイッチが入ってしまったようです。凄く嬉しそうに絵を見せながら話すアルメリアさんはまるで少女のようで、僕にはとても止められない状態になってしまいました。
 それから延々と1時間以上説明会は続き、僕という聞き手をえて、思う存分説明の出来たアルメリアさんは満足したのか、スキップでもしそうな感じでまた調査に出て行きました。残された僕はすっかり気力を搾り取られてしまって、しばらく動く事が出来ませんでした。

[主よ。あの女もああ見えて要注意人物のようじゃな。]

 『ヴァルファーレ』にも言われてしまいましたが、今度からは充分注意しましょう。

「そうですね。まさかアルメリアさんにあんな一面があるとは思いませんでした。どうして学者や研究者は説明好きなのでしょうか。」

 まあ、いつもでも座り込んで居られませんから、自分にベホイミをかけてリフレッシュして、もう一度「アガベ・アスール・テキラーナ」を探しに出かけましょう。
 午前中に作った地図上では、合計4本の「アガベ・アスール・テキラーナ」の場所が記録されている訳ですが、西方向の南側3ブロックしか調べていないので分布の傾向が解りません。もう少し調査を続けないとダメですね。
 次は先に調査した3ブロックの北側を調べましょう。
 基準ポイントの「アガベ・アスール・テキラーナ」から西方向の北側3ブロックを調査する事にして、まずは基準ポイントに移動です。

「『ヴァルファーレ』、もう一度行ってきます。後をお願いします。」

 基準ポイントまでの道は、途中の木に印を付けてあるので簡単に進む事が出来ます。
 基準ポイントからは地図を確認しながら、西方向北側のブロックの調査を行います。この3ブロックの調査で、さらに5本の「アガベ・アスール・テキラーナ」を見つける事が出来ました。どれも先に見つけた「アガベ・アスール・テキラーナ」と同じ位の大きさなので、どうやら同じ時期にこの土地に根付いたように思われます。偶然でしょうか?

 「アガベ・アスール・テキラーナ」の調査は一次中断して、移植する場所を探す事にして、一旦ベースキャンプに戻ります。

[早かったの。何かあったのかえ?]

「いいえ、問題はありません。今のところ「アガベ・アスール・テキラーナ」を8本見つける事が出来たので、この辺で移植する場所を探しておこうと思って戻ってきました。歩いて探しても時間が掛かるだけなので、済みませんが空からの調査に付き合って下さい。」

 そうお願いして、背中に昇り座席に座ります。
 『ヴァルファーレ』に指示をして100メール位の低高度をゆっくりと飛んで貰います。しばらくして南東側500メールの所に小高い丘を見つけました。長さ200メール、幅20メール位の丘で、丁度良い感じです。

「『ヴァルファーレ』。この丘の周辺に動物や幻獣は住んでいそうですか?」

[いいや。住んでいる気配はないようじゃ。いるとしてもたまに通る位じゃろう。]

「解りました。ついでですから「ケイアップル」の調査をしてみましょう。西方向に飛んで下さい。」

 この丘を移植場所に決めて、地図にも位置を書き込んだので、後でアルメリアさんにも見て貰って、自生している木などを移動させても良いか判断して貰いましょう。
 せっかくですから、このまま西に飛んで、空から「ケイアップル」の木を探す事にしました。背の低い「アガベ・アスール・テキラーナ」と違って、それなりの高さがある木ですから、空からでも見つける事が出来るかもしれません。

 教えて貰った「ケイアップル」の位置を地図で確認しながら飛んでいくと、それらしい木を見つける事が出来ました。木の高さは、廻りの木とあまり変わりませんが、葉の感じが全然違うので、この木だけ浮いた感じがします。これなら見つけやすいでしょう。
 「アガベ・アスール・テキラーナ」の調査方法と同じように、地図上に線を引いて区画割りします。今度は『ヴァルファーレ』で空から探しているので、区画の大きさも1辺200メールにしました。低空飛行のままそれぞれの区画の上を飛んで、特徴ある木を探します。
 夕食の準備を始める時間までに2本の「ケイアップル」を見つけられましたが、合計3本では多いとは言えませんね。地図に木の位置を記録して、ベースキャンプに戻りました。

 夕食の支度をしているとアルメリアさんが戻ってきました。大分頑張って調査をしているようですね。でも、同じ時間外にいるのに、アルメリアさんはちっとも日焼けしていません。素晴らしく白い肌のままです。毎朝、目の保養をしているので解りますが、服に隠れている部分の色と、顔や腕などの剥き出しの部分の色が同じなのですから、全然焼けていないのが解ります。僕なんか前回の調査の時に焼けた色が残ったまま今回ですから、真っ黒になってしまいました。なぜか日焼けで皮がむける事がないので、もとの肌の色に戻れません。なんか不公平です。

 そんな事を考えながら夕食を終え、見つけた「アガベ・アスール・テキラーナ」と「ケイアップル」の事を話し、移植する丘の事も話して明日一緒に見にいって貰えるようにお願いしました。
 アルメリアさんの今日の調査報告を聞いて、砂浜に寝転んで、星を見ながら2人で色々な事を話しましたよ。アルメリアさんは、その内ゲルマニアなどの国にも来てみたいそうで、その時は僕が案内をしようかなと思いました。ハルケギニアのエルフアレルギーを何とかしないと難しいのですが、何か方法があると思います。いつかきっとみんなが仲良く住めるような世界にしたいと思いますから。

