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目目連

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第四章

「そんなのは」
「そうかしら」
「世の中そういうのも否定出来ないだろ」
 ますみはつづりと同意見だった。
「だからこうした場所もな」
「いるかもっていうの?」
「ああ、というかこうした場所こそな」
 長い間誰も住んでいない様な廃墟こそというのだ。
「いるだろ」
「幽霊とか妖怪とかが」
「こんなところだと誰かが自殺してたり殺されてたりとかな」
 密かに、というのだ。
「しててもおかしくないだろ」
「死体とかないわよね」
 つづりは本気で心配していた、照らすのもかなり気を付けている感じになっている。
「床とかに」
「あるかもな」
 ますみはまたつづりに同意した。
「これは」
「そうよね、こうした場所だと」
「こんな場所だと」
「本当にね」
「だからそういうのはないわ。変態はいるかも知れないけれど」
 まだ否定するちえりだった。
「幽霊とか妖怪はないわよ」
「まだ言うのかよ」
「こんな場所で」
「そう、いないわよ」
 二人にこんなことを言いつつ家の中を見て回る、風呂場もトイレももうどうしようもなく汚れ崩れている。
 そしてだった、居間もだった。
 畳からは草が生えていて襖は散々に破れて変色している感じだ、ますみはその居間を見てこんなことを言った。
「昔は立派な部屋だったんだろうな」
「そうよね、昔はね」
「それが今じゃな」
「こうよね」
 つづりも暗い顔で言った。
「酷いわね」
「こりゃ絶対に誰も住めないな」
「狐や狸でもないとね」
「ああ、絶対にな」
 もうそうした場所になっているというのだ、そしてますみは障子のところを照らしたがここでだった。
 障子に何かを見た、それで他の二人に言った。
「!?何か見えたぞ」
「えっ、何が?」
「何が見たの?」
「また照らすな」
 障子のところをだ、それでまた照らすとだ。
 障子のところに目があった、そのどうしようもなく破れて廃墟になっている家に相応しいものになっている障子のところにだ。
 人の目があった、それも一つや二つではなく。
 障子の一つ一つに二つずつ目があって三人を見ていた、その目達を見てだ。
 三人共血相を変えて逃げ出した、そうして。
 家から飛び出てだ、脱兎の如く家から離れて走り疲れたところで。
 ようやく立ち止まり三人で話した。
「な、何あれ!?」
「目が一杯あったよな」
「あれ人の目よね」
「妖怪?ひょっとして」
「絶対にそうだろ」
「それ以外考えられないわ」
 三人で言い合う、そしてだった。
 ますみはすぐにだ、ちえりとつづりに言った。
「今日はもう帰ろうな」
「そうね、とんでもないもの見たし」
「そうしましょう」
 三人共完全に意気消沈した、それでだった。
 三人はそれぞれの家の帰った、そして次の日だった。
 つづりは二人と一緒に食堂で昼食を食べながら昨日自分達が見たものを話した。
「あれ妖怪みたいよ」
「やっぱりな」
 ますみはコロッケ定食を食べつつきつねうどんを食べているつづりの言葉に頷いた。 
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