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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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マザーズ・ロザリオ編
  第257話 心の強さと素直な気持ちと……

 
前書き
~一言~

いやぁ…… やっぱりここは難しいです……。テーマがとても重たいので…… それに沢山登場人物を出しちゃったせいもありますよね……。何度消して書き直してって続けたかわかりませんっっ!! だ、だから遅れちゃいました…… ごめんなさいっっ。言い訳しちゃって!
と言う訳? で暖かい目で見て下さったら幸いです……。


少々短くなっちゃいましたが、投稿します。 うー……vs結城マザー編までいけませんでしたが…… 涙

でも ガンバリマス! 早めに投稿できる様に!

最後にこの小説を読んでくださってありがとうございます。これからも、ガンバリマス!

                                 じーくw 

 

「ご、ごめんねー、リュウキ。その…… ボク、ちょっとやり過ぎちゃって……」
「いや。大丈夫だ。……と言うより、そこまで喜んでくれてオレは嬉しかった。頑張った甲斐がある。報われたよ」
「ぁぅ……。と、とーぜんじゃん! だって、リューキはボク達の命の恩人なんだよっ!? ね、ねー 姉ちゃんっ!」
「……うん、そう。私も同じ意見ですよ。リュウキさん」


 ついさっきまでユウキは 号泣しながらリュウキの背に抱き着いたままだった。それで リュウキの背は少々硬かった様で、一度ユウキは離れてリュウキを立たせて正面に向けた。

 そして、また涙を溜めて 改めてもう一度抱き着いた。
 
 苦笑いをしつつも今度はリュウキはしっかり抱き留める事が出来た。
 泣きながら抱き着くユウキの姿は本当に微笑ましいと思えるのだが、流石に顔に抱き着いてキスする勢いでくっつくのは許容出来ない様子。

『わ、わわっ! ゆ、ゆーきさんっっ!? だ、ダメだよっっ! さすがにそれはダメーーっっ!』
『……ユウ、落ち着いて』

 レイナとランがどうにか暴走しかかってるユウキを止める事に成功した。
 正直な気持ち、ラン自身もユウキと同じようにしたかった……と、少々ランの視線が怖かったのだが、ユウキはお構いなしだった。それだけの事をしてくれたのだから、と今回ばかりは……とレイナは思ったのだけど、流石にキスはNGだ。リュウキはただ微笑んでいただけだったから、レイナは、『……今キスされそーだったんだよ? うぅ……』 とリュウキに言いたかったのだが何とか飲み込んだ。

 因みに、感動的なシーンなのに、そっちの方向に考えちゃう自分。ちょっと悲しいと思ったりもしている。ユウキを抱きしめてたリュウキは不純な気持ちなんかきっと考えていない。純粋なのに……と。勿論 レイナもランも同じ気持ちなのである。


 でも、やっぱり我慢が出来なくなってランもユウキ程……まではいかなくとも、リュウキの傍で ぎゅっ としがみ付きながら 涙を流しながら礼を言い続けたのだった。



 

 そして一息つく。ユウキもランも落ち着けた所で2人は改めてリュウキに深く、頭を下げた。

「本当に……、ありがとうございます。リュウキさん」
「ありがとう……リュウキ。ボク、ボク……凄く、嬉しいよ……。また、また あのお家で……」

 何度も何度も涙を拭うユウキ。ランも微笑みながら 涙を流していた。
 そんな2人に笑顔で迎えるのはリュウキだ。ただ少し先程とは違うのは『良いよ』と言う訳ではない。

「これからが大変だぞ? 2人とも」

 笑顔の質を変えた。真剣さもその中には滲み出ていた。
 ここで、終わりだという訳ではない。まだまだ続く。ここで満足してもらうだけでは困る。……必ず未来(さき)はあるから、と眼で訴えている。そう伝わった。


「病気に打ち勝って、その後の事。本当に沢山あるからな。色々な仕事が2人に……。ああ、そうだ。スリーピングナイツの皆に回すからそのつもりで。空いた時間ででも、ギルドメンバーで協力して熟す事が出来る様にと考えている。 世間一般の新入社員の業務が可愛く見えるくらいのハードなものになるかもしれないから、そのつもりで……。な?」


