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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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外伝~槍の聖女流特訓法~前篇

4月28日、PM16:00――――



最初の特別演習が終わった数日後、授業が全て終わった後第Ⅱ分校の生徒・教官全員はリアンヌ分校長の指示によって全員グラウンドに集合していた。



~トールズ第Ⅱ分校・グラウンド~



「授業が全部終わった後生徒もそうだけど、教官も全員グラウンドに集合って、分校長は一体何を考えているんだろうね……?もしかしてリィン君達は前もって何か知らされているの?」

「いえ、俺達も朝の会議の時に初めて知らされました。―――――少佐の方はどうでしょうか?」

「私もシュバルツァー教官達と同じで今回の分校長の指示は突然過ぎて、分校長が何をするつもりなのか全く知らされていない。昼休みの間にも聞きに行ったが、”その時が来れば説明します”の一点張りだ。全く……”鉄機隊”の件といい、分校長は一体何を考えているのだ………!?」

「うふふ、少なくてもただのお話では終わらないでしょうね。」

生徒達が整列をして待機している中トワの問いかけに首を横に振って答えたリィンはミハイル少佐に話を振り、話を振られたミハイル少佐は静かな表情で答えた後疲れた表情で頭を抱え、レンは意味ありげな笑みを浮かべた。

「クク、オレサマの勘だが”特別演習”で結社の連中にあっけなく奇襲されたから、そんなあっけなく奇襲された俺達に”喝”を入れる為に俺達全員を御自慢の”槍”で補習授業でもするんじゃねえのか?」

「いや、さすがにそれは…………って、あの”鋼の聖女”だったらマジでやりかねないから、冗談でもそんな恐ろしい事を考えるなよ!?」

「ア、アハハ…………―――あ。分校長が来られましたわ。」

不敵な笑みを浮かべたランドロスの言葉に苦笑したランディだったがすぐに表情を引き攣らせて指摘し、二人の会話を苦笑しながら聞いていたセレーネはアルフィンやエリゼと共に自分達に近づいて来たリアンヌ分校長に気づいた。

「エリゼにアルフィン……?どうして二人まで、分校長と一緒に……」

「―――――皆、揃っているようですね。」

エリゼとアルフィンまでリアンヌ分校長と一緒にいる事にリィンが首を傾げているとリィン達の元に到着したリアンヌ分校長は生徒達や教官達を見回した後話を始めた。

「まずは最初の特別演習――――教官、生徒共に改めてお疲れ様でした。不測の事態が起こったとはいえ、全員無事に帰還して何よりです。――――――ですが、その不測の事態によって自分達の”力の足りなさ”を痛感したはずです。」

リアンヌ分校長の言葉に驚いたリィン達教官陣に加え、ユウナ達生徒達も血相を変えた後それぞれ複雑そうな表情を浮かべたりと様々な表情をしていた。

「今回、皆を招集した理由は授業では教えきれない内容―――――”格上の存在”との戦いによる経験をしてもらい、その経験を糧に今後の特別演習で起こりうるであろう”不測の事態”に備える為の”補習”です。なお、この”補習”の対象は生徒達だけではなく、教官達も対象としています。」

「か、”格上の存在との戦いによる経験”って………状況を考えたら、あたし達が戦う”格上の存在”は一人しかいないわよね……?」

「ああ………分校長――――”槍の聖女”自身だろうな。」

「幾ら何でも実力の差が開きすぎていて、戦いにすらならないと思うのですが。」

「………ハッ、面白そうな”補習”じゃねえか。」

「ふふっ、またしても想定外の出来事、ですわね。(そして姫様とエリゼ卿までいらっしゃる理由は恐らく………)」

「えとえと……確か分校長はシルフィアさんが転生した人だから………わたし達がシルフィアさんと戦う事になるって事だよね?……………ふえええ~~~っ!?」

リアンヌ分校長の口から出た驚愕の答えにその場にいる全員が驚いている中ある事を察したユウナは表情を引き攣らせ、クルトは真剣な表情で呟き、アルティナはジト目でリアンヌ分校長を見つめ、アッシュは不敵な笑みを浮かべ、ミュゼは苦笑した後アルフィンとエリゼに視線を向け、ティータはリアンヌ分校長のある事実や戦闘能力について思い返した後驚きの表情で声を上げた。



