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おぢばにおかえり

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87部分:第十三話 詰所へその一


第十三話 詰所へその一

                    詰所へ
 何だかんだでゴールデンウィークになりました。けれど殆ど部活です。
 部活が終わったら寮に戻って。何かいつもと全然変わりません。
「何かこれって」
「いつもと変わらないって言いたいのね」
「そうなんです」
 そう高井先輩に言葉を返しました。帰り道で一緒になったんです。
「三年間こうですよね」
「はっきり言えばそうよ」
 あまり聞きたくなかったこの言葉。
「私も最初の一年は凄くしんどかったし」
「はい、しんどいです」
 正直言ってかなりのものです。
「部活もそうですけれど」
「けれど別に美紀はそんなに厳しくないでしょ」
 長池先輩の御名前です。何か名前までよくて。
「怒ったら怖いけれど」
「先輩が怒ってるところなんて見たことないですよ」
 私は見たことがありません。それどころかこんなに優しくていいのかな、なんて思ってしまったりする程です。
「そうなの」
「はい。全然です」
 こうも答えました。
「それで私凄く有り難いと思ってるんですよ。怖い人じゃなくて」
「あれで怖いのよ」
 けれど高井先輩は言うのでした。
「怒ると凄くね」
「そんなに怖いんですか」
「顔が奇麗じゃない」
「はい」
 これは高井先輩もそうなんですけれど。とにかく本当に。
「だから余計に凄いのよ。それこそ」
「それこそ?」
「般若なのよ」
 あのお面を思い出しました。天理教の教会ではあのお面は普通は置いていないですけれど実は私ああしたお面が凄い苦手なんです。他には人形とかこけしとかも。
「般若、ですか」
「それでもちっちには怒らないのね」
「ですからとても優しくて」
「あれで案外怒りっぽいんだけれどね、美紀って」
 それは初耳なんですけれど。確かに同級生からはあの先輩で大丈夫?とか怖い感じの人とかは時々言われたりしますけれど。
「そうなの。じゃあいいわ」
「そうですか」
「ところでね」
 ここで高井先輩は私に言ってきました。
「何でしょうか」
「今時間あるかしら」
「えっ!?」
「だから。時間あるの?」
 また私に尋ねてきました。時間があるかどうか。
「部活終わったけれど。どうなの?」
「ありますけれど」
 寮に帰ってもすることないですし。とりあえず商店街に行こうと思っていました。今は二人で神殿の前を歩いています。
「そう。じゃあ悪いけれど付き合って」
 先輩は商店街の方を歩きながら私に言ってきました。
「詰所まで行きたいから」
「先輩の詰所っていうと確か」
「ええ、駅の向こうにあるのよ」
 天理教の詰所は大教会ごとにありまして天理市のあちこちにあります。駅の向こう側にもかなりの数があって高井先輩の実家が所属されている大教会の詰所もそこにあるんです。
「それでそこまで行くのにね」
「一緒にですか」
「駄目だったらいいけれど」
 そう前置きしてきました。
「けれどよかったらね。駄目?」
「いえ、私でよかったら」
 何もすることがないので先輩に御一緒させて頂くことにしました。実は私も先輩の詰所を見てみたかったですし。
「そう、じゃあ悪いけれどね」
「はい。ところで先輩の詰所って」
「何かしら」
 話はそちらにいきました。
「結構建物は新しいですよね」
「そうね。そんなに古くはないわね」
 先輩は少し考える顔をされてから私に答えてくれました。その横顔がとても奇麗で。長池先輩もそうですけれどこれで街なんか歩いたらすぐに声をかけられそうです。
 
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