 にっ、と片目を閉じてウインクするリュウキ。
 普通なら、ハードな業務内容を訊いたら『うへぇ……』な感じの表現が多いと言える。学校の授業だって嫌いだという人がきっと多い。頭を使うより身体を動かす。自分の好きな事をする方が良い、と思う人がきっと大多数だ。

 でも生憎。此処にいるメンバーは所謂 少数派と言うものだ。学校の授業は大好きだし、働いているのはリュウキだけだが リュウキは仕事は大好きだ。

 ランもユウキも 笑顔を見せていた。2人ともが同じ気持ちだと言う事がよく判った。

「望む所、だよねっ? 姉ちゃん。うっひゃー! すっごくワクワクしてきたよ!」
「ええ。私たちに出来る事であれば喜んで。……いえ、例え出来なくても、出来る様になるまで頑張ります!」

 その返事に満足いったように リュウキは頷いた。
 アスナもレイナも同じだ。

「ふふ。私達も何か手伝えることがあったら、遠慮なく言ってね?」
「うんっ。私も頑張るから! 一緒に頑張るっ! だって、私達もスリーピングナイツのメンバー、でしょ? ギルドメンバーだから、連帯責任ー、だよっ!」
「あ、ありがとうございます。レイナさん。アスナさん」
「ありがとーーっ 2人ともっ! うん。もーみんなみんな ボク達の仲間。仲間だから! 友達で、仲間で、……ふふ、親友って言うのかな? うん。すっごく嬉しいっ。嬉しいからっ!」

 現実の世界ででも、こうやって仲間が……友達が、親友が出来た事に喜びを噛みしめる。
 今日と言う日を、神様に感謝した。ユウキやランは母が言っていた言葉を思い返していた。



『耐える事の出来ない苦しみはイエス様はお与えにはならない。きっと、乗り越えた先は光で満ちている』



 本当にその通りだった。

 その後2人は母の言葉に、そして何よりも、このかけがえの無い大恩のある友達に 感謝を伝えるのだった。 






















「……本当に、皆、皆……強い、ね」

 皆、皆笑顔で本当に良かったと思うアスナ。

 ユウキ達と一緒に授業を受けて、学校内を案内して、街中も歩いて…… そして2人の家に着いた。2人は 辛かった過去の事を笑顔で……顔は見えないが笑顔で話をしていたのは判る。自分達に出来る事はあまりないかもしれないが、それでも少しでも支えになろうとした。 最後には、とても頼れる妹の旦那様……リュウキに救ってもらった形にはなった。

 本当に誇らしいと思ったし、そんな彼と家族になれて心から良かったと思っている。

 そんな 心の強さを持っているリュウキ。
 難病にも負けなかった。いつも笑顔で頑張ってきていたとても強いユウキとラン。
 そして ずっと心に想っていても、口に出す事が出来ず 二の脚を踏んでいた姉の私に代わって心の内の全てを母にぶつけた。そんな自慢の妹。……とても強い妹の玲奈。

 そんな心から強い皆がいたからこそ……、アスナは不意に口にしてしまったんだと思う。


 アスナの言葉に全員が振り返った。


 一度口にしてしまった言葉はもう取り消せない。皆笑顔で終わる筈……と思っていたのに、アスナは後悔をしてしまった。今、自分が思っている事に。……皆の気持ちに水を差してしまった、と思ってしまったから。だけど……止まる事が出来なかった。


 皆の心の強さに、ここまで触れてしまったから。


「凄いと思うよ。リュウキ君もそうだし、ユウキやラン。……レイだってそう。私は……さ。最近よく思うんだ。……どうやったら 皆の様に、そんなに強くなれるのかな、って」

