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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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キムチ料理でホットな一夜に・その2

「……とまぁ、大体白菜の下処理から1週間位で完成だな」

「……手間が掛かるのねぇ」

 作ってみたいと言っていた陸奥が笑顔をひきつらせている。大体保存食というのは冷蔵技術が未発達の頃からの防腐・長期保存の為の工夫が詰め込まれている為に手間が掛かるのは当然の事だ。

「それを手間と思うか、当然の仕事と思うかは個人の意見だろう?俺は提督という仕事も料理も、手間を惜しんで上手くやる事は出来ないと思っているだけさ」

 面倒だ、と思う事は多々あるし他の奴でも出来る仕事は丸投げしている。しかし、自分でしか出来ない仕事や必要不可欠な部分に関しては手抜きは一切しない。それが俺の流儀だ。

「料理は特にそうだぞ?下拵えにどれだけ手間をかけるかで、出来上がりの美味さは大きく変わる。……好きな男にアピールする料理は、出来るだけ美味い方がいいだろう?」

「……そうね、肝に命じておくわ」

 俺がニヤリと笑ってそう言うと、陸奥は神妙な顔をして頷いていた。その好意を向けられているであろう当人は、首を傾げていたが。さて、突き出しの小鉢も空になって来た頃合いだろうから2品目を作って行くとしますかね。



《牛肉とニラのゴマキムチ炒め!》※分量2人前

・牛ロース薄切り肉:180g

・ニラ:1/2束 

・シイタケ:3枚

・玉ねぎ:1/2個

・白菜キムチ:80g

・白すりごま:大さじ1

・酒:大さじ1

・醤油:小さじ1

・みりん:小さじ1

・砂糖:小さじ1

・ごま油:小さじ1

・サラダ油:小さじ1




 さて、お次は飯のおかずにも最適なキムチと肉の炒め物だ。そう聞くと豚キムチが真っ先に頭に浮かぶが、今回使うのは牛肉だ。まずは野菜の下拵え。ニラは4cm幅に刻み、玉ねぎは繊維に沿って5mm幅の薄切りに。シイタケは石附を落として5mm幅にスライスしておく。キムチは粗くみじん切りにして、軽く水気を絞っておく。この絞り汁は牛肉の下味に使うので、絞った物を小さじ2取り分けておく。

 牛肉に下味を付ける。一口大に牛肉をカットし、義務感の絞り汁と、ごま油、砂糖を牛肉にまぶしてよく揉み込んでおく。

 炒め始める前に合わせ調味料を作っておく。すりごま、酒、醤油、みりんを混ぜ合わせておく。

 フライパンを熱して牛肉を下味の汁ごと炒めていく。この時、油は引かずに焼き付けるイメージで焼いていく。肉の色が変わったら、一旦取り出しておく。

 再びフライパンを熱し、今度は油を引いてキムチを炒めていく。水気が飛んだら、シイタケと玉ねぎを加えて更に炒める。シイタケと玉ねぎに油が馴染んだら、取り出しておいた牛肉を戻し、合わせ調味料を加えて炒め合わせ、仕上げにニラを加えてサッと炒める。ニラに火が通れば完成だ。コツはキムチをしっかりと炒める事。キムチの酸味は加熱すると旨味に変わるから、しっかりと炒める事で味に深みが出るぞ。

「はいお待ち、お次は『牛肉のキムチ炒め』だよ」

 アツアツの内に食ってもらおうと、手早く皿に盛り付けていく。まだ湯気が立つそれを頬張れば、口に広がるのはキムチの程よい酸味と辛味、そこに牛肉とシイタケの旨味が加わり、玉ねぎの甘みとゴマの風味がそれらを纏めあげる。

「美味い!」

「本当に美味いのう」

「だろ?キムチの炒め物ってぇと豚キムチが定番だが、これも中々イケる」




 ワイワイと料理をつつきながら酒を酌み交わし、笑い合う。上条一行のそんな姿を見ていると、何だか家族のような微笑ましさがある。

「そういや上条君、キミはケッコンしてるのか?」

「ぶふぉっ!?」

 盛大にノンアルコールカクテルを吹き出された。

「ゲホゲホ……けけけ、結婚!?いやあの、俺まだ未成年ですしそういうのはまだ早いんじゃないでせうかと思いましてその」

「落ち着けチェリーボーイ」

「何か恥ずかしい断定されたよ!?」

「結婚じゃねぇよ。ケッコン……艦娘の能力を引き出すケッコンカッコカリの話だ」

 俺がその話題に切り込むと、上条君の周囲の空気がピンと張り詰めるのが手に取るように解る。やっぱりな、本人は気付いてないが……下手すりゃ鎮守府の艦娘全員に惚れられてるなぁコリャ。