「あの、お兄様。分校長が仰った”補習”の”対象”は生徒達だけでなく、わたくし達―――教官陣も含まれていると聞こえたのですが………わたくしの気のせいではないですわよね……?」

「ああ………残念ながら、間違いなく俺の耳にも聞こえたよ………」

「だぁっはっはっはっ!どうやらオレサマの勘が当たったようだな!」

「笑いごとじゃねえだろうが!?あの”鋼の聖女”とまた戦う羽目になるとかマジで勘弁してくれよ、オイ………」

「ううっ、わたしがあの”槍の聖女”を相手にするとか絶対無理だよ………」

「うふふ、教官陣の中でレン達と違って執行者や蛇の使徒みたいな裏の使い手との戦いの経験がないトワお姉さんやミハイル少佐はご愁傷様ね。」

(ふふっ、皆さん予想通りの反応ね♪)

(それはそうでしょう……あの”槍の聖女”と直々に戦わなくちゃいけないのだから……」

一方教官であるセレーネは表情を引き攣らせてリィンに訊ね、訊ねられたリィンは疲れた表情で答え、豪快に笑っているランドロスに指摘したランディはトワと共に疲れた表情で肩を落とし、トワの様子をレンは小悪魔な笑みを浮かべて見守り、一連の流れを呑気な様子で見守っていたアルフィンの言葉にエリゼは呆れた表情で指摘した。

「ぶ、分校長!お言葉ですが、たった一度の”補習”をした所で教官陣もそうですが、生徒達の実力向上にはならないと思われるのですが、そこの所はどうお考えなのですか……!?」

するとその時ミハイル少佐は焦った様子でリアンヌ分校長に意見をし

「それを答える前に逆に訊ねさせて頂きますが………私がいつ、この補習が”今回限り”だと口にしましたか?」

「え”。」

「ま、まさかとは思いますが………分校長による”補習”は定期的に行うつもりなのですか……?」

ミハイル少佐に対するリアンヌ分校長の答えを聞いたリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、セレーネは表情を引き攣らせながらリアンヌ分校長に確認した。



「フフ………――――定期的どころか毎日授業が終われば、”補習”を行うつもりですが?……とは言っても私だけでは手は足りませんから、貴女達教官陣に加えてシュバルツァー教官とランドルフ教官が契約している異種族の方々にも協力してもらうつもりの上、月に一度の間隔で”私個人の伝手”を使った人物達にも生徒達や貴女達教官陣のお相手をしてもらうつもりですが。」

「ふえええ~~~っ!?」

「オイオイオイ……!毎日俺達どころかエルンスト達の相手までするとか、幾ら何でも生徒達にとっては一種の”いじめ”なんじゃねえのか!?」

(ま、まさか私達まで手伝う羽目になるなんて……)

(私は別にいいのだけど、生徒達はそれでいいのかしら……?)

(あっはっはっはっ!面白くなってきたじゃないか!)

リアンヌ分校長の答えにその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせた後我に返ったトワは驚きの声を上げ、ランディは疲れた表情で指摘し、一連の流れを見守っていたメサイアは表情を引き攣らせ、アイドスは困った表情をし、エルンストは腹を抱えて声を上げて笑っていた。

「うふふ、分校長さん。分校長さん個人の伝手を使った人物達にレン達の相手をしてもらうという話だけど……その”人物達”ってもしかしてプリネお姉様達やパパ――――”英雄王”リウイ・マーシルン大使かしら?」

「フフ、そこに気づくとはさすがですね。――――ご名答です。マーシルン教官の仰る通り私個人の伝手を使ってメンフィル帝国の様々な使い手達に貴女達と手合わせをしてもらう事をリウイ陛下に相談した所陛下は快く引き受けて頂き、機会があればご自身も貴方方のお相手をするとも仰っていました。」