 アスナの言葉。それは誰もが思っても無かった言葉だった。
 だから レイナは思わずアスナに駆け寄る。何処か様子がおかしい、と傍で感じられたから。


 でも、アスナは笑顔で首を振った。その笑顔は 何処か儚く、陰りのあるものだった。


「レイは、違うよー って言うかもしれないけどね。私はずっと思ってたんだよ? レイはすっごく強い。私よりもずっとずっと強い」
「そんな、そんな事ないよ! だって私はお姉ちゃんがいたから……。だから……」
「うん。ありがとう……。そう言ってくれて本当にうれしいよ。でもね、どうしても……やっぱり思っちゃうからさ。私の心の問題なのかもしれないけど。……やっぱり、ごめんね。……我慢できなかった。訊いてみたい。どうやったら、そんなに強くなれるのかな、って……」

 アスナは、配慮のない言葉かもしれない……と思っていたが、もう止まる事が出来なかった。

 レイナが自分に対して抱いている気持ちは痛い程判る。
 何故なら、ずっとレイナの模範であろうとしてきたから。時には喧嘩もした事だってある。でも、それを乗り越えて……また より姉妹仲良くなることが出来たから。レイナもとても強くなったと自分の事の様に嬉しかった。……だからこそ、置いて行かれた様な気持ちにもなってしまった。そんな自分が情けないと少しだけ…… 心の何処かでそう考えてしまっていたから。

 そして、すでに両親を亡くしているユウキやラン。過去に苦しくて、悲しい経験をしてきたリュウキ。


 普段のアスナならきっと口にする事はなかったと思う。妹の前では特に……。いや きっとそうだ。


 アスナの言葉に、ユウキとランは戸惑いを隠す事が出来なかった。

 でも、アスナの心からの言葉だという事は判る。……そして、苦しんでいる事だって判る。だから、応えなければいけないと思えた。

「アスナさん。……アスナさんの望んでいる解答を出来るとは正直思えないのですが、それでも……言います。それが私は大切だと思うから」

 ランは 目を閉じて……言葉を繋げた。

「強さと言う言葉には、沢山の意味があると思います。……でも、どれをとっても、どう考えてみても。私は アスナさんが言う様な……。自分が強いとは思えないんです。……思ったことも、ありません」

 それは否定の言葉だった。嘘偽りない言葉なのだと、ランの姿を見て何処か納得できてしまった。それに続いてユウキも口にする。

「う、うん。ボクだってそうだよっ! その…… リュウキが凄すぎて、ちょっと感覚がアレになっちゃってるだけかも、って思っちゃうかもだけど……。うん。どう考えてもさ。ボクだって、強くないよ」

 リュウキが凄すぎて……と言った場面で、リュウキが口を挟みかけたが、ここはぐっと堪えた。アスナの答えを待つために。

 アスナは、そんな2人に少しだけ声の大きさを上げていった。

「そんな事ないっ! だって私はさ。人の顔色……ずっと窺ってきた。それに妹の、レイナの前では 私は強くあろう って、ずっと自分に言い聞かせて、……そうやってただ自分を誤魔化して、ただ自己暗示をさせてきただけ。……本当の私はただ怯えたり、尻込みだってしてる。でも、2人は。……レイも皆もそんなことしてないって思ってる。……すっごく自然に見えるから」

 アスナは、レイナの方も見る。目でごめんなさい……と言う様に。


「……だから、私は自分の母さんの声が聞こえない。向かい合って話しても、心が訊こえない。わたしの言葉も伝わらない。……レイだけ、なんだ。母さんの言葉をしっかり訊いて…… 言ってくれたのは。私は……心の強さが欲しい。どんな形ででも…… ちゃんと、伝わって、伝えて……いき、たいから」


 いつもは決して言わない言葉を噛みしめるレイナ。今の心境を……姉の心の内を今初めて言葉で訊いて、レイナはやはり動揺はしてしまう。
 だからこそ、直ぐに何か言おうとは出来なかった。……言葉が出てこなかったんだ。

