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蒼穹のカンヘル

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九枚目

「ごちそうさまでした」

「ご、ごちそうさまでした?」

ふぅ、旨かった。

あとメシ食ってるヴァーリも可愛かったです。

「さて、ヴァーリお前これからどうしたい?」

とアザゼルが切り出した。

「?」

どうしたいって何さ?

ヴァーリはアザゼルと父さんの話なんて聞いてないから『どうするか』の選択肢は知らないはずだぞ。

「その、なんだ、お前はこれから何処に住みたい?」

「?」

またもやヴァーリはコテンと首をかしげる。

たぶんヴァーリはグリゴリでアザゼルが育てるんだろう。

「えっと…ヴァーリ誰はと一緒に居たい?」

とアザゼルが聞くがやはりヴァーリにはわからないようで。

「誰と?」

と、言った。そこで母さんが口を開いた。

「ヴァーリちゃんはアザゼルさんと一緒に居たい?」

俺ならやだな…アザゼルは多少まともだけど周りがね…

「いや!篝といる!」

アザゼルざまぁ、てかヴァーリって俺になついてんの?

「よし、そういうこった。
諦めろバラキエル」

「む…篝はそれでいいのか?」

家に美幼女が増えるなら大歓迎だ!

「いいよ」

これ以外の答えがあるだろうか?

「ヴァーリもずっと篝といたいよな?」

「うん!」

うっしゃぁ!と、俺が心の中でガッツポーズをしているとアザゼルは帰り仕度を始めた。

「じゃぁ話は決まった。そろそろ帰るぜ。
朱璃さん、面倒かけてすいません」

「娘が増えるなんてうれしいですわ」

「頼むぞバラキエル」

「わかっている……」

と大人組で挨拶した後アザゼルは俺達に向けて言った。

「朱乃、ヴァーリの姉になってやってくれ」

と、姉さんに言った。

「はい!おじさま!」

「ヴァーリ、朱乃と篝に頼れ。
お前はもう一人じゃないんだ」

次にヴァーリにそう言った

「うん!」

最後に俺に。

「篝、ヴァーリを本当に救えるのは、同じく龍を宿すお前だけだろう。
まだ幼いお前にこんな事を頼むのは間違いだと思うが…ヴァーリを頼む」

と、言った。

「言われなくたってそのつもりさ」

アルビオンにも頼まれたんだ、何が有ろうとも守るさ。

「ククッ、いい目だ」

ああ、そうかい。可愛い幼女を守るのは男の役目だろう。

「じゃぁな!」

アザゼルは玄関から出て直ぐに転移した。

別に出る必要無くね?と思うがマナーなのだろうか?

「今夜はヴァーリちゃんの歓迎会にしましょう!」

と母さんが言った。

「歓迎会?」

とヴァーリが聞き返した。

「ええ、ヴァーリちゃんが新しくこの家に住む家族になったんですもの」

「家族?」

と不思議そうにしているので。

「そうだぜヴァーリ、同じ家に住んで同じメシを食うんだ。家族だろ」

俺はそう思っている

「かぞ…く…」

「ああ、例え血の繋がりがなくても家族は家族さ」

「うう…ぐすっ…」

はいぃ!?

「や、え、ちょ、なん、え…なんかまずった!?」

ヤベェ!地雷踏んだか!?

って!何で俺に抱き付くの!?そこは普通姉さんか母さんだろ!?

「あらあら、うふふ…」

「………」ムスー

そして何故そうなる女性陣!?

母さんは笑ってるし姉さんはむくれてるし…

と、取り敢えず頭を撫でよう。

「うう…」

泣き止んだかな?泣き止んだよね?

「えっと…ヴァーリ?」

「はね…」

「え?」

「はね…出して…」

はね…羽?俺の翼気に入ったのかな?