「メンフィル帝国の様々な使い手達という事はプリネ皇女殿下達どころか、ゼルギウス将軍閣下やファーミシルス大将軍閣下のようなメンフィル帝国でも指折りの実力者達まで俺達との手合わせをする可能性がある上、リウイ陛下まで俺達との手合わせをする可能性があるという事ですか………」

「ほう~?ゼムリア大陸にその名を轟かせる”英雄王”や”空の覇者”のようなメンフィルの達人たちとの手合わせができる可能性もあるのか。それは楽しみじゃねえか!」

「そんなとんでもない事に対して楽しみを感じるのはアンタだけだっつーの!マジで勘弁してくれよ、オイ………”英雄王”達の相手とか、完全に蹂躙されて終わりだろ……」

レンの問いかけに対して答えたリアンヌ分校長のとんでもない答えにその場にいる全員が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中リィンは疲れた表情で呟き、豪快に笑っているランドロスに疲れた表情で指摘したランディは肩を落とした。

「あ、あの、分校長。先程毎日”補習”をすると仰いましたが放課後の生徒達はクラブ活動、教官の私達は翌日の授業の準備等で忙しく、”補習”をする時間を取る事ができないと思われるのですが………」

「その点の問題に関しては心配ありません。”補習”とは言っても、通常の授業のように長時間”補習”の為の時間で貴方達を拘束するつもりはありません。短くて10分、長くても30分でその日の”補習”を終えてもらう予定ですし、更に”補習”を行う組み合わせの方々のスケジュールを照らし合わせてその日の”補習”を行ってもらう予定です。それと教官陣に関しては私を含めてそれぞれが協力すれば”補習”の時間は取れるはずです。組み合わせについては教官陣に加えてシュバルツァー教官達に協力している異種族の方々の中から一人を選び、その一人に対して生徒数人の組み合わせならば、必ず教官陣の数人は手が空き、手が空いた日は”補習”をする必要がなく、生徒達の”補習”を行っている教官達の補佐ができるはずです。それぞれの仕事の時間が減り、更には実力向上の為の時間を取る事ができるのですから、我々教官陣にとっても一石二鳥の”利”を得られる事に加えて『常在戦場』というドライケルスの理念の一つも体現しているのですから、問題は無いと思われるのですが?」

「ぐっ………(ええい、何て厄介な……!メンフィル帝国はあのような存在の手綱をどのようにして握っていたのだ!?)」

トワの指摘に対して静かな表情で答えたリアンヌ分校長に視線を向けられ、反論ができないミハイル少佐は唸り声を上げて頭を抱え込んだ。



「あ、あの……先程から気になっていたのですが、どうして皇女殿下とエリゼさんまでこの場にいらっしゃるのでしょうか……?」

するとその時タチアナがアルフィンとエリゼに視線を向けた後遠慮気味にリアンヌ分校長に訊ねた。

「それは彼女達も今後の”特別演習”に参加する事になっているからです。――――ちなみに”特別演習”時の二人には食事の準備等の手伝い解いた細々とした仕事をしてもらう事になってもらいます。」

「なっ!?お、皇女殿下達が”特別演習”に……!?」

「い、幾ら何でも皇女殿下達まで不測の事態が起こるかもしれない”特別演習”に参加するなんて、無茶苦茶ではないでしょうか……!?下手をすればメンフィル帝国との国際問題が発生しますよ!?」

「そ、そうだよね……”特別演習”での不測の事態によって二人を危険な目に遭わせる可能性があって、その事によって1年半前の”七日戦役”の時のようにメンフィル帝国とエレボニア帝国の国家間の関係にまた亀裂が入るかもしれないし……」

「そ、それに……もし皇女殿下に何かあったら、ユーゲント皇帝陛下やエレボニア帝国政府も黙っていないわよね………?」

リアンヌ分校長の答えにその場にいる多くの者達が驚いている中ゼシカは信じられない表情で声を上げ、ウェインの意見に頷いたカイリとサンディは不安そうな表情である事を推測した。