 そんなレイナの肩をそっと抱き寄せるのはリュウキだった。

 ただのそれだけで、何かわかった感じがした。……隣にいてくれる人のおかげで自分は強くなれるんだとレイナは改めて思えた。色々な事で頭の中がいっぱいだったレイナ。リュウキのおかげで少しだけ、落ち着いて考える事が出来た。だからこそ、姉のアスナの懊悩も朧げに見えてきたのだ。

 
―――それはあの日の事。


 母親に 姉の大切な人の事を言われた『あんな施設の子は含まれない』と言う言葉。完全に和人と言う人格まで否定をされた気持ちだった。レイナ自身がそう思ってしまったのだから、恋人である姉だったら、もっと悲しくて、苦しくて、そして何より辛かった筈なんだ。……そんな中ででも、姉はぎゅっと口を噤んでいた。ただ必死に耐えていた。

 でも レイナは……我慢できなかった。あの日、母に生まれて初めて反抗した。怒りではあるが、感情を思い切りぶつけた。


 自分がして―――姉は出来なかった(・・・・・・)んだ。


 それがきっと切欠の1つ。……分岐路だったんだとレイナは思えた。
その結果が、『やっぱり妹の方が自分よりも強い……』と、姉は心の何処かで強く思う事になったのだと。あの時は姉に配慮なんて出来なかった。決壊したダムの水の様に止める事が出来なかったから。

 でもレイナは同時に想う。

 あの時はただ、自分は暴走しただけ。そんな強いとは思えた事はないし、考えた事もない。……ただ、我慢が出来なかっただけで。それが強さなんて思ったりしてない。心を強く持って 耐え忍んだ姉こそが強く感じるし、今でも感じれた。あの日、支えてもらわなければ、自分は潰れていたかもしれないから。 


 それらが頭に浮かんできて ただただ否定の言葉を言いたかった。姉の方が強いと言いたかった。


「……こういう時、さ。言ってほしいのは 素直な気持ち……だと思う」
「え……?」


 リュウキが悩んでいるレイナに囁く様にそう言った。
 レイナはリュウキの方を見るが、リュウキはそのままアスナに向かって伝えた。自分が思ってる事を。

「少し恥ずかしいから、皆、ここだけの話にしてくれよ」

 そう伝えた後に少しだけ笑みを浮かべて言った。

「オレはさ。キリトに言われた事がある。ある世界でキリトに。……それはアスナと似た様な事だった。『強いな』って。 だから、以前言ったんだ。……オレは強くなんかないって。ただ、傍にいてくれるだけで力になるだけだって。―――自分も、お前と変わらないんだって」

 ははは、と苦笑いをしながら続けた。

「ランも言う様に、オレの答えもアスナが求めてる答えとは 違うかもしれない。強いと自分では思ってない。皆と何も変わらないって言うのがオレの答え。後、オレがただ――思うのは。オレも皆と同じくらい…… いや、負けないくらい思ってる」

 今度は、今度こそ本気で恥ずかしそうにしていた。ちょっと顔を背けてしまったから。


「……ただ、皆に出会えて、良かったって。これは誰にも負けない」


 混じりっ気の無い素直な気持ちである事。それが此処にいる誰もが感じた事だろう。
 そもそもリュウキは自分を偽ったりしてない。良い様に見せよう、等と考えている様には到底見えない。だからこそ、心の奥にまで届くんだ。

「ふ、ふふ……」

 アスナはリュウキの答えを訊いて笑顔が戻るアスナ。
 それを見たリュウキは また続けた。

「それが、オレの素直な気持ち。……ただ、それだけで良いと思う。心からの気持ちを口にするだけで、伝わるとオレは思う。それがきっと強さにも変わると思う。……だから、オレは皆と仲良くなれたんだ。ずっと、ずっと…… 何年も何年も自分の殻に閉じこもってたオレも」