 そして、3日目も終わり、4日目の始まりです。
 ぐっすり眠って、元気いっぱいで目が覚めました。外は良い天気だし、横を見るとアルメリアさんが凄い格好で寝ているし、いつも通りです。眼福眼福。

 小屋の外に出て、顔を洗ってからすこしからだを動かします。しばらく歩くばかりでろくな訓練をしていませんから、身体が鈍ってしまいそうですね。
 昨日、アルメリアさんと話して、今日は午前中に昨日の続きの調査などを行い、午後から丘に行って植生の確認などを行う事にしました。僕もゴムの樹液の収集がありますから丁度良いと思います。

 朝食の準備をして、毎朝のお約束も終わり、先にアルメリアさんが出てから後片付けをして僕も出発します。
 昨日と同じようにゴムの樹液を収集して、幹に新しい傷を付けて容器をセットし、樹液の溜まった瓶をレビテーションで浮かべてベースキャンプに戻ります。これで10リーブル入る瓶2本に、大体8分目位づつ溜まりました。

 ベースキャンプに戻って昼食の準備をし、アルメリアさんが帰ってから昼食を食べて一休み。午後は2人で丘の調査です。
 『ヴァルファーレ』に2人で乗って、昨日の丘まで移動します。まず上空から丘の状態を確認し、生えている木についてアルメリアさんに説明して貰いました。特に珍しい木はないそうです。
 次に丘の西端に着陸してもらい、2人で『ヴァルファーレ』の背中から降りて歩いて確認します。
 下生えの草などにも珍しいものはないそうで、時々地面にここを通った獣や幻獣の足跡が残っている他は、別段なんと言う事もない普通の丘だという事が解りました。
 そこでアルメリアさんに、今生えている木を丘の下の方に植え替えて獣や幻獣が入ってこないように柵の代わりにする事と、空いたところを整地して「アガベ・アスール・テキラーナ」と「ケイアップル」を移植する事を話ました。丘を真ん中辺りで区切って、「アガベ・アスール・テキラーナ」の畑と「ケイアップル」の果樹園にするという案を説明して、メリットとデメリットを話し合いましたが、問題となるようなデメリットもないようなので、概ね賛成して貰えました。
 これは、次に来た時に実施する工事として、それまでに手順などを考えておく事にしました。この分では、ちょくちょくこちらに来る事になりそうですね。

 その後は、せっかく来たのだからと、丘の周辺を調査する事にしました。
 夕方まで2人で調査をしましたが、アルメリアさんには大して面白い成果はなかったようです。僕の方は「アガベ・アスール・テキラーナ」を4本と「ケイアップル」を3本見つける事が出来たのでラッキーです。

 ベースキャンプに戻って夕食を食べてから、いつものティータイムですが、ここで、今回こちらに来た目的の一つである、火石について聞いてみました。
 まず、僕の画いた活性炭を作るのに必要な炉の設計図を見せて、使用目的などを説明します。

「………。と言う訳で、この炉が必要になるのですが、炉の温度を900℃まで上げて、維持する方法が見つかりません。火メイジの魔法では無理だと思うので、他の方法をずっと考えていたのですが、以前エルフの方達が火石というものを持っていると聞いた事があったのを思い出して、もしかしたら、その火石があれば何とかなるのではと思いついたんです。」

「なるほど。確かに私たちの所には火石がある。上手く制御すればアルバートが必要としている条件を満たす事も出来るかもしれない。しかし、それだけの火石を作るのは大変だぞ。火の精霊に頼んで、どれくらいで出来るか解らないな。」

「それでは、火石は火の精霊が作ってくれるのですね。」

「火の精霊が作るというか、火の精霊の力を集めて凝縮したものが火石なのだよ。沢山の精霊が集まってくれれば、それだけ大きな火石が出来る。火の上級精霊を呼べれば確実に出来るかもしれないが、それこそ呼ぶ事自体が難しい。だから私たちの所でも、そんなに沢山の火石がある訳ではないんだよ。」

 なるほど。火の精霊の力を借りないと作れない訳ですね。これは何とかして火の精霊とお近づきにならないといけないようです。

 あれ?そういえば特に何をするって訳でもないので全然気にしなくなっていたけど、3才になった頃から廻りで見えていた変なものって、もしかして精霊?
 他の人には見えないようだったし、なんか透けて見えるような不思議なもので、いつも周りにいたからすっかり慣れて、空気みたいになっていたけど、いまも廻りに沢山見えます。よく見ると、いくつかの色に分かれているようです。色が属性を表しているとすれば赤く見えるのが火の精霊、青いのは水の精霊かな?それよりずっと薄い水色に見えるのは風の精霊かもしれません。地面近くには茶色い土の精霊がいるようです。なんだ、精霊って身の回りに沢山居るんじゃない。しかも小さいけれど人の形をしているように見えます。
 試しにアルメリアさんにお願いしてみましょう。

「アルメリアさん達エルフは精霊魔法を使えますよね。」

「ああ。私も使えるよ。」

「それでは、済みませんが精霊魔法で火を熾して貰えますか?」

「解った。見ていなさい。」

 アルメリアさんは何か小さくつぶやきながら、右手を前に差し出します。
 僕が見ていると、赤い精霊がアルメリアさんの手の上に集まってきて、だんだん赤から黄色と変わり、その内手の平の上で火が踊っていました。どうやら間違えないようですね。
 
「有り難うございました。やっと解りましたよ。小さい頃から僕の周りで何時も見えていた小さな人たちは精霊だったんですね!!」 
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