「――――その心配は無用ですわ。エレボニア帝国人の方々にとっては複雑かもしれませんが………ここにいる皆さんもご存知のようにわたくしは1年半前の”七日戦役”の”和解条約”によってリィンさんに嫁いだ為”今のわたくし”はメンフィル帝国の貴族であられるリィンさんの妻の一人――――つまり、”わたくしの所属はエレボニア帝国ではなくメンフィル帝国”ですわ。よって、お父様―――ユーゲント皇帝を始めとしたエレボニア皇家やエレボニア帝国政府がわたくしの行動についてどうこう言う”権限”はございません。また、メンフィル帝国もわたくし達が”特別演習”に参加する事は了承済みですわ。」

「姫様…………」

「……………」

アルフィンの言葉に一部の生徒達に加えてトワやミハイル少佐が複雑そうな表情を浮かべている中ミュゼは真剣な表情でアルフィンを見つめ、クルトは目を伏せて黙り込み

「ハッ、”帝国の至宝”とか大層な二つ名で呼ばれてエレボニアの連中からチヤホヤされていた癖に他の国に鞍替えした事を堂々と俺達の前で宣言するとはな。いや~、さすがは他国――――それもエレボニアをボロ負けさせたメンフィルの新たなる英雄サマである灰色の騎士サマに股を開いてでも灰色の騎士サマやメンフィルの力を借りてエレボニアの内戦を終結させた皇女サマの言う事だけあって、真実味や説得力があるッスねぇ~。」

「へえ?」

「ア、アッシュ君………」

「おい、アッシュ!幾ら何でも言い過ぎだ!」

「カーバイド!口を謹め!」

「お二人の言う通りだ!例え今の皇女殿下が降嫁された立場とはいえ、今の君の発言は皇女殿下に加えてリィン教官対してもあまりにも不敬だぞ!?」

「貴方………内戦や”七日戦役”を終結させる為に皇女殿下がどれ程の辛い目にあった上メンフィル帝国にエレボニア帝国を滅ぼさせない為に交渉の経験もないのに貴族連合軍に幽閉されていた皇帝陛下に代わってメンフィル帝国の皇帝と必死に交渉した事も知らずに、よくもそんな事が言えるわね……!」

(どうしてアッシュさんはお兄様にもそうですが、アルフィンさんに対しても思う所があるような発言をされたのでしょう……?)

(俺もそれはわからないんだ………最初は俺が内戦や”七日戦役”で討った貴族連合軍の兵士達の中にアッシュの親族か知り合いがいるのかと思って、レン教官に調査を頼んだけど結果はアッシュの親族や知り合いに”貴族連合軍”所属の人はいなかった上、アッシュの母親も病気で随分前に亡くなったらしいから1年半前の件とは無関係だしな……)

鼻を鳴らして嘲笑したアッシュの言葉にその場にいる全員が血相を変えている中レンが興味ありげな表情を浮かべている中トワは不安そうな表情をし、ランディとミハイル少佐はアッシュを睨んで注意し、ウェインとゼシカもランディに続くように怒りの表情でアッシュを睨み、不安そうな表情をしているセレーネの疑問にリィンは静かな表情で答えた。

「――――構いません。わたくしがリィンさんを含めたメンフィル帝国の方々の力を借りて、内戦を終結させた事や帝都(ヘイムダル)奪還の決戦前日にわたくしは身も心もリィンさんに捧げた事は事実ですから、アッシュさんの仰っている事について否定をするつもりはありませんわ。」