「ち、因みに大将は……その、ケッコン人数とか」

「あ~……何人だっけか?金剛。多すぎるとイマイチ正確な人数の把握がなぁ」

「え~と、今日の時点で93人デスね。もうすぐ3桁越えデスよー!」

「いよっ!このハーレム大王!」

「夜のホームラン王!」

「女の敵!」

「……女の敵は酷くねぇか?もう少し良い呼び名があるだろ」

 やいのやいのウチの連中が囃し立てる。おいおい、どんどんノリがおかしな事になってきてんぞ?そんな光景を見て、上条一行は開いた口が塞がらない、とでも言いたいように口をパクパクさせている。

「ん、どした?鯉の真似かそりゃ」

「いや、だって嫁さんが90人以上って……」

「あのな、ケッコンったってカッコカリだぞ?カッコカリ。大本営がややこしい名前付けるからそんな妙な気分になるだけでな」

 元々は錬度の上限まで達した艦娘を、更に強化する為の装身具として常に身に付けやすい指輪が選ばれて、そこに大本営の悪ノリが加わってあんな妙な名前になったせいで、大多数の提督が変に意識するようになっちまったんだ。それを考えると大本営のやらかした過失はデカい。

「でも、提督が事務的にケッコンしたとしても、艦娘の側からしたら意識するんじゃ……」

 上条君の連れてきた川内の言い分ももっともだ。実際、ケッコンカッコカリを普通の結婚と同様に捉えて、1人としかケッコンしない提督も一定数いるがな。大概の提督はジュウコンしてる。……ウチ程にジュウコンしてる鎮守府は少ないがな?

「そんなのは互いの意識の問題だろ。話し合いで解決すりゃ良い話だ」

「でも……」

「いいか?独身の野郎だけが提督になるワケじゃねぇ。当然、妻帯者が提督として着任する場合だってあるだろう。そんな相手に対してもケッコンしたからって愛情を求めるか?違うだろ」

 実際、ケッコンした艦娘に迫られて夜戦(意味深)をしてそれが嫁さんにバレて、離婚した上に不貞をやらかしたと提督を解任された……なんて奴も俺は知っている。当然ながら鎮守府は解体、ケッコンした艦娘とその提督も引き離された。女ばかりの特殊な環境下でその愛情が提督に向くのは仕方の無い事かも知れんが、行き過ぎた愛情が生活を破壊したら本末転倒だろう。

「……じゃあ、金城提督はどうしてるんです?」

「ウチか?ウチは基本自由恋愛だぞ」

 俺は来る者拒まず去る者追わず……というスタンスだし、本妻である金剛もケッコンした者であれば手を出すのは問題ないと明言している。寧ろ、

『darlingの相手は1人じゃハード過ぎるネー……』

 と言っている辺り、お察しだろう。それに、ウチの場合は鎮守府外での恋愛も認めてる。まだ数は少ないが、鎮守府とは無関係の人間と結婚した奴もいるしな。

「えっ、そうなんですか!?」

「あぁ。法律上は何の問題もないしな」

 それに、ケッコンカッコカリはしていても俺以外の人間と結婚した場合は俺は手を出さないというのが暗黙の了解として在る(当たり前だが)。霧島なんかが良い例で、俺と戦力強化の為のケッコンはしているが、ケッコンした当時には既に今の旦那である憲兵の橘君と付き合い始めていたので俺と夜戦(意味深)をした事は1度もない。

「1人目とケッコンする前にルールを明確にしとけば、後は何人とケッコンしようが問題なんてほとんど起きねぇさ……まぁ、後は本人の努力次第だろ」

「はぁ……そんなもんスかねぇ」

 さっきからチラチラと艦娘達から視線を送られているにも関わらず、全く気付いてない辺り、上条君も回りの女も互いに苦労するねぇ……全く。俺は心の中でそっと合掌しておいた。
 
 


 
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