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おぢばにおかえり

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91部分:第十三話 詰所へその五


第十三話 詰所へその五

「私も多分あるしね、そういうのは」
「先輩もですか」
「誰だっていんねんはあるわよ」
 先輩のお言葉です。
「それこそ私にだって。ほら」
「ほら?」
「美紀にだって」
 長池先輩のことが出て来ました。
「あるわよ、やっぱり」
「長池先輩にもですか」
「あれでね、美紀も」
 商店街の信号の前まで来ました。昔は信号は一つでしたが今は一つになっています。道友社のギャラリーを挟んでそうなっているんです。
「色々と悩んでいたし」
「一年生の時ですか?」
「二年生の時も。色々あったのよ」
「そうだったんですか」
「それわかったかしら」
 不意に私にそれを尋ねるのでした。
「美紀のことは」
「あっ、そういえば」
 そう言われると長池先輩とお話したことを思い出しました。
「時々ちらりって昔のことをお話される時に」
「そうでしょ。それなのよ」
 高井先輩も言うのでした。
「詳しいことは言えないけれど。クラスや寮で何日も凄く泣いて。大変だったし」
「そうだったんですか」
「私ね」
 先輩はまた話してくれました。
「ずっと美紀と同じクラスだったのよ」
「そうだったんですか」
「寮でも一緒じゃない」
 結果としてそうなります。東寮では横のつながりが凄いできます。特に同じクラスの女の子達だとそれがかなり強くなるんです。
「だから。色々と見てきたけれど」
「長池先輩もいんねんに苦しんでおられたんですね」
「いんねんは返って来るわよ」
 ここできついお話が。
「それは覚えておいてね」
「わかりました」
「本当にね。自分でも気付かないし」
「ですよね」
 これは子供の頃からお父さんやお母さんからだけじゃなくて本当に色々な人から聞いていることです。だから余計に気をつけないといけない、それでも気付かないものだって。
「自分じゃわからないけれど親神様は御存知じゃない」
「はい」
 ここに答えがあります。自分では気付かなくても親神様は御存知なのです。
「だから。親神様の思し召しをよく見ていれば」
「わかるんですよね」
「そうだけれどね。これは気付かないのよね」
 先輩はこう仰って首を傾げてしまいました。
「美紀だって。私だって」
「先輩もですか」
「人の態度が急に変わる時ってあるじゃない」
「ええ」
 確かに.そういう時もあります。
「そういう時が一番わかりやすいんだけれどね」
「そうなんですか」
「人と人の付き合いが一番わかりやすいわよ」
 先輩はこう仰います。
 
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