「えっと……今、何気に凄い事実が聞こえたよね?」

「あ、ああ。へ、”帝都(ヘイムダル)奪還の決戦前日に身も心も捧げた”って事は……」

「リィン教官は内戦の決戦前日に皇女殿下とセ―――じゃなくてえ~と……そう!”子作り”も経験したんッスね!?」

「ハハッ、堂々とそんな事が言えるなんて中々肝が据わっているねぇ!」

「そんな事をこんな人前で言うなんて最低……」

「は、はわわわわわ……っ!?」

「まあまあまあ……!まさかそんな絶妙なタイミングでリィン教官に大人のレディにしてもらえたなんて、さすがは姫様ですわね♪」

その場の空気が険悪な空気になりかけたその時アルフィンが制止の声を上げて答え、アルフィンの答えを聞いてある事を察したカイリとパブロは表情を引き攣らせ、興奮した様子で声を上げたシドニーの発言にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中レオノーラは豪快に笑ってアルフィンを見つめ、ヴァレリーはシドニーに蔑みの視線を向け、ティータは顔を赤らめて慌て、ミュゼはからかいの表情でリィンとアルフィンを見つめた。

「うふふ、ちょっと嫌な空気になっていたのに一瞬で変えるなんて、さすがリィンお兄さんね♪」

「内戦の決戦前日って事はトリスタ奪還の翌日って事だから………は、はわわわわっ!?まさかその時にリィン君と皇女殿下がそんな事をしていたなんて……!」

「……………」

「ハア…………」

「こっの草食動物の皮を被った超肉食動物の兄貴族が……っ!そういう所まで弟貴族(ロイド)と一緒だったのかよ!?これだからリア充共は……!」

「クク、ヴァイスハイトに次ぐ女の多さに加えて妹もいる貴族だから、まさにランディの言う通りじゃねえか。だぁっはっはっはっ!」

「ううっ、穴があったら入りたい気分だ………」

「ま、まあまあ……空気が変わったのですから結果的にはよかったと思いますわよ?」

「フフ……」

「…………チッ。」

一方レンは小悪魔な笑みを浮かべてレンを見つめ、トワは顔を赤らめて慌て、エリゼはジト目でリィンとアルフィンを見つめ、ミハイル少佐が呆れた表情で溜息を吐いている中ランディは悔しそうな表情でリィンを睨み、ランドロスは豪快に笑い、疲れた表情で頭を抱えているリィンにセレーネは苦笑しながら慰めの言葉をかけ、リアンヌは苦笑しながら一連の流れを見守り、険悪な空気が一転し、完全に話が逸れた事に気づいたアッシュは呆けた後舌打ちをした。



「コホン。―――話を戻しますが、わたくしは1年半前の内戦で自分の無力さを感じて、周りの方々の足を引っ張らない為にリィンさんに嫁いでからわたくし自身の戦闘能力を向上させる精進をし続けましたから心配は無用ですわ。幸いにもわたくしにはアーツもそうですが、魔術師の適性も高い為、アーツや魔術による後方からの援護でしたらアーツや魔術の適性が高いトワさんやレン教官、それにセレーネさんにも決して劣りませんわ。」

(……ねえ、アル。アルフィンさんが言っている事は本当なの?)

(はい。実際アルフィン様は上位魔術や治癒魔術、そして支援系の魔術の一部を習得している事に加えて、アルフィン様の魔術適性が最も高い”火炎属性”に関しては最上位魔術も習得済みです。)

(最上位魔術………レン教官の話によると戦場の地形をも変えかねない凄まじい威力の魔術との話だったが……まさか皇女殿下がそのような凄まじい魔術の使い手になっていたとは……)

アルフィンの説明のある部分が気になったユウナに小声で訊ねられて答えたアルティナの答えを聞いたクルトは驚きの表情でアルフィンを見つめていた。

「そしてこちらにいるエリゼはリィンさんやセレーネさんと同じ”特務部隊”に所属していた上”七日戦役”でもリィンさん達と一緒に軍事行動を取っていましたからエリゼも決して皆さんの足を引っ張りませんわ。」

「――――アルフィンの説明通り、私も”七日戦役”に兄様達と共に従軍し、”特務部隊”の一員としてエレボニアの内戦終結の為に”実戦”を何度も経験しましたから、私の心配も無用です。」