――そっか……。私も 素直な気持ちをお姉ちゃんに伝えたらよかったんだ……。謝ったり、否定したりするんじゃなくて。ただ……心からの気持ちを伝えるだけで……。



 レイナは隣にいる愛しい人に また――教えてもらえた事に感謝した。



「えへへ……。リュウキが心からの気持ちを伝えてくれたんだからさ。ボクも言うよ」

 リュウキの身の上話。ユウキもランも、そこまで詳しくは訊いていないが 少しだけなら訊いた。だから、よく伝わったんだ。リュウキが言う様に心からの言葉を、気持ちを……。

「ボクもね。昔はいっつも自分じゃない自分を演じてた気がするんだ。だってさ。パパもままも、ボクと姉ちゃんを産んだこと、心の何処かでずっと謝ってたの、判ったから。……そんなパパとママのために、ボクはいつも元気でいなきゃ、って。病気の事なんか全然へっちゃらでいなきゃ、って。……でも、姉ちゃんにはバレちゃってたけどねー。だから パパやママがいない所で、姉ちゃんに何度も何度も泣きついちゃったから」

 ユウキの告白を訊いて、ランも静かに頷く。
 私達は双子の姉妹なんだから……、とランは思う。楽しい事も辛い事も、喜びも、怒りも、慈しみも。全部一緒に分け合ってきたから、と。

 そして ランも口を開いた。

「正直、何が一番正しいのかは、私には判りませんでした。でも、この笑顔だけは守りたい。ただそれだけは強く思ってましたよ。……笑顔でいられる時間が、何よりも大切だって思ったからです。……そのために演技が必要だと感じたから。私もユウと同じ様にしました。……後、私達には時間があまり無かったから、遠慮をしないでいけたのだと思います。ギルドの皆もユウと私は結構対極だって言ってますけど、実は違ったりしてるんです。ユウの後押し。……私もしてたから」

 ふふ、と笑みを見せるラン。ユウキも 『そー言えばそーだった!』と手をぽんっ、と叩いて言っていた。

「だよねっ! それに気持ちの端っこをつっつきあったりする時間も勿体なく感じてて。……だからこそ、最初は演技でも良いから どかーんっとぶつかっていく様になったんだ。もしも、それで相手に嫌われちゃっても、それはそれで良いから。だって、それだけでもその人の気持ちの傍にいけたことには変わりないから」

 そう言って、ランとユウキは 其々アスナの手を握る。

「私は、アスナさんが弱いとはどうしても思えません。アスナさんが、レイナさんが。そしてリュウキさんが、……皆がぶつかってきてくれたから、私は皆さんと会う事が出来たんです」
「うん。だからさ。アスナはアスナの気持ちをそのままぶつけるだけで良いって思う。きっと、お母さんに伝わると思う。だって、ボク達のこと、全部預けられるって思ったのは、アスナ達が初めてなんdなからさ。……それも、アスナたちがぶつかってきてくれたから、なんだよ」

 アスナの目尻には涙が浮かんでいた。
 この世界ででは、涙を隠す事は出来ない。感情の機微まで読み取り、アバターとして形成された顔はその情報を表示する。……いや、機械的な言葉を言うのは止めよう。この世界ででは 気持ちははっきりと映す事が出来る。素のままの気持ちをきっとぶつける事が出来る。

「ありがとう……みんな」

 アスナは そっと目元を拭った。

 眼から零れ出た涙の粒子が宙に漂い……やがてレイナの前で瞬きながら消えた。

「お姉ちゃん。……私も、言うね。 自分の素直な気持ち。……お姉ちゃんにぶつけてみる」

 ニコリ……と笑うレイナの瞳にも同じ滴が存在した。
 流れ落ちる前にレイナは続ける。あの日――言えなかった言葉を。

 あの日は ただただ泣いてしまっていただけでだったから。


 だから、ここから始めよう。



「私は、お姉ちゃんの妹で良かった。……お姉ちゃんがいてくれたから、私は自分の心をぶつける事ができた。……お姉ちゃんが見守ってくれたから、ここまで来られた。……だから」


 レイナはそっとアスナの身体を抱きしめた。
 抱きしめたまま……、心からの素直な気持ちを姉へとぶつけた。








―――私のお姉ちゃんでいてくれて……、ありがとう。




 
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