「気に入ったの?」

「うん…」

邪魔にならないかな…

「母さん、いい?」

「ん~……かまいませんよ」

すぅっ、と静かに翼を展開する。

勿論龍の両翼だ。

俺は展開した両翼でヴァーリを包み込む。

「えへへ~」

嬉しそうで何よりだ…

「篝、少しいいか?」

「何?父さん?」

「後ろを向いてくれないか?」

後ろ?まぁ、いいけど…

「ヴァーリ、動くよ」

「いいよ」

ずりずり、とヴァーリを膝にのせたまま後ろを向く。

「はい、後ろ向いたよ」

何でいきなり?

「あ!」

姉さん?

「篝の翼…増えてる…」

増えてる?それってあり得ないんじゃ…

「あらあら、本当ですわ…」

「うむ…」

はぁ?

「増えてるってどんな風に?」

と、聞いてみたら姉さんが。

「白い翼と黒い翼が二枚ずつになってる」

龍の翼と堕天使の翼で四枚?

でも特に感覚は無いんだよな…

「よく分からないんだけど…ちょっと触ってみて」

と姉さんに言った。

「わかりましたわ」

と言って俺の背中に手を伸ばしたと思ったら…

「ひゃう!?」

な、なんかくすぐったいような気持ちいいような感覚がした。

「あ~だいたい分かった…でも小さいまんまみたいだね…」

今なら分かる、肩甲骨の辺りから龍の翼が、その下に堕天使の翼が有るのが。

試しに堕天使の翼をぱたぱたしてみた。

「流石に飛べないよな…」

「篝、飛ぶ練習したいか?」

え?出来るの?ならやりたいんだけど。

「飛べるのなら」

「分かった、では明日から始めよう」

やった!

「篝!篝!部屋に行きませんか?
行きましょう!翼をモフモフさせてくださいな」

おおぅ…姉さんの目が輝いてるよ…

「わ、分かったから…ヴァーリ。
取り敢えず下りて、部屋でまたやったげるから」

「うん!」

俺と姉さんとヴァーリは俺の部屋に向かった。

で、だ…

「えへへ~」

「うにぃ…」

「…………」モフモフモフモフ…

今の状況?ヴァーリを抱えた俺を姉さんがモフってるだけだ。

あ…んくっ、そこ…気持ちいい…ああ…

「うふふふふ…」

「うにぃ…」

羽って撫でられると気持ちいいんだよね…

ツツツーと姉さんが翼を指でなぞる。

「ひゃう!?」

な、なんか!今ゾクッてなった!

「ね、姉さんやめて…」

「あらあら、うふふ…」

ツー…

「ひゃん!?」

「可愛いっ!」

おい!姉さん!可愛いってなんだよ!あとその笑顔やめて!なんか怖いから!

「うふふふふ…」モフモフモフモフ…

「ね、姉さんそろそろやめてよ」

「そうですね…一緒にお昼寝してくれたらいいですよ」

昼寝か…まぁ、いいか…

「いいよ」

と言って俺はヴァーリを抱き抱えてベッドに寝転がった。

自分の翼を下に敷いて…

「ほら、来なよ姉さん、こうしたかったんでしょ?」

そう言うと姉さんはすごく嬉しそうな顔をしてベッドに乗った。

「篝~」

ああ、やっぱり姉さんも可愛いなぁ…

ヴァーリと姉さん、美幼女に囲まれて俺は幸せだぜ!

「「すぅ、すぅ…」」

しばらくすると姉さんもヴァーリも寝息をたて始めた…俺も…ねむ…ぃ…zzz







目が覚めたら四時頃だった、その後は少し遊んで夕食になった。

ヴァーリの歓迎会ということでかなり豪勢だった…

父さん…この肉って鹿だよね?

え?射って来た?は?猟銃使ったの?

ああ、光の槍ですかそうですか…

この穏やかで優しい光景が、何時までも何時までも続いて欲しいと、俺は心の底から願うのだった。
 
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