「何と!エリゼさんもあの”特務部隊”の一員だったとは……!」

「しかも内戦に加えて”七日戦役”も経験しているから、実戦経験もそうだけど実力も確実に私達より上でしょうね……」

アルフィンとエリゼの説明を聞いたフレディが興味ありげな様子で声を上げている中マヤは驚きの表情でエリゼを見つめた。



「―――さてと、二人がこの場にいる理由の説明も終えましたし。そろそろ始めるとしましょう。――――まずはミハイル少佐以外の教官陣全員、前に出てください。」

「げげっ、いきなりかよ!?」

「ア、アハハ……何となくそんな事になるような気はしましたが……」

「ほう~?まさか俺達達全員を相手にしなければならない”格上の存在”であるという自信があるとはな。ますます、面白くなってきたじゃねぇか!」

「うふふ、生徒達のちょうどいい”見本”の戦いができるといいんだけどね。」

「ううっ、多分わたしがリィン君達の足を引っ張って、一番早く無力化されるんだろうね……」

リアンヌ分校長に名指しされたランディは表情を引き攣らせ、セレーネは苦笑し、ランドロスとレンが興味ありげな表情を浮かべている中トワは疲れた表情で肩を落とした。

「………―――俺達も可能な限り分校長の攻撃に耐えて先輩を含めた後衛のメンバーをカバーしますので、先輩は後方からの指揮や援護をお願いします。1年半前の内戦での先輩の指揮能力はレン教官やセシリア教官も褒めていた程優れているのですから、例え相手が分校長であろうと通じるはずです。」

「リィン君………うん、任せて!」

しかしリィンに元気づけられたトワは目を丸くした後力強く頷いた。



「―――一つ言い忘れました。今回の”補習”はシュバルツァー教官とマーシルン教官はそれぞれに秘められている”力”の解放を、アルフヘイム教官は魔力による身体能力の強化、竜化並びに魔術の使用、そしてランドルフ教官は”戦場の叫び(ウォークライ)”並びにブレードライフルの使用を控えてもらいます。」

「へ………」

「あら………」

「待て待て待て……!何で俺達だけハンデ付きで戦わなくちゃならないんだよ!?俺達がアンタとまともにやりあうにはマジで全員”本気”にならないと、太刀打ちできねぇぞ!?」

それぞれの武装を構えてリアンヌ分校長と対峙したリィン達だったがリアンヌ分校長の口から出た予想外の指示にリィンは呆け、レンは目を丸くし、ランディは疲れた表情で反論した。

「―――先程言ったはずです。この”補習”は私や貴方方教官陣を含めた実力向上の為の”補習”であると。”戦場”は常に万全の状態で戦えるとは限らない事は教官陣の中で最も”実戦”の経験がある貴方なら一番理解しているのでは?」

「ぐっ………」

「た、確かに仰る通りですが………あ、あの……ちなみにわたくし達の勝利条件はどのような条件でしょう?」

しかしリアンヌ分校長の正論に反論できないランディは唸り声を上げ、セレーネは疲れた表情である事を訊ねた。

「―――10分、戦闘不能者を一名も出さずに耐えるだけです。―――貴方方ならば容易な条件でしょう?」

「いやいやいや、アンタ相手にハンデ付きで10分も戦闘不能者を一人も出さずに耐えるとかどう考えても星見の塔での戦いよりもキツイぞ!?」

「しかも星見の塔の時と違って、ランディお兄さんにとってのベストメンバーじゃないものねぇ。」

「おいおい、何を弱気な事を言っているんだ?耐える前にいっそこっちから攻勢に出て分校長殿に膝をつかせれば、確実に俺達の勝ちだろうが!」

リアンヌ分校長の答えにランディは疲れた表情で指摘し、レンは苦笑しながら答え、ランドロスは不敵な笑みを浮かべてリアンヌ分校長を見つめた。

「フフ、その意気です。―――――ちなみに私も貴方方同様”ハンデ”として、この武装による攻撃しか行わない上普段の半分の力に抑えて戦いますし、更に奥義(Sクラフト)も使いません。」

ランドロスの答えにリアンヌ分校長は微笑んだ後自身の得物の一つである騎兵槍(ランス)を異空間から取り出して構えた!



「ふえ~……大きくて変わった形をした槍ですね~。」

「遥か昔主に馬上戦で扱われた得物であり、”槍の聖女”も得意としていた得物である騎兵槍(ランス)………!」

「………まさに伝承通りの姿だな。」

「……ハッ、三帝国の英雄サマ達の混合チームと大英雄サマによる戦い、お手並み拝見させてもらうぜ。」

リアンヌ分校長が構えた騎兵槍(ランス)を見たルイゼとゼシカが驚いている中グスタフは真剣な表情でリアンヌ分校長を見つめ、アッシュは鼻を鳴らして不敵な笑みを浮かべてリィン達を見つめた。

「あ、あの~………分校長、一つ聞きたい事があるのですが…………それのどこが”ハンデ”なのでしょうか?」

「――貴方方なら存じているでしょうが私は槍術他にも剣術と魔術も嗜んでいます。そんな私が槍術のみで、更に普段の半分の力に抑えて戦うのですから、十分ハンデかと思われるのですが?」

「いやいやいや、その”槍”を使っている時点で全然”ハンデ”になんねぇだろうが!?アンタの”本領”はどう考えてもその”槍”による武術だし、例え奥義(Sクラフト)の使用禁止や半分の力に抑えた所でそもそもアンタの場合だと、半分の力でも戦技(クラフト)が奥義(Sクラフト)の威力のようなものだろうが!?」

「クスクス、分校長さんは魔術はともかく剣術も槍術と同様の戦闘能力だから、”一応”ハンデにはなってはいるわよ。」

一方表情を引き攣らせたリィンの指摘に答えたリアンヌ分校長の答えにランディは疲れた表情で指摘し、レンは小悪魔な笑みを浮かべた。



「―――――問答はここまでです。そろそろ始めますよ。」

そしてリアンヌ分校長は莫大な闘気を解放し

「な、何この闘気……”紅の戦鬼”と”本気”で戦った教官達の闘気とも比べ物にならないんじゃないの……!?」

「予想―――いや、予想以上の凄まじい闘気だ……!半分でこれ程の闘気なのだから、分校長が”本気”になった時の実力は一体どれ程のものなのだ……!?」

「というかそれ以前にあんな”化物”の戦闘能力を測る事は不可能かと。」

リアンヌ分校長の闘気に生徒達が驚いている中ユウナとクルトは信じられない表情をし、アルティナは疲れた表情で呟き

「――――ミハイル少佐。開始と終了の合図、それと時間の計測をお願いします。」

「……っ!りょ、了解しました……!――――双方、構え!」

莫大な闘気をさらけ出し続けているリアンヌ分校長に視線を向けられたミハイル少佐は一瞬息を呑んだがすぐに気を取り直して号令をかけ、ミハイル少佐の号令を聞いたリィン達はそれぞれ武器を構え

「―――始め!」

ミハイル少佐の号令を合図にリアンヌ分校長との模擬戦を開始した――――!


 
 

 
後書き
という訳で1章でま・さ・かのリアンヌ戦(本気出していない状態)ですwwなお、次回の戦闘BGMは原作通り当然碧の” Unfathomed Force”だと思ってください♪なお、今回の外伝のタイトルは3rdの某ロリコン赤毛が関係している”扉”のタイトルや内容を参考にしていますが、どう考えても某ロリコン赤毛による地獄の特訓すらも”生温い”と思える特訓方法だと思っていますwwちなみにアルフィンが魔術師として覚醒している理由は………エウシュリーシリーズ恒例の”例の魔術”による強化だと思ってください(オイッ!)何せアルフィンの例の魔術の相手は魔神やら女神やら精霊女王やらととんでもない存在とヤッている事によるブーストされていますから、当然その相手とヤッているアルフィンもエリゼ達同様その恩恵を受けていますので……(遠い